Google がマルチスクリーン技術 Google Cast をサードパーティーアプリに導入するための Google Cast SDK をプレビュー公開しました。
既存のモバイルアプリやウェブアプリに Google Cast 対応を追加すれば、35ドルのHDMIドングル Chromecast や今後登場予定の対応デバイスを介して、テレビにオンラインコンテンツを「キャスト」して大画面で再生できます。
続きでは Chromecast / Google Cast の概要と技術的詳細、ハードウェア仕様と制限についてまとめます。
Chromecast / Google Cast 概要
Chromecast は、テレビのHDMI端子に接続するスティック状のデバイス。7月24日のAndroid & Chrome イベントでの導入を要約すれば、
「Netflix や YouTube、Google Play ビデオなど、映画やテレビ番組の有料配信を含めたオンライン動画サービスを楽しむ人は非常に多くなった。
しかしほとんどの人は視聴にスマートフォンやタブレット、PCなどを使っており、せっかく大画面テレビがあっても、ネットコンテンツを見る安価で簡単な方法がなかった。
Chromecast は35ドルの価格と、すでに使っているモバイルアプリやウェブから「Cast」する操作でこのギャップを埋める製品」。
ユーザー向きの使い方としては、
1. Chromecast をテレビに接続する。
2. iOS / Android スマートフォンやタブレット、PCの Chromeブラウザなどで、普段使っているアプリやサイトでオンライン動画や音楽を再生する。
3. アプリに現れる「Google Cast」アイコンを押して、Cast先 (居間のテレビ etc) を選ぶ。
だけで再生が始まります。再生・停止やナビゲーション、音量調節、コンテンツのブラウズと選択などは、手元のアプリでこれまでどおり操作すればリモコンとして機能します。
Chromecast (レシーバ)が直接クラウドから受信
ユーザーからすれば、たとえばアップルのAirPlay や、Android のMiracast のように「スマートフォンからテレビに無線で映像が送信されている」ような感覚です。
しかし実際には、Chromecast は スマートフォンなどから再生するオンラインコンテンツを指示されたあとは、自力でクラウドからコンテンツをストリーミング受信します。スマートフォンなどの役割はアプリを使ったコンテンツ検索や選択、ナビゲーション、リモコン操作のみ。
Chromecast はソフトウェア的には簡易版の Chrome OS が載っており、HTML5 / JavaScript と特定のコーデックに対応したブラウザが動いています。
Google Cast API の用語では、Chromecast デバイスがReceiver、スマートフォンなどのアプリが Sender と呼ばれます。
このため Chromecast は、最初のセットアップ時に無線LAN経由のインターネット接続設定が必要です。また再生できるコンテンツも、Google Cast に対応したアプリのネットコンテンツか、あるいは Chromeブラウザの任意タブ (ベータ機能)のみ。
ネット動画サービス以外では、写真をテレビでスライドショーするデモにはオンライン写真サービスの Google+ フォト が、音楽再生には Google Play Music や Pandora (対応予定)が使われていました。
Miracast や AirPlay のようにモバイル端末の画面をそのままミラーリング出力する仕組みではないため、ローカルで動くゲームなどを大画面に飛ばして遊ぶ使い方はできません。
一方、Chromecast 側が自力でクラウドとつながる利点は、再生を開始したあとにスマートフォン側で画面やアプリを切り替えても、テレビではそのまま再生が続くこと。
移動中に見ていた映画を自宅についたらテレビに映して、携帯側ではメールを読んだり、別のネット接続アプリを使うことができます。リモコン操作は通常のマルチタスク音楽再生のように、ロック画面や通知画面からもアクセスできます。
また特定のプラットフォームやデバイス、フォーマットだけでなく、 iOS / Android や、Windows / Mac / Chrome OS の Chrome ブラウザなどさまざまな機器からシームレスに扱える点も利点とされています。
Google Cast SDK、Chromecast仕様
ユーザーからは映像出力先を選んでいるように見えても、内部的には Chromecast (Receiver)とアプリ(Sender)のあいだでオンラインコンテンツへのポインタや認証情報、リモコン信号などをやり取りする仕組みから、Chromecast にはアプリ側で対応する必要があります。Google がプレビュー公開した Google Cast SDK はこのための仕組みです。Google Cast SDK の API 構成は、モバイルまたはウェブアプリ側に Android / iOS / Chrome API、Chromecast (または互換デバイス)側に Receiver API 。このほか Google Cast の規格リファレンスや、UI の決まりごと、各種の参考用リソースが提供されています。
Google Cast 対応の追加は比較的シンプルで、Googleでは大多数の開発者が 200行以下で既存アプリに Google Cast 対応を追加できたとしています。
ソフトウェア的には、Chromecast は「簡易版のChrome OS」を搭載しており、内部的にはHTML5 / JavaScript 対応ウェブブラウザとしてクラウドコンテンツを表示します。
Google Cast がサポートするコーデックやストリーミング規格は、
動画:H.264, VP8
音声:HE-AAC, LC-AAC, CELT/OPUS, MP3
コンテナ:MP4/CENC, WebM, MPEG-DASH, SmoothStreaming
DRM:Widevine, Playready
内部的にはウェブブラウザとはいえ、フル機能の Chrome ブラウザのような WebGL、複数ビデオストリームの同時再生などは非対応。PCの Chromeブラウザから任意のタブを投げて表示する機能もあるものの、ベータ扱いでの提供です。(つまり、Chromeで見られるネット動画サイトならなんでもテレビに飛ばせる / Chromecast で処理できるわけではない)。
ハードウェア仕様は、HDMI-CEC対応、最大解像度 1080p フルHD、802.11b/g/n WiFi (2.4GHz帯のみ)。サイズは 72 x 35 x 12mm、本体重量 34g。
電源は HDMI端子の反対側にあるマイクロUSB端子で供給します。パッケージにはUSB - マイクロUSBケーブルと、テレビなどにUSB給電ポートがない場合のためUSB電源アダプタも付属。
なお米FCCでは、5月にGoogleが登録した「メディアプレーヤ」型番 H2G2-42 としてすでに発見されており、正体についてさまざまな推測がされてきました。FCC提出文書では当時隠されていた情報がいくつか公開されており、Marvell製組み込みプロセッサと無線プロセッサが載ったシンプルな基板写真も参照できます。
Google では Chromecast デバイスをまず米国で、その後は「できるだけ早い時期に」別の市場で販売予定。またサードパーティーから、Chromecast に対応したさまざまなデバイスが登場する見込みとしています。