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3Dプリンタは健康に悪影響を与えるかもしれない ―米調査 | ガジェット速報
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3Dプリンタは健康に悪影響を与えるかもしれない ―米調査

2013年8月1日 22:33 │Comments(9)

Written by くまむん

イリノイ工科大学の研究グループはこの度、「3Dプリンタからは非常に微細な粒子(Ultrafine Particles, UFPs)が発生しており、これが使用者の健康に影響を与える可能性がある」とする論文を発表しました。

同グループは、一般的な熱可塑性樹脂(加熱すると柔らかくなる樹脂)を用いて、3Dプリンタで実際にフィギュアを作製。その際、室内の粒子濃度をモニタリングしたところ、プリンタの使用を始めると同時に粒子数が急激に上昇、停止後も元のレベルに戻るまで数十分を要したとのことです。

研究グループでは、3Dプリンタを使用する際には、換気や排気装置の設置などの対策をとることを推奨しています。

UFPMain

実験方法(ここから詳細)

今回の実験では、ABS樹脂及びポリ乳酸(PLA)樹脂を使用して3Dプリンタで造形を行った際の、室内雰囲気中の微粒子濃度変化を追跡しています。

実験場所は、3Dプリンタに関する教育やトレーニング・製品販売を手がけている会社の一室(45m3)。室内に計5台の3Dプリンタを並べた状態で運転し、室内の微粒子濃度をモニタリングしています。測定にはTSI NanoScan SMPS Model 3910(メーカー公式、開くと動画が再生されます)を使用しており、データの取得間隔は1分刻みとのこと。

実験の詳細手順は以下の通り。

  1. バックグラウンド(BG)測定
    3Dプリンタを動作させていない、自然な状態で室内の微粒子濃度を測定。 
  2. PLA樹脂での造形
    2台の3Dプリンタにおいて、PLAS樹脂を使用してカエルのフィギュアを作製。
    造形時間は20分間。樹脂溶解部の温度は200℃、プレート温度は18℃。
  3. プリンタの電源をオフ
    2.の造形が終わった後、約20分間、3Dプリンタの電源をオフにして粒子数の減衰状況をモニタリング。
  4. PLA樹脂&ABS樹脂での造形
    2台のプリンタでPLA樹脂、3台のプリンタでABS樹脂を使用した造形を同時に行う。
  5. プリンタの電源をオフ
    再びプリンタの電源を切り、粒子数の減衰状況を観察。

Microsoft Word - 3Dprinter_paper_rev1_v7

今回の実験で作製されたカエルのフィギュア。

【補足】
測定機器と3Dプリンタの位置関係、3Dプリンタの機種名などについては、論文にも言及がありませんでした。

実験結果

室内の粒子濃度の経時変化を表すグラフは以下の通りになります。

time-concentration

粒子濃度の経時変化。ヨコ軸は経過時間、タテ軸は1cm3あたりの粒子数。

PLA樹脂のみの場合に比べて、ABS樹脂を使用した場合では短時間で急激に粒子濃度が増大しています。また、PLAのみの場合はプリンタの電源を切ってから30分ほどでバックグラウンドに近いレベルにまで濃度が減少していますが、ABSが加わると、バックグラウンドのレベルに戻るまでに60分以上かかっています。

【メモ】
 ・PLAのみ(2台)の場合、濃度ピークが8000→3000(BG)まで減少するのに約30分
 ・ABS(3台)を加えた場合、濃度ピークが27000→8000(PLAベース)に減少するのに約50分

さらに、微粒子のサイズ別に見た場合、30nm以下の領域での放出量はABSがPLAよりも最大3桁近く多くなっており、トータルの放出量で比較した場合でも、ABS樹脂がPLA樹脂に比べて約一桁多く出ています。

Microsoft Word - 3Dprinter_paper_rev1_v7

PLA, ABSそれぞれの樹脂を使用した場合の粒形別のUFPs発生率。
ABSではPLAに比べて粒径の小さな粒子の濃度が高く、トータルの発生量も多い。

今回の実験においては、ABS, PLAそれぞれの樹脂から発生するUFPsの詳細な化学組成の同定は行なっていないとのこと。

ただし論文では、マウスをABS樹脂が熱分解する際に生じる物質に暴露させた場合に、肺や腎臓・肝臓などの臓器に悪影響を与えることが先行研究から明らかになっており、人体に対してもネガティブな影響を与えることが推測される、としています。

一方でPLAに関しては、生体親和性が高いことが知られており、ABSに比べると比較的安全性は高いものと考えられるが、その影響については未知の部分も残っているとしています。

今回の研究では、3Dプリンタから発生する微粒子がヒトの健康に影響をあたえるという直接的な証拠は示されていませんが、ナノレベルの微粒子がかなりの量で発生していることには変わりがないため、使用環境の換気などには、十分注意したほうが無難かと思われます。

[ScienceDirect(全文閲覧可)via Slashdot]

くまむん

Author : 

くまむん

企業の研究所で家電関連技術の研究開発に携わっておりましたが、2013年4月をもって退職し、当サイトの専属となりました。今後ともよろしくお願いいたします。

9 件のコメント

  1. No Name 2013年8月1日 22:37 No.371531 返信

    かえるのフィギュアはかわいい

    Thumb up 1 Thumb down
  2. No Name 2013年8月1日 22:40 No.371536 返信

    3Dプリンタに限らず、切削加工には付き物な問題

    Thumb up 3 Thumb down
  3. No Name 2013年8月1日 22:42 No.371538 返信

    やっぱりそうなのか… 仕方がないこととはいえ僕には粉塵の処理はちょっと敷居が高いかな… 石膏の加工もこんな感じだよね

    Thumb up 2 Thumb down
  4. ガジェ好き名無しさん 2013年8月1日 22:52 No.371546 返信

    かえるかわいい

    Thumb up 0 Thumb down
  5. No Name 2013年8月1日 23:04 No.371559 返信

    1立方cmに数万個レベルが
    「健康に悪影響を与えるほど多い」
    なのかどうかはよく分からないな・・・

    こういうデータは
    定量的な毒性評価とセットにして議論しないと
    過小評価にも過大評価にもなり得るよ
     

    ちなみに、日本に住んでる人はたった”一呼吸”で
    数兆分子の一酸化炭素と数十万分子のダイオキシン類
    を吸い込んでる

    Thumb up 2 Thumb down
  6. No Name 2013年8月1日 23:15 No.371565 返信

    お外でマスクしてやれば問題ない

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  7. No Name 2013年8月1日 23:33 No.371584 返信

    Windows 8.1…

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  8. Ennoshita Works 2013年8月1日 23:34 No.371585 返信

    くまむんさん仕事辞めたんかい!そっちの方がビックリ(゚д゚)!
    これからもステキ記事期待しています。

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  9. ガジェ好き名無しさん 2013年8月1日 23:47 No.371597 返信

    欲望に忠実なものを具現化しすぎて精神衛生上よろしくないとか、そういうことかと思ってました。

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この記事にコメント
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