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化学物質のみによるiPS細胞の誘導に成功 ―中国研究チーム | ガジェット速報
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化学物質のみによるiPS細胞の誘導に成功 ―中国研究チーム

2013年8月10日 19:50 │Comments(10)

Written by へいのうえ

北京大学・Hongkui Deng氏らを中心とする研究グループはこの度、iPS細胞を7つの化学物質のみにより生成することに成功したと発表しました。この研究成果により、ガン化を引き起こさない安全なiPS細胞を効率的に生産することが可能になるものと期待されています。

IPS-cells  

iPS細胞とは?

iPS細胞とは “induced Pluripotent stem Cells” の略称で、要するに人工的に誘導した多能性細胞ということです。

生体内には様々な種類の細胞がありますが、基本的に細胞はどれも一揃いの遺伝子を持っています。発生初期段階での細胞はどの細胞にも分化できる多能性を持っているのですが、途中でそれぞれの役割に応じて特定の遺伝子を選択的に発現するようになり、必要のない遺伝子の発現は抑制されてしまいます。iPS細胞は「この抑制を解くことが出来れば多能性の細胞を誘導できるのでは?」というのが基本的な発想です。

京都大学の山中伸弥教授は、2006年にマウスで、2007年にはヒトにおいて、このiPS細胞を誘導することに成功しました。ES細胞と異なり倫理的な問題が少なく、移植の際の拒否反応も起こらないことから、医療への応用などに大きな影響を与えました。

しかしiPS細胞にも問題はありました。それは、細胞がガン化することです。

CI0003

iPS細胞から分化したがん細胞。

iPS細胞の作成では、材料となる細胞を初期化するために山中氏が同定した4つの因子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)を導入します。

この際に「レトロウイルスベクター」というものを使用するのですが、このベクターは既存のDNAの中に前述した因子を組み込むため、導入先のDNAを損傷させることでガン化を引き起こしてしまう可能性がありました。

また、前述した4つの因子のひとつ “c-Myc” はガン原遺伝子であり、この遺伝子の異常は細胞のガン化につながることも知られています。 

ガン化を抑えるための試行錯誤

この問題を克服するために、世界中で様々な研究チームが試行錯誤しています。例えば、c-Mycを使わずにiPS細胞を誘導する方法の開発や、レトロウイルスベクターを使わずに「センダイウイルスベクター」を用いた研究成果などが報告されています(センダイウイルスは既存のDNAへの組み込みを行わない)。

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センダイウイルスにより作製されたiPS細胞。(引用元: 産総研ウェブサイト

また、別のアプローチとしては遺伝子を導入するのではなく、化学物質によりiPS細胞を誘導しようという試みも取られてきました。これまで、前述した4つの遺伝子のうち3つまではある種の化学物質で置き換え可能であることが示されていたものの、”Oct4″ だけは代替となる物質が見つかっていませんでした。

このような状況に際して、Hongkui Deng氏らの研究グループは、 “Oct4″ の代替となる物質を見つけるために、1万種にも及ぶ化学物質のテストを実施。その結果、これまでに見つかっていた4種類(VPA、CHIR、616452、Tranylcypromine)に、新たに見出した3種類(FSK、DZNep、TTNPB)を加えた計7種類の物質によって、遺伝子導入と同程度の効率でiPS細胞を誘導できることが示されました。

さらに重要なことに、この方法で作ったiPS細胞から作出したキメラマウスは、これまでの方法で作出したものよりも生存率が高いことも示されています。 

化学物質のみによる誘導は、これまでの遺伝子導入によるものよりも簡便で効率がいいとされており、さらにガン化の問題も避ける事ができるものと考えられています。今回開発された手法がこれまでの遺伝子導入法に取って代わるのかはまだわかりませんが、この成果によりiPS細胞の医療への転用がさらに加速することが期待されます。

[Nature News] [Science]

へいのうえ

Author : 

へいのうえ

現在アメリカの大学で生物学を勉強しております。 その辺りの新しい話題を解説していければなと思っています。 まだまだ勉強中ですので、至らぬ点もあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。

10 件のコメント

  1. No Name 2013年8月10日 19:58 No.383667 返信

    マジなら大ニュースなんだが
    中国勢やべー

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    • No Name 2013年8月10日 20:33 No.383695 返信

       どこの大学の研究情報が盗まれたんだろう。っと思ってしまうのが中国。

      Thumb up 4 Thumb down
  2. ガジェ好き名無しさん 2013年8月10日 20:10 No.383677 返信

    中国も頑張るねー
    日本の隣国ならこうでないと

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  3. No Name 2013年8月10日 20:12 No.383679 返信

    山中教授は今どういう方向で研究してるの?

    同じように化学物質オンリーを目指してるのか
    遺伝子注入は使いつつ別な課題を解決しようとしてるのか

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  4. No Name 2013年8月10日 20:15 No.383683 返信

    IPS細胞の研究は熱いね。
    今度はその化学物質が大丈夫なものなのか気になるな
    そっちも遺伝子反応に変化をもたらしてるわけだし、癌化と関係してそう

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  5. No Name 2013年8月10日 20:57 No.383721 返信

    力技だね
    すごいリソース投入してそう

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  6. No Name 2013年8月10日 21:05 No.383729 返信

    凄いねぇ
    世界中で手を取り合って早急に実用化して欲しい

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    • No Name 2013年8月10日 23:15 No.383874 返信

      無理です。

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  7. No Name 2013年8月10日 22:15 No.383811 返信

    IPS関係予算を三分の一にした某政党の罪は重いな

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  8. No Name 2013年8月10日 22:36 No.383840 返信

    なんか日本勢以外の、ipsの新たな発見!的な記事ってあんま見かけないんだけど、
    米国とかどうなってるんだろう。もっと報道して欲しいな

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この記事にコメント
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