IFA 2013 に合わせ、攻めに攻めたソニー。注目が集まったプレスカンファレンスは、当初噂された情報や、リーク情報通りの製品だけでなく、次々と新製品が発表され、ソニーの意気込みを強く感じるものでした。
そうした製品の中核となるのが、スマートフォン Xperia Z1 。オーディオ&ビジュアル分野で長い歴史のあるソニーにとって、人と24時間寄り添うスマートフォンはまだまだ新しい領域。今回、ソニーモバイルコミュニケーションズで商品を統括する、シニアバイスプレジデントの田嶋知一氏に、ソニーのモバイル機器が目指す方向性について話を聞きました。
目指すのは1枚のガラスの板、表現したいのは「その向こうの世界」
田嶋氏:デザイン的には、最終的に1枚のインターフェイスの板を創っていきたいと思っています。だからできるだけ薄く、できるだけインターフェイスに集中できるようなデザインを目指しています。
1枚の板を目指すのは、スマートデバイスで今のGUIを使って、タッチ操作する場合、それがベストだからです。そう考えれば、お客さんにとって必要なのは、インターフェイクスをするディスプレイだけなはず。そこまで全部そぎ落としていこう、というのが理想です。
HTCさんやアップルさんもそうですけど、背面をメタルにしてバリューを出す方向でやっていますが、僕らはあくまでもガラスの天面・背面にこだわっていきたい。昔からうちのプランナーやデザイナーは、インフィニット(infinit、無限の)やガラスといったキーワードにすごく共感します。
このインフィニットなガラスの先に、クラウドのインフィニットなアプリやユーザーエクスペリエンスがある。そういう世界観というか、宗教観のようなもの、「その向こうに世界がある」みたいなものを表現したいと考えています。
今後、ボイスとかジェスチャーとか、目玉の位置だとか、新たなインターフェイスが登場した場合、次のフェーズに行きたいと思っています。
サムスンは安く量産できるが同じデザインしかできない
田嶋氏:Xperia Z1 では、メタルの部分にリングアンテナを置いています。iPhoneは途中にスリットを作って2つのアンテナを入れていますが、うちのエンジニアはその上を行き、昔のテレビに置いてあるようなリングアンテナを入れました。大変でしたが、 Xperia Z の進化版としてデザインをキープし、これしかないというものになりました。
一番簡単な商品の作り方は、裏面に風呂桶のようなプラスチックのカバーをつけて、中にアンテナゾーンを設けてフロント部分とサンドイッチにする、サムスンさんのやり方です。安くて量産性があってまとまりますが、あれだと同じデザインしかできてこない。いつも課題になるのがアンテナで、我々は常にアンテナをトリガーにデザインランゲージを正当化したいと思っています。
シンプルにするほどデザイナーもエンジニアもきついんですが、今回、両方ともすごく燃えてプロダクトが動き出しました。我々は、身体の延長、心の延長になるような商品を提供していきたいです。
Xperia Z1、 Xperia Z Ultraに加えて小型モデルも
田嶋氏:今、インダストリーとエンドユーザーがディスプレイサイズのスイートスポットを探っている状態です。Xperia Z1は5インチのフラッグシップですが、その上下に、常にその次を探るソナーを打つような商品を用意しなかればなりません。
当然、マーケットによってディスプレイサイズの需要が異なります。ただ、ユーザーエクスペリエンスとアプリ、コンテンツサービスは常に同じものが提供できて、インターフェイスと筐体の大きさの違いで製品が選べるような状況にしたいと思っています。Xperia Z Ultra があって、フラグシップのXperia Z1があって、当然その下も出てくるでしょうね。それはまた次の話かもしれませんが。
国内では、Xperia A が受け入れられました。その層がボリュームをとれるマーケットが日本にはあるし、欧州もたぶんそう。アジアは違うかもしれませんが、Xperia Aで日本の嗜好がわかったと言えます。ただ、Xperia Aのお客さんがスペックに注目する一番進んだお客かといえばそうではありません。5インチや5.2インチの需要がないか、というと全くそんなことはないと思います。
ソニーの発表は選択と集中。半年サイクルでフラグッシップ
田嶋氏:今回、Xperia ZとXperia Z1では、半年サイクルで製品を投入しました。アップルやサムスンの年1回のアプローチでなく、高回転で製品をお客に届けたい、という気持ちでいます。
また、今回はクアルコムのチップが変わるタイミングでした。クアルコムさんは強いメーカーのロードマップさえがあれば、必ず合わせてくれます。過去2年間、春に2チップを出して、秋それを1チップにしてコストを下げるサイクルを続けています。
今年のZとZ1 のように、半年サイクルでも、フラッグシップのタイミングがわかると、ソニー全体でそこに向けてほかの商品を出すリズムが作りやすくなります。これまでソニーはばらばらと商品を出していましたから。
CESで新製品発表、狙うは米国と中国
田嶋氏:今、ソニーができていないのは米国と中国です。この2つを取れば目標のシェア10%以上はいくはず。来年のCESでは、よい発表ができると思っています。
フラッグシップモデルについては、できるだけ変更がないような形でグローバルでは一本化してやっていきたいです。フラッグシップは開発費がかかりますが、そこはソニーがグローバルプレーヤーであるところを活かし、一桁違う台数を世界中で売って、ボリューム感を最大限に使っていきたいと思います。
最新技術は突っ走る、それをスマートフォンに
田嶋氏:ソニーでは、それぞれの製品カテゴリで常に最新の技術を追いかけていて、最新の技術をスマートフォンに入れていく、そのサイクルを作ろうとしています。ハイレゾとかデジタルノイズキャンセリングとか、オーディオ周りだけでもいろいろな技術があり、どんどん突っ走ってもらって、それをベストなタイミングでスマートフォンに取り込むと。
今、このサイクルがどんどん早くなっていると感じているところで、あっという間にスマートフォンに取り込まなければ、競争できません。製品カテゴリ毎のカニバライゼーション(市場シェアの食い合い)という考えは社内には一切ありません。長いソニーの歴史の中で、それをやったら他社に喰われるとよくわかっています。
ソニーはこれまでの50年間、オーディオビジュアルエンターテイメントという、1日の生活の1時間ぐらいのエクスペリエンスを提供してきましたが、スマートフォンを本格的にやってからというもの、お客の生活の24時間をサポートする必要が出てきました。今回、ソニーからいろいろな発表がありました。これはスマートフォンに入るだろうな、という技術は半年後、1年後に必ず入るでしょう。