プラズマをギュッと固める秘訣とは?核融合発電の実現へむけて
地球上に人工の太陽をつくる核融合炉。水素などの豊富な元素をもちいて莫大なエネルギーをえる夢の発電法ですが、実用化はいまだ遠い状況・・・。それでも、実現へ向けて研究は一歩一歩と進んでいます。
今回、東北大学の研究グループの成果も、核融合の安定化につながる大きな一歩となるでしょう。
LHD実験装置: 学術情報ネットワーク SINET4 より引用
蛍光灯=核融合炉?
夢のエネルギー、核融合炉。その原型はどこのご家庭にもある普通のモノ、と言ったら驚きでしょうか? そのモノとはズバリ蛍光灯です。
蛍光灯をプラズマパネルにかざすと・・・: 日本原子力研究機構のWebサイトより引用
蛍光灯の中を漂っている水銀原子に電流を当てると、水銀イオンと電子とへ分離します。この「イオン」と「電子」の集合体が、かの有名な “プラズマ” です。プラズマと聞いて青紫色の光を思い浮かべる方は多いでしょう。
プラズマ中でエネルギーを持ったイオンは、すぐ安定な状態へもどるため、余分なエネルギーを光として放出するのです。ただし、蛍光灯ではプラズマ発光そのものは利用しません。プラズマから放出された光(紫外線)を蛍光体に当てて、そこから出る光で照らしているのです。
このように、エネルギーを放出し続けるプラズマ。その “温度” は非常に高く、蛍光灯では1万℃にも達します。これほどの高温なのにガラスが溶けないのはなぜでしょうか? この “温度” とはイオンや電子が飛び回るスピードのことです。そして、1万℃とは電子の温度なのです。電子はガラスの原子よりも軽く数も少ないため、いくら1万℃でも影響しないのです。沸騰した水たった一滴をプールに落としても、なにも変わらないのと同じです。
高周波プラズマ: 東北大学 櫛引・飯塚研究室のサイトより引用
では、プラズマのもう一人の主役、イオンは蛍光灯の中でどうなっているかというと・・・。電子よりもずっと低い、100℃以下の温度なのです。電子より数千~数10万倍も重いイオンでは加速しづらいのがその理由です。実は、このイオン温度こそが核融合実現のキーポイントなのです。
蛍光灯では、発生したプラズマは放ったらかしで、消滅したり飛び散ったりします。では、プラズマを1箇所にギュッと集めて、もっと高温にすると何が起こるでしょうか? 反発し合っていたイオン(原子核)同士が強くぶつかるようになり、一つの原子核へと合体するのです。つまり核融合ですね。
ここで、蛍光灯の水銀ではなく、水素やリチウムのような軽い原子核を融合させると、エネルギーが発生します。しかし、そのハードルは低くはありません。水素の核融合で発電し続けるためには、数100,000,000(数億)℃という温度のイオンを、1cm3(角砂糖1個ほど)の中に数100,000,000,000,000(数百兆)個という超高密度に詰め込んで、1秒間保ち続ける必要があるのです。
プラズマをギュギュッと閉じ込めろ
プラズマを高密度かつ超高温に保ち続ける。この高いハードルを乗り越えるための方法は2つあります。慣性閉じ込め と 磁場閉じ込め です。
慣性閉じ込めは、例えば超高出力レーザーを四方八方から燃料へと打ち込む方法です。超高温・超高密度なプラズマを一瞬だけ実現し、それを何度も繰り返します。発生したプラズマが飛び散ってしまう前に、つまりは慣性で中心に閉じ込もっているうちに、1回の核融合&エネルギー発生を終わらせる発想です。物体がごく一瞬で蒸発するハイパワーレーザーを、髪の毛の太さ以下の高精度で、1秒間に何度も繰り返して出力する。そういった高性能なレーザーシステムの開発が必要です。
プラズマの閉じ込め方 慣性 or 磁場: 大阪大学レーザーエネルギー学研究センターのWebサイトより引用
もう一方の磁場閉じ込めは、磁場を張りめぐらせてプラズマをギュッと閉じ込めるシンプルな方法です。発想自体はシンプルでも、どのように磁場を張りめぐらせるか、その磁場をどうやって作り出すかは、むずかしい問題です。
どちらの方法とも一長一短があり、研究者たちが課題の解決を争っています。そんな磁場閉じこめの課題の一つとして、閉じ込めたはずのプラズマが予想よりもはるかに大きく飛び散ってしまう現象があります。
複雑怪奇なプラズマをシンプルに
プラズマとは、「プラスの電荷をもつイオン」と「マイナスの電荷をもつ電子」とが、様々なエネルギーや密度をもって影響しあう複雑な現象です。ただし、プラズマ内で起こっている現象を正確に測定することはカンタンではありません。プラズマがあちこちに飛び散る原因は、ハッキリとは分かっていなかったのです。
そこで、東北大学の金子氏・畠山氏らのグループは逆転の発想をしました。測定しにくいのなら、測定しやすいプラズマを作れば良いのです。飛び散りの原因として予想されていたのは、電子温度のグラデーション 。通常は高温部と低温部が複雑に入り混じったグラデーションですが、新規に開発された装置では単純なグラデーションとなっています。
電子温度のグラデーションのイメージ。あくまでイメージです。
実際のプラズマの分布を保証するものではありません。
この単純なグラデーションを精密に制御して実験をおこなったところ、新たな事実が判明しました。急激なグラデーションにすると、高周波の密度揺らぎのエネルギーが、低周波の密度揺らぎであるドリフト波へと与えられていたのです。このドリフト波、 プラズマを不安定にさせて飛び散らす要因の一つなのです。つまり、大もとの高周波の揺らぎを抑制することが重要であることが分かったのです。
プラズマの閉じ込め能力を向上させる手がかりとなる今回の成果で、また一歩、核融合発電の実現へと近づきました。ぜひとも生きている内に、核融合炉の電気でスマートフォンを充電してみたいものです。
【参考リンク】
・東北大学プレスリリース, 詳細資料 (pdf)
・論文: Physical Review Letters (Dynamics of Nonlinear Coupling between Electron-Temperature-Gradient Mode and Drift-Wave Mode in Linear Magnetized Plasmas)
・臨界プラズマ条件の一例:核融合反応と熱エネルギー (07-05-01-01) – ATOMICA -
・核融合の分かりやすい説明:日本原子力研究開発機構 “那珂博士の核融合入門”
・飛び散り現象を詳しく勉強したい方へ:プラズマ・核融合学会誌 「誰にでもわかるトーラスプラズマの輸送現象」
うん!わかんねぇ!
世界で主流の「磁場閉じ込め」は成功しても装置がばかデカ過ぎて実用性が・・・
それよりは、浜松ホトニクス、阪大、トヨタなどが開発中の「慣性閉じ込め」のレーザー核融合(爆縮高速点火)のほうが実用化が近い(といっても約20年後~)うえに、ロケットエンジンや車への応用もできるほど設備のコンパクト化が可能。
まったくのド素人ですがわかりやすかったです
ライターさんが増えてからこういう記事が多くなってきてて勉強になります。
でも、結局取り出せるのは熱エネルギーで、湯沸し発電なのは変わらないんでしょ?
どうにかならんもんかね。
それじゃだめなん?
エネルギーの変換効率が悪い
確かに「最後は湯を沸かしてタービンを回す」と言われると
とてもローテクな印象を受けますよね
ただ、現時点ではその湯沸かしこそが
比較的カンタンな割に効率も高いという最適解でもあります。
いくら高効率でも、装置が高価すぎて赤字になっては無意味ですからね。
一方で、未来の技術としては、
プラズマの流れをダイレクトに電気へ変換する “MHD” という技術も研究されてます。
高い効率で、現状では使い切れていない超高温も利用できる方法なので、
核融合と合わせて実現して欲しいですね。
それは面白そう
いつかそういったネタも記事にしてもらえると嬉しいです(余裕あるときじゃないと読み切れないくらい難しいのだろうけど)
直接電気取り出せる技術もあるんだね。
そうなると革新的で良いなぁ。
水という極めて扱いやすい物質で、しかも蒸留水という工業的においしい副産物も得られるし、ぶっちゃけ言うことないんだよね>蒸気タービン方式
プラズマそのものを利用するのは電磁力学のブレイクスルーがもうちょっといる印象
ガスタービンでの発電は湯沸しないよ
後、原子炉の一部にはヘリウムや二酸化炭素を冷却材とするものがある(これも一種のガスタービンだが)
原発も放射線を直接電気に変換するとかできればいいんだが
現在研究が進められているのはD-T反応(重水素-三重水素)。これは核融合に必要な温度が比較的低い。
その次にD-D反応があって、その次にD-He3反応がある。
このD-He3反応は荷電粒子が高速で放出されるので、湯沸かし方式ではなく直接電気エネルギーとして取り出すことができる。ただしHe3が地球では希少なので、まだまだ開発途上。
充電できる頃にはgoogle glassがコンタクトレンズサイズになっている予感
水銀も核融合できなかったっけと思ったけど鉄より重いのはエネルギーを吸収するのを忘れてた
プラズマを集めればイオンの高温度化によって核融合ができるんだけど、何故か集められないでばらばらになっちゃう。どうやらそれは高周波グラデーションのときに発生するドリフト波ってやつのせいなんで、このグラデーションの高周波のときの制御が大切らしいぜ
ってことなのかな?核融合興味あるけどまったく門外漢なので面白いです
魔法科高校の劣等生の論文コンペで、第一高校が取り組んだ課題がこれと似たやつだったな。
ほうほう。ふむふむ。ほう?はて?
何のことやらさっぱりだが、すごい。
すごいんだろ?
すごいさ。
バッカおめぇこんなのもわかんねーのかよ
ほら、これはアレだ、なんかスゴイやつだ
うん
実現するわけない技術に無駄に金つぎ込んでんのは日本だけ。
未来のエネルギーは風力・太陽光等の自然エネルギー以外ありえないのに
核融合や原子力ばっかりやっているせいで、日本は欧米から大きく遅れをとっている。
と無知が叫んでおります
日本こそCfaでモンスーンだから風力や太陽光はつかえない。
ヨーロッパはCfbかCsで偏西風だから効果的だが。
太陽光パネルの研究開発は日本もかなり頑張っている方だと思うんだが?
まるで欧米が核融合を捨ててるみたいな言い草だなw
太陽光と風力だけでエネルギーをまかないきれると本気で思ってるの?
ああ、頭かわいそうな人なんだな。
最大の核融合炉実験施設がヨーロッパに建造されて、アメリカもこの計画に参加してるんだがね。
放射脳が言う自然エネルギーは、供給の安定性に欠けるから、補助に使えても主力にならないというのに・・・。
原発廃止のドイツがエライ目にあってるのは無視?
太陽光パネル技術を中国人がパクって目も当てられない状況とか。
次の選挙じゃ緑の党が惨敗するらしいですよ。
ホントのこと言えば自然エネルギーはエネルギー密度が薄すぎて効率が悪すぎ、場所をやたら食うので日本やヨーロッパには向いてないんですよ。
週1日だけなら働きますけど~ の稼働率15%クズ再生エネの太陽光&風力 がなんだって?
バックアップの火力発電大量新設(年間数千人が死亡予定)がなければ、毎日がブラックアウト(汗)
基礎の解説がコンパクトかつ分かりやすくて素晴らしいですね。
圧縮!圧縮!プラズマを圧縮!