ジャン「また会おうな――親友」エレン「また会おうぜ――親友」
- 1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/20(金) 23:18:53 ID:zz72S7Ic
- 注 ネタバレ 捏造 if展開
貸切の店。
騒ぐは仲間達。
残酷な世界で、今も尚、生きている腐れ縁の同期達。
オレの隣に座るのは。
死に急ぎ野郎。
「……何で最後の晩餐で、隣にお前なんだかね」
「そりゃお前が寂しそうにしてるからだろ」
「馴れ合うのは主義じゃねぇだけだ」
「構ってやってんだから感謝しろよ」
「誰が感謝するか。チェンジだチェンジ」
「誰に」
「決まってるだろ」
オレは睨みつける。
ヤツは笑った。
「ミカサか」
「ミカサ以外にいねぇだろ」
「お前も懲りねぇな」
「懲りてたら、こんな場所にいねぇさ」
「スッパリと振られたクセに」
グラスを持ち上げ、喉を潤す。
苦味を飲み干すように。 - 2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/20(金) 23:28:44 ID:zz72S7Ic
- 「そのミカサを振った、てめぇが言うんじゃねぇよ」
「付き合った方が良かったか」
「オレに訊くなよ」
「ジャンが適任だろ」
「最悪だな」
「最低なのも自覚してる」
「……泣いてたぞ」
「知ってるよ」
「後悔は」
「山ほど」
「だったら付き合えよ」
「無理だって。オレ達は家族なんだから」
「そりゃ本心か」
「……」
ヤツは泣きそうな面で微笑んだ。巨人の力を体内に宿す青年は。どうしようもないだろう、とばかりに。
「オレは化物だからな。結ばれても、アイツを幸せにしてやれない」
「そんなのミカサが気にするタマかよ」
「オレが気にするんだよ。そもそも……この件については嫌ってほど殴り合っただろお前と」
「涙と鼻水でぐちゃぐちゃだったよな。マジでウケるわ」
「お前もだったろうが」
オレ達は殴りあった。素手と素手で、ガキだった頃の時間を取り戻すように、青春の華を咲かせた。
惚れた女の幸福を祈って。
惚れた女の幸福を願って。
だから知っている。オレが振られたのも、死に急ぎ野郎が振るしか無かったのも。一から十まで、理由と感情をぶつけ合ったから。 - 3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/20(金) 23:40:19 ID:zz72S7Ic
- 「それでも言わせろよ」
「やだよ。オレだって初恋だったんだから」
「オレだって初恋だったさ」
「ミカサもな」
「ミカサもだ」
「……報われねぇな」
「お前がヘタレなせいでな」
睨み合う。まるで鏡合わせのように、そこには似た様な心境を表した面があった。
「お前はまだミカサを諦めてないんだろ」
「オレはミカサ一筋だよ」
「だったら、お前が幸せにしてやれよ」
「それが振られたヤツに言う台詞かよ」
「振ったヤツの台詞で、アイツの大切な家族からの台詞でもあるな」
「最低だな」
「最悪だな」
「一回ぐらい死んどけ、死に急ぎ野郎」
「オレが死んだら困るクセに、この馬面団長補佐様は」
「うるせぇよ。成りたくてなった訳じゃねぇ」
「オレだって巨人になりたくてなった訳じゃねぇよ」
まるで予定調和のように、オレ達は軽口を叩き合う。
いつからだろう。いつからオレ達は、こんな風に会話をする仲になっていたか。ムズ痒くもあり、苦々しい気持ちにもなる。
それだけの長い年月が経て。それだけの腐れ縁の絆を結んでしまった。 - 4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/20(金) 23:52:08 ID:zz72S7Ic
- 「やれやれだな」
「溜息を付くと、幸せが逃げるらしいぜ」
「溜息を付いてなくても、ミカサは構ってくれねぇけどな」
「お前にとって幸せはミカサかよ」
「惚れた女が笑ってれば、幸せになれんのが男だろ」
「違いない。オレもミカサが笑ってたら幸せだ」
「家族としてか?」
オレは嫌味ったらしく訊き、ヤツは未練たらしく零した。
「……半々で」
「だったら半殺しで許してやるよ」
「ははっ。寛大だな」
仕方ねぇだろう。オレが惚れた女は、未だにお前を想ってるんだよ。
だから死なれると困るんだ。 - 5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/20(金) 23:55:48 ID:zz72S7Ic
- 「てめぇが死ぬと、惚れた女が笑わなくなる」
「お前が死んでも、アイツは泣くだろ」
「当たり前だろ」
「そうだな」
オレ達が惚れた女は。オレ達が初めて愛を想った女は。
優しい、優しい、泣き虫な女の子だ。ちっとばかし誤解を招きやすいが、それは決して嘘じゃない。
「だから死ぬなよ、死に急ぎ野郎」
「お前こそ死ぬなよ、馬面団長補佐様」
「オレが死ぬと、惚れた女が泣くらしいからな」
「オレが死ぬと、惚れた女が笑わなくなるらしいしな」
「責任重大だな」
「重荷だと思うか?」
「まさか。それこそ冗談だろう」
「まったくだ。惚れた女の想いぐらい、この肩で背負えなきゃ団長補佐やってねぇよ」
グラスを掲げる。氷が揺れて、硬質な音を鳴らす。
それを掻き消すように、二つのグラスを打ち鳴らした。残っていた紺色の液体を、浴びる様に喉へと流し込む。 - 7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 00:04:24 ID:mXBcsBX2
- 「辛気臭い会話は止めて、オレ達も向こうに混ざろうぜ」
「だな。向こうはドンチャン騒ぎだ」
振り向く。そこには。
ミカサ、アルミン、サシャ、コニー、クリスタ、ユミル。
昔からの腐れ縁のヤツらが揃っていた。誰も彼もが、これから先に待ち構える絶望を知っていて、だからこそこの貴重な一時を。
無駄にしない為に、無為にしない為に。騒ぎ楽しんでいた。
笑顔、笑顔、笑顔。
オレ達が愛した女も、控えめながらも笑っている。この世界は残酷だが、それでも美しい。
「一応、言っとく」
「あん?なんだよ」
「もしオレが本当に死に急いじまったら、ミカサを頼む」
「お断りだ」
「なんだよ、ソレ」
「てめぇの頼みなんかなくても、オレが面倒見るに決まってる」
「そっか」
「そうだ」
「振られたのにな」
「振ったくせにな」
「最悪で」
「最低だ」
オレ達は立ち上がり、笑顔の輪に加わった。
それが最後。
死に急ぎ野郎……恋敵との私事を交えた最後の会話だった。 - 8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 00:13:10 ID:mXBcsBX2
- 5日後に迫った最終決戦。
人類と巨人。相容れない二つの勢力が、栄光と繁栄を懸けて命を喰らい合う。その最後の戦いで。
死に急ぎ野郎は、消息不明になり。帰還する事は無かったのだった。
今にして思えば。
ヤツは見通していたのかもしれない。こういう結末になるのだと言う事を。
戦場の奥深くに、単身で突進していった死に急ぎ野郎は、声に出さずオレにだけ語り掛けていたのだ。唇の動きだけで。
ま、た、な。
別れの挨拶。
さようなら、ではなく。またな、と告げたアイツは、戻ってくる気はあったのだろうか。
問い質したくても、当の本人に届く事は無く。
そんな「いつか」なんて訪れることも無く。
人類は巨人の支配から脱し。
全ては過去になった。
完全な幸福は無く。
幸せと不幸せ。
半々の。
未来。 - 9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 00:20:40 ID:mXBcsBX2
- 貸切の店。
独りきりの無音の空間。
平穏な世界で、今も尚、待ち焦がれているウダツの上がらない男が独り。
隣席には誰もいない。今はまだ。
靴音が鳴る。
近づいてくる。店の外から。
約束の時間だ。
まるで停まっていた時間が進み出すように、鼓動が跳ねた。
「いらっしゃい。お一人様で?」
「いつからマスターになったんだよ」
「生憎と店員すらいなくてな。真似事で迎えてやってんだ。感謝しやがれ」
「ありがとよ」
「それで、一人なのか」
「さっきまで、連れ合いがいたけどな。あっちもあっちで大事な用事だとさ」
空白だった隣席に、男が腰掛ける。
いつかのように。
いつものように。
終わった筈の過去が、焼き直しを開始した。
「マスター、酒」
「欲しけりゃ勝手に取れ。目の前に用意してやってるだろ」
「無愛想だな」
「オレから愛なんて想われたいか」
「悪い。オレの失言だった」
「分かればいいんだよ」
用意されていたグラスを掴み、貴重な氷が硬質な音と共に投入される。
適当な酒を注ぎ、ヤツの準備が完了する。オレもそれに合わせて、自分の準備を完了させた。 - 10 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 00:30:43 ID:mXBcsBX2
- 乾杯。グラスとグラスを打ち鳴らす。
「ただいま」
「遅すぎる。待ち草臥れたろうが」
「へぇ。待っててくれたのかよ」
「前言撤回だ」
「久々の再会だってのに、つれねぇな」
死に急ぎ野郎は苦笑した。オレは荒く鼻息を吹く。
「釣られてやっただろうが。突然呼び出しやがって。性質の悪い悪戯かと疑ったぞ」
「それでも信じてくれたんだろ」
「裏からの直通ルートなんて知ってんのは、限られてるからな。それこそオレの同期と、直属の上司だけだ」
「ジャンにだけ伝えたい事があったからさ」
オレにだけ。それは……どんな用件だろうか。薄々は察しが付いているが。それでも……その言い方は卑怯だ。
「……お前、変わったな。昔は情に訴えかけるなんて、しなかったクセに」
「変わってねぇよ。ただ……少しだけ大人になっただけだ」
「馬鹿は一度死なないと直らないらしいが、本当だったんだな」
「ははっ。ジャンは相変わらずだな。全然変わってねぇよ」
安心したと笑うヤツに、オレは唇を斜に曲げる。
「変わったよ。あれから何年経ったと思ってる」
「まだ片手で足りるだろ。ギリギリ」
「もう片手を超えようとしてんだよ」
長かった。どれだけ待ち焦がれていたと思ってるのか。
この日を、どれだけ待ちわびていたと思っていやがるのか。 - 11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 00:33:54 ID:mXBcsBX2
- 「幸せだったか」
「半々だ」
「後悔は」
「それも半々だな」
「そっか。オレと同じだな」
残酷な世界は、平穏な世界になった。
だけど。幸せも後悔も、半々のどっち付かずに未来を歩んでいる。人生ってのはままならない。
「てめぇは幸せだったか」
「半々かな」
「後悔は」
「それも半々だよ」
「そうかい。だったら半殺しで済ませてやる」
「物騒だな」
「誰のせいだと思ってやがる」
オレ達は変わった。それでも昔のままで、軽口を叩き合えている。
変わって、だけど変わっていない部分も、確かにあるんだ。オレ達の関係が、変わっていないように。
ああ……嫌だね。歳は取りたくない。
「今まで何処で、何をしてたんだ」
「そういう契約だったんだ」
「契約?」
「そう。オレと巨人側の勢力との」
「これ以上、人類に危害を加えない為のか」
オレは空になったグラスに酒を注ぐ。ついでにもう一つのグラスにも注いでやる。 - 16 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 21:23:11 ID:mXBcsBX2
- 「誰も知らない、平穏な世界の為の犠牲か」
「そうかな」
「そうだろ」
「かもな」
懐から葉巻を取り出した。火を点け紫煙をくゆらせる。胸の奥底から唸りだす苛立ちを誤魔化すように。
「それでも……オレはオレが犠牲になったなんて、思ってねぇよ」
「何で」
「お前が。お前達が生きてる」
「勝手な言い草だ。それを自己犠牲って言うんだよ」
吐き捨てる。吸った煙と共に。
「それでもお前がオレと同じ立場なら、絶対に同じ事をしたと思うぜ」
「偉く自信満々だな」
「だってさ……惚れた女や、大切な人達が生きているだけで、幸せになれるだろ」
「そうかもな」
「だから、お前もそうするだろ」
「クソッタレな言い分だが、認めてやるよ」
「最悪で」
「最低だな」
葉巻の箱を隣席へと滑らせた。受け取り一本取り出すと、ヤツも火を点ける。
二本分の紫煙で、視界が曇った。 - 17 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 21:31:54 ID:mXBcsBX2
- 「案外、アイツらも話せるやつだぜ」
「巨人を一匹残らず駆逐してやると息巻いてたヤツと、同一人物とは思えねぇな」
「だからこそオレがいるんだ」
「もう人類に危害を加えさせない為にか」
「詳しくは言えない。ただ、最後の決戦で。オレはヤツらの王を倒した」
「それで」
「オレが王にコメント一覧
-
- 2013年09月22日 19:22
- ( ^ω^)
-
- 2013年09月22日 19:26
- 酷いオ○ヌーを見た
-
- 2013年09月22日 19:28
- なんか雰囲気だそうとして失敗してる感じ
いちいちくどくて読む気なくす
-
- 2013年09月22日 19:39
- なんか違う
-
- 2013年09月22日 19:45
- ジャンがイケメンすぎてもう…
-
- 2013年09月22日 19:48
- これじゃない感…。
-
- 2013年09月22日 19:51
- もう少しコンパクトに纏めた方がいいと思うけど悪くはなかった
-
- 2013年09月22日 19:53
- き、嫌いじゃ無い……かな?
-
- 2013年09月22日 20:00
- ジャンはいい人だよ。
-
- 2013年09月22日 20:05
- ホモォ
-
- 2013年09月22日 20:11
- 何げに同郷組が生き残っている感じ
-
- 2013年09月22日 20:39
- 不評の方がやや多い?
個人的にはこのハッピーエンドとは言い難いけど幸せでもある感じがいいと思った
-
- 2013年09月22日 20:49
- いいんじゃね?
-
- 2013年09月22日 20:53
- 嫌いじゃない。
もうちょっとさっぱりした感じでもよかったけど、これはこれでいいと思うよ
-
- 2013年09月22日 20:53
- 悪くないけどくどい
-
- 2013年09月22日 21:11
- 私は好きだぞ
-
- 2013年09月22日 21:21
- ssで初めて泣いたわ(/ω\)
-
- 2013年09月22日 22:15
- ジャン×ミカサをうまく描いた作品だった。
ミカサがエレンを選ばなかった(選べなかった?)理由も、納得しやすいので、
いいオチだった、
-
- 2013年09月22日 22:19
- 自己陶酔的な
-
- 2013年09月22日 22:29
- ^^;
-
- 2013年09月22日 22:51
-
涙が止まらない
-
- 2013年09月22日 23:50
- (´;ω;`)ブワッ
-
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