2013年09月28日15:45
不定期映画レビュー第23回。
実は10月いっぱいくらいまで一事にかかりっきりになってるんで、あんまり映画観れないんですけどこれは書きたかった。語りたくて仕方なかったので。
今回はこれ
『地獄でなぜ悪い』
監督:園子温
脚本:園子温
主演:國村隼、堤真一、長谷川博己
2013年(というか今日)公開
http://play-in-hell.com/
評価
★★★★★★★★★★(10/10)
●あらすじ
十年前。暴力団組織・武藤組の組長である武藤大三の妻・しずえが敵対組織・池上組のヒットマン四人を刺殺したために逮捕された。武藤の娘・ミツコは歯磨き粉のCMで人気を博した子役だったが、事件の影響で子役としての道も潰えてしまう。
そして現在。しずえの釈放が迫る中、武藤は娘・ミツコを主演に据えた映画を撮影することを考えるが計画は難航。河上組との対立も悪化し、問題ばかりが増えていく中、子分がとある提案をする。
「河上組への殴りこみを映画にして、ミツコちゃんを主演にしちまえばいいんじゃないすか!?」
武藤組、河上組、ミツコ、平凡な青年・公治、自主映画制作集団ファックボンバーズ。
様々な人間が集まり、カメラを構え、刀を構え、殺し合いと映画制作の同時進行という奇妙な計画が始まる。
●レビュー
僕が思うに、クリエイターとか創作者ってやつは概してどこか頭がおかしいものである。
当たり前だ。文字、絵、映像に音楽と方法は様々だが、彼らは現実に存在しない虚構を見て、それを現実に作り上げる。そんな行為を好き好んでやるやつらを「おかしい」と言わなければ、何をもって「おかしい」と表現すればいいやらわかったもんじゃない。(いわゆる「でもしか」でその職につく人間のことは知らないが)
多くの場合、その動力の根源は偏執的で狂気的な愛である。ごく一部の例外はあるだろうが、小説家は小説が好きだし、映画監督は映画が好きだし、漫画家は漫画が好きだし、ゲームクリエイターはゲームが好きだ。だから、しばしば彼らはその愛自体を作品に込める。
マーティン・スコセッシは『ヒューゴの不思議な発明』を撮ったし、ジュゼッペ・トルナトーレは『ニュー・シネマ・パラダイス』を撮った。佐藤友哉は『1000の小説とバックベアード』を書いたし、スティーブン・キングは『書くことについて』を著した。セガは『セガガガ』を作ったし、最近の漫画家を描いた漫画については・・・もう言うまでもないだろう。
この映画は、園子温監督の映画愛を込めた映画だ。
それも、「映画のためなら死ねる」という狂気的なまでの映画愛である。
ストーリーはあまりにも荒唐無稽だ。
武藤組、河上組、武藤組組長の娘・ミツコ、不幸な青年・公治、自主映画制作集団ファックボンバーズ。
それらが一丸となって映画を作る。
ただし、武藤組と河上組は殺し合いもする。
園節ともいうべき独特のユーモアを伴うセンスが全体に満ちているため、これらのエッセンスは奇妙な調和を保っているが、詰め込む要素からやることまで何もかも滅茶苦茶である。
だが、登場人物たちの根幹にあるものは共通している。
それは愛である。あるいは何かを好きな気持ちだ。
この物語において、登場人物たちはみな何かを愛していて、それによって行動する。
武藤は映画を贈ろうとしている妻を。河上はミツコを。
ミツコは女優という夢を。公治はミツコを。
自主映画制作集団ファックボンバーズは映画を。
それぞれが文字通り「死ぬほど」愛している。
ファックボンバーズの監督である青年・平田は言う。
「俺は一本の傑作映画のためなら、死んでもいい」
かくして35mmフィルムは回り、殺し合いの幕は上がる。
弾丸と剣先が宙を舞い、血風と硝煙が空気を濁らせ、カメラは地獄をフィルムに定着させる。
そんな地獄においても、登場人物は誰一人として表情を曇らせない。
男たちは命の散らし合いをし、青年たちは映画撮影に熱狂し、狂ったように声を上げる。
そこには血飛沫が散り、首が吹き飛び、手足がいくらでも転がっている。
けれど地獄はどこまでも陽気にイカれていて、僕らに腹を抱えるような笑いを提供してくれる。
みな好きで死んでいるのだから、僕らはそれを悲惨で陰惨だなんて思う必要はない。
いかに悪趣味で狂ったシーンであろうと笑えばいいのである。
何かを熱狂的に好きでいるというのは、人から見れば時に地獄だ。
その熱を持続させるのは難しいし、当然冷めてしまう人もいる。
あるいは、それを一方的に茶化し、軽蔑し、哀れむ人もいる。
しかし彼らは言うだろう。
あるいは僕も言うかもしれない。
そして、これこそが映画制作という「地獄」に20年以上身を置いてきた園監督の言葉だろう。
すなわち。
「地獄でなぜ悪い」
と。
この映画には異常なまでに暴力が満ちている。
そういった描写に眉をしかめる人がいることも知っている。
それでも、この映画は狂気的なまでに何かが好きなやつらのひたむきな姿を描いた映画である。
時折入る、深作欣二やジョン・ウーをはじめとする名映画監督へのリスペクトも憎めない。
だからこそ、僕はこの映画に満点をつけてやりたい。
今日から上映開始なので、是非ともオススメである。
(きっと暴力描写や残酷描写に眉をしかめるような人はこのブログを見ていないだろうから。)
この記事へのコメント
1. Posted by カオスな名無しさん 2013年09月28日 18:30 ID:.YSekB6OO
ごめんなさい、グロいの苦手です。木曜の怪談レベルでアウト。
後なんかトロピックサンダー思い出した。
後なんかトロピックサンダー思い出した。