幼馴染「お邪魔するよー」男「お邪魔する前に言えないのか」
- 1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 08:52:35 ID:lNrpVbmg
- …ガチャッ
幼馴染「お邪魔するよー」
男「お邪魔する前に言えないのか」
幼馴染「だって男が変なDVDとか観てたらいけないし」
男「だからこそだろ」
幼馴染「観てたら怒らなきゃいけないし」
男「それはそんな物を観るくらいなら、幼馴染が慰めてくれるという意味にとっていいのかな」
幼馴染「付き合ってもないのに?」
男「付き合ってもないから、俺が何を観ようと自由なんじゃないでしょうか」
幼馴染「そんな勝手な理屈は通りません!」 - 2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 08:53:40 ID:lNrpVbmg
- 男「はぁ…」
幼馴染「溜息つくと幸せが逃げるよ?」
男「で、何の用?」
幼馴染「私がここに来るのに理由がいるんですか」
男「つまり毎度ながら、暇だったと」
幼馴染「さすが男!私の事は何でも解るんだね!」
男「だいたい週に五日は来てるもんな」
幼馴染「この部屋、適度に散らかってて和むのよねー」
男「お前が来ないならもっと散らかしてるんだけどな」
幼馴染「ほら、私が来た方がいいんじゃない」 - 3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 08:54:28 ID:lNrpVbmg
- 男「はいはい…まあ座れよ、茶でも取ってくるから」
幼馴染「お構いなく、さっき下でジュース頂いてから上がったから」
男「部屋だけじゃなく冷蔵庫まで勝手に開けるか」
幼馴染「失礼だなぁ、おばさんが出してくれたんだよ」
男「で、俺のは?」
幼馴染「察しが悪いね、あとコップ2杯分しかなかったから下で飲んだんだよ」
男「2杯分ありゃ俺のもあるだろ」
幼馴染「私とおばさんで美味しく頂きました」
男「…もういいわ」 - 4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 08:54:59 ID:lNrpVbmg
- 幼馴染「そのかわり、ね?」
男「そのかわり?」
幼馴染「おばさんがこれを男に渡せって、渡せば解るからって言ってたけど」
男「どれ?」
幼馴染「じゃーん!折り畳みノコギリー」
男「今の旧ドラえもん風だったよね」
幼馴染「鋭い!ノコギリだけに!」
男「まあ、オカンの言わんとする事は解ったわ…」
幼馴染「解るんだ」 - 5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 08:55:41 ID:lNrpVbmg
- 男「うーん、夏の間はずっと逃げてたからなー」
幼馴染「何から?」
男「無償の重労働から」
幼馴染「ノコギリを使う重労働ですか」
男「庭木を切れって、ずっと言われてんだよ」
幼馴染「いいじゃん!せっかく暇なんだし、やろうやろう!」
男「なんでノリノリなんだよ。手伝ってくれるのか?」
幼馴染「見ててあげる!」
男「いや、手伝えよ」
幼馴染「応援してあげる!」
男「意地でも手伝わせるからな」 - 6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 08:56:28 ID:lNrpVbmg
…男の家の庭
幼馴染「ここの庭、広いよねー」
男「田舎だからな」
幼馴染「でもウチ、狭いよ?」
男「お前んちで普通だろ、ウチが広すぎるんだ。元農家だったから」- 7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 08:57:07 ID:lNrpVbmg
- 幼馴染「どれ切るの?」
男「まず一番にって言われてるのは、この桜だな」
幼馴染「大きいねー」
男「脚立だけじゃ無理だな、登らないと」
幼馴染「昔っから桜切る馬鹿って言うよ?」
男「桜は切り口を自己治癒する力が弱いんだ。そこから幹が腐りやすい」
幼馴染「だめじゃん」 - 8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 08:57:37 ID:lNrpVbmg
- 男「でも剪定が要らないってわけじゃないし、切り口を殺菌剤で保護してあげれば大丈夫なんだ」
幼馴染「男、詳しいね?」
男「高1から夏冬春の長期休みには、ツレの親父さんがしてる造園屋さんでバイトしてるからな」
幼馴染「そっか、してたねー。でもそれなら家の庭木も早くしてあげればよかったのに」
男「対価の無い労働って、気が進まないもんだよ。対価のある労働で同じ事をしてるから尚更な」
幼馴染「そんなにバイト代いいの?」
男「建設業のバイトって、大変だけど実入りはいいんだぜ」 - 9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 08:58:14 ID:lNrpVbmg
- 幼馴染「どうりで。あんまりそれに精を出すから、夏休みも平日は私の事なんか放ったらかしだったもんね」
男「平日に必ずお前を構わなきゃいけない理由もないしな」
幼馴染「…むかっ」
男「さて…まずは脚立で届くところから捌くか」
幼馴染「………」
男「幼馴染、脚立の足下支えててくれよ」
幼馴染「ふーんだ」
男「おーい、応援してくれるんじゃねえのかよ」
幼馴染「落ちろ」 - 10 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 08:58:51 ID:lNrpVbmg
- 男「拗ねるなよ…まあいいか。とりあえずあちこちに天狗巣病が出てるなー、切り取らないと」
幼馴染(…どーせ、私よりお金なんでしょ)
ギコギコ…
男「下からノコを入れて、そのあと上から…」
幼馴染(いくら付き合ってないって言っても、それは男がハッキリしないからなのに…)
男「殺菌剤のペースト塗って…と」
ペタペタ…
幼馴染(そりゃ、私だってハッキリしてないけど…) - 11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 08:59:24 ID:lNrpVbmg
- 男「こっちにも発症してるし、荒れ放題…そりゃ花咲かないわけだわ」
ギコギコ…バサッ
幼馴染(こないだだって、黙ってクラスの友達とグループで遊びに行くんだもん)
男「いつからこの桜が咲いたの見てないかなー」
ガサガサ…
幼馴染(女の子が一緒だったのだって、知ってるんだから)
男「十年…くらいかな。古い木だもんなー」
ペタペタ
幼馴染(男の、ばーか) - 12 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 08:59:59 ID:lNrpVbmg
- 男「剪定したら来年は咲くかな…。おっと…殺菌剤落とすとこだった」
フラッ…
幼馴染「あ…!男、危ない!脚立が…!」
男「うわっ…!?」
幼馴染「男っ!」
???『危ない!』
ガシャーン!カラカラ… - 13 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 09:00:34 ID:lNrpVbmg
- 男「痛てて…足打ったな…」
幼馴染「男!大丈夫…!?」
???『大丈夫ですか?』
男「折れたりはしてなさそう…え?」
幼馴染(…誰、この人)
???『ごめんなさい、頭を打たないように支えるので精一杯でした』
男「あ、ありがとう…あの、どちら様でしょうか」
???『…サクラ、と申します』
男「サクラ…さん、えっと…いつの間にこの木の下に」
サクラ『ずっと、いました』 - 14 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 09:01:15 ID:lNrpVbmg
- 幼馴染「そんなわけ無いよ、誰もいなかった…」
男(だよな…俺も見てない)
サクラ『信じて頂けないかもしれませんが、私はこの桜の精…というのが相応しいかわかりませんが』
男「桜の精…だって?そんな…」
幼馴染(綺麗な人…桜色の絣袴なんて今時着てる人いないし…)
サクラ『驚かせてごめんなさい。本当に久しぶりに枝を切ってもらっていたから、ずっと見ていたんです』
男(…信じられない…けど、信じなきゃ説明がつかないタイミングだった) - 15 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 09:01:53 ID:lNrpVbmg
- 幼馴染「と、とにかく!もう男を離していいから!」
サクラ『あら、ごめんなさい…抱えたままでしたね』
男「でも本当に助かったよ、ありがとう。誰かさんが脚立持ってくれないから…」
幼馴染「…むっ」
サクラ『歩けますか?』
男「歩けるけど少し痛くて力が入らない…もう今日は高いところには上がれないな」
幼馴染「…悪かったわよ」
男「サクラさんがいなかったら、まじでアタマ打ってたぜ…」
サクラ『ふふ…サクラと呼び捨てにして頂いて結構ですわ』
男「ああ…なんか照れるけど」 - 16 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 09:02:27 ID:lNrpVbmg
- サクラ『照れる必要なんてありません、貴方が産まれた時から知ってますもの』
男「そっか…桜の精だっていうなら、そうだよな…」
幼馴染「………」
男「せっかく現れたんだから、お礼もかねて家に上がってお茶でも出すよ」
サクラ『ありがとうございます。…でも、それはできません。私はこの木からあまり離れられないので』
男「そうなのか…残念だな」
幼馴染「なにナンパしようとしてんのよ、節操のない」
男「そんなつもりじゃねーよ」 - 17 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 09:02:59 ID:lNrpVbmg
- 幼馴染「…サクラさん、男を助けてくれてありがとう。でももう大丈夫だから」
サクラ『そうですね、では消えます』
男「幼馴染、感じ悪りいぞ」
幼馴染「ふんっ」
男「あの、足が直ったら平日でも少しずつ続き切るから。…また出てきてくれるかな?」
サクラ『はい、せっかく私を知って頂いたんですから』
男「うん、じゃあまた」 - 18 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 09:03:34 ID:lNrpVbmg
- サクラ『では…幼馴染さん、お邪魔してごめんなさいね…』
幼馴染「なんで私に言うのよ…って、本当に消えた!」
男「今、スーッと消えたよな…まじで桜の精なんだ…」
幼馴染「信じられない…けど、本当みたいだね…」
男「…綺麗…だったな…」
幼馴染「何よ、やっぱりナンパしようとしてたんじゃないの?」
男「ちち、ちげーし」
幼馴染「もう私、帰る。…すぐにでもサクラさん呼んだら?ばーか」
男「なんだよ、さっきから感じ悪りぃな…」
幼馴染「ばいばーい」 - 19 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 09:04:18 ID:lNrpVbmg
…翌朝
幼馴染「おはよー」
男「おぅ、すぐ行くわ」
幼馴染「いつも用意遅いなー、また遅刻ギリギリになるよ」
男「じゃあ先に行けよ」
幼馴染「いやでーす」
男「なんだよそれ…もう朝メシいいや、行ってきまーす」
ガチャッ、…バタン- 20 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 09:05:02 ID:lNrpVbmg
- 幼馴染「…大丈夫?」
男「何が?」
幼馴染「その…足、大丈夫なのかなって」
男「ああ…ちょっと痛むけど」
幼馴染「…ごめん、昨日は」
男「あ?…いいよ、俺が無理な体勢したのが悪いんだ」
幼馴染「でも、脚立支えなかったから」
男「まあ、すぐに治るよ。サクラのおかげで頭は打たなかったしな」
幼馴染「覚えてるんだ、やっぱり夢や幻じゃないんだね…」
男「…みたいだな」 - 21 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/27(金) 09:05:32 ID:lNrpVbmg
- 幼馴染「よかったね」
男「何がだよ?」
幼馴染「庭先にあんな綺麗な人がいるんだもん、さぞ嬉しいんでしょ」
男「なんかつっかかるなー、嫉妬してんのか?」
幼馴染「なんで桜の木に嫉妬しなきゃいけないのよ、ばーか」
男「…そんなに機嫌悪いなら無理に一緒に行かなくてもいいのに」
幼馴染「ふんっコメント一覧
-
- 2013年10月04日 20:17
- (σ・∀・)σ
-
- 2013年10月04日 20:33
- 乙 よかったよ
-
- 2013年10月04日 21:27
- イイハナシダナー
いや、マジでこういう話好きだよ
-
- 2013年10月04日 21:43
- 良い話だった
-
- 2013年10月04日 21:53
- 割りとまじで泣きそう
-
- 2013年10月04日 21:56
- うるっときた
-
- 2013年10月04日 22:15
- めっちゃ綺麗でよかった
-
- 2013年10月04日 22:19
- ( ;∀;) イイハナシダナー目がウルっとしたゆ
-
- 2013年10月04日 22:21
- ( ;∀;) イイハナシダナー目がウルっとしたよ
-
- 2013年10月04日 22:26
- 良い
-
- 2013年10月04日 22:29
- すごいなぁ
読ませる文だよほんと
-
- 2013年10月04日 22:29
- 素晴らしいものでした
-
- 2013年10月04日 22:43
- ケヤキのくせにすげぇイケメンだな
-
- 2013年10月04日 23:03
- キモいかもしれないが、マジで泣いた。
松ジイがいいキャラしてる。
-
スポンサードリンク
ウイークリーランキング
最新記事
アンテナサイト
新着コメント
女僧侶「あと38回……」 (以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします)
男子A「銭湯久しぶりだね」やよい「あっ」男子B「高槻!?」 (以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします)
【モバマス】「橘ありすの電脳世界大戦」 (以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします)
モバP「アイドルが自慰してるところを目撃してしまった」 (以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします)
女僧侶「あと38回……」 (以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします)
舞園「苗木くーん!いるの分かってるんですよ!!」ドンドンドン (以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします)
モバP「アイドルが自慰してるところを目撃してしまった」 (以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします)
エレン「ハンジさんとクリスタと座談会?」 (以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします)
エレン・クリスタ「俺、私のほしいもの」 (以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします)
エレン「わかった」 (以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします)
QRコード
スポンサードリンク