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薬剤耐性菌・MRSAの抗生物質への耐性機構が解明される…新薬開発に寄与 - Technity

薬剤耐性菌・MRSAの抗生物質への耐性機構が解明される…新薬開発に寄与

2013年10月7日 14:34 │Comments(9)

Written by へいのうえ

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は多くの抗生物質に耐性を持っているため、院内感染などの社会的な不安要素となっています。対MRSAへの研究としてこの度、米ノートルダム大学の研究チームがMRSAの抗生物質耐性機構を解明したと発表しました。

メチシリンは「β-ラクタム系」という種類に区分される抗生物質で、ペニシリン耐性菌への対策として開発された薬です。今回の研究は、細菌がこのメチシリンに耐える仕組みを明らかにしたものですが、そもそもなぜこのような研究が必要なのでしょうか?順を追って見てゆきましょう。

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抗生物質開発と耐性菌の戦い

世界初の抗生物質であるペニシリンは、明治維新から約60年後の1929年に発見され、1940年代に実用化されています。この抗生物質は、細菌の細胞壁を作り出す酵素(PBP)を阻害することで殺菌作用を示します。細菌の細胞壁の構成要素であるペプチドグリカンは、人間の細胞では使われていないため、細菌を選択的に除去できるというわけです。

しかし1950年代になると、ペニシリンを含む様々な抗生物質への耐性を持つ耐性菌が登場してきます。これに対抗するために開発されたのがメチシリンでした。例えば、ペニシリン耐性菌はペニシリンを分解する酵素を生産することで通常の菌よりも強い耐性を発揮するのですが、メチシリンはこのペニシリンを分解してしまう酵素にも耐える力を持った抗生物質というわけです。

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ペプチドグリカンペニシリンの構造式。(Wikipediaより引用)

しかしながら、メチシリンが実用化されたすぐ後に、前述したMRSAが出現してしまいます。1970年代には世界中でこのMRSAの報告例が相次ぎ、メチシリンをそれほど使っていなかった日本でも1980年代には大きな問題として浮上するようなりました。

このMRSAへの対抗手段として使われたのがグリコペプチド系抗生物質のバンコマイシンです。この薬は、メチシリンではダメージを与えられなかったMRSAにも効果を発揮し、一時期は「最強の抗生物質」と呼ばれていました。

しかし、その天下も長くは続きません。1990年代にはバンコマイシン耐性菌が出現し、2000年代初頭にはバンコマイシン耐性MRSA(VRSA)の存在が報告されてしまいます。人間側は、このVRSAへの対抗策としてリネゾリドダプトマイシンという新たな抗生物質を開発しますが、残念ながらこれで終戦とはならず、実用化されて間もなくこれらへの耐性菌も確認されました。

このようなイタチごっこの様相を呈している現状に際して、新たな抗生物質の開発は必須となっています。そのためには、耐性菌たちがどのようにその耐性を発揮しているのかを知ることはとても重要なことになってくるという訳です。

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メチシリンの構造式。(Wikipediaより引用)

アロステリック制御により抗生物質をブロック

酵素というのは主にタンパク質で構成されており、酵素上には実際の活性を発揮する「活性中心」が存在します。アロステリック効果というのは「活性中心以外の部分に鍵となる物質が結合することでタンパク質の形を変えて活性を変化させる」というもので、生体内の酵素タンパク質ではよく見られる制御機構となっています。

同研究チームは、MRSA内のPBP(前述した、細菌の細胞壁を作る出す酵素)は、活性中心から60 Å 離れた部位にあるアロステリック部位にこの酵素の基質であるペプチドグリカンが結合することで活性が発揮されることを発見しました。このため、普段は形状が異なり活性中心に抗生物質が近づけずに、それらによる抑制を受けないということです。

さらに、MRSAに対して効果のある抗生物質・セフタロリンは、このアロステリック部位に結合し活性中心をこじ開けた後に活性中心をブロックしているとことが示されました。セフタロリンは日本の武田薬品工業が創製し、アメリカでも2010年に承認された新しい抗生物質です。

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セフタロリン(Wikipediaより)

今回の研究でMRSAがどのように耐性を発揮しているのか、そして効果のある抗生物質はどのようにMRSAの耐性機構を破っているのかが示されました。この研究成果により、さらなる抗生物質開発の加速が期待されます。

[ScienceDaily] [PNAS]

へいのうえ

著者 : へいのうえ

現在アメリカの大学で生物学を勉強しております。 その辺りの新しい話題を解説していければなと思っています。 まだまだ勉強中ですので、至らぬ点もあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。

9 件のコメント

  1. ガジェ大好き名無しさん 2013年10月7日 15:33 No.469856 返信

    耐性菌と抗生物質の終わりなき戦い。
    なんで次から次に耐性菌が突然変異で発生するんだろうね。
    人類を間引く為の神の見えざる手?

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    • No Name 2013年10月7日 15:37 No.469864 返信

      菌だって生き物なんだから突然変異だろうと何だろうと生き残ろうと必死なわけ。それだけ。

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    • No Name 2013年10月7日 16:07 No.469899 返信

      発生してるんじゃないんだよ。
      そういう個性を持った株があって、それ以外が滅ぼされた結果、
      たまたま生き残ってブルーオーシャンで爆発的に増えるってことなんだよ。

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  2. No Name 2013年10月7日 16:02 No.469893 返信

    >MRSAの耐性機構の破っているのかが

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  3. No Name 2013年10月7日 16:08 No.469903 返信

    効果が期待できる抗生物質があれば、気をつけることが1つ2つ減る程度だけど助かりはするねー。

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  4. No Name 2013年10月7日 18:26 No.470063 返信

    とりあえず風邪に抗生物質処方する無能は免許剥奪して欲しい

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    • No Name 2013年10月7日 18:55 No.470098 返信

      気持ちは分かるが、無理してでも会社にでかけるのが普通という日本のシステム?習慣が原因でしょ。だから、薬で治すって発想になる。欧米からすると風引いても出かけるなんてナンセンスらしい。結果、満員電車などでマスクもせずに、手も当てずにくしゃみする人間は本当に迷惑だね。

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    • No Name 2013年10月7日 20:19 No.470231 返信

      それは主に患者側の要求に沿って行われてることだから難しいな。
      帰って安静にして寝ておけって言ったら「あの医者は風邪ひいてるのに薬も出してくれない」って悪評が広まってつぶれてしまう。

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    • No Name 2013年10月7日 20:26 No.470241 返信

      どんなヤブでも風邪に抗生剤が効くとはおもってないでしょ
      あれは体力落ちたときの2次感染防止のためでしょ?

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この記事にコメント
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