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204:キャタピラさん ◆EhtsT9zeko:2013/05/05(日) 23:15:47.20 ID:6/eGDgcU0

 「アヤ、アーヤ!ね、アヤ!こっち向いて!」

私は脚立の上に登って、ペンションの玄関の上に看板を取り付けようとしているアヤをファインダーに抑えながら叫んだ。

「あのな!アタシ今何やってるか、そのカメラどかしてよーっく見てみてろ!」

「どかさなくても分かるよ?看板つけてんでしょ?」

私が言ってやるとアヤはいきり立った。

「だから!看板つけてるアタシが、どうやってあんたのカメラ向けっていうんだよ!」

アヤは私を見てそう言った。てか、見れるじゃん、こっち。

「怒った顔も凛々しいですねー」

私はふざけてシャッターを切った。

「ちょ、あんたもう許さん!おとなしくしぃっ…」

アヤはちょっと本気で怒ったのか、ペンションの入り口に突っ立てた脚立の上で立ち上がった…

「いぃ!!!」

けど、バランスを崩した。

あ、これヤバイ。

 脚立の上でバランスを崩したアヤが私の上に降ってきた。どうする?!避ける!?受け止める!?

避けたらもっと怒りそうだな、アヤ。避けちゃおうか?

あーでも、それで怪我でもされたらそれはイヤだな。受け止めようか。

でも、アヤの体支えきれるかな?身長はちょっとしか違わないけど、アヤ、私なんかと体のつくりが違うんだよな。

肩幅広いし、筋肉質だし。締まってはいるんだけど、その分重いんだよね。どうしようかな…

 なんてお気楽なことを考えていた私に、避ける間も、受け止める準備もできるはずがなく。

「うわぁぁ!」

「ひゃぁぁ!」

アヤは無情にも私の上にのしかかってきた。辛うじてカメラだけは守れたけど、ひどい衝撃だ。

こんなの、ジャブローで墜落したとき以来じゃないだろうか。

「いつつ…悪い、大丈夫か?おい、レナ、怪我ないか?」

私のせいなのに、こういう時に謝って私を心配しちゃうアヤなんだ。相変わらず、優しいな。

「うん、平気。アヤも大丈夫?」

「あぁ、受け身はとれた」

アヤ、それは受け身じゃなくて私がクッションになったからだと思うよ…。

なんて言おうとしたら。私に圧し掛かっていたアヤの肩の向こう側。

入り口のドアの上に設置しようとした看板がゆらっと傾いた。

 あぁ、これさっきよりヤバイ。





元スレ
SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
ジャブローで撃ち落とされた女ジオン兵が…
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367071502/


 
205:◆EhtsT9zeko:2013/05/05(日) 23:17:26.10 ID:6/eGDgcU0

 私はとっさにアヤの頭に腕を回して胸元に引き寄せた。

「ぶほっ!?レ、レナ!?」

看板は完全に私たちめがけて落ちてくる。体を起こして逃げるのは、間に合わなそうだ。これは痛そうっ!

私は思わず目をつぶった。

ガンッ!

あれ?なんの衝撃も痛みもない…私は恐る恐る目を開けると、

看板はペンションの玄関の両側から出ている手すりに乗っかる形で、

まるで私たちの上に屋根のように引っ掛かっていた。

間一髪だった…

「あの…レナ?」

胸元で…というか、アヤがその…わ、私の胸にうずもれながらうめいている。

 私はぱっと手を離した。と、とっさとは言え、じ、自分でこんなことをしちゃうなんて…か、顔が熱いっ。

 私から解放されたアヤは私の上から降りる様子もなく、落ちてきたときのまま、

私に圧し掛かりながら私の両腕をつかんで、寝転んでいるデッキに押し付けた。

「今のは、誘惑してるって、解釈して良いんだよな?」

アヤが、真剣な表情で私を見下ろしてくる。

い、いや、そ、そう言うつもりじゃないんだけどっ…

別に、イヤってわけじゃないけど、急にそんなっ…て言うか、まだ昼間だし、そ、外だし?!

それに好きって言っても、そ、そう言う感じで好きかどうかってまだはっきりしてないし、

あ、で、でも、もしアヤがそうしたいっていうなら、わ、私は全然イヤじゃないけど、

その、や、やっぱり、い、勢いとかでも、初めてそう言う感じになるときくらい、場所を選び…た…


い…

………待てよ?

 これは、違う。いつものやつだ。この雰囲気に押されて動揺して隙を作ると、

また、海に投げ込まれたり、目をつぶった瞬間に顔にいたずらされたりするあれだ。

危ない危ない。そう何度も、同じ術中にはまる私じゃないぞ!

 私は、そう思ってアヤの手を振り払うと、思いっきり脇腹をくすぐってやった。

「ちょっ…やめっ…」

アヤは抵抗する暇もなく私の攻撃を食らい、ビクンとなって上体を起こした。

ガコッ!

上体を起こしたアヤは…もちろん、屋根になっていた看板にしたたかに頭をぶつけた。

私の上からもんどりうってアヤが崩れ落ちる。

「いっっってぇぇぇ!!!」

デッキの上を、頭を押さえて転げまわるアヤを、私は写真に収めた。

 うん!よし!今日も平和で楽しいな!





206:◆EhtsT9zeko:2013/05/05(日) 23:21:20.41 ID:6/eGDgcU0

続…か?く?かも?

こんな感じのショートショートっていうか激甘1コマ小説だったら乱射できるんだけどなぁww





207:NIPPER:2013/05/05(日) 23:25:05.95 ID:PtR/bvBqO

なんだよこのやろ激甘じゃねーかこんちくしょう
ガンダム世界関係なくなってますがなw





217:◆EhtsT9zeko:2013/05/06(月) 23:14:58.14 ID:E8HARvX10

 私はそれからアヤにひとしきり怒られたあと、看板の取り付けを手伝ってから、アヤと一緒に街に買い物に出た。

今日はこれからアイナさんとシローが来てくれるんだ!

なんでも、アルベルトに新しい戸籍を作ってもらったらしくて、住む家とドアンを見習って畑なんかも作っているらしい。

会うのは2か月ぶりくらいかな!今からすごくたのしみで、うきうきしてしまう。

 ペンションは、クリスを送ってから2日後、この島にたどり着いて訪れた不動産屋に紹介してもらった。

3件目だったのだけど、なんでも、元連邦高官の別荘だったらしい。

戦闘での損害を恐れて、ジオンの地球降下作戦が始まった際に売り払ったのだという。

結局、この辺りには戦闘の被害も、その…コロニー落としの被害もなかったから、

もとのきれいなまま、買い戻されずに残っていたらしい。

白くて2階建てのその建物は、船を止めるハーバーから一本道を上った小高い丘の上にあった。

部屋数は全部で8室。バスルームが2つあって、トイレなんか、大きいホテルのロビーにあるような公衆用が2か所と、

各部屋にそれぞれついている。キッチンも広いし、みんなで食事ができるダイニングもある。

アタシ達が気に入ったのは、もともとホールだったというところで、大きな窓から太陽の光がいっぱい入ってくる広めのヘヤだった。

私たちはそこに、古家具のお店で買いたたいたソファーとテーブルを2セット入れた。

食事の後や、夜な夜な、ここでおしゃべりしたり、カードなんかをやったら楽しいだろうな、というアヤの発案だった。

もちろん、私たちの部屋もある。二階の一番奥の角部屋で、日当たりが良くて良い部屋なんだ。

お金の方は私とアヤでお金を出し合って、残りはローンを組んだ。頑張って働かないと!

 食材とお酒をたっぷり買い込んで、先日届いたばかりのポンコツに乗りこもうとしていたとき、アタシたちは妙な人を見かけた。

 年頃、10代後半だろうか。男の子で、街角にたたずんで、ぼっと空を見上げていた。

「ね、なんかあの子、変じゃない?」

私がアヤに言うとアヤは

「ああ?…あぁ、何だあいつ?」

と遠くにいる男の子を見て言った。

「なんか、変な肌触りのするやつだな…」

「ね、私もなんか感じる…なんだろう?」

私は首をかしげる。明らかに普通じゃない。彼との距離は20メートル以上ある。

でもそんなに距離があっても、なんだか周りの人間とは明らかに違う違和感を感じる。

 服装が変とか、妙な行動をとっているわけでもない。でも、なんだか、変なんだ。

「なんだかわからんけど、根暗そうなやつだな」

アヤが言った。うん、確かにそれは、私も思うよ。





218:◆EhtsT9zeko:2013/05/06(月) 23:15:26.39 ID:E8HARvX10

 私たちはなんだか気になって、しばらく彼を観察していると、そこへ別の人物が現れた。

彼と同じくらいの身長で、彼よりは少し年齢は上だろうか。私たちと同じくらいか、ちょっと下かも知れない。

どこか、しとやかな雰囲気をまとった女性だ。

彼女が来ると少年は何かを話し出した。それに女性が答えている。

すると、少年の方がちょっとハッスルした感じで女性に詰め寄った。女性も負けじと少年に食いつく。

「――――――!」

「――――!」

「―――――!」

「おい、なんだケンカしてるぞ」

「大変、ヒートアップしていらっしゃいますなぁ」

私たちはすっかり覗き魔と化している。

 会話の内容までは聞こえないけど、かなりの興奮度合いだ。少年が女性に一歩詰め寄った。

次の瞬間、女性が少年の頬を張った。

「うわっ!今のは痛てぇ!」

アヤが、なぜか小声になって悲鳴を上げている。

しかし、次の瞬間、女性は少年の胸ぐらをつかむと引き寄せて、乱暴に…キスをした。

「え?え?えぇぇぇ?!」

「なんで!?どうしてそうなった!?」

私もアヤも、やっぱり小声で悲鳴を上げる。少年からヘナヘナと力が抜けるのがわかる。

女性は彼から唇を離すと、彼の手を引いて、通りをズンズン歩いていく。

 やがて女性は、その肩までの美しい金髪をなびかせながら、

栗色の髪の少年を引っ張ってこの街で一番大きなホテルのエントランスの中に消えて行った。

「…」

「…」

私もアヤもしばらく言葉を失っていたけれど、少したってどちらからともなく

「か、帰ろうか」

「う、うん」

なんて言いあって、ペンションに車に戻って、ペンションへの道を走った。





219:◆EhtsT9zeko:2013/05/06(月) 23:16:37.02 ID:E8HARvX10

 ペンションに戻ってきた。荷物を運び入れ終わって、私がホールのソファーでくつろいでいると、アヤが入ってきた。

「なぁ、レナ。電球どこ行ったっけ?ほら、一昨日買ったやつ」

アヤがそうたずねてくる。あれは確か…階段下の物置に入れたような…

「階段のとこの物置じゃない?」

「それがなかったんだよ」

「えぇ?」

アヤが言うので、私は一緒に倉庫へと向かった。ゴソゴソと倉庫の中を探していると不意にアヤが

「さっきのヤツ、なんだったんだろうな」

とつぶやいた。

「んー、世の中にはいろんな性癖持っている方もいるからねぇ。あれはきっと、ああいうプレイなんじゃないかな?」

私が適当に答えていると、アヤは

「いや、そうじゃなくって」

と少し真剣そうな表情で言ってきた。

「あいつ、変な感じがした。あれは普通の人間じゃない。まるで、こっちが巻き込まれそうな感覚だった」

アヤが言う。

 アヤの言いたいことは、私にもなんとなくわかった。それはいつもとは全く逆の感覚だった。

 いつも私はまるで、声が聞こえてくるというか、頭の中に入ってくるみたいな感じを覚えるのだけど、

彼は、まるで私の頭の中から、声が抜けて行ってしまう感じだった。

いや、正確に言うと、いったん抜けて行った声が、彼を通してまた戻ってくる感じ、とでもいうのか…

ちょっと言葉では形容しずらいけど。





220:◆EhtsT9zeko:2013/05/06(月) 23:18:54.81 ID:E8HARvX10

 私がそのことを言うと、アヤもそうだよな、同意してくれる。

結局のところ、彼が何者であの感覚が何であるか、なんて全く見当は付かないわけだけれども、私にはすこし心当たりがあった。

以前アヤが話してくれたニュータイプというやつだ。しかも、それの相当に強力なやつ。

もしかしたら、彼は、アヤが前に言っていたように、こちらの考えや感情が手に取るようにわかるくらいの能力を持っていたのかもしれない。

だから、まるで、こちらの声…というか、感覚が出て行って、彼を通して帰ってくるような錯覚に陥ったんじゃないか。

そんなことを考えていた。

でも結局、答えなんて出すことはできないんだけど…あ、電球あった!

「発見!窓ふき剤と一緒になってた!」

「あーその袋か、探してなかった。すまん」

「どこに使うの?」

「あぁ、玄関ホールのトコ。あそこ、切れちゃってたわ」

「あーそっか、替えてないもんね、あそこ」

私とアヤはそう言いあって、脚立を持って玄関ホールに向かった。もちろんアヤが上に登って電球を変え始める。

これはまた、さっきと同じシチュエーションだな…

なんて私が思っていたら、アヤがギャッと悲鳴を上げた。

 見ると、古い電球を外した陰から、大きめの蜘蛛が一匹、アヤの目の前に垂れ下がってきたのだ。

あ、これヤバイ。

案の上、アヤは脚立の上でバランスを崩した。

 これは!今度こそ受け止めねば!

私はアヤが落ちそうな方に上体を運んで、アヤをキャッチした

――が、想像していたよりもずっと、アヤは…たくましい肉体をしておられて。

い、いや、この場合、私が貧弱なのかもしれないけど、とにかく、私は今日二度目の、アヤのクッションと化した。

ドシーーーン!

うぐぅ…痛い…

しかも今度は額にアヤの肘がめり込んだ。

「レ、レナ!だだ大丈夫か!?」

アヤが私の上で心配してくれる。

「オデコ痛い…」

私は思わず手で額を抑えた。

「ちょ、見せてみろ」

アヤが私の手をどかして、額を見てくれる。


 ガチャッ





221:◆EhtsT9zeko:2013/05/06(月) 23:19:38.64 ID:E8HARvX10

「おーい!レナ!アヤ!遊びに来たぞ!」

「レナさん!アヤさん!おじゃまし…」


突然ドアが開いて、シローとアイナさんが入ってきた。


いや、その、私はアヤの下敷きになっていて、両腕を捕まえたアヤが、

その私の顔…というか、額を見るのに顔を近づけていて…いや、その、あの…これはね…

「あ…そ、その、わ、悪かったな、邪魔した」

「は、はは、す、すみません…」

シローとアイナさんは微妙な表情のまま、ゆっくりと後ずさってドアから出て行った。

「ちょ!アイナさん!シロー!違う!これは誤解だ!」

「待って!大丈夫だから!変なことしてたわけじゃないから!!」

私とアヤが二人を、追って、必死になって誤解を解いたのは言うまでもない。



うん…まぁ、よし、今日も平和だ!…のはずだ!





222:◆EhtsT9zeko:2013/05/06(月) 23:27:34.54 ID:E8HARvX10

えーと、はい、以上です、すみませんorz

次回から、アヤ視点で物語を振り返ります。

ですが、物語の中でアヤさん自身が言っていたように、レナさんをキャリフォルニアに連れて行くのは、

アヤさんにとってはあくまでオマケでした。

大事なのは、レナさんに出会ったアヤさんが、何を考え、何を感じてレナさんを助けようと思ったかということでした。

つまり、アヤさん自身がそれに気づいた時点で、展開という点でみたときに物語が進まなくなりました。

ですので、そのは潔くバサっと切ってます。

レナさんに出会ったアヤさんの語りを聞いてあげてください。


なお、今回のおまけ2は次回アヤさん視点の伏線…というほどのものでもないですが、

組立上、おまけ2を書ききってからだと書きやすかったという事情がありましたので、

とりあえずで書いたおまけ2の手抜き感についてはなにとぞご勘弁をww

では、引き続き、アヤさん視点編、投下してきますー





223:◆EhtsT9zeko:2013/05/06(月) 23:36:41.14 ID:E8HARvX10

「以上、ブリーフィングを終了する」

副隊長のハロルドが言った。

「ふぃー敵さん、明日は気合い入れてくるのかよー」

お調子者の軽薄男、ヴァレリオが座った椅子にのけぞって言う。

「まぁ、そうは言ったって、所詮あのデブ空母だろ?足はこっちが早い。

 隊長の言うように、一撃翌離脱で先制攻撃を仕掛けちまえば、モビルスーツ降ろされる前に方が付くんじゃないか?」

隊のムードメーカーでエース、フレートが言う。

「とか言って、まっさきに落ちんのがお前だったりするんだよなぁ、フレート」

アタシと同期のダリルがフレートを茶化す。

「お、言うねぇ、ダリル!だが、タダでは落ちねーよ?俺が落ちるときゃデカブツ二機ほど道連れにしてやらぁ」

「ホントにやっちゃうからすごいんですよねーフレートさん」

フレートの言葉に、デリクが食いつく。

「おだてんなって!調子に乗らせると、それこそ真っ先に弾幕に飛び込んでイジェクトする奴だぞ?」

ダリルが笑いながらそう言って釘をさす。

「まぁ、せいぜい派手に動き回って敵を引きつけてくれよ。その隙にアタシがスコア稼ぐからさぁ」

カレンが言った。

「あんたな、そんなことばっか言ってっから結局アタシが尻拭いすることになんだろうが!」

アタシはカレンの言い草に突っかかった。

「はいはい、隊長さんは大変ですねー。なんだったら交替しましょうかアヤ・ミナト小隊長ー?」

「てめぇっ!」

「ア、アヤさん!カレンさん、やめましょうよー!」

イラっと来てカレンに掴み掛りそうになったアタシをマライアが止めてくれた。

もう、マライアに止められたら、暴れらんないじゃないか。

 「まぁ、とにかくだ、お前ら」

隊長が口を開いた。


「明日の空模様は相当な混戦になると思っておいた方がいい。わかってんな?危険を感じたら撃たれる前に逃げろ。

 場合によっちゃ、被弾してなくたってイジェクトして構わん。戦域から離脱するときゃ、高度をギリギリまで下げるんだ。

 俺とハロルドの隊でデカブツは叩く。第2小隊と第3小隊は、降下してきたモビルスーツだ。

 長く空域にとどまるな。一撃翌離脱を心掛けろ」


「うーい」

隊の面々から声が上がる。





224:◆EhtsT9zeko:2013/05/06(月) 23:39:45.64 ID:E8HARvX10

「よーし、じゃぁ、はじめちゃいますか!」

フレートが声を上げた

「よ!宴会帝王!」

アタシは野次を飛ばしてフレートを盛り上げる。

 ブリーフィングをしていた隊のオフィスのテーブルには、たくさんの料理と酒が並んでいる。明日の出撃に備えての、景気づけだ!

「それではぁー!僭越ながら、私、オメガ隊エース、フレート・レングナー少尉がぁ!」

「いよ!待ってたぜ!逆エース!」

「うるせー!早く飲ませろ!」

ダリルがわめき、隊長もやじった。

「もう、せっかちなんだから、隊長ってば!」

「気色悪い!」

「うせろー!」

ダリルが叫び、ハロルド副隊長も言う。

「宴会帝王ー!ヴァレリオさんがセクハラしまーーす!」

そんな中でアライアが訴える。

「何!?よーし、野郎ども!作戦命令を伝達する!我らがマライアの周囲2メートル以内にヴァレリオを近づけるな!

 一部の隙もなく、鉄壁に死守せよ!」

「うぉぉ!」

声を上げてむさくるしい男どもがマライアを守るために鉄壁の肉の壁となって…なぜかマライアに迫る。

マライアがアタシの方に逃げてきた。

「おねーちゃーーーん!こわいおじさんたちがいじめるよう!」

ったく、しょうがねえなぁ!

「うらぁ!うちの妹泣かしたんはどいつだ!」

アタシは大声でわめきながらビール瓶を振り上げた。

「ぎゃー!鬼だ!鬼が出た!」

と隊長。

「悪魔だ!撤退しろ!あの瓶をケツにつっこまれるぞ!」

とハロルド副隊長も。

「ひぃー!食われる!」

デリクまで。

「いや、食うっていうか、殴るんだぞあいつ!しかもけっこう本気で!」

あぁ、ダリル、その節は本当にすまなかった。

「俺、股間蹴られた!」

「それは自業自得だヴァレリオ!て言うかもっと蹴られろお前!」

ホントだよヴァレリオ、お前はもう4、5発蹴っておいた方が良いと思うんだ、アタシも。

にしたって、ったく、どいつもこいつも、アタシをなんだと思ってんだ!おかしくって涙が出てくる。

「おーい、楽しいのは分かるが、早く飲ませろーい!」

隊長がいよいよ茶番に酒にもしびれを切らしたのか訴え出た。

「はいはい、分かりました!じゃぁ行きますよ!明日の勝利と全員無事帰還の祈願をこめて!乾杯!!!」

「かんぱーい!」





225:◆EhtsT9zeko:2013/05/06(月) 23:41:42.42 ID:E8HARvX10

 なーんて、やってたのになぁ…あーあ、まったく、きれいな空だよ、ほんと。

 アタシは、すっかりよれよれになっちまった戦闘機の主翼の上に寝転んで空を見上げていた。

昨日の戦闘なんて嘘みたいに、何もなくて、飛んでるものと言ったら、鳥くらいなもんだ。

空を埋めるようだった弾幕も敵の航空空母も味方機も敵機もモビルスーツも、なぁーんもいない。

 味方機くらいは飛んでてくれてもよさそうなもんなんだけどなぁ…

アタシ、滑空しながらよっぽど変な方へそれてきちゃったんだろうか…。

 不時着の衝撃で、機体についていた救難信号発信用のビーコンは半分つぶれちまった。

今朝から直そうと思ってバラしてみたけど、ありゃダメだ。基盤がアイスクリームみたいになっちゃってる。

残るはイジェクションシートの下のビーコンだけだけど、あいつをどうにかするとなると、違う意味で命が危ないしなぁ…

あとで外せるかどうか調べてみっか。

 それにしても…カレンは、なんであいつ言うこと聞かないんだよ…小隊長やりたかったってのは知ってけどさ。

だからって、戦功焦って突出して、死んじゃぁなんにも意味ないじゃんよ…

バカだよ、お前…なんで死んじゃうんだよ。もうケンカできないじゃんかよ。ホントにもう…。

隊長、ダリル、マライア、デリク、副隊長もフレートもヴァレリオもベルントもみんな無事かよ?

死んでたらアタシ…許さないからな。

 チャポン、と水音が聞こえた。腰の拳銃に手を当てて、耳を澄ます。

…大丈夫、か?…ふぅ。

だいたい、なんだってここ、こんなにクロコダイルがいるんだよ。ジャングル生活が長いあたしもびっくりだ。

これだけ群生している地帯があるなんてなぁ。地球が汚されている、なんて誰がいったんだよ。

自然の宝庫じゃないか。命の危険を感じるくらいの宝庫じゃないか。

なんて。誰にでもない文句を言ったって、状況が変わるわけでもない。

アタシは、600 万平方キロだかって広いジャングルのどこかで、いつ来るかもわからん救助を待っている。

まったく、色気のないってのはこんなことを言うんだろうなぁ。

ふいに、ビビビと脚が震えた。ふぅ、やっと来た。

アタシは起き上がると、脚に括り付けておいた、機体から引っ張り出した配線を慎重に引っ張った。

その先には縞模様のナマズがこれまた機体の破片で丁稚上げたルアーに引っ掛かっていた。

「タイガーショベルか…ま、上等かな。お前さんもご愁傷様だ、こんなマヌケな仕掛けで釣れちまうなんて。

 悪いが、弱肉強食だと思って、勘弁してくれ」

アタシはそう言って釣り上げたタイガーショベルというナマズのエラに、脚に括っていた配線を通した。

「さて…ここで火をたくわけにはいかない、か。降りたくねぇなぁ、クロコがなぁ」

生き物が苦手ってわけでもないんだけど、爬虫類だけは、何考えてんのかわかんなくてどうにも怖い。

所属基地でも、年に何人かは巡回中の陸戦隊がワニに脚食いちぎられたりするし、

毒ヘビにやられて軍医に担ぎ込まれるやつらも少なくない。あぁ、ヘビもいるなぁ…

ダリルのやつにタバコ一本もらっとくんだった。ヘビってのは、ニコチンのにおいを嫌うんだ、とダリルは言っていた。

タバコを浸した水を撒いておくと寄り付かないんだそうだ。

アタシはタバコ吸わないから、今持ってないし…気を付けるしかできない。





226:◆EhtsT9zeko:2013/05/06(月) 23:42:27.07 ID:E8HARvX10

 アタシはあたりを見渡して、戦闘機の主翼から手を伸ばしたところから登れそうなちょっとした高台に目を付けた。

あそこなら、まぁ、クロコダイルは好き好んでは登ってこないだろ。ヘビはわかんないけど。ナマズを持って、その高台に上る。

あぁ、割と良いじゃんか。見晴らしも良いし、敵でも味方でもクロコダイルでも、近くを通りゃぁ、すぐに見つけられそうだ。

 アタシはそこに座り込んで、あたりにあった枯れ落ちた葉っぱや木の小枝を拾い集めた。

幸い、キュッと川がカーブしているところで、流れ着いた木々は高台から下へ手を伸ばしたところにいくらでもあった。

さて、生だったり湿ってたりするが、燃料は整った。あとは…火種、か。

 普段なら、戦闘機のバッテリーあたりで火をつけられそうなんだけど、残念ながら。

バッテリーはビーコンと一緒にアイスクリームになってた。

ていうかビーコンの基盤がアイスクリームになっちゃったのはこのバッテリー液をかぶったせいみたいなんだけど。

まったく、生きてただけでも感謝だね、ホント。アタシはなるべく乾いてそうな、太めの木の枝を二本、手に取った。

 ライターでもありゃぁ楽だったんだけどなぁ…

ヘビ避けと言い、火と言い、案外、ジャングルじゃタバコって吸ってた方が長生きすんじゃねぇ?

 そんなことを考えながらアタシは、この宇宙世紀に、人類史上もっとも原始的な方法での着火を試み始めた。

 あーあ、ほんと、楽しいよーだ。





235:◆EhtsT9zeko:2013/05/07(火) 20:14:00.51 ID:SZo3KpQJ0

釣りばかりでは飽きるから、明日は果物でも探してみるか。甘いのが成ってると良いんだけど…

 …?

一瞬、何かが肌に触れる様な気配がしてハッとした。直接触れたわけではない。これは…人の気配?

 この感覚には、慣れたものだ。

 高台から見渡すと、川のそばにライトの明かりらしきものが見える。

敵か、味方か…暗がりにあんなちっぽけなライトじゃ、相手がどっちかなんてわかりゃしない…

が、おい、待て、お前、そこでとまれ。それ以上行くとまずいぞ。

 ライトの持ち主は、周囲の状況に気付いていない。

気づいていないが、アタシからは見える。4メートル級のが一匹と、そのちょっと離れたところに2メートルクラスのもいる。

もちろん、クロコダイルだ。オリノコワニって種類のはずだ、確か。

もともと、ここいらにはいないはずの種だったらしいけど、環境の変化なのかなんなのか、

ん十年前くらいからどんどん数が増えて、それに伴ってこんなトコにまで増えてきたんだとか。

 なんて考えてる場合じゃねぇ。行かないとまずいかな…止めないと、あいつ食われるかもな。

敵ならまぁ、ほっといても良いけど…味方だと後味悪いよな…あーくそ!しょうがないなぁ!

 アタシは意を決して高台から降りた。気配を殺し、足音をけし、そっとライトの持ち主に近づいて行く。

暗がりだが、そいつのことがうっすら見えてくる。

 …あれは、ジオンの制服か。

アタシは拳銃を抜いた。どうする、撃つか?

 そう思って引き金に指をかけたが、ふと、墜落のときの恐怖が、頭をよぎった。

別に情けを掛ける気持ちではなかったけど…せっかくあんなに必死になって生きたいと思って、

結果、生き残った自分が、誰かの命を簡単に取っちまうのは、なんだか滑稽に思えた。

 そういや、昼間もそんなこと考えてたな。自分が撃った敵機のパイロットが、どんな風に思って地上に落ちてったのか、

なんて考えた。あいつらも、恐かったんだろうな…あいつも、撃っちゃったら、そんな風に感じて死んでくのかな。

そんなことを思っちまったからか、なんだか、あいつが敵だとかそう言うのはどうでも良いような気がしてきた。

とりあえず、助けてやろう。で、抵抗するなら、またそん時に考えりゃいい。拳銃だけは、取っておくか、一応。





236:◆EhtsT9zeko:2013/05/07(火) 20:15:32.57 ID:SZo3KpQJ0

 アタシは、そう決めてライトの人物に背後から忍び寄った。そっと近づいて、静かに拳銃を背中に押し付ける。

「ひぃっ!」

 ジオン兵の声が漏れた。バ、バカ!でかい声を出すなよ!

「静かにしろ」

アタシはとっさにそう言って後ろから口をふさぎにかかる。でも、ばたつきやがってなかなか抑えられない。

抵抗されると、厄介だ。アタシは口をふさごうとしながら、自分の拳銃をしまって、ジオン兵の腰に差さっていた銃を抜き取った。

そうこうしていたら、肘がなんだかやわらかい物に当る。

あ?これなんだ?む、胸か?女兵士、なのか?

ちょ、あんまり暴れると、む、胸がまたっ…じゃないっ、クロコダイルが気が付いちゃうだろうが!

「騒ぐな、動くな!死にたいのか!」

アタシはもう一度、ジオン兵の耳元で、今度はちょっと脅かすつもりで言ってみた。

するとようやくちょっとおとなしくなったので、

口をふさぐことはせずに、持っていたライトを誘導して、目の前にいるヤツを照らさせてやった。

 ジオン兵は、最初それが何か、わからなかったようで、ちょっとの間マジマジと見つめていたけど、

すぐにそれが、巨大な肉食生物だとわかったんだろう。ハッとして息を飲むのが感じられた。

よし、分かりゃぁ、良いんだ。

「このままゆっくり下がるぞ…」

アタシはまた耳元でそう言ってジオン兵の腕をつかむと、ゆっくりと高台の方へ後退していく。

左手にも、あの2メートルくらいのやつがいるはずだ。

そいつにも注意を払いつつ、アタシはジオン兵を連れて、なんとか高台までたどり着いた。

アタシはすぐに高台への小さな崖を上って、

「足元、気をつけろ」

と注意をして、手を取った。ジオン兵は割と素直に、アタシに促されて高台に上がってきた。

 「ふぅービビったぁ」

高台の上にもどったアタシは、緊張感から解放されて思わずそう口にしていた。

まったく、敵ながら世話を掛けさせてくれる。

 アタシは、ちょっと離れたところにいるジオン兵を見やった。

 歳は、アタシとおんなじくらいか。ジオンの軍服を着ている。肌触りとしては、スペースノイドのようだ。

まぁ、ジオン軍人だから当然か。ノーマルスーツや飛行服は着てないけど…こんなところで迷子になってるような奴だ。

おおかた、あの降下作戦に参加したパイロットだろう。泥だらけの疲れた顔して、呆然とアタシを見つめている。





237:◆EhtsT9zeko:2013/05/07(火) 20:17:02.03 ID:SZo3KpQJ0

 ジオン兵は、そうやってしばらく突っ立っていたけど、急にビクッとなって動いて、腰から何かを出そうとして、固まった。

あぁ、拳銃か。連邦兵だっての、今頃気づいたんだな。

「あぁ、これは預かってるよ」

アタシは、腰に差していたジオンの拳銃を引っこ抜いた。グリップが細くて手になじむ。

口径は小さそうだが、そんなもん、拳銃同士の打ち合いするようなときにはむしろ小さい方がぶれなくっていいってもんだ。

「へぇ、写真でしか見たことないけど、ジオンってこんなん使ってるんだね。握った感じは、ジオン製の方が好きだなぁ」

そう言ってチラッとジオン兵の反応を見る。相変わらず固まって、身動き一つしない。

どころか、なんだかおびえた表情をしてる。

あぁ、そっか。アタシが撃ち殺すとでも思ってんのかもしれないな。アタシはそう感じた。

いや、殺すつもりなら、さっきやってたし、そうでないってことくらいわかりそうなもんだけど…

でも、あの表情を見てたら、なんだかかわいそうになってくる。

なんだって、そんな泥だらけの顔で、今にも泣きそうにしてんだよ。

 アタシは、銃から弾倉を引っこ抜いて、一発だけ機関部に戻してやると、あとの弾は全部抜き取って、彼女に投げて返してやった。

一発くらいなら、打ち合いになったってアタシの勝ちだ。

だって、どんなに腕が良くったって、撃たれるのがわかったら、アタシ避けるし。

「この森、あんまり安全じゃなんだ。持っときな。あ、自殺とか、アタシを撃とうとかは、なしにしてくれよ。

 生身の死体見るのイヤだし、アタシはまだ死にたくはないんでよ」

ワニのこともあるし、そう言ってやった。もちろん、自殺なんて目の前でみたいもんじゃない。

死にたくないのも本当だけど、それはまずありえない。そこのところは、まぁ、駆け引き、ってやつだ。

 不意に、パチッとたき火がはじける音がした。ハッとして、魚を焼いていたことを思い出した。

あわててそばに行って、焼け具合を確かめる。う、ちょっと焼き過ぎたか?

「あー、ちっと焦げちゃった。あんたのせいだぞ?」

とりあえず、ジオン兵に文句を言ってやる。まぁ、殺菌殺虫の意味で、このくらい焼けてた方が良いってもんだ。

うん、そういうことにしとこう。

 アタシは、ペリペリっと焦げた皮をはいでみる。中からは、しっとり焼けた白身が姿を現した。

うん、まぁ、上等だな。それにかぶりついて、二口、三口と食べていると、ジオン兵は突然にアタシに銃を向けてきた。

 ちょっとびっくりした。お互いに黙って、見つめ合う。

ピリピリとした緊張感が肌に伝わってくる、けど、こいつ、本当に撃てるのか?

「一発で、頭当たる?」

アタシは聞いてみた。銃口が小刻みに震えているのがわかる。

「この距離なら、外さない」

ジオン兵は言った。でも、とてもじゃないが、当てられるようには見えなかった。それにこの状況だ。

まずはアタシが銃を持ってるかどうか確認するのがふつう、先だろう。こいつ、交渉慣れはしていないんだな。

「そっかぁ。んー、こんなナマズが最後の晩餐になっちまうのか…悪くはないけど、もうちょっとうまいのが良かったなぁ」

アタシはなるべく気にしてないふうに言ってやった。別にこいつを殺したいわけじゃない。

銃を抜きにすれば、殴り合いで負けそうな相手でもない。でも、できるなら、お互い穏便に済ませたかった。





238:◆EhtsT9zeko:2013/05/07(火) 20:21:20.23 ID:SZo3KpQJ0

「まぁ、でも、空からおっこって死んじまってたかもしれないんだからなぁ、食えるだけ、ありがたいと思っとくか…

 頼むよ。せめてこれ食い終わって、満腹になってからにしてくんないか?」

アタシはもう一度ジオン兵に言った。とりあえず、時間を稼いでおこう。

そうすりゃ、こいつの緊張も多少は緩むだろう。

 アタシは、横目でジオン兵の様子を見ながら魚に食らいつく。不意に、どこからか

グゥ〜

と奇妙な音がした。

なんだ、いまの?アタシが顔を上げると、ジオン兵はなんだかバツの悪そうな顔をしてアタシを見ていた。

 今の、腹の音か。なんだよ、こいつも腹ペコか。

腹が減ってちゃ、緊張もするわな。しゃあない。

「半分食べるか?ちょっと泥くさいけど、味はそんなに悪くない」

アタシがそう言って魚を差し出してやると、ジオン兵は戸惑いながら、半分を引きちぎるようにして手を引っ込めて食べ始めた。

 一心不乱に、魚に食いついている。まるで、一生懸命トウモロコシを食べている子どもみたいだな。

少しだけ、ジオン兵の緊張感が緩むのを感じたので、アタシもちょっとだけ安心して魚の続きを口に運ぶ。

 カツン、カツン、カツン…トポンッ

アタシはハッとしてまた顔を上げた。ジオン兵もこっちを見ている。

 今の音は…マズイな!

アタシは魚を放り出して拳銃を抜いた。ジオン兵はそんなアタシにびっくりしたようで、またおびえた表情をする。

マズイ、こいつ今にも叫びだしそうだ…

 アタシは慌てて駆け寄ると、今度はあんまり怖がらせないように、そっと口をふさいだ。それからなるだけ穏やかに

「静かに」

と伝える。

 それからあたりの物音に耳を澄ます。高台と言ったって、ほんの1メートル程度。

断崖の絶壁ってわけでもなくて、あの足の短いクロコダイルだろうが、その気になれば登ってこれる。

息を殺して、さらに耳を澄ます。ザリザリと重いものが擦れて動く音が聞こえた。

「立って!」

アタシはジオン兵にそう言うが、こいつ、腰が抜けてんのか立ちやしない。

仕方がないので腕を回して、ずりずりとたき火の方へ引っ張る。明かりを頼りに、周囲を警戒する。

「あいつら、水音には敏感なんだ。辺り、気を付けて…」

目は一人分より二人分の方が良いに決まってる。アタシはジオン兵にそう言う。

「あ、あいつら?」

状況把握が遅い!

「クロコダイルだ。さっきみただろ!?」

「あ、ワ、ワニ!?」

「そうだよ!しゃべんな!警戒しろ!」

アタシは声を抑えてだけど、思いっきりしかりつけてやった。

 しばらく、目と耳を凝らしてあたりの様子をうかがう。

ズリズリという音は次第に聞こえなくなり、この高台へ上がってくる気配も感じられなかった。





239:◆EhtsT9zeko:2013/05/07(火) 20:22:34.27 ID:SZo3KpQJ0

「ふぅ、大丈夫そうだ」

アタシは、緊張感を解いてその場にへたりこんだ。ジオン兵の女も、ペタンと地面に尻を付けて呆然としている。

 まったく、飯の途中だったってのに、迷惑な話だ…あ、そう言えば、魚!アタシのナマズ!

そうだ、さっき驚いて投げちゃったんだった。

「あーあ、びっくりして魚ほうりだしちまったじゃんか、もったいない」

これも文句言っとかないと。でもま、食えないこともなさそうだ。

ちょっと泥になっちゃったけど、反対側はまだ皮とってなかったし、そっち側なら食べれんこともない。

そうやって残りを食んでいたら、急にジオン兵が声を上げた。

「こ、殺さないの?」

「あ?」

何を?

「あークロコダイル?」

思いついたところで聞いてみた。

「わ、たし、を」

「あぁ、そっちか」

なんだか、そんなことを敵に聞くなんて、変なやつだな。そう思ったらかおかしくなって笑いが込み上げてきた。

さっきはアタシを撃たなかったし、まぁ、いっぱいいっぱいになってて判断つかないってこともあるんだろうけど、

でも、いいやつっぽいな、こいつ。あんまり心配しなくてもよさそうだ。

「あんたを殺して戦争が終わるんなら、喜んで殺すよ…あ、でもそしたら死体を引っ張ってかなきゃまずいか?証明できねえもんな。

 それは嫌だな。死体運ぶのなんかまっぴらだ。死体じゃなくたって、こんな森ん中、人ひとり運んで歩くなんて、ごめんだな。

 うん、じゃぁ、殺さない」

こんなんでいいかな?緊張させっぱなしは、この状況ではあんまり良くないしなぁ。

「どうして!?私は、敵!殺せばいいでしょ!」

ダメか。いや、そんなことより、声デカイって。

「騒ぐなって、あいつら耳だけは良いんだよ!」


とりあえずそこを注意してから、今の彼女の言葉を考えた。

そりゃぁ、まぁ、アタシを殺すつもりなら、戦うけどな。

でも、別にこいつからは、そう言う感じはしないし、敵だからって理由でいちいち殺してたら、さすがに気分良くないだろうしな。

それに…それに、昼間っからずっと考えてたこと。

相手を撃ったとき、そいつが、どんな風に感じて死んでいくか…そんなことを思ったら、引き金なんて引けないだろふつう。

 それにそもそも、ジオンが悪いとか、連邦が正義だとかって道義心で戦争やってたつもりもない。

アタシはそんな大したタマじゃない。だた、軍に入ったから、それをやっているだけ。軍に入ったのだって、ちゃんと理由があるんだ。

 そんなことを考えながらのらりくらり返事をしてたら、思わぬところに食いついて来た。

「金がほしくって、さ」

「お金?」

アタシが言ったら、そんな反応だ。なんだよ、こいつ。

さっきまで敵だの味方だの言ってたのに、ずいぶんとアタシに興味深々じゃんか。





240:◆EhtsT9zeko:2013/05/07(火) 20:23:14.28 ID:SZo3KpQJ0

「そう!あたしさ、小さいころに親死んじゃってね。で、いろんなとこをたらいまわしにされて生きてきて、

 で、学校卒業してからは行くトコないから、軍に入ったんだ。身元引き受けてくれるし、戦えば金くれるしさ!」

「傭兵、ってこと?」

「そうじゃないよ、ちゃんと正規軍人さ。なんつうか、さ。ほら、あんだろ、わかれよ」

「わかんないよ」

そこまで言ってしまって、急に恥ずかしさが込み上げてきた。

アタシ、なんでこんな知らないやつに楽しそうに自分の話してるんだろう…アタシも緊張で変になってるのか?

…いや、そう言う感じじゃないな。たぶん、こいつのせいだ。変な奴だ。

さっきまであんなにキーキーこっちをにらんで騒いでたってのに、すっかり慣れてきちまって…

しょうがない。話のついでだ。どうせ、明日にゃバイバイだし、世間話のつもりで教えてやろう…

ちょっと恥ずかしいんだけどな。笑われないよな。な?この話をすると、いつも隊長たちは笑うんだよ。

あいつら、ほんと、一発ずつ殴ってやればよかった。


「ここより、ずっと北にいったところに、アルバ島て島があってさ!海がすげーきれいなんだよ!

 あたし昔っから海が好きでね、そういうところで暮らしてみたいなーってずっと思ってたんだ!

 だから、働いて金をためて、家と船でも買ってさ。魚とって売って生活とかできたら楽しいだろうなって!」


アルバ島は、昔、なんかの雑誌の記事で見て、それから頭から離れないんだ。

カリブ海の南にあるリゾート地。そんなとこでのんびり暮らせたら、楽しいだろうな。

 って、せっかく話してやったのに、なんだよこいつ、こんな呆けた顔しやがって。

なんだか浮かれて話した自分が恥ずかしかったのと、こいつに腹がたったので、聞き返してみた。

「あんたは?」

「へ?」

おい、さっきまでの話聞いてたよな?なんだよその気の抜けた返事は!

「だから、あんたの話。スペースノイドなのか?」

もう一度丁寧に聞いてやると、彼女は

「あー、うん」

と小さく返事をして話を始めた。

「私は、サイド3生まれ。スペースノイドよ。あとは、家族のことは…軍人の家系の二人目で、兄さんと両親も軍人だった。

 でも、父さんはルウム戦役で死んで、母さんと兄さんは、最近、ラサからオデッサに転戦になって、そこで戦死…」

…あぁ、そうか…。アタシは理解した。こいつから感じる変な感触。それは、アタシが良く知っている、あの感触だ。

心の真ん中に穴が開いたみたいに、なんにも感じなくなってしまう、

でも、なんにも感じないはずなのに胸をかきむしりたくなるほど、キリキリ痛めつける思いだ。

一人ぼっち。

寂しくて心が壊れそうで、誰かと一緒に居たいと思う、あの気持ちだ。

それを、こいつは、戦争で家族を失って感じちゃってるんだな…それって、なんか…アタシもつらい。





241:◆EhtsT9zeko:2013/05/07(火) 20:23:48.19 ID:SZo3KpQJ0

「そっか、あんたも天涯孤独の身か…家族のことは、残念だったね…

 あたしが悪いわけじゃないんだけど、一応、殺したのはこっちの身内だ。謝っとく」

「うん、仕方ない、戦争だし…」

そんなこと、謝ったって仕方ないだろうけど、口に出てしまった。そうなんだよな…人を殺すって、そう言うことなんだよな…

でも、彼女は言った。仕方ない、そう言っていいんだろうか?

そう言って、受け入れていいもんなのか?戦争って、こういうことって。

戦争です、じゃぁ、仕方ないねって受け入れていいもんなんだろうか?

一人の兵士として、肉親を失って、悲しい別ればっかを経験してきた人間として、受け入れていいもんなんだろうか?

兵士として、アタシが繰り返して良いもんなんだろうか?

 二人とも黙ってしまった。

 アタシは、胸が痛かった。この子の父親は、どういう気持ちで宇宙で死んでいったんだろう。

この子の母親は、死ぬときに何を思ったんだろう。

この子の兄は、もしできたのなら、この子に何を伝えたかったのだろう。

 そんなことをグルグル考え始めてしまったアタシは、なんとなく居心地の悪さを感じてしまって、無理矢理に話題を変えてみた。

どうしてこんなとこをほっつき歩いてたのか聞くと、なんでもあのトゲツキのパイロットだったらしい。

階級はアタシと同じ少尉。アタシも、自分が撃墜されて帰れない話をした。

食べた魚はどうしたのか聞いてきたんで魚釣りや海の話をしてみせたら、愛想笑いしやがったから、

この子の趣味が読書だと話したときには「暗いな」って笑ってやった。

あとは、年齢が一つ違いだとか、好きな食べ物は何か、とか、酒は飲むのか、強いのか、なんて話もした。

 なんだか、不思議とウマがあった。考えてみればそうだろう。たぶん、アタシらは似たもの同士だ。

まぁ、アタシはずいぶん昔の話だし、いろんな人に出会って、支えられて、なんとか今までやってきてるし、

そこそこ楽しいなと思って生活してる。けど、昔の寂しさを忘れてるわけじゃない。

とらわれてしまうことは、もうないけど、あのつらさ、悲しさ、切なさは、どうしたってぬぐえないものだ。

 この子も、きっとこれからそう言う物と向き合ってかなきゃならないんだろう。

ここで出会ったのも、何かの縁だ。少なくとも、広い世界にはアタシみたいな理解者もいるってことくらいわかってもらえば、

多少は楽に生きれるかな…。「彼」みたいに、この子の灯台にはなれなくっても。





242:◆EhtsT9zeko:2013/05/07(火) 20:24:20.35 ID:SZo3KpQJ0

 どれくらい話をしてただろうか。なんだかすっかり和んじまった。ふわぁぁと、あくびが漏れてくる。

ちょっと名残惜しいけど、寝た方がよさそうだ。

アタシは明日もここで待ちぼうけだろうけど、この子はそうもいかないだろうし。


「さて、寝るかなぁ。あんたはまた明日、味方探しに行くんだろ?

 あたしは、戦闘機に積んであったビーコンが直れば救助をひたすら待ってみるけど」

「うん」

「だったら、ちゃんと休んだ方がいい」

彼女の返事は穏やかだった。アタシもなるだけやわらかくそう言ってやる。それから不時着した機体に案内した。

このジャングルで野宿なんて、正直ぞっとしない。

 閉じといたキャノピーをハンドルで開いてイジェクションシートを外にほっぽりだす。

これなら、まぁ、二人で入れんだろ。問題は…

 アタシは彼女の体を見た。アタシより線が細いしな…

身長はそんなに変わんないけど、アタシが上ってわけにはいかなそうだ。

 彼女をコクピットの引っ張り上げて、キャノピーを閉める。彼女をアタシに寄りかからせて…

ちょっと、きついけど、まぁ、この際だ。文句はよそう。

「あの、重くない?」

そう聞いて来たので、とりあえず何ともない風に答えて

昨日の夜にイジェクションシートの下から引っ張り出しておいた毛布をかぶった。

 なんだか、ふぅとため息が出てしまう。

変な感じだな、なんか。ふれあっているお腹と腕のあたりから彼女の体温が伝わってくる。

これなら、夜に冷えるジャングルでも大丈夫そうだな、なんて思いながら、でも、たぶん、そう言うことではなくって。

「あーなんか、あれだな」

「ん?」

気持ちが、なんだか溶けていくような感じがする。あぁ、そうか―――

「一人で寝るより、安心する」

―――そうだ、これは安心だ。

「うん」

彼女の声が聞こえた。アタシは、ちょっと気を遣いながら彼女の頭に、自分の頭をもたせ掛けた。

おやすみ、を言おうとして、そう言えば名前を聞いてなかったなってことに気が付いた。

「アヤ・ミナト」

「え?」

「私の名前、アヤ・ミナト。あんたは?」

「えと、レナ・リケ・ヘスラー」

「そか、んじゃぁ、おやすみ、ヘスラー少尉」

「うん、おやすみ、ミナト少尉」





245:NIPPER:2013/05/08(水) 00:53:58.39 ID:OcU7O0JSO


別視点もいいねww





249:◆EhtsT9zeko:2013/05/08(水) 21:14:37.53 ID:PuUCyB5O0

 翌朝、

「ひゃっ!」

という小さな悲鳴で、アタシは目を覚ました。

 目を開けてみると、キャノピーの向こうに連邦軍のヘルメットをかぶった男の顔がある。

 毛布の中には、昨日一緒になったジオン兵、レナがいる。

「こりゃぁ、まずいな」

一瞬で状況が理解できて、思わず、言葉に出てしまった。これって、レナにとってはけっこうヤバイよな…

「すまん、まさかビーコンなしに見つけられるとは思ってなかった」

アタシが言うと、レナが毛布の中からアタシを見上げてくる。さて、どうする?

レナを逃がすか…逃がすなら…?考えろ…何が最善だ?

「このままじゃ、捕虜か、もしかしたら、この場で…」

レナが、不意にそんなことを口走った。ハッとしてアタシはレナを見る。

彼女の顔は、不安におののいていた。

「あぁ、いや、それはアタシが絶対させない…けど、捕まったら、遅かれ早かれ、その可能性は出てくるよなぁ…」

そう、そうなんだ。ここで下手に逃がそうとすれば、捕まるか、それこそマシンガンで一掃射されて終わっちまうかもしれない。

だが、投降させるなんてのは悪手だ。正直、身の安全なんて保障できない。

実際に身近で起こったことはないけど、慰み者にされてから殺される、なんて話、聞かないこともないからだ。

でも、だとしたら…だとしたら、どうする…?


 レナが毛布の中でかすかにもぞっと動いた。彼女の体温を感じていたことを不意に思い出す。

そう、そうだ。この子を、死なせちゃダメだ。家族を失った孤独の中で死なせるわけにはいかない。

腐った輩の手に触れさせてもいけない。だって、だって、そんなのはつらいじゃないか。

昔のアタシがあのまま死んでたら…いやだ、そんなこと想像すらしたくない。

一人ぼっちのこの子に、そんな思いをさちゃいけない…この子は、アタシが守ってあげないと…


 アタシは、毛布の中でレナの体を抱きしめた。レナを安心させてやりたかったのと、アタシ自身が、ちょっとだけ決意するため。

もしかしたら、下手をしたら、アタシはこれで、何もかも失うかもしれない。

アタシの居場所も、夢のために蓄えてたお金も、家族同然の隊のみんなも、全部、失う覚悟が、アタシにはあるか?

…クソっ、そんなこと考えたって、覚悟するしかないじゃないか…

だってこの子は、今ここにいるんだ。アタシを信じて、一緒に魚を食って、ここで一緒に寝てくれたんだ。

つらい孤独の中で、アタシにこころを許してくれたんだ。

そんなこの子をここで裏切ったら、見捨てる様なマネしたら、また孤独の中に突き落としちまうだけじゃないか…


 そうだ、そんなことできるわけない。

そんなことしちまったら、アタシはもう、誰といたって、何をしたって、楽しくなんかない。

アタシを信じてくれたこの子を見捨てて、のうのうと生きるなんてマネ、アタシにはできない。

それはアタシの中の灯台の火を自分で消しちまうのとおんなじだ。

 そうだ、覚悟しろ、アヤ・ミナト。

隊長がやってくれてるように、この子は、すべてを犠牲にしたって、アンタが守るんだ。

自分にそう言い聞かせて、アタシはレナを抱く腕にぎゅっと力を込めた。





250:◆EhtsT9zeko:2013/05/08(水) 21:15:36.68 ID:PuUCyB5O0

「何があっても、私に話を合わせろ、良いな?」

アタシはそう言ってから、レナに足元にあるアタシのパイロットスーツを着るように言った。

レナは、アタシの僚機のふりをさせる。カレンだ。あいつは…死んじまったから、鉢合わせになることはない。

こいつらは陸戦隊のはずだ。

所属エリアが違うし、エリア自体だいぶ離れているし、2か月前に転属してきたカレンの顔は知らないはず。

こいつらはそれでごまかせる。

基地に連れてかれるようなら、名前を変えよう。誰か手ごろなヤツはいないか…いや、それは今は重要じゃない。

とにかく、ここはレナをカレンだと信じ込ませることだ。それにしくじれば、すべてここで終わっちまう。

 レナが着替え終わったという合図を出してきたのでキャノピーを開けた。

レナがおずおずと立ち上がり、アタシもそれに続く。

「うっく、やっぱ体ちょっと痛いわ」

ミシミシと体が鳴った。こんなんじゃ、いざって時に動けねえぞ?アタシはそんなことを思って伸びをする。

そうしながら、外の連中の顔を見た。知り合いはいない。行けそう、だな。

「ごめん、乗ってたから…」

レナが心配そうに言ってくる。

「あぁ、いや、この床のせいだ」

まぁ、本当はどっちのせいでもあるんだけど。そんなことよりも、と。

アタシはこっそり腰の拳銃を抜いて、レナに手渡した。

「持ってろ。無茶はすんなよ。でも、やばくなったら、アタシなんかほっといて逃げろ」

そう囁いてから、アタシは白々しく下の連中を見てやった。男が5人。小銃を下げている。

見ない隊章だな…外から呼ばれた部隊か?だとしたら、もっとやりやすくて良いんだけどなぁ…


ふぅ、まぁ、さて。ここからは隊長譲りだ。かましてやる。

「救助に来てくれたのか?ありがたい、ビーコンが壊れちまって、途方にくれてたんだ!」

「あんた、オメガ隊か?」

「あぁ、オメガ隊のアヤ・ミナト少尉だ。こっちは、カレン・ハガード少尉。あんたたちは?」

「第7歩兵大隊だ。この周辺の戦況調査を任されてる」

「そうか、ご苦労なことだ」

「それにしても、あんたらオメガ隊の生存率は神懸っているな!」

「他の編隊員で、生き残った者は?」

「全機撃墜されたって話だが、パイロットたちは全員脱出して無事だったって話だ。あんたら二人で最後だよ」

そうか、他の連中は無事か…良かった。アタシは内心、胸をなでおろした。





251:◆EhtsT9zeko:2013/05/08(水) 21:16:12.46 ID:PuUCyB5O0

 アタシとレナは、兵士たちの車に乗せてもらって、シェルターまで連れて行ってもらうことになった。

幸運なことに市街地らしい。あそこなら、レナを着替えさせれば一般人に紛れされることができる。

 レナはその間、アタシに小声でカレンのことやシャルターのことを尋ねてきた。

いや、今聞くんじゃない!バレんだろうが!

 シェルターに続く門での検問もなにごともなく突破した。町にさえ着けば…。

そんなアタシの心配をよそに、レナはまるで物珍しそうに、洞窟の中にそそり立ったビル群をきょろきょろと見上げていた。

あんまりにも丸出しなんで、ペシッと膝を叩いてしまった。

でも、アタシらを見つけてくれた軍人たちはマヌケなのか気が良いのか、そんなの全然気にせずに談笑しながら車を走らせている。

 やがて車は市街地に入り、公民会館の前で停車した。

「ここがこの地区の軍の連絡所だ。中に、配給を手配してる担当の士官がいるからよ。

 そいつに言って、司令部まで連れてってもらってくれ」

「ありがとう、ほんとうに」

アタシは礼を言ってレナとともに車を降りた。

 それからもう一度軽口をたたきながら礼と別れを言うと、車はUターンして元来た道を戻っていった。

アタシはその姿が見えなくなるまで待って、すぐにレナの手を引いて公民会館とは反対方向に歩き出す。

「ここから離れよう。補給部隊は、顔の効く連中が多い。カレンの顔も多分知られてる。言い訳ができない」

アタシが言うとレナはうなずいて、それから

「どうするの?」

と聞いて来た。

「幸いここは、軍人の家族や、生活に必要な店や施設の従業員も住んでる都市だ。服屋もある。

 あんた、そこで服買って、着替えろ。そうすりゃ、今よりずっと怪しまれずに済む」

公民会館から一本裏の通りに出た。

「ほら、あそこなんかどうかな…ってか、アタシがたまに使う店なんだけど…趣味に合わないとか、そういうことは言わないでくれよ」

ここの服屋は常連で、割といつも使っている。ここまでくれば、安心だ。

アタシはアヤに手持ちの金を全部握らせて、着替えと背負えるバッグを買ってくるように指示した。

アヤのやつ、いつまでもジオンの上着を毛布にくるんでるもんだから、もうヒヤヒヤだ。

 店に入ろうとして、ふっとレナが足を止めた。

「ありがとう」

その彼女の笑顔は、泥が付いているのになんだかとてもまぶしくって、照れくさくなってしまった。

「あ、アタシはここで見張ってるから、ちゃっちゃと済ませてきて!

 あぁ、それと、このビルの3階にクアハウスがあっから、買ったらそこで汗流そう」

顔に着いている泥も、できたら落とした方が良い。拭いちまえば目立たないだろうけど、2日もジャングルの中にいたんだ。

お互い、シャワーくらい浴びたいだろう。

「うん」

レナはまた、明るい笑顔を見せると店の中に消えっていった。





252:◆EhtsT9zeko:2013/05/08(水) 21:17:11.74 ID:PuUCyB5O0

 20分もすると、レナは店から出てきた。ちゃっかり着替えも済ませている。

ホントは、シャワー浴びさせてから着替えさせてやりたかったんだけど…まぁ、こっちの方が安心するだろうし、良いか。

「おまたせ」

レナが言うので

「はやかったな」

と笑って言ってやった。

 それから、そう言えば持ってた金を全部着替えにまわさせちゃったもんだから、

クアハウスに入る料金が払えないことに、レナが買い物中に気が付いた。

「悪いんだけど、アタシ、今の金が手持ち最後でさ。ちょっと銀行行こう」

アタシは、道の向こう側にあった銀行を指差して言った。

「うん」

レナは素直に返事をしてくれる。

道を渡って、銀行に入ろうとしたら、レナはふっと足を止めた。

「どした?」

「いや、私はここで待ってるよ。防犯カメラくらいあるでしょう?さすがに顔が映っちゃうのはマズイと思うし」

アタシが聞くと、レナはそう言った。確かに、レナの顔をカメラに映されるのは避けておきたいな。

なんかあったときに、面が割れやすくなっちまう。

「そっか…まぁ、じゃぁ、すぐ終わらせるから、そこで待ってて」

アタシはレナにそう告げて、銀行へと入った。





253:◆EhtsT9zeko:2013/05/08(水) 21:17:56.15 ID:PuUCyB5O0

 ジオンの降下からもう2日経っている。街はすっかり平静を取り戻していて、銀行の方も普通に営業しているようだ。

アタシはATMに行って口座からとりあえずの逃走資金を引き出した。

どうしたって、レナをここから逃がすには手助けがいる。

休暇願いだして、ジオンの拠点のありそうな場所へ送ってやれると良いんだけど…


 「―――――!」


なんだ?

わめき声…外か?

アタシは出てきた金をポケットに突っこんで銀行を出た。

そこには人だかりができていて、その真ん中に、手錠を掛けられ跪かされているレナの姿がった。

レナの周囲には軍服の男たち。腕にはMPの腕章がつけられている。


―――まずった!くそ、どうしてレナを一人にしちまったんだ!どうしてバレた!?どうする?助けるか?

MPは3人、その気になれば一思いに片付けられない数じゃないが…

だけど、こんな街中で乱闘騒ぎ起こした挙句にジオン兵連れ出したら、それこそ緊急手配だ。

出られるもんも出られなくなる。


―――ここは…黙って見過ごすしか、ないのか…

アタシはギュッと拳を握った。

 ほどなくしてMPの車が到着し、レナは後部座席に押し込まれる。MPがレナの背中を警棒で殴った。

 全身が震えた。あの野郎…!

殴りかかりそうになるのを必死にこらえた。

ダメだ、今行ってもどうにもできない!ダメだ、今だけはダメだ!

 やがて、車はエンジン音を響かせて走り出した。

 まずい、まずいぞ…レナは士官だ。しかも、こんなとこに潜り込んでた…普通の捕虜の扱いなんて受けない。

これはスパイ容疑だ。厳しい詰問にあっちまう。

下手したら、拷問だ。あの、クソいまいましいMP共と、根暗の諜報部の連中が変わり順番に質問攻めだ。

何をされるか…どうする!?どうすんだよ!!!

 アタシは思わず走り出していた。捕虜やスパイを閉じ込める独房の場所は分かってる。

まずは、車だ。アシがいる。アタシの車を取りに行こう。それから、金はある。

あと―――あとは、なんだ!くそ!落ち着け、考えろ!銃、銃だ、銃がいる。

できるだけ強力な…いや、ダメだ、こっちは一人だ、撃ちあいになったら勝てっこない!

なら、脱走か。監視カメラに警報装置、それから警備の兵士と、巡回のルート…監視センサーもある…どうすんだよ!


隊長、あんたなら、あんたならこんなときどうすんだよ!

 アタシは焦る思いを必死にこらえて、とにかく自宅のアパートまで全力で走った。





258:◆EhtsT9zeko:2013/05/09(木) 22:15:49.42 ID:5VRILTzm0

 3時間後、アタシは隊のオフィスにいた。そこには軍内部の情報にアクセスするためのネットワークがある。

帰還のあいさつもそこそこに、アタシはケーブルを自前のポータブルコンピュータに差し込んで、情報をあさっていた。

 アタシはあれから家に飛び込んで、頭から水をかぶって、3分だけ考えた。やっぱり、脱走させるしかない。

アタシが手引きして、ジオンの勢力圏内まで届けるっきゃない。

 独房は管理棟の地下4階にある。管理棟から抜けるには、地下1階の物資搬入口が良いだろう。夜間なら人目のない場所だ。

まずは独房からそこに行きつくための警備装置一式を無力化しなきゃならない。

監視カメラは映像をループで流せばいい。監視装置も、ここからの細工でなんとかなる。

ただ、警報装置は直接配線をぶった切りにいかないとどうしようもない。

これは後で考えるとして…まずはカメラと監視装置を済ませよう。警備兵の巡回ルートと時間はもう抑えた。

独房の前に常に一人、付きっきりで監視してるのがいるが、こいつには睡眠薬だ。

うまくいかなきゃ、最悪は実力行使。拳銃の消音装置は配給部隊の倉庫からくすねた。使いたくはないけど、いざってときには…。

「おぉーい、ミナト少尉殿、あんた無事だったんだな!うれしいぜ〜良かったら帰還の祝いにメシでもどうよ?」

「黙ってろ、ヴァレリオ」

ヴァレリオが話しかけてきた。うっとおしい。今はお前の相手してる暇なんてないんだよ。

「つれないなぁ、行こうぜ〜俺、今日暇だしよぅ」

「っせーーんだよ!あっち行ってろ!」

思わず怒鳴りつけてしまった。ヴァレリオは、戸惑った顔をして

「お、わ、悪い」

とだけ言い残してオフィスから出て行った。

 ほかの連中がアタシを見ている。でも、構ってなんかいられない。時間がないんだ!

 コトっと音がした。見ると、コーヒー入ったカップが机に置いてある。

「それ、そこのコード違うぞ」

コーヒーを置いてそう言ってきた声の主は、アタシの同期のダリルだった。

―――み、見られた

アタシはとっさにパソコンの画面を遮る。

「別に隠すことなんてねぇだろ。何しようとしてんのか知らねえが、別にしゃべらねえよ」

ダリルは言った。

 監視カメラや監視装置の偽装工作は、全部このダリルに教えてもらったものだ。

ダリルとは、待機命令が出ている兵舎から抜け出すのにこうしてコードをいじったり、

倉庫にある酒を頂戴しに行ったりしていたから…

「悪い…」

アタシは謝って、ダリルに指摘された部分を直す。

「そこの温感センサーの試験モードのコードはA−258だ、次の施錠センサーのコードがA−220…」

「うん…」

アタシは黙ってダリルの言葉を聞く。





259:◆EhtsT9zeko:2013/05/09(木) 22:16:32.17 ID:5VRILTzm0

「隊長に休暇願い出したんだってな」

ダリルは聞いて来た。さっき隊長に提出してきた。時間稼ぎのためだ。

アタシとレナが一緒だって情報がすこしでも隠れれば、それだけレナの足取りを追われなくて済む。

手引きしてる人間がどこの誰か、までバレちまうと手配の抜け道が狭くなる。

「うん、一週間、休みをもらう」

「帰ってくんだろうな?」

「そのつもりでいる」

「そうか」

「あぁ」

アタシは返事をしてコードの変更を続ける。ダリルもそれ以上は聞いてこない。

 でも不意にダリルが言った。

「隊長から、伝言を預かっててな」

「隊長から?」

アタシは手を止める。

「あぁ。『合言葉を忘れんな』、だと」

合言葉。アタシの隊の規則だ。「ヤバくなったら逃げろ」。隊長は、もしかしたら、気づいているのか?

「ヤバいのかよ?」

「だから逃げる算段たててんだろ」

ダリルが聞いて来たのでアタシは答えた。ダリルはもう気づいているだろう。

アタシが打ち直している監視装置のコードを見れば、それがどこの物かなんて、こいつには一目瞭然だ。

どこから、どこへ抜けたいのか…。だとすれば、アタシが何をしたいかくらい、検討は付くはずだ。

アタシの言葉にダリルはため息をついた。

「作業が終わったらそのPCはおいてけ。アシが付くかも知らん。俺がぶっ壊しておいてやるよ」

他の隊員も信用できないわけじゃない。でも、ダリルだけは特別だ。

何しろ、アタシと同期のこいつはこの隊の「問題児」。調子に乗ってどれだけの「知られざる」悪行を働いて来たかわからない仲だ。

こいつには、こんなことを頼んでも大丈夫だ。





260:◆EhtsT9zeko:2013/05/09(木) 22:17:04.51 ID:5VRILTzm0

 作業が終わった。

アタシは席を立つ。

「隊長には」

「黙っとくよ」

アタシの言葉を、ダリルはそう遮った。

「すまん、迷惑かけることになるかもしれない」

「なーに、平気だろ。隊長にしてみりゃ、今に始まったことじゃねえと思うしな」

ダリルはそう言って笑ってくれた。

「ありがとう。じゃぁ、行く」

「おう、気を付けてな」

「うん。PC、頼む」

アタシはそうとだけ言い残して、ダリルの淹れてくれたコーヒーを飲み干してから、オフィスを出た。

 正直、つらかった。何も話してはいけないことが。本当は泣いて助けを求めたかった。

でも、それは出来ない。アタシがこれからすることは、必ず隊のみんなに迷惑をかける。

事情を知らせてしまったら、みんなにも責任が生じてしまう。だから、何も知らせない方が良いんだ。

隊のみんなはアタシにずっと良くしてくれた。軍に入ってすぐに、隊長に拾われてあの隊に入った。

ずっとずっと一緒だった。血のつながってない、家族みたいなみんなだった。

ケンカもしたし悪いこともしたし、一緒に仲間の死を見て泣いたし、最近じゃ、マライアとデリクっていう、見習いも入ったんだ。

素直でかわいくて、良い奴らなんだ。

副隊長も、無口なベルントも、ムードメーカーのフレートも、いちいち生意気なヴァレリオも、みんなみんな大好きだった。

 みんな、アタシの大事な仲間で家族で、宝物なんだ。だから、離れるのはすげー寂しいよ。

でも、でもそれよりもアタシは、今、レナを助けなきゃなんないんだ。

そうじゃないと、あいつらと一緒にいることすら、楽しくなくなってしまいそうだから。

助けないと、そう言う宝物がアタシの心から全部零れ落ちそうな気がするから。

 隊長、迷惑かけてごめん。

 ヴァレリオ、怒鳴ってすまん。

 ダリル、話聞いてくれてありがとう。

 マライア、デリク、隊長の言うことちゃんと聞けよ…

 副隊長も、他のみんなも…迷惑かける、ごめんっ…。
 
アタシはいつのまにか涙を流してた。でも、立ち止まってはいられなかった。

今、こうしている間にも、レナがどんな目に遭っているかってことを考えたら、すこしも躊躇してる暇なんてあるはずなかった。





261:◆EhtsT9zeko:2013/05/09(木) 22:18:18.85 ID:5VRILTzm0

「おい、お前は何発だ?」

「自分は2,3発ですかね」

「少ないな、新入り。俺なんか10発はぶん殴ってやったのに。しかしなかなか強情なスパイだ。あれは、上級だな」

「なーに、週明けには殴るなんて手荒なマネはよして、もっと違うもんをぶち込んでやりゃぁいいのさ」

「はは!違いねぇ」

「今日中にヤッちまえばよかったじゃないっすか、良い顔してたから楽しみにしてたのに。

 明日オフで、次の聴取は明後日すよ?」

「ったく、テメーは。楽しみはあとに取っておいた方が良いってのがわかんねぇようだな。

 まだ諜報部のほうにゃ連絡入れてねぇ。向こうに引き渡すのは、明日一日おいてビビらせて、

 明後日に楽しませてもらってから、ってことにしとこうや」

 下品な笑い声が聞こえる。クソ…あんのMPども。


こんな状況でもなけりゃぁ一人ずつ這いつくばらせて急所を蹴りつぶしてやるのに…

 アタシは管理棟の地下3階にいた。

さっき、レナの差し入れのために買っておいたファーストフードのセットの紙袋と、

睡眠薬入りのビールを隠しておいたこの資料室に取りに来ていた。

レナの荷物はすでに回収して車に積んである。警報装置は地下1階のトイレの排水管の点検口から天井裏に入って、

配線を片っ端からぶった切ってきた。まったく、数が多くて骨が折れたけど…漏れはないはずだ。

 資料室の中で、MPの連中が過ぎ去るのを待つ。あいつらさえいなくなれば、あと1時間は巡回が来ない。

独房の前にいる警備兵にはこのビールを飲んでもらうつもりだ。医務室からかっぱらってきた強烈な睡眠薬をたっぷり入れてある。

死にはしないだろうが…丸1日は起きないだろう。これを渡したアタシの顔の記憶もすっとぶはずだ。

 さて、行くか。漏れはないよな?大丈夫、もう再三チェックした。

 アタシは資料室を出た。階段を降りて、地下4階へと行く。他の階とは違って、コンクリートむき出しで陰鬱とした雰囲気だ。

あのMPどもの言い草だと、これまでにもここでどんなひどいことがされてきたか…考えただけで吐きそうだ。





262:◆EhtsT9zeko:2013/05/09(木) 22:19:15.79 ID:5VRILTzm0

 独房への入り口が見えた。警備兵が暇そうに突っ立っている。

「おい、ここに、レナ・リケ・ヘスラーって捕虜が捕まってるはずだ」

アタシはそいつに声をかけた。

「はっ!確かに、ここですが」

警備兵はアタシの襟の階級章を見るなり背筋を立たしてそう返事をする。まだ若い。

こんなとこの警備にまわされるだなんて…志願してきたのなら最悪なヤツだが…

ヘマやらかして任されてるんだとしたら、かわいそうだな。

「会わせろ」

とはいえ、そんな悠長に同情してる暇はない。アタシはなるべく偉そうに言った。

「は、いえ、しかし…」

「いいから、会わせろって言ってんだ」

「で、できません」

真面目だな。そういうの嫌いじゃないんだけど…今は困るんだよ。

「あぁ?あんた、私の階級章が見えないわけじゃないよな、伍長?」

アタシは警備兵の胸ぐらをつかんでそう凄んでやった。彼は、一瞬ビクっとして体を硬直させる。

「ですが、少尉殿…ここは…」

強情なヤツだな。でも、今の感じだと、抵抗はしないだろう…押しとおろう。

「上官命令だ。すぐに会わせろ。責任は私がとる」

「う…」

「別に何するわけでもない。ちょっと知り合いかもしれなくてね。

 知り合いだったら、最後の晩餐くらい振る舞ってやったって、バチはあたらないだろう?

 ほら、お前にも、これ、小瓶で悪いが酒だ。

 さすがにあんたの上官に見つかるとやばいから、アタシが出てくるまでに飲んでおけよ。おら、さっさと鍵寄越して」

アタシは無理矢理にビールの瓶を押し付けると、彼の腰のベルトから鍵の束をむしり取った。

案の定、彼は抵抗することなくビールを受けとり体を緊張させたまま、アタシが独房の中へと続く外側の鉄格子を開けるのを見送った。

 中には、いくつかの部屋に分かれていた。ひとつひとつ中を確認するが、他の捕虜が捕まっている様子はない。

ふっと一番奥の独房に人影があったので、アタシは足を止めた。

「大丈夫か?」

そう声をかけると

「うん」

と返事をした。良かった、生きてるな、とりあえず。レナは、暗がりの部屋の奥にあるベッドに座っているようだ。

ここからじゃ暗くて良く見えないけど。

「ほら、こっち来いよ。飯にしよう。冷めちゃってるけど…ま、あの魚よりは旨い」

アタシはそう言って地面に座り込んだ。あの警備兵がビールを飲んでくれりゃぁ、こいつを食い終わるくらいには、昏倒するだろう。

逃げ出したら飯を食う時間もないし、レナには申し訳ないけど、ここで食べるのが時間の節約になっていい。

それに、きっとなんにも食わしてもらえてないだろうし、な。





263:◆EhtsT9zeko:2013/05/09(木) 22:20:14.90 ID:5VRILTzm0

 レナが、よたよたっと立ち上がって、こちらに歩いて来た。廊下の明かりに、レナの顔が照らされて、アタシは息を飲んだ。

アザだらけだ…昼間は、あんなに明るく笑ってくれてたのに、そんな面影どこにもない。

真っ青になって、右側の目の上なんかぷっくり腫れ上がっている…

「ひどくやられたんだな」

「これくらいは、平気」

 レナは答えた。平気なもんか…でも、何か言ってやろうとしたけど、こんな時に限って、なんて声かけたらいいのかわかんなくなる。

と、とにかく、飯は食っておかないと…

アタシは紙袋からハンバーガーとフライドポテト、紙のコップに入ったジュースを取り出して、鉄格子の間からレナに渡した。

それから、自分の分を取り出して、かぶりついた。

そうしてから、チラっとレナをみやる。レナもハンバーガーの包装を外して、一口食べようとして、顔をゆがめた。

顔を腫らしているせいか、口が開かないんだ。レナは、かぶりつくのをあきらめて、ハンバーガーをちぎっては口に運んだ。

まるで小さな動物みたいに、チビチビとちょっとずつ。

 不意に、レナがボロボロと涙をこぼし始めた。アタシは、身動きすら一瞬、できなくなった。

あぁ…だよな、そうだよな…怖かったろう…すげえ怖かっただろうな…ごめんな…。

 「ごめん、アタシのせいだ」

飯を食べ終わってから、居たたまれなくなって、たまらなくて、アタシはレナに謝った。

「アタシが、もうちょっと警戒してたら、こんなことには…」

そうだ、あのとき、レナが着替えて、もうぱっと見はそこいらの人と変わらないように見えたから、安心しちまったせいなんだ。

あんなとこにほっぽりだして…こんな目に。

「ううん」

「だけど、こんなにされて!」

レナはそう言ったけど、でも、街へレナを連れて行ったのも、アタシの判断だ。そして、アタシが油断した結果がこれだ。

こんな…こんなに腫れて…アタシは思わず、鉄格子の隙間から手を入れ、レナの顔に触れた。

腫れ上がった皮膚はかすかに熱を持っている。

「私が油断していたのがいけなかった。気にやまないで。あなたは私に、とてもとても良くしてくれた。それだけで十分」

レナは、泣きながらアタシの手を握って、そっと押し戻した。

それから、グスッと鼻をすすってから、顔を上げて、涙で顔を濡らしながら、ニッコリと笑った。

「だから、もう行って。あなたまで危険になる」

なんで…なんだって、そんな顔で笑うんだよ。なんだって、アタシの心配なんかしてんだよ。

だって、つらいのも、恐いのも、痛いのも、苦しいのも、全部あんたじゃないか!





264:◆EhtsT9zeko:2013/05/09(木) 22:20:55.20 ID:5VRILTzm0

カツン、カラカラララ…

固い物が落ちて、転がる音。睡眠薬、飲んでくれたみたいだ。良かった。手荒なマネをしなくて済みそうだ。

もう、あとには引けない。いや、引くつもりなんてないけど。

こんな状況でアタシの心配して、あんな顔で笑ってくれるこの子を、こんなとこで苦しみと痛みの中に置いといちゃいけない。

そんなことはアタシが許さん。

「実は、もう手遅れだったりするんだけど…ね」

アタシがヘラッと笑って言うのと同時に

ドサっ

遠くでかすかに、何か重いものが地面に落ちる音がする。寝こけたな。よし、今なら行ける。

「さって、行こうか。歩ける?」

アタシはすばやく立ち上がると、持っていた鍵で、鉄格子の施錠を外した。警報もセンサーも動かない。大丈夫だ。

「そんなことしたら、あなたが…」

ここへきて、まだアタシの心配なんてする。

出会ってまだ二日目のあんたを脱走させようっていうアタシが言うのもなんだけど、変な奴だよ、やっぱ。


「だからもう手遅れなんだって。警備兵に睡眠薬飲ませちゃったし、監視カメラも、逃走ルート用のは回線いじって、

 ダミーの映像流すシステム組んできちゃったし、警報装置も細工済み。

 巡回の兵士のルートも抑えてあるし、あとは、監視センサーなんかも、あらかた潰してきちゃったしな」


それからアタシも、レナを元気づけてやろうと思って、出来る限りの笑顔を作って言ってやった。

「行くぞ」





271:◆EhtsT9zeko:2013/05/10(金) 19:26:01.67 ID:q4CF4/Gf0

アタシはレナの手を取った。

「行くぞ」

警備兵の脇を抜け、階段を上がり、狭い廊下を走り抜けて、さらに登りの階段。

そこから、また狭い廊下に出て、端にある食糧を主においている物資倉庫の搬入のための通用路へ出る。

前もって止めといた、隊長が格安で譲ってくれたSUVはちゃんとアタシを待っててくれた。

「後ろに乗って」

 レナを後ろの座席に押し込んで運転席に飛び乗ったアタシはエンジンをかけて車を走らせる。

管理棟の敷地を出て、軍施設中央を貫く道路に出る。アタシは周囲を警戒する。

大丈夫だ、まだ、気づかれている気配はない。あとは…この先にある営門だけ。

そこでは、アタシが直接話をしなきゃならない。

バレていないこの段階で無理矢理突破するのは逆効果だし、騒ぎを起こさずに通過したい…。

 アタシはレナ急いでカバンからアタシの服を取り出して着替えるように言った。

この先に営門があって、そこで検問されるだろうことも。

「大丈夫なの?」

レナが聞いてくる。

「あんたの顔はまだ割れてない。脱走がバレれば話は別だが、しばらくは大丈夫だろう」

そう、そのはずだ。何も落ち度はなかったはず。隊の奴らが、アタシの行動を見て不審がって通報さえしてなければ…

いや、みんなはそんなこと、しない、はず。

 やげて、目の前に金網の張られた門が見えてきた。この時間だ。すでに閉じていて、数人の兵士が警備をしている。これが最後だ。

ここを抜ければ、あとはいくらでも逃げようがある。ここさえ、越えれば…。

 アタシは大きく深呼吸をして、心を静めた。微かに、手が震えているのがわかった。

ビビってんのか…武者震いか?いや、こりゃどっちもだな…くそっ、落ち着けよ…。

 自分に言い聞かせながら、アタシは車を営門の前に止めた。

「こんばんは、少尉殿。こんな時間に、どちらへ?」

警備をしていた兵士がアタシの顔を覗く。階級章が見えたのか、格下の彼は丁寧な対応だ。


「すまない、連れが階段から落ちてけがをしたんだ。

 軍医殿が、今は負傷兵の手当てに回ってて戻らないそうなんで、街の総合病院へ行きたいんだ」


「なんですって?」

彼がレナの顔を懐中電灯で照らした。そして息をのみ

「こ、これは…す、すぐに通します。あ、いや、軍用車で先導しましょうか?」

とあわてた様子で言った。

「いや、それには及ばない。連なって走るより、一台の方がずっと早い」

「そうですか…おい!すぐに開けろ!」

兵士がそう言うと、道路をふさいでいた金網が開いた。アタシは敬礼をしながら車を走らせその門を通過する。

 車を、不自然に思われないように加速させる。ルームミラーの中で、ゆっくりと営門が小さくなっていく。

追手は…大丈夫、まだ来てない。まだ…まだ、だ。何度も何度もルームミラーで後方を確認する。車がトンネルを抜けた。

この先の街へ続く幹線道路に乗っちまえば、あとはこっちのもんだ!

 そこまで来て、ようやくふぅーーと息を抜けた。やったぞ、やってやった!隊長!





272:◆EhtsT9zeko:2013/05/10(金) 19:26:37.47 ID:q4CF4/Gf0

「あー緊張したぁ!」

そんな気持ちとともに、そう言葉が漏れた。

体中が固くなっちゃったみたいで、シートに座りながらモゾモゾと体を動かしてほぐしてみる。

 レナはそんなアタシを「信じられない」というような表情で見つめている。まぁ、そうだろうな。

アタシだって、半分くらい信じらんないと思ってるよ。いや、3分の1くらい?

「どうして、どうしてこんなことを?」

はは、そうだろうな、普通、聞くよな、うん。どうしてだろうな、どうしてアタシはこんなことをしたんだろう?

 アタシはレナの言葉を聞いて改めてそれを考えた。

 もしかしたら、アタシ死んじゃってたかもしれないんだよな。でも運よく生きてて、で、運よく生きてたレナと出会った。

敵同士だったけど、アタシは自分が、もう殺したくないって思えてて、レナを撃たなかった。

そんなアタシを、レナも撃たなかった。ちっぽけなことに思えるけど、あれってすごくデカイことだったんだよな。

だってそうでなかったら、アタシはレナの家族の話なんか聞けなかったし、そうしたら、一晩一緒に過ごすなんてことはなかった。

アタシとレナは敵同士だったけど、そうやってお互いの人生を「生かす」ことができたんだ。

それはアタシがレナを信じたからで、それで、レナもアタシを信じてくれたから、だ。

 そう、こいつは、レナは、アタシを信じてくれたんだ。初めて会ったアタシを。敵だったアタシを、信じてくれた。

その信頼のベースになってたのが、アタシが孤独のつらさを知ってたから、ってことなんだろうけど、

それを知ってたから、アタシはこいつを助けたいって思った。

あの気の良い陸戦隊に見つかる前の晩、アタシは、いっときでもいい、

彼のように、レナの心を照らして温める存在になりたいって思った。

もしかしたらそれが、レナに、アタシを信じても良いって、思わせたのかもしれない。そうなのかな?

そうだったら、いいな。

 こうやって、信じてもらる、なんてこと、今まで考えたことなかった気がする。

そりゃぁ、隊長やほかの隊のみんなだって、アタシのこと疑っちゃいないだろうけど。

でも、なんだろう、やっぱりこいつは特別だ。

隊の連中は、ずっと一緒にいる味方だったから、そんなこと気にしたこともなかったし。

レナは、それをアタシに教えてくれたんだ。

アタシを信じてくれたこと、たぶん、誰かに信じてもらえるってことを、このあったかい、まるで彼にもらった灯台みたいな、

明るくて暖かい、この感じを…。だから、アタシは、レナを守ってやりたいってそう思うんだ。





273:◆EhtsT9zeko:2013/05/10(金) 19:27:16.78 ID:q4CF4/Gf0

 アタシはこの漠然とした気持ちをレナに話した。

でもうまく入っていかなかったのか、

「あなたって、同性愛者?」

なんて、言いにくそうに聞いてくるから笑ってしまった。

 まぁ、あんまり人をそう言う目で見たことないからわからないけど、たぶんどっちでも良いんじゃないかな、なんて答えながら、

不時着したときのことなんかを交えながら、どうしてそう思うようになったか、も話した。

今度はちょっとわかってくれたみたいだった。

 でも、別のところで少し心配があった。アタシはレナを守りたいって思うけど、レナはどうなんだろう?

脱走してきたとはいえ、元連邦のアタシだ。一緒にいたら、レナに迷惑が掛かっちまうかもしれない。

アタシと一緒に行くってことは、もしかしたらジオンと敵対することになるかもしれない、と伝えた。

そしたらレナは


「勝手かもしれないけど、私は、あなたの助けなしでは、どこへも行けない。だから、お願い。

 私をキャリフォルニアの基地まで連れて行って。

 そこで、ジオンがあなたにひどい扱いをしそうになったら、今度は私が必ずあなたを助ける。

 もし連邦が追ってくるなら、ジオンに迎え入れてもらえるようにお願いもでもなんでもする」

なんて言ってくれた。レナもアタシを守ってくれる、ってのか。へへ、うれしいじゃんか、それ。

なんだか、本当にうれしかったので、アタシは珍しく照れずに胸を張って答えてた。


「もしものとき、あんたが助けてくれるっていうんなら、どこへだって行くさ!

 旅には目的地があったほうが頑張れるもんだしな。良いよ、行こう、キャリフォルニア!」


このときはまだ、胸の内にある変なあったかさに、なんとなくしか気が付いてなかったけど。

でも、しばらくして、それは、アタシのかけがえのない灯台になってくれることになる。

レナに出会えたことが、どんなにか幸運だったかってことを、あとでいやっていうほど思い知らされることになるんだ。





274:◆EhtsT9zeko:2013/05/10(金) 19:28:17.10 ID:q4CF4/Gf0

「ってな、ことがさ、あったワケよ」

「ふふ。改めて聞くとそのころからアヤさんは、レナさんに何かを感じてらしたんですね」

酒のせいで、すっかり長話になってしまったのだけど、アイナさんはいつものとおりの穏やかな笑顔を浮かべながら、

ちゃんと最後まで話をきいてくれた。


「そうなんだよなぁ、考えてみればあの頃から、へんなところで意地っ張りで、

 そのくせヘタレで泣き虫で、妙に気ぃ遣いなんだよな。な?」

アタシは座っているソファーの隣ですっかり寝入ってしまったレナの頭をペシペシひっぱたいた。

「ふふふ」

っとアイナさんは笑った。

「でも、アヤさんもレナさんも、お互いにしっかり愛し合っていますよね」

「それがさ、良くわからないんだよ」

「そうなんですか?」

アイナさんはキョトンとした顔をした。


「うん。ほら、愛ってさ、たとえば親子愛だったり、兄弟愛だったり、隣人愛だったり、

 それこそ男女とか恋人同士の愛とかっていろいろあるだろ?それってのは相手との関係によって形を変えるもんだと思うんだけど…

 正直、アタシにとってレナって、何なんだろうって思うんだよ。

 だってさ、たとえば恋人だと思うんなら、くっついてたいとか、キスしたいとか、その…ほら、夜のこととかさ、

 相手の子どもが欲しいとか、あれこれ思うもんなんだろうけどさ。

 でも、アタシ別にレナとどうしてもそういう恋人っぽいことしたいって思わないし、

 あぁ、いや、レナがしたいって言うんなら断ることもないんだろうけどさ。

 でもレナもおんなじなのかわかんないけど、そういうこと言ってくるわけでもないしさ」


アタシが言うと、アイナさんは少し考える様子を見せてから

「女性は自分からは言いにくいですからね。もしかしたら、

 アヤさんが言ってくれるのを待ってるのかも知れないですよ」

と割と真剣な表情で言った。


「そっかぁーそう言うもんかなぁ。レナに限ってそんなことはないような気がするんだけど…

 って、あれ?アイナさん、今サラッとアタシに暴言吐かなかった?」

「そうですか?」

アイナさんは珍しくしれっとした顔でまた、ふふふっと笑った。それからさらに

「レナさんだってもしかたら、アヤさんの子どもが欲しいって思ってるかもしれないですし」

と言って笑う。

「いや、アイナさん、もう完璧それアタシをいじってるよね?真剣に話する気ないよね?」

アタシが追及すると、アイナさんはまたまたふふふと笑って回答を濁した。もう、ずるいよ、それ。

「でも、そうですね、まじめに感じることを言わせてもらうと…」

あ、いま、まじめにって言ったよね?てことはやっぱ直前まではふざけてたってことだよね?ちょ、アイナさーん?





275:◆EhtsT9zeko:2013/05/10(金) 19:28:51.34 ID:q4CF4/Gf0

「どういう存在か、なんて、ゆっくり見定めていけば良いんじゃないでしょうか。

 だって、お二人でいて、楽しくて、これからもそうしていきたいって思われるんでしょう?

 だったら、そんなに焦ることもないと思いますよ」


「うん、そっか…そうだな…。アイナさんとシローはどうなんだよ?」

「えぇ、うまくやってますよ」

そう言ったアイナさんは、腕を組みかえて、隣のソファーでだらしなく伸びて寝ているシローを見た。

 ふと、アタシは気が付いた。アイナさんの手が、自分のお腹にそっとあてられていた。

―――あ、まさか、アイナさん…

「アイナさん、子どもが?」

アタシが聞くとアイナさんは顔を少し赤らめてニコッと笑い

「えぇ、おそらく」

と言った。

 シロー、バカだけど、子どもの作り方知ってたんだな…

あぁ、いや、シローのバカさはどっちかっていうと、どうしたら子どもが出来ちゃうかを知らない類のバカさかもしれないけど…

って、そんなことをアイナさんの前で言ったらさすがに怒られるだろうから黙っとくけど。

「そっか…じゃぁ、安静にしてないとな」

だからアイナさん、今日は一滴も飲まないんだな。納得がいった。

「はい」

アイナさんは笑って言った。

 それからまーた思い出したように

「アヤさんは、お子さんほしいって思わないんですか?」

なんて聞いて来た。

 まぁ、ほしいような気もするけどさ…ドアンなんかを見てたら、大変だろうけど、楽しそうだし…なんて言ったら

「良かったらうちのシローをお貸ししますよ?」

なんて言うんだ。アイナさん、ごめん、シローはアタシ向きじゃないわ。っていうか、シローはごめん。

アタシが全力で断ると、

「ふふふ、冗談です」

だって。さすがにそこは、本気でたまるか。


 それからアタシはまたアイナさんと取り留めもなくいろんな話をした。

なんだか楽しくて、すごい遅くまで話し込んでしまったけど、

アイナさんが話しながら眠ってしまったもんだから、ソファーに横にして、毛布を掛けてやった。

体冷やしちゃダメだからな。





276:◆EhtsT9zeko:2013/05/10(金) 19:29:19.00 ID:q4CF4/Gf0

 そうしてからアタシは、ふらっと夜風にあたりに行った。ペンションから坂を下って、港にでる。

街灯のない港から見上げる夜空には満点の星。桟橋から足を投げ出してごろっと寝転ぶ。


 あれから半年もたってない。なのに、ずいぶん長い時間、遠いところまで旅をしてきた気がする。

振り返ると懐かしいことばかりで、そのひとつひとつが胸に温もりをくれる。

シローやアイナさん、ドアンや子どもたちに、クリス。

それから、隊のみんなにそしてレナ。

たくさんの出会いがあって別れがあって、寂しい思いをしたり、立ち止まりそうになったこともあったけど。

でも、ここまで来てよかったなって、心から思える。

 変わってしまったものは元には戻らないかもしれないけど、それはなくなってしまったわけじゃなくて、

形を変えて手の届くところにある。心の中にしずかに漂っている。

そんなことが、なんだかとてもうれしいんだ。

 なぁ、アタシ頑張ったろ?今日まで。これからも、まだ頑張るんだぜ。

だから、見ててくれよな。あんたが好きって言ってくれた、アタシの笑顔、まだまだいっぱい、見せてやれそうだからさ。

ありがとうな、ユベール。アタシは幸せもんだ。



 そんなことを思いながら、アタシは大好きな波の音と、潮の香りとを感じながら、

胸の中に灯った炎の温もりをひとつ、またひとつ、数えなおした。





277:◆EhtsT9zeko:2013/05/10(金) 19:31:57.87 ID:q4CF4/Gf0

以上です〜

おまけ2を先に終わらせて、アイナさんたちが来てる風に落としたかったのでした。

読んでいただきありがとうございました!





278:NIPPER:2013/05/10(金) 21:17:20.09 ID:eMSFkT/YO

20歳児シローくんだからなぁ





281:◆EhtsT9zeko:2013/05/11(土) 01:09:26.84 ID:UQJ2FP8X0

>>278
なんかシローってこんな感じしますよねw





280:NIPPER:2013/05/11(土) 00:45:28.87 ID:WQ6vMSrC0

今回も安定の面白さ!
レナとアヤどちらも良いキャラで感情移入しまくりですよ





282:◆EhtsT9zeko:2013/05/11(土) 01:10:50.93 ID:UQJ2FP8X0

実は、すでに新作?書いてて、一応アヤレナの関連作なのだけれど、新スレにしたほうがいいんでしょうか?
このままここに書いてっておk?





283:NIPPER:2013/05/11(土) 01:26:02.27 ID:LyJmJS6SO

どんな内容かによるが…
ガラッと代わるのか、この流れで行くのか

俺的には新たにスレ立ててもいい気がするけど





284:◆EhtsT9zeko:2013/05/11(土) 02:35:35.81 ID:UQJ2FP8X0

>>283
いちおう、内容としては

「頑張れ!マライア!密着オメガ隊最前線!」

ですw

ただ、アヤレナの話ありき、というか、スピンオフ的な話で、この物語単体だけでは意味を成さないかもしれず。
そう思うとこのまま続きで書いていくのもありかなぁと思いつつ、どうしようかなぁと。





285:NIPPER:2013/05/11(土) 03:17:53.74 ID:hhKYI5k9o

まだ300行ってないんだからここで良くね?
アヤレナさんの世界観で継続するならこのままで良いと思うな。





287:NIPPER:2013/05/11(土) 07:36:19.41 ID:Fs2fIQ1Eo

関連作だし、このまま行こうじゃないか。待ってる





289:◆EhtsT9zeko:2013/05/11(土) 22:54:00.63 ID:UQJ2FP8X0

こんばんわー!

予告通り、新らしく投下しまするは、オメガ隊とへっぽこ隊員マライアの話です。
これも、アヤレナとリンクしているというか、アヤレナが逃避行している最中にオメガさん達がなにをしてたか
がメインのお話になります。

アヤレナのようなほっこりはありませんが、オメガ隊の男節とマライアの成長が描ければと思います。


なお、今作は、前回と違って皆さんの股間がはち切れそうなイベントをご用意しました。
以下の投下分に含まれますので、どうぞ最後までお付き合いよろしくお願いいたします。

それでは、投下行きますー





◆EhtsT9zekoさんのツイッター
@Catapira_SS


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