ユミル「ミドルなライナー」
- 1 :1 2013/10/12(土) 06:27:28 ID:qzFA42eI
※10巻ネタ含む
※現代転生パロ
※登場人物二人しかいない
※短編で続かない、続く時は新スレ- 2 :1 2013/10/12(土) 06:28:18 ID:qzFA42eI
唐突だが、私には前世の記憶がある
日常生活には当たり障りのない、ただ――懐かしく感じる程度の記憶
「うーん、ホールスタッフは時給が900円……一番いい時給が、パチンコ店だけれど」
煙草の臭いで、帰宅するのは気が引ける
そう思いながら、ユミルはバイト情報誌の紙を捲った
今年から進学し
施設暮らしをしながらの高校生活は、もうすぐ一ヶ月が経つ
施設暮らしなのに、何故高校に行けるのかと言うと
全国に何箇所かある施設に入所出来ているお陰だ
公立の学校であれば、なんとか通わせて貰える
だがそれも、高校卒業後に返していかなければならない- 3 :1 2013/10/12(土) 06:29:47 ID:qzFA42eI
少しでもお金が欲しい
のに、まだバイトが決まらない
――この悪人面がいけないのだろうか
お金は大切で、必要だ
その事は身に染みているのに
――あぁ、もう!
雇って貰えたら、全力で働くと言うのに
そんな心の声を、春の空に吐きだした高校一年生の時に
私は、そいつに再会した
いや、再会と言えるの物なのか
それとも第二の出会い、と言うべき物なのか- 4 :1 2013/10/12(土) 06:31:05 ID:qzFA42eI
「待てっ!」
――ん?
遠くから聞こえて来た声に、少しだけ意識が傾いた
待て、とは何だろうか
「お、おい……待てぇ!」
――なんだ、この声
徐々に近づいてくる、普段の生活で聞きなれない台詞
それを聞いた私の体は不意に止まり、そしてその声の方を見てみる……と
「う、うわぁああ!?」
「ふぁ!?」
ドンと、勢いよく
コントよろしくと言った感じで、私の体は走ってきた人物にぶつかり……跳ね飛ばされた
なんとか、足を踏ん張って体制を整えるのに成功する- 5 :1 2013/10/12(土) 06:33:57 ID:qzFA42eI
「なっ」
なにしやがる!と
生来の口の悪さが、出かかったその時だった
視界の端を、黄色みの強い
明るい金髪が駆け抜けて行く
朝一番の日の光を凝縮したような
その色に、思わず目が惹かれた
「待て、おい……このストーカーめ!!」
そう叫びながら、こちらの脇を若干重い足取りで駆け抜けて行く男
記憶の中の様な、ガタイの良さは無い
記憶の中での凛々しかった表情も、なんとなく緩やかな印象になっている
ん、アレはアイツか?
と言うか、あいつは今なんて言った?- 6 :1 2013/10/12(土) 06:35:52 ID:qzFA42eI
そして
「よしっ」
一息吐きだした後に、駆けだした
幸いにも、障害物は少ない
中学時代の部活動でならした足は、どんどん加速していき
息を切らしている立ち止まったそいつの背を、あっと言う間に追い越す
「えっ」
「あいつ、追えばいいんだな」
擦れ違いざまにそう確認の一言を漏らした後は、もう脇目も振らない
後ろから追ってくる声もないと言う事は、大丈夫なのだろう
集中して、追いかけると
目標の背中が、人ごみに紛れ込む前に余裕で追いついた
走っていた若い男は、こちらに気付くとギョッとしたように目を見開く- 7 :1 2013/10/12(土) 06:37:31 ID:qzFA42eI
「おいっ待て!」
一応声を掛けるが
やはりと言うか、相手は止まらない
なのでその首元に、手が届きそうな距離まで近づいて
その襟元をギュッと掴む
すぐさま立ち止まると相手が首が閉まってしまうので、スピードは落とさずに並走した
「なぁ、ちょっとだけ止まれよ!」
「……っ!」
そいつの顔に、僅かに緊張が走っている
ついでにこちらの言葉にも耳を貸さない、本当にストーカーなのだろうか
そう思いつつ、少しだけ減速する
相手がそれに慣れたら、更にもう少しだけ減速
それを繰り返そうとした……その時だった
首元を掴まれているそいつの体が、急にこちらに近づく- 8 :1 2013/10/12(土) 06:38:31 ID:qzFA42eI
「え」
避けきれなかった
タックルを喰らわされて、体が傾き
足がグギリと鳴る
「いっ」
いてぇえええ!!
その、痛みが駆け抜けた瞬間
無意識に、本当に無意識に
握っていた逃走者の襟元を、手前にぐっと引っぱった- 9 :1 2013/10/12(土) 06:39:26 ID:qzFA42eI
「う」
「わっ」
その声の、どちらがこちらで
どちらが相手かは、分からない
だが、結果は同じだ
同時に、こけた
「あ、いたたたた」
声が漏れ、目を開けた瞬間
目の前にいる逃走者の瞳が、僅かに危険な色を灯している事に気付く
――あ、やばっ
その思考と同時に、逃走者の手がこちらに向ってくる
こちらの体制は不利で、しかも足が痛い
やばい
その言葉が、頭に一杯広がった瞬間だった- 10 :1 2013/10/12(土) 06:41:39 ID:qzFA42eI
「どりゃああああああ!!」
「べふっ」
大きな怒号に、間抜けな声
脳裏に浮かぶイメージとしては、大きな牛に体当たりされた人間の様な
そんな光景が、目の前に広がった
状況としては簡単だ、目の前の逃走者に
さっき私が追い越した男が、その大きな体一杯を使ってタックルをした
「あ、わわっ離せよ!」
「ほら、観念しろ!盗聴器も見つけたし、お前が部屋を覗く瞬間だってこちらが抑えたんだ」
男はジタバタと、その体の下でもがいているが
こいつの大きな体じゃ、とても抜け出せないだろうな
命一杯の力を使って暴れている様だったが
それにも動じていない様子で、男は身柄を拘束している
「い、いやだ、離せぇ!」
「暴れるなって」
宥めながら
男はこちらに、視線を向けた- 11 :1 2013/10/12(土) 06:42:48 ID:qzFA42eI
あの瞳だ
青く正義感の宿った、存在感のある瞳
でも、昔とは違う
その瞳の下には、僅かな皺がいくつか刻まれ
走っていた所為か大きく息が乱れ、その額にも汗が滲んでいる
何より
あの時、あの時代ではついぞ見た事のなかった
――大人へと成長した、彼の姿
そいつはこちらを見て、ニカッと笑った
「おぅ、お前のお陰で助かった」
ありがとうな、と元気よく言われ
少しだけ、残念に思う
――彼には、前の記憶が無いらしい
彼にとっては、そちらの方がいいだろうけれど- 12 :1 2013/10/12(土) 06:44:35 ID:qzFA42eI
にしても、最初に出会った
前世の邂逅者がこいつか
意外に思いつつ
倒れた際に付いた埃を、軽く払い落しながら立ち上がる
「大したことじゃないさ、まぁジュースの一本でも奢って貰えればいいんだが」
そう言うと、相手は大きな声で笑った
朗らか、と言うよりは懐の大きさが現れた様な温かい声
笑っていると目元の皺が、少しだけ増える
へぇ、笑い皺があるのか
それはいい事だ
「はは、言う奴だな……って、あ」
「あ」
笑った瞬間、力が緩んだのか
あいつの下に居た人間が、命一杯の力を込めて拘束を振り解いた
そしてその瞬間
こちらに向かって、拳を振り上げられた
どうやら、激昂しているらしい- 13 :1 2013/10/12(土) 06:46:29 ID:qzFA42eI
「うらわああああ」
「……めんどく、せっ」
声を荒らげながら、殴りかかってくるそいつに
私は軽く吐きだした感情と共に、動きをかわして
そのまま、背負い投げた
走ってきた勢いを最大限に活用して放り投げたので、男は景気よく飛んでいく
信じられない、と言う表情を引っ提げて
そして、そのまま
地面に激突し、気を失った
「……よし」
そこまでの一部始終を確認してから、軽く後ろを振り向く
するとそこにもまた、信じられないと言う様な表情をしている人物がいた
その表情が面白くて、思わず噴き出す- 14 :1 2013/10/12(土) 06:48:02 ID:qzFA42eI
「なに、拍子抜けているんだよ、めんどくせ―」
軽く、そいつに近寄ってみる
奴はハッとしたように、改めてこちらを見た
「お前、……やるなぁ」
「どうも。これでもこの間の中学卒業までは、柔道と陸上の掛け持ちやって居たんでね」
そこらへんの男よりも体力はあるんだ
そう言って、ポンと奴の肩を叩く
「怪我はないか?」
「それはこっちのセリフだ、その制服……それに中学の卒業って」
まさか16歳か?
と言う言葉を、思いっきり疑問系に吐きだされる
正しかったので、笑いながら是と答えた
すると相手は、なおも呆れた様な表情を作る- 15 :1 2013/10/12(土) 06:51:18 ID:qzFA42eI
「なに、最近の女子高生ってそんなにカッコイイ事ができんの?」
「そっちが大人なのに、間抜けすぎるだけだって」
思わず、前の調子で軽口を叩くと
最近の女子高生って礼儀知らずだな、と言う付け足された
その言葉への、面白味のない中年は嫌われるぞ
と言う返答は――口にしないでおくとするか
なんだかカルチャーショックを与えてしまったらしいが、それは放っておいて
目の前の「元同期」を少しだけ観察してみた
スーツは皺くちゃで、胸ポケットにタバコが一箱突っ込まれている
ストーカーを追いかけてはいたが、警察の様には見えない
だがそれ以上に
体力的なピークを過ぎている様に見えるとは言え、一般人にまかれそうになった事には
僅かながらショックを受けた
「……ちなみにあんた、誰?」
「ああ、俺は」
そう言って、少しだけカッコつける様に、ごほんと咳払いをした
正直、先程の失態の所為で全然カッコ良くは無い- 16 :1 2013/10/12(土) 06:52:31 ID:qzFA42eI
「俺はライナー・ブラウン、職業は探偵かな」
「へぇ、私はユミル。初対面で個人情報は晒したくないんで、名前だけな」
ニヤリ、と少しだけふざける様に言うと
相手は不機嫌そうな視線を向けてきた
「……おい、俺は名前と職業を明かしているんだぞ」
「こっちも一応制服と職業の女子高生ってのは明かしているぞ、いいじゃないか」
声を出して笑ってみせると、どうやら口では勝てない事は理解したらしい
ガリガリと頭を掻きながら、私の後ろで伸びている男の方へと視線をやりつつも話を続ける
「まぁいい……俺はとりあえず、こいつを依頼者の所に連れて行かなくちゃいけないんだ」
そう言うと申し訳なさそうに、顔を歪めた
「だから、ジュースは今は奢ってやれないんだよな」
「なんだよ、ケチだな」
批判、だけどこれも笑いながら言う- 17 :1 2013/10/12(土) 06:53:47 ID:qzFA42eI
「だから」
そう言うと、ライナーは胸のポケットから煙草ではない物を引っ張り出す
どうやらそれは薄い名刺入れだったらしい――それから一枚の紙を取り出し、こちらに差し出した
「明日でよければ時間が空いている、名刺にうちの住所も番号も載っているから」
よければ連絡をくれ
と言われたので、その紙に手を伸ばして受け取ってみた
早速、その紙をマジマコメント一覧
-
- 2013年10月12日 18:23
- ちょっと色々こじらせ過ぎな気がした。
-
- 2013年10月12日 18:35
- これは!これは続きが欲しいい!!
-
- 2013年10月12日 18:46
- テンポが悪い。
性格改変されすぎ。
ライユミとか誰得だよ。
玄人様、批判はこんな感じでいいっすか?
-
- 2013年10月12日 18:56
- ライナーは淡い金髪にアンバーの瞳だろうが馬鹿め
-
- 2013年10月12日 19:22
- 割と好き
クリスタがバツイチライナーの娘だったりしたら俺得
-
- 2013年10月12日 19:54
- おもしろかったよ
※5
それおもしろそう
-
- 2013年10月12日 20:00
- うん、ライナーの瞳は青色じゃないよね
-
- 2013年10月12日 20:11
- 久々に続きが気になる
-
- 2013年10月12日 20:42
- 内容的にシリーズ化しやすそうだな
是非お願いします
-
- 2013年10月12日 21:10
- しんみりした雰囲気か好きだなー
続いてくれたら嬉しい
-
- 2013年10月12日 22:18
- そもそも設定的に日本なのか?
いやこっちとしてはわかりやすくていいんだけどね
-
- 2013年10月12日 23:28
- 転生ネタはやっぱり同じ時間同じ場所に生まれるとは限らないから面白いんだよな
これは続きが見たいがライサシャみたいに荒れてほしくないからこれで終わりでもいい気もする
-
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