繊細緻密な絵画の世界。奇跡のリアリズムとも言うべき日本の写実画家達の作品
日本の写実画家の作品をご紹介します。当サイトではスーパーリアリズム、フォトリアリズムを多く紹介してきましたが、こちらも同様にリアルに描かれていますが、写真を用いて対象を克明に描写するフォトリアリズムとは違い、画家自身がモチーフ、女性や対象と向き合いそれぞれの解釈で描いています。描かれた画面からは画家の眼差しや視点、思考がひしひしと伝わってきますね。写真のように超リアルに描かれたフォトリアリズムも凄いですが、モチーフと真摯に向き合う画家達の姿には感動を覚えます。
以下は写実絵画を分かりやすく説明したテキストです。
「写実絵画とは物がそこに在る(存在する)ということを描くことを通してしっかり確かめようとすること。物が存在するということのすべてを二次元の世界に描き切ろうという、一種無謀ともみえる絵画創造のあり方。物がそこに在るということを見える通りに、触れる通りに、聞こえる通りに、匂う通りに、味のする通りに描ききろうとする試み」
野田弘志さんの「リアリズム絵画入門」より
2010年には日本初の写実絵画専門の美術館であるホキ美術館がオープンしました。ここでご紹介する画家の作品も多く所蔵されていますので、もし気になった方はホキ美術館に行ってみてはいかがでしょうか。
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1.野田弘志(1936年)
グレーや白を基調とした作品がとても有名ですね。独特の配置でモチーフを並べ緻密に描く画家です。モチーフの1㎜の位置の狂いも許されないほどの緊張感が伝わる作品です。
野田弘志画集―Hiroshi Noda 1970‐1985 野田 弘志 求竜堂 |
2.森本草介
日本写実界の巨匠。「横になるポーズ」はとても有名です。描かれた女性の背中はあまりにも美しく「女性美の一瞬の輝きを写しとったかのよう」と形容されています。
女性の美しさを徹底して描いています。この「横になるポーズ」はホキ美術館にコレクションされています。
光の方へ 森本草介 森本 草介 求龍堂 |
3.五味文彦(1953年)
こちらは2009年に描かれた「レモンのある静物」。重厚で対象と真摯に向き合い描かれた静物が素晴らしいです。ものとしての存在感が異常なくらいです。柑橘系果実の瑞々しさや、パンのカサカサした感じ。味まで伝わってきそうですね。画面で質感が徹底して描き分けられています。
写実画のすごい世界 月刊美術 実業之日本社 |
4.島村信之(1965年)
温かみある女性像がとても有名。柔らかい光と清らかな空気感は女性らしさを表現しています。女性ではないですが個人的は「ロブスター」がおすすめです。対象を描き分ける力強さを感じます。
島村信之画集 島村 信之 求龍堂 |
5.諏訪敦
古典的描法ながら現代人の内面に迫る女性を克明に描き出す画家です。諏訪敦さんは女性を多く描いており、日本画家の松井冬子さんもモデルをしています。
こちらは舞踏家・大野一雄さんを描いた作品です。
どうせなにもみえない―諏訪敦絵画作品集 諏訪 敦,古井 由吉,小金沢 智 求龍堂 |
6.磯江毅(1954〜2007年)
磯江毅さんはスペインを拠点に活動した画家です。デューラーやヴァン・デル・ウェイデンに影響され、スペインで30年間もの過ごしました。作品は緻密を極めた為、年に4、5点しか作品が仕上がらないほど。53歳で亡くなられました。
増補 磯江毅|写実考 Enlargement Gustavo ISOE's Works 1974-2007 磯江毅 美術出版社 |
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