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カオスな情報置場:【不定期映画レビュー】第23回 新房昭之監督『劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語』


2013年10月30日18:55

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不定期映画レビュー第24回。
自分で自分の文体がキモイのは理解してるから言ってくれるな。


『劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語』

総監督:新房昭之(記事タイトルにはこちらを表記した)
監督:宮本幸裕
脚本:虚淵玄
主演:悠木碧、斎藤千和、他

2013年公開


公式
http://www.madoka-magica.com/
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評価
★★★★★★★★☆☆(8/10)



●あらすじ

 鹿目まどかは見滝ヶ原中学校に通う女子中学生だが、その正体は魔法少女。
 同じ学校に通う三木さやか、巴マミ、佐倉杏子と共に、人々の心から生まれた「ナイトメア」と戦い、街の平和を守る日々を送っていた。そこに転校生、暁美ほむらが現れる。同じく魔法少女だったほむらはまどかたちとすぐに打ち解け、協力してナイトメアと戦うようになり始める。
 しかし、ある日、ほむらは気づく。
「私たちの戦いって、これでいいんだっけ?」


●レビュー

 TVアニメ『魔法少女まどかマギカ』の最終話が放送されてから2年が経った。

 一時期熱病に浮かされたように本スレを追い、ブログを更新していた僕だったが、放送が終了すると熱が引くように追うのをやめた。
 結構綺麗に完結していたからこれ以上追っても蛇足が増えるだけだと感じたのもあるが、何よりも、僕は最終回に何処か釈然としないものを感じていたのだ。(当時の過去記事での僕曰く「世界改変ENDなのは個人的にちょっとだけ期待外れというか拍子抜けな感じ」「主人公が自分の志を果たして消えたりするあたり虚淵シナリオっぽいなーっていう印象」ということだった。結局BDは全巻買ったのだけれど)
 そんなところで、この劇場版での新作である。
 真の完結編でもあるし、本編をぶち壊す映画でもあった。



 まず目に付くのは過剰なまでに丁寧に梱包された不快感だ。
 映画はモノローグから始まり、戦闘シーンへと繋がる。
 魔法少女のまどか、さやか、マミ、杏子の共闘。
 人語を話さないキュゥべぇ。のどかな朝の鹿目家。カップルになった仁美と上条。
 不自然に空いたクラスの座席。転校生として現れるほむら。
 “王道の”魔法少女もののように幸せな光景でありながら、すでにTVシリーズを観た僕らにはそれが異形にしか見えない。
 今観ているものは、何なんだ?
 そんな不安が湧いて来る。
 なぜかダンスまで加えて華やかになった変身シーン。
 五人揃った魔法少女達のかけ声。ピュエラ・マギ・ホーリー・クインテット(魔法少女 聖なる五重奏)。
 魔法少女達のお茶会。ナイトメアという敵。
 今観ているものは、パラレルなのか?
 TVシリーズを観て来たはずなのに、物語の立ち位置が把握出来ない。
 それがとにかく居心地が悪い。
 そして、この居心地の悪さが一部を除いてほぼ全編で貫かれている。
 個人的に、冒頭の十数分の違和感はこの映画の珠玉だ。


 物語はその後、違和感に気づいたほむらを主人公として回っていく。
 ほむらは、あまりにも理想的過ぎる世界から脱出するために、動き出す。 
 のだが、ここから賛否(ハッピーエンドと解釈するか、バッドエンドと解釈するか)が分かれるかと思う。(実際、脚本担当の虚淵玄さんもパンフレットのインタビューにて「まあ今回は賛否両論分かれるかと思います」という旨の発言をしている)
 

 問題は、『魔法少女まどかマギカ』という作品の「主人公」は誰なのか、という話である。 

 「主人公格」なら「魔法少女たち」と言えばいい。
 なら、「主人公」は? タイトルにも冠されたまどかなのか? それともほむらなのか?
 TVシリーズの途中まで、確かに主人公はまどかだった。
 しかし、8話、9話あたりからほむらが主人公のようでもあった。
 そして、TVシリーズのラストでまどかは自らを犠牲に魔法少女達を救済することを選ぶ。
 これは、まどかの願いの成就であり、ほむらの願いの頓挫だ。
 たぶん、これが、僕がTVシリーズ最終回に何処か釈然としないものを感じた理由だ。
 作品の主人公をほむらと考えた場合、TVシリーズは主人公の目的を達成していない。
 そうしたモヤモヤ感を、この映画は見事に解消してくれる。
 これが、僕がこの映画を「真の完結編(ハッピーエンド)」と言う由縁である。
 逆に、作品の主人公をまどかと考えた場合、この映画は「ぶち壊し(バッドエンド)」になりかねない。
 まどかとほむらの願いは互いに両天秤の関係にあるからである。
 だから、人によってはこの映画は「ぶち壊し(バッドエンド)」と思えるだろう。
 もっとも、しっかりと本編の延長に成り立ったバッドエンドだから、何か破滅的な魅力を覚える人も多いと思うが。


 惜しむらくは「悪い意味で虚淵玄らしい」という点である。

 ネタバレになるので詳述は避けたいところだが、今作の核心には過去の虚淵作品とダブる点が多い。
 例えば『沙耶の唄』であったり、例えば『鬼哭街』の結末であったり、である。(一応、反転にしておいた)
 過去の虚淵作品を知っている者としては、そういった点がどうにも肩透かしを食らったような心地がした。
 僕は「虚淵玄が書きそうな脚本」ではなくて、「さすが虚淵玄と思わせる脚本」が見たかった。
 それに、まどかマギカという作品が面白かった理由は「予想の半歩先を行くような展開」だったはずなのだ。
 そこが、残念だった。
 もちろん、まどかマギカのファンの中で、上に挙げたような過去作品をプレイした人が圧倒的に少数派だということは分かっているのだが、特に後者は今月に文庫版が再販したこともあって、印象に残っていたのである。
 ただ、映画『リベリオン』(虚淵玄と中央東口は過去にこの映画の同人ゲームとして『浄火の紋章』を制作している)をリスペクトしたであろう銃撃と肉弾戦によるガンカタアクションに、弾丸が宙に射線を描きながら飛び交う戦闘シーンは良かった。


 大ヒットシリーズの劇場版ということで映像面には力が入っていてアクションも躍動感がある。
 この映画をどのように受け止めるかは人次第だし、元が人気作品故に過度に前評判が先行しハードルを上げられがちではあるが、TVシリーズを観ていたなら観に行く価値はあると思う。ただ、「大傑作だからファンなら絶対に観に行け」とは言えない。
 歯切れが悪い言い方だが、どうしても、こうなってしまうのだ。
 ちなみに、僕は今のところ二回観ている。

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この記事へのコメント

1. Posted by カオスな名無しさん   2013年10月30日 19:10 ID:pmwT4q1i0
そうそう、予想を裏切らない出来ではあったけど、予想を裏切ってはくれなかったって感じかな
2. Posted by カオスな名無しさん   2013年10月30日 19:13 ID:pmwT4q1i0
そうそう、予想を裏切らない出来ではあったけど、予想を裏切ってはくれなかったって感じかな
3. Posted by カオスな名無しさん   2013年10月30日 19:29 ID:pmwT4q1i0
そうそう、予想を裏切らない出来ではあったけど、予想を裏切ってはくれなかったって感じかな
4. Posted by カオスな名無しさん   2013年10月30日 19:55 ID:LTpC3NoC0
反転の2作品はだいぶ前にやったが、軽く忘れてるな。

もちろん、見に行った人によるだろうが
叛逆の物語は十分期待に応えてくれた。
見に行く前は不安の方が大きかったんだが
一度閉じた物語をもう一回開くって大変な事だからな。
5. Posted by カオスな名無しさん   2013年10月30日 22:29 ID:qJyh4.Kn0
パンフを読めばわかるがあの結末は虚淵提案ではないんだよな
6. Posted by 鮭(管理人)   2013年10月30日 22:38 ID:0mO2rj710
※5
「まどかとほむらを対立させる」っていう提案のもと、虚淵さんが膨らませたみたいなんで、100%虚淵さんかと言われればちょっと微妙なところではありますね

ただ「やっぱり虚淵だなぁ」って感じではありました
7. Posted by カオスな名無しさん   2013年10月30日 23:16 ID:Q0jOD5Pw0
謎を解くにつれモブキャラに代わって増殖していく使い魔が何とも不気味だったな

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