お湯が水よりも速く凍る、その仕組みが明らかに
常温の水と湯気の立ち上るお湯の両方を冷凍庫に入れると、お湯のほうが早く凍結する…一見すると何かの勘違いなのではないかとも思われるこの現象は、再発見者の名前をとってムペンバ効果と呼ばれています。
このムペンバ効果、科学研究の対象とみなされ始めたのはごく最近ですが、経験的には千年以上も前から知られていたもので、古くはアリストテレスも著書 “Μετεωρολογικῶν(Metereology,気象学)” でこのことに関する記述を残しています。
今回、シンガポールにある南陽工科大学のXi Zhang氏らは、この不可思議なムペンバ効果が、水分子間に働く水素結合によるものだとする結果を、論文投稿サイト “arXiv(アーカイブ)” に公開しました。
ムペンバ効果の一例。0℃に達するのは水(青線)の方が早いが、
凍結が始まるのはお湯(赤線)のほうが早い。(図引用元)
水素結合というのは、ある水分子の中の水素原子と、別の水分子の酸素原子の間で働く化学的な結合です。2つの分子の距離が十分に遠い状態ではこのような繋がりは発生しませんが、互いの距離が縮まってゆくと、徐々に強い相互作用を示すようになります。
この水素結合、水の物性に大きな影響を与えることで知られています。例えば、液体の温度を下げて固体にさせると、物理的には体積が減少するはずなのですが、氷では水よりも体積が大きくなります。また、水の密度はまだ液体状態にある4℃で最大になる(=氷よりもギュッと詰まっている)ことが知られていますが、これもまた他の物質にはほとんど見られない現象で、水素結合の影響によるものとされています。
図中の “O” と “H” の間の点線が水素結合。(図引用元)
Xia氏らの説明は、以下のとおり。水の温度が上昇すると、水分子同士の距離は徐々に開いて水素結合の距離は広がってゆき、これに伴って 共有結合(上図のH-O間の実線部分)の距離が縮まってきます。これによって、この共有結合にはエネルギーが貯えられてゆきます。
さて、ここから温度をどんどんと下げてゆくと、分子同士の距離は徐々に縮まってゆき、共有結合の距離も徐々に広がってゆきます。こうなると、温度が高い時に共有結合に保存されたエネルギーは放出されることになるのですが、この過程で、温度の低下が加速されるというわけです。
実際にXia氏らは、この温水の水分子に貯えられた「追加分」のエネルギーによる冷却効果を計算したところ、実験で得られた冷水に対する温水の冷却効率の差分に相当していることを確認したとしています。
初期温度に対する緩和時間と、緩和時間に対する必要エネルギー。arXivより引用。
arXivは査読や審査のない、プレプリントの論文のみを扱うサイトであるため、この結果が “真に” 学術的に認められたものであるかは(現時点では)議論が残るところですが、論理的には筋が通っているように感じます。いずれにせよ、こうした身近な現象が未だに謎の残るテーマとして扱われているというのは何とも興味深いことですね。
おまけ
温度変化に伴う結合距離の伸長と冷却効率の関係について、個人的にmailonlineとmedium.comの記述がややこしく感じたのですが、一次ソースであるarXiv.orgの以下の記述はシンプルでわかりやすいと思います。
[arXiv.org via mediumu.com] [mailonline]
ムペンバ効果ってトンデモかと思ってたけど真面目に研究してる人もいるし、こんな感じで結果も出てきるんだな、勉強になった。
水の密度が4℃で最大になる理由が水素結合によるものっていうのも初めて知った。
なるほどよく分からん
NHKの番組で問題になったやつだな
第一報としてarXivに公開したあと、論文誌に投稿したんじゃないの。
で、なにさ。
沸騰させた熱湯を冷凍庫に入れたほうが、
水を凍らすより早く凍るって事?
沸騰させなきゃいかんわけ?何度が適当なのさ。
アホにも分かる、私生活で使える解説を求む。
これがホントだと、高温のお湯は外部に熱を放出することなく冷えることもできるよね。
おかしい気がするなー?
水ってとても身近にあるものなのにかなり特殊なものなんだね