Kindle Fire HDX 8.9レビュー:軽い速いきれい安い! でもちょっと待って。
だってもうすぐアレが出るし…。
アマゾンのKindle Fire HDX、7インチ版に続いて8.9インチのKindle Fire HDX 8.9(以下HDX 8.9)が発売されました。日本でも11月28日発売予定、ハイスペックにもかかわらず3万9800円からとお手頃ですが、これは買いなんでしょうか? 米Gizmodoのライマー記者が以下にレビューしています。
Kindle Fire HDX 8.9って何?
380ドル(国内3万9800円)~の8.9インチタブレットで、アマゾンの書籍や動画のコレクションを楽しむことに特化したものです。高評価できたHDXと大体同じボディに、美しいスクリーンが付いてます。動画再生モンスターであり、恐ろしく軽いです。
誰向けなの?
動画視聴とかマンガや雑誌や本を読むことが大好きで、でもメールを送ったりTwitterもときどきしたい、そんな人に向いてます。それから7インチスクリーンには満足できなくて、ちょっと大きい画面が欲しい人にも。そして、リビングルームで使える良質でしっかりしたセカンドスクリーンが欲しい人全てです。
デザイン
HDX 8.9は、ぱっと見、7インチのHDXの大きいバージョンです。HDXは良いものなので、それはOKです。でも微妙にデザイン的に違うところもあります。HDXにはシャープなところがあったり、ボディがちょっと厚かったりしたんですが、HDX 8.9はかなり薄く、滑らかになっています。エッジに関してはHDXみたいにシャープな方が好きですが、そうじゃなくてもまあ構いません。HDX 8.9のデザインは、HDXがiPad Airだとしたら、iPad 3とか4のような感じです。
HDX 8.9の重量は13.2オンス(374g)と、ものすごく軽いです。羽みたいに軽いiPad Airだって、HDX 8.9と比べると鉛でできてるかと思うほどです。ほとんどぎょっとするくらいの軽さです。HDX 8.9はボディもディスプレイもiPad Airより、または他の10インチタブレットより小さいですが、それを差し引いてもこの軽さ感は良い意味で、今まで経験したことがないレベルです。
HDX 7の1920×1200、323PPIのスクリーンは素晴らしいものでしたが、HDX 8.9はそれを上回る2560×1600、339PPIです。他の大きなタブレットの何よりも、見るからに良いです。でも中身のパーツはHDXと同じで、クアッドコア 2.2GHzのSnapdragon 800にGPUとしてAdreno 330も付いてきます。なのでHDXよりピクセル数が多くなったといっても、動作が速いことには変わりありません。
そうした比較的細かい違いを除けば、HDX 8.9のデザインはHDXとほとんど同じです。それは、スピーカーの配置のように望ましいものもあれば、凹んだボタンみたいに好きになれないものもあります。背面には800万画素・1080pでLEDフラッシュの付いたカメラもありますが、タブレットで写真を撮るのは、見た目的に変だってだけですが、要注意です。でも選択肢ができたのは良いことですね。
使ってみてどう?
ソフトウェアという意味では、HDX 8.9とHDXは同じです。HDXでFire OSが微妙にアップグレードされて、よりリアルに使えるタブレットになりました。それからアマゾンの「Mayday」ビデオチャット(後述)もできます。
HDX 8.9のサイズに関して驚いたのは、使い勝手全体がほとんど7インチと変わらないってことです。8.9インチはほとんどフルサイズタブレットなので、片手でランドスケープモードで見ようとは普通そもそも考えないかもしれません。でもとにかくものすごく軽いので、意外とそこそこ可能なんです。ポートレートモードで歩きながら何か読んだりするのは、(何かにぶつかるとかの危険を除けば)全く問題ありません。大きなスクリーンのメリットがありながら、持ちにくさ、動きにくさというデメリットは最小限になっています。
HDX 8.9のスクリーンのクオリティは、今あるタブレットの中で最良です。タブレットの中で高いピクセル密度をほこりますが、とはいえ、あるレベルを超えるとどれもRetinaスクリーンです。つまり、肉眼でピクセルを見分けられないレベルに達すると、そこからさらに細かくなっても違いがわからないんです。それでも、映画やTV番組をHDX 8.9で見ると本当に美しいです。スピーカーの音もHDXと同様、タブレットとしては最良のもののひとつです。
スクリーンが大きくなっても、HDX 8.9の動作の速さは飛ぶように速いです。アプリとかいろんなもののスワイプは、気持よく反応してくれます。ゲームに関しては、HDX 8.9はFruit NinjaやAngry Bird、Temple Run、などなど何でも問題なくこなしてくれました。
ただ、この手のテストで定番のDead Triggerは、アプリ自体がちゃんと動きませんでした。最初にクラウドアプリとしてインストールしようとしたときにエラーになったので、そのせいかもしれません。僕らがテストしたのは完成版ソフトウェアじゃなく、そのひとつ前バージョンだったので、それも問題あったかもしれません。ただ、もしHDX 8.9に対応するためにデベロッパーが何らかのアップデートをしなきゃいけないとしたら、対応アプリは少なくなるかもしれません。そうだとすれば問題です。
それからバッテリーも長持ちで、いつものNyan catを使ったバッテリーテストでは、公称の12時間よりほんのちょっと持たなかっただけでした。HDX・HDX 8.9ではバッテリー消費を抑える超低電力状態が可能で、読書モードなら18時間も使えます。
さらに背面のカメラですが、タブレットでそんなに写真撮るのかってのはあるんですが、きれいに撮れます。ビルトインのカメラアプリには、写真をいじって遊べる機能もあります。こんな風に、スマートフォンを海賊の王様にしたりとか。
ソフトウェア
HDX・HDX 8.9には、アマゾン版の新Androidが搭載されてます。Fire OS 3.0です。これまでずっと、Kindle FireのUIはカルーセル状の見せ方を中心にしていて、本とか映画、アプリなんかがクルクル回って選べます。それは今も同じですが、Fire UI 3.0では本家のAndroidとおなじように、上にスワイプしてアプリドロワーを表示できるようになりました。
こちらは7インチのHDXで撮ったものですが、動作はHDX 8.9でも同じです。
これまで、Kindle Fire UIにはアプリが積み上がっていく感じでした。処理が遅いってことじゃなく、見せ方的に、デスクトップにアプリを並べていくんじゃなくてバックパックに詰め込んでいるような感覚がありました。要は、何かを入れれば入れるほど、取り出すのが難しくなってました。
でもアプリドロワーができたことで、アプリへのアクセスがずっとラクになりました。これまで、アプリドロワーにアクセスするには主に、上のリボンで「オーディオブック」とか「ニューススタンド」と同じ大きさの「アプリ」をタップする必要がありました。今回やっと、アプリにはホームスクリーンの専用の場所という本来あるべき居場所ができました。
成熟したOSにふさわしく、Fire 3.0ではマルチタスキングができます。アプリ間を切り替えられるだけじゃなく、本の間も切り替えられるんです。つまりコンテンツレベルでの切り替えができるので、複数の本を同時に開いているときはそれを一括して「本」として扱うんじゃなく、本単位で選択できるんです。これはアプリドロワーほど大きな進歩じゃないにしても、よりタブレットとして成熟した感じがします。
Fire UIには、良くないところもあります。アプリからの通知が画面上部の通知バーに数字で表示されるだけで、それ以上の情報は出てきません。「1」とか「2」とかだけで、どんな通知なのかはプルダウンするまでわからず、細かいことですがイラっとします。忙しい人なら、これをメインのタブレットにはしたくないはずです。メールのスレッド表示にも対応しましたが、優先度の低さを感じるやり方です。多分実際そうなんでしょう。
それからHDXと同じように、Kindle Fireの新しいビデオチャットサポートライン、Maydayは触れ込み通りに動きます。ボタンをクリックすると5秒以内で、アマゾンのサポートの人が出てくれて、(セキュリティのためにメールを確認してから)スクリーン上で僕に代わってアバターを動かしてくれました。なんか魔法みたいでした。Maydayではこちらのカメラはアクティベートされませんが、何かもやっと、怖い感じはあります。相手から自分が見えるわけじゃないんですが、見られているような気がしてしまうんです。
すでに発売されているHDXでもボタンひとつでMaydayにアクセスできるので、今は前に試したときよりもっとたくさんの人に使われてることでしょう。それでも僕は、とても気持ちよく使えました。みなさんにも機会があれば、気持よく使えるといいなと思います。ただその実際使う機会があるのかってとこが疑問で、Maydayはガジェット好きにとっても、今どきのタッチUIに慣れてる人にとっても、絶対必要な機能じゃないんです。でも何かあったときに電話する相手がいるのは安心です。
コンテンツをスキャンする機能のX-rayが音楽に対応したのも、絶対必要じゃないけどうれしいことです。音楽の歌詞がみんな見られて、楽しいです。ただ映画版のX-rayはトリビアの源泉になりますし、書籍版も難しいものを読むときはありがたいものですが、音楽版はあくまで遊び機能です。存在を覚えている限りはナイスですが、たいていはそこにあるのを忘れてしまいそうです。
好きなところ
映画やTV番組視聴は素晴らしく、スクリーンも音もきれいで、TVで見る必要ないじゃんと思うくらいです。それにHDX 8.9は、HDXより画面も大きいんです。
スクロールとかスワイプ、選択、表示といった操作の反応も素晴らしいです。2.2GHzのプロセッサの力もさることながら、Fire OSのベースとなっているJellybean 4.2.2スケルトンも貢献しています。Fire OS 3.0は先代の2.0と違って、グーグルのAndroid高速化プロジェクト、Project Butterの後にできたんです。その違いが表れています。Fire OSではスワイプやバウンスが多用されてて、それが気持よく動きます。そんなスムースネスや引っかかりのなさは、アプリでも言えます。HDXもHDX 8.9も、何でもできて、何でもうまく動きます。
HDXもHDX 8.9も、よくできたタブレットです。そしてその軽さ。軽いです。しつこくてすみませんが、軽いです。
好きじゃないところ
HDXとHDX 8.9に共通する残念なところは、Googleアプリがないことです。まあそれは欠点というよりは、Kindle Fireはあえてそういう風に作られているので仕方ないのかもしれません。でもその結果、いろんなデメリットがあります。アマゾンのアプリストアの品揃えは前より充実して、主要なものは大体そろうようになったとはいえ、Androidの広い世界からは切り離されています。たとえばすでにGoogle Play Storeで購入済みのアプリがあっても、Kindle Fire HDXに移行することはできません。Google Play Storeにはアプリのアップデートが出ていても、Kindleで使えるようになるにはアマゾンのストアに出てくるのを待たなくちゃいけません。
多分、いっそKindle FireはAndroidタブレットじゃないと思っちゃった方がラクなんです。Fire OSは元のAndroidからかなりカスタマイズされてるので、使い勝手も全く違うし、独自のルールがあり、独自のアプリがあるんです。なのでFire OSとAndroidに何か共有できるものがあるとしても、それはFire OS本来の姿というよりも、たまたま付いてきたオマケくらいに思うことにします。
たとえば、Google Nowとか音声検索みたいな成長中のキラーサービスも使えません。それから、ピュアGoogleなら可能なデバイス間でのアカウント同期なんかもありません。アマゾンのタブレットを選ぶってことは、そういうことなんです。
あと最後に、ボタンが相変わらず変ですね…。
買うべき?
多分ノー、または少なくとも、今のところはノーです。HDX 8.9の16GBで380ドル(国内3万9800円)という価格は、iPad Airの499ドル(国内5万1800円)と比べれば格段の安さです。安いし、軽いし、スクリーンも良いし、大きさもそんなに変わりません。でも、でもちょっと待ってください。
HDX 8.9は、今月発売のRetina版iPad miniと比べて圧倒的にすごいのかというと、そんなことはありません。新iPad miniは399ドル(国内4万1900円)~ですが、解像度(2048×1536)も大体HDX 8.9と同じだし、スクリーンサイズはちょっと小さいだけだし、ハードウェアは美しいし、さらにエコシステムに関してはアマゾンよりずっと強力です。HDX 8.9にたった20ドル(日本なら2100円)ばかり足せば、それが手に入るんです。そのiPad miniの発売は、もうすぐです。さらにレビューが出るのを待ったりするならプラス1週間とかになりますが、今までわかっている情報から考えると、かなりコストパフォーマンスの高いものになりそうです。
それでも、HDX・HDX 8.9ともに素晴らしいデバイスです。スクリーンは美しいし、プロセッサも速いし、くどいようですが軽くて、持ってて気持ちいいです。値札の金額に見合う、良タブレットです。ただ問題は、もっと良さそうなものが間もなく出てくるってことですね…。
プロセッサ:2.2GHz クアッドコアSnapdragon 800
ディスプレイ:8.9インチIPS液晶
解像度:2560 x 1600(339PPI)
メモリ:2GB
ストレージ:16GB/32GB/64GB
OS:Android 4.2.2(カスタム版)
カメラ:前面720p、背面800万画素・1080p
ネットワーク:Wi-Fi(5GHz MIMO)
重量:374g
価格:国内3万9800円~
Eric Limer(原文/miho)
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