ほむら「ここは……汽車の中……?」
- 2013年11月14日 17:40
- SS、魔法少女まどか☆マギカ
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- 1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/14(木) 00:50:38.74 ID:26qYe7SO0
- まどか「やっと目が覚めたんだね、ほむらちゃん」
ほむら「!!まどか……?どうして……」
まどか「ほむらちゃん、ずっと眠ってたんだよ」
ほむら「ここは……」
キョロキョロ
ほむら(やっぱり……古めかしい汽車の中にいるようね)
ほむら(でも、どうして……?)
- 2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 00:51:37.83 ID:26qYe7SO0
- ほむら(駄目だわ。頭にもやがかかったように、記憶が朦朧としてる……)
ほむら「乗客は……私たちだけ……?」
まどか「クラスのみんなはね、ずいぶん走ったけど追いつかなかったの」
ほむら「そう……なの」
まどか「ほら、ほむらちゃん。窓の外がきれいだよ」
ほむら「!!」
ほむら(ものすごい数の星……。いったいどこを走っているのかしら。都会の夜に、こんな……)
ほむら(!!違う……!私たち……)
ほむら(空の上を走ってる……!?)
- 3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 00:52:40.02 ID:26qYe7SO0
- まどか「もうすぐ、白鳥の停車場だって」
ほむら「白鳥……?」
まどか「うん。きっとほむらちゃんも、気に入ると思うよ」
ほむら(ああ、どういうことなの。確かに私は今、夜空を走る汽車の中で、まどかと話してる)
ほむら(ずっとずっと昔……)
ほむら(私がまだ子供だった頃、こんなお話を読んだことがあるような気がするわ)
ほむら(でも……それが何だったのか、どうしても思い出せない……)
ガタンゴトン……ガタンゴトン……
- 4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 00:53:55.79 ID:26qYe7SO0
- さやか「よっ。ここ、座ってもいいかな?」
まどか「あっ、さやかちゃん」
ほむら「!!」
まどか「さやかちゃんも、汽車に乗れたんだね」
さやか「まどかより先に乗ってたっつーの。まったく」
まどか「ウェヒヒ……」
- 5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 00:54:54.18 ID:26qYe7SO0
- ほむら「美樹さやか、あなたまで……」
さやか「?ええと、誰だっけ……?」
ほむら「?」
まどか「ああ、私の友達で、ほむらちゃんって言うの」
ほむら(私のことを……知らない……?)
さやか「へえ、そうなんだ。よろしくね」
ほむら「……」
ほむら(……別に不思議なことでも何でもないわ)
ほむら(だって、私の友達は、この世界にまどかだけなのだから……)
- 6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 00:56:32.66 ID:26qYe7SO0
- まどか「ねえ、さやかちゃんはどこまで行くの?」
さやか「さあ、どこまで行こうかねえ。まどか達は?」
まどか「うーんと、私たちは……」
ほむら「……どこまでだっていいじゃない」
さやか「あはは、そりゃそうだ」
ほむら「……」
さやか「……」
- 7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 00:57:39.82 ID:26qYe7SO0
- まどか「……さやかちゃんってさ、いつだって、私の行くところについて来てくれるよね。ありがとう」
さやか「まあ、それが私の役目だからね」
まどか「役目?」
さやか「ううん、何でもない。それよりまどか、ほら、窓の外」
まどか「!!うわあ、きれいなお花畑……」
さやか「見たことのない鳥も飛んでるよ」
まどか「ほんとだ……!」
ほむら「……」
- 8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 00:58:28.89 ID:26qYe7SO0
- ほむら(本当にいつも、まどかと一緒にいるのね。美樹さやか)
ほむら(いつだってまどかは、美樹さやかのことばかり見て……私のことなんて)
ほむら(まどか……)
さやか「……どうしたの?さっきから黙り込んじゃって」
ほむら「別に……」
さやか「あれ?ひょっとして私、お邪魔虫だったかな……?」
- 9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 00:59:19.69 ID:26qYe7SO0
- ほむら「……」
さやか「あちゃー、図星だったかー」
さやか「……それじゃ、ま、お邪魔虫は消えるとしますか」
まどか「さやかちゃん、もう降りちゃうの?」
さやか「私には、色々やらなきゃいけないことがあるからね。大丈夫、またいつでも会えるよ」
まどか「うん、そうだね……!」
さやか「じゃあね、まどか。それと……」
さやか「……あんたともまた会えるといいな。転校生」
- 10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 01:00:20.82 ID:26qYe7SO0
- ほむら「!!美樹さやか、あなた……!?」
バッ
ほむら「……?」
シーン
ほむら「美樹さやか……?」
キョロキョロ
まどか「さやかちゃんなら、もうとっくに降りちゃったよ」
ほむら「そんな……」
まどか「もうずいぶんと走ったね、ほむらちゃん。私たち、今どのあたりにいるのかな」
ほむら「……」
ガタンゴトン……ガタンゴトン……
- 11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 01:01:31.98 ID:26qYe7SO0
- まどか「ねえ、ほむらちゃん」
ほむら「……何かしら」
まどか「ほむらちゃんはどうして、この汽車に乗ってるの?」
ほむら「私が……?」
まどか「うん」
ほむら「何故って……」
ほむら「……私は、まどかのいるところなら何処へだって行くわ」
- 12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 01:02:24.28 ID:26qYe7SO0
- まどか「ほんとに?」
ほむら「ええ。私は、まどかと一緒にいるためなら何処へだって行けるし、どんなことだってできる」
まどか「……ありがとう、ほむらちゃん」
ほむら「……」
ほむら(……ええ、そうよ。思い出したわ)
ほむら(私は、神の理となりおおせたまどかを……再び、この手で地上に引き下ろした)
ほむら(まどかのためなら私は、何だって……たとえ、この手を汚すことになろうとも……)
- 13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 01:03:09.67 ID:26qYe7SO0
- まどか「私、ほんとに幸せだなって、そう思うの。だって、さやかちゃんも、ほむらちゃんも、私のためにそんな風に言ってくれて……」
ほむら「……」
まどか「……なのに、私はみんなのために何ができるんだろうって……いつも、それを考えちゃって」
ほむら「!!駄目よ、まどか!」
ガシッ
まどか「ほむらちゃん……?」
- 14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 01:04:34.21 ID:26qYe7SO0
- ほむら「まどか……あなたは、そんなことを考えなくてもいいの。あなたは、あなたはもう……」
まどか「ほむらちゃん……」
スッ
まどか「……だいじょうぶだよ。私、意気地なしだから……一人じゃ何もできないから」
ほむら「まどか……」
まどか「……今日だって、勝手に汽車に乗って、こんな遠くまで来ちゃって……。きっとママに叱られちゃうなって、それが心配で……」
ほむら「……」
さやか「だから心配しないで、ほむらちゃん」
ほむら「うん……」
ガタンゴトン……ガタンゴトン……
- 15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 01:05:32.15 ID:26qYe7SO0
- ほむら(あら?どこからともなく……)
ほむら(これは、林檎の匂いだわ)
マミ「あら。ここにいたのね、鹿目さん」
杏子「ったく、ずいぶん探したんだぜ」
シャクッ
まどか「マミさん、杏子ちゃん」
マミ「ここに座ってもいいかしら」
ほむら「……」
- 16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 01:06:30.24 ID:26qYe7SO0
- 杏子「騒がしくなっちゃってすまないね。そうだ、お近づきの印に、これ……」
スッ
杏子「食うかい?」
ほむら「……結構よ」
杏子「ふうん。美味いのにな、この林檎」
シャクッ
- 17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 01:07:20.61 ID:26qYe7SO0
- まどか「マミさんたちは、どこまで行くんですか?」
マミ「そうねえ。まだ、はっきりとは決めていないんだけど」
杏子「あたしはもともと気儘な一人旅だからね」
マミ「最後までは無理だと思うけれど……途中まではご一緒できると思うわ」
杏子「てなわけで、よろしくね」
ほむら「……」
ほむら(まったく……どうして、まどかと二人にさせてくれないのかしら……)
- 18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 01:08:02.75 ID:26qYe7SO0
- マミ「……それにしても、本当にきれいな眺めね」
杏子「あたしは景色なんかより食い物の方がいいな」
マミ「もう、佐倉さんったら……」
まどか「あっ、ほむらちゃん。見て、ほら。あそこ」
ほむら「……?」
まどか「空の真ん中に、真っ赤に燃える火が……」
- 19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 01:09:39.01 ID:26qYe7SO0
- ほむら「……!!」
杏子「何だ?あれ……」
マミ「あれは、蝎の火ね」
ほむら「蝎の火……?」
杏子「ああ、その話なら親父の説法で聞いたことあるぜ。昔、他の生き物をたくさん殺して食ってたサソリがいたっていう、あれだろ」
マミ「ええ。でもサソリは自分が食べられそうになった時、井戸に逃げ込んで、そこで溺れ死にそうになったの」
杏子「で、どうせ死ぬくらいなら自分の身を差し出しておけばよかったって後悔するんだろ」
シャクッ
- 20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 01:10:30.53 ID:26qYe7SO0
- マミ「そうね。そうしておけば、自分を食べた相手はその分長生きできたのに……ってね」
杏子「……何だかよく分かんねえ話だよな」
マミ「あら佐倉さん、あなたはそう思うの?」
杏子「どうして、自分を犠牲にしてまで誰かを長生きさせてやらなきゃなんねえのさ。最後まで自分のために生きて、自分のために死んでいけばいいだろ」
シャクッ
マミ「確かに、そういう考え方もあるわね」
まどか「……サソリはどうなったんですか?」
マミ「サソリの祈りは通じて、今もその身体は空の闇を照らすように、赤く燃え続けているのよ。それがあの、蝎の火……」
まどか「へえ……」
- 21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/14(木) 01:11:46.65 ID:26qYe7SO0
- ほむら「……馬鹿馬鹿しい」
マミ「……?」
ほむら「佐倉杏子の言うとおりだわ。自分自身を犠牲にできなかったことを後悔するなんて、馬鹿げてる。そんなこと……」
コメント一覧
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- 2013年11月14日 17:52
- いいじゃん
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- 2013年11月14日 17:53
- 蠍座の話が好きだわ
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- 2013年11月14日 18:09
- あー、だから今夜だけは 君を抱いていたいー
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- 2013年11月14日 18:39
- スレタイだけだとブラックジャックの汽車の話かと思った
思いの外面白かったから良し
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- 2013年11月14日 18:43
- 銀河鉄道か。
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- 2013年11月14日 18:55
- >>5
あの話も手塚治虫がオマージュ的に書いた気はする
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- 2013年11月14日 18:55
- 休み時間から街に繰り出すなんて不良じゃないか……
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- 2013年11月14日 19:00
- ピングドラム思い出した
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- 2013年11月14日 19:46
- BJ最終回(仮)の印象がくるな
まどか本編でもさやかの人生を象徴するのに電車と駅は使われていたな
シャフトだと絶望先生で似たような回ってオール犬カレーというね
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- 2013年11月14日 20:15
- おれもBJかと思ったわ
こっちの雰囲気も似ててすきだし、今度読んでみようかな
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- 2013年11月14日 20:28
- 雰囲気でてるな
原作は幻想文学の白眉だよな
情緒的な対話劇という面ではゴドーを待ちながらを思い起こさせる
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- 2013年11月14日 21:48
- 「銀河鉄道の夜」
これ以上幻想的な題名は日本語に存在し得ないとすら思う
まさに完璧なタイトルだわ
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- 2013年11月14日 22:22
- ブラックジャックかと
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- 2013年11月14日 23:42
- 一番最後の場面である、原作の一番最初「午后の授業」の場面。
うまく使ってるなぁ。
悪魔が再び「皆」と笑い合う日が来てほしい・・・。