NTTドコモは、携帯電話の通信網を介さずにスマートフォン同士で情報をやりとりできる「まちあわせアプリ」を開発しました。カジュアルな名称ですが、目下の所は研究開発段階のもの。軽いノリとは裏腹に、実は災害対策も想定しています。
東日本大震災当時、音声通話が繋がらず、かろうじて繋がるデータ通信で情報を得たユーザーも少なくないはず。かくいう筆者もその1人で、仕事場から自宅に徒歩で向かいながら、時折繋がったTwitterなどを利用して情報を得ていました。
ドコモでは、「
災害時でもある程度繋がるネットワーク」を目指し、携帯電話網を介さずにアドホックで繋がり情報を伝達しあえる、そんな通信の形を検証しています。開発した「まちあわせアプリ」は、アプリに共通の合い言葉を設定し、相手に近づくとカメラのフラッシュ機能や振動、画面表示などでそれを伝えるというものです。
同じ仕組みを利用し、放送に近い情報伝達するアプリも開発しており、こちらは商店街など特定の場所に訪れると、タイムセール情報などが自動的に届くというものです。いずれのアプリも「ドコモの研究開発部門がなぜよくありそうなアプリを?」と言いたくなりましたが、でもこれは、世を忍ぶ仮の姿でもあるのです。
NTTドコモの研究開発部門の栄藤稔部長は、「
災害時だけサービスを使うか、というとそうではありません。Twitterがそうだったように、普段も使え、災害時に威力を発揮するようなものが必要です」と話しています。
アプリには、災害時に携帯電話網を介さずにバケツリレーのように情報を伝える仕組みがあります。安否情報をアプリに格納し、誰かが電波の繋がるところに入ると本人に代わって送受信するというものです。また、放送型の情報伝達アプリは、災害時に交通情報や避難情報、周囲の状況を配信。固定網から得た情報を無駄な携帯通信を使わずに配信するようなイメージです。
技術的には、NTTコムウェア開発のBluetoothを使ったアドホック網構成機能を利用し、Bluetoothをレーダーのように活用しています。まちあわせアプリは、共通の合い言葉を設定したユーザーがBluetooth圏内に入るとそれを伝えるという仕組み。
なお、アプリはAndroid向けに開発を進めており、通信はClassic Bluetooth規格を採用。今後は iPhoneもサポートし、Bluetooth Low Energy(BLE)に対応予定。低消費電力化するなど、より現実的に使えるアプリを目指しています。ドコモでは開発技術の特許を主張せず、BLE活用アプリ活性化の役割を担っていく方針です。