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http://japanese.engadget.com/2013/11/28/nict-18/


NICT、日本標準時を刻む「時の部屋」公開。18台のセシウム時計、国内電波時計の送信設備 - Engadget Japanese


情報通信研究機構(NICT)は、11月28日・29日にかけて、研究技術を展示しています。この中で、日本の標準時間を刻む「精神と時の部屋」とも言える時空標準研究室を公開中です。

日本の標準時間が兵庫県明石市だったのも今は昔、現在の日本標準時間(JST:Japan Standard Time)はNICTの原子時計によるもの。国内の電波時計は、NICTが送信するこの電波を受けて正確な時を刻んでおり、NHKやNTTの時報もNICTの時刻に合わせています。

日本の標準時間は、東京都小金井市にあるNICT時空標準研究室が決定しています。そのベースとなるのは18台の原子時計(セシウム時計)。セシウム時計はそれぞれ好不調があるため、18台のデータを合成したものを標準時としています。

好不調といっても、それは時空は超えないまでも超えそうなほど途方もない精密さの中での話です。ざっくり言うと原子時計における1秒はセシウムが91億9263万1777回振動する時間で、その誤差は数十万年で1秒というレベル。装置では日本の標準時とロンドンの標準時を比較するほか、地球の自転をベースとした天文時間との間で調整します。




この日本標準時間は、福島県の大鷹鳥谷山(おおたかどややま)、佐賀と福岡の県境にある羽金山(はがねやま)の送信所から日本全土に電波を発信しています。国内の電波時計は必ず、この2カ所のどちらかの電波を受けて時刻を調整していることになります。

時計は、正確な時を刻み続ける当たり前の存在で、電波時計はその最たるもの。しかしあるとき、情報送信ができずに「正確な時」の神話が崩れる事態が起こりました。東日本大震災です。



福島県側の送信所は、福島原発から十数キロの位置にあります。震災による福島原発の事態を受けNICTはやむを得ず、スタッフの避難を決定。以降しばらくの間、電波の送信が行えなくなりました。説明をうかがったNICTの担当者はくやしそうに、電波を送信できなかったことを説明し、「ご迷惑をおかけしてしまった」と話していました。震災後に「なぜ逃げたんだ?」と多くの意見が届いたそうです。

なお、福島の送信所は、現在も制限区域に指定されているため、定期的に巡回する形で運用しているとのこと。時空標準研究室のモニターは、無人の施設を映し続けていました。


各世代別の原子時計