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携帯4キャリアLTE測定対決・東北編。盛岡 - 福島間クルマ移動、LTE品質はauが圧倒 - Engadget Japanese


スマートフォンの通信エリア品質や通信速度の調査レポートは、携帯電話会社がもっとも力を入れている東名阪の駅周辺など、点での調査がほとんど。しかし、人口集中エリアばかりでは、本当に全国的に快適な通信が提供されているのか、判断しかねるのではないでしょうか。

今回、我々通信計測隊は、東北各地を移動しながら通信品質を「点」ではなく「線」で計測。ドコモ、au、ソフトバンク、イー・モバイル各社の通信品質をチェックしました。第2弾は、盛岡から福島まで、山間部や沿岸部、高速道路といったクルマの交通網の通信品質を調査しました。

調査概要



日本のLTEサービスは、ドコモが Xi で、昨年3月にはイー・モバイル、9月にはauとソフトバンクもサービスをスタート。各携帯電話会社の本当の力量やLTEネットワークの整備状況を判断するためには、東名阪以外のエリアで調査(フィールドテスト)が重要です。そこで、東北エリアの各社LTEネットワークについて、移動ルートを「線」で捉えて、以下3つのパターンで調査しました。

(1)東京駅から盛岡駅までの東北新幹線ルート
(2)東京 - 盛岡 - 平泉 - 気仙沼 - 南三陸 - 仙台 - 福島までの車移動ルート
3)震災の影響が大きかった気仙沼港周辺や東北エリア最大都市である仙台駅周辺

各フィールドテストの記事については、こちら。
調査日 2013年11月9日・10日
フィールドテスト、計測エリア 東京 - 盛岡 - 平泉 - 気仙沼 - 南三陸 - 仙台 - 福島
総移動距離 933km
総テスト時間 17時間23分44秒
電波強度(RSRP、SNR)サンプル数 約59,530件 / 1台
電波品質(Latency、Packet Loss、Jitter)
サンプル数
約1048件 / 1台
通信速度計測方法、サンプル数 2分間隔の自動実行
約523回 / 1台
テストツール XenSurvey
テストに使用した端末 ドコモ:GALAXY Note 3 SC-01F
au:GALAXY Note 3 SCL22
ソフトバンク:GALAXY J SC-02F※
イー・モバイル:GALAXY J SC-02F※
※計測端末はSIMロック解除、それぞれAPNを設定

フィールドテストは、計測した瞬間の限定的な結果です。 電波状況は利用者数(混雑状況)、周囲の電波や障害物などによる影響(干渉・反射・ノイズなど)、端末そのものの性能、微妙な位置や高さの違いで変化します。加えて、携帯電話会社側も日々のエリア・基地局の改善を行っています。

なお、ソフトバンクおよびイー・モバイルの測定には、ドコモのGALAXY J SC-02Fを使用しています。これはLTEの電波の接続性を考慮してGALAXYシリーズとSnapDragon800を選定したためです。したがって、ソフトバンクの900MHz帯の3G、イー・モバイルの1.7GHz帯の3Gは接続できず、LTEに接続していない場合のデータについては、実際の両社の製品を使用した場合と異なる場合があります。あくまでも参考程度に留めてください。

ソフトバンクのサービスエリアについてはこちら、イー・モバイルのエリアはこちら


3つの調査、全体の傾向

フィールドテスト全体の結果を先に言うと、2強による一騎打ち!「ドコモとau」といった状況。次いで、接続率No.1をうたうソフトバンク、会社の規模にしては努力が見えたイー・モバイルとなりました。



東北新幹線ルートは駅通過時は4社ともに良好な結果。仙台以北において、ソフトバンクだけがトンネル間で繋がらない状況が続きました。詳細は前回の記事で確認できます。

スポット調査は、気仙沼港エリアが各社ともにLTE接続率100%と震災後の再整備により満足できるエリア。仙台駅周辺ではauとソフトバンクも高速ながら、ドコモがアーケード街で下り100Mbps近い驚速といえる飛び抜けた結果でした。



車移動ルートは、ドコモとauのLTE接続率が高く高速性もあり、イー・モバイルも山間部を除けば良好で、全般にソフトバンクの弱さが際立ちました。 特に国道4号線では、ドコモとauは100%、イー・モバイルも99%と健闘。ただし、ソフトバンクだけがLTE接続率93%と低く、平均の下り速度も遅いという残念な結果になりました。


すべての車ルートで勝利したau

車移動ルートでの計測は、盛岡駅から平泉まで国道4号線を通るルートと、北上川沿いの山間部、気仙沼から南三陸町を経由した仙台までの沿岸および三陸自動車道、仙台から福島駅までの東北自動車道で実施しました。以下、各ルート毎の結果は以下の通り。

【盛岡駅前から花巻エリアまでの国道4号線ルート】


盛岡駅から市内の電波測定スポット数か所(岩手大学、岩手医科大学、岩手県庁、岩手市役所)を経由し、国道4号線を南下して花巻市の宮沢賢治記念館までのルートを調査。東北エリアの大動脈といえる国道4号線で、これだけの差が出るとは事前に予想ができず、意外な結果となりました。



全般的にドコモの下り速度が高速で、岩手大学周辺で57.11Mbps、宮沢賢治記念館近くでは52.20Mbpsを記録。ただし、上り平均速度は、4キャリアで最も低い5.33Mbpsに留まります。auの平均速度は、盛岡市仙北町付近で下り最速51.18Mbpsをマーク。上り平均速度も7.75Mbpsと、他社よりも2Mbps程度高速な点は高く評価すべきポイントです。




ドコモ・auの2社ともに、LTE接続率が100%と非常に高いレベルでエリア化しており、イー・モバイルも一瞬だけLTEではなくなったものの、LTE接続率99%、下り最高42.06Mbpsと良好な結果でした。

残念だったのはソフトバンク。3Gも含めれば100%の接続率だったものの、LTE接続率は93%と他社よりも低調。通信の応答性能を調べてみると、ping応答時間(Latency)も201msと、他社が170ms程度の中、20%近く遅くなりました。一方、上りの最高速度が11.54Mbpsと、4社中トップ。




電波品質の揺らぎ(Jitter)を確認してみると、ソフトバンクとイー・モバイルの揺らぎが大きく(グラフで上に振れている)なりました。揺らぎは、応答速度の安定性に関する指標で、音声や動画などの途切れにも繋がります。インフラ整備状況はまだまだ不十分な状態にあると言えます。




東北通信計測隊

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【花巻から平泉・中尊寺までの国道4号線および気仙沼までの山間ルート】



宮沢記念館から いわて花巻空港、花巻温泉を経由して国道4号線を平泉まで南下、中尊寺に立ち寄り、北上川沿いの山間ルートを経て気仙沼へと抜けました。

ドコモは、宮沢賢治記念館近くで下り最速56.12Mbpsをマークしたほか、花巻温泉でも下り最速55.49MbpsとLTEスポットを構築できていました。​下り平均も14.97 Mbpsも良好ながら、auには差をつけられており、さらに、上り速度平均は2.15Mbpsという厳しい結果。




auは、この区間での下り最速58.21 Mbpsとトップの数字。下り平均 19.82Mbps、上り平均 7.03 Mbps、通信の応答性能を示すping応答時間(Latency)は 176ms、LTE接続率97%と、いずれもダントツのトップです。山間ルートを経由しているにも関わらず、高速LTEエリア整備が十分になされており、東北エリアでの強さを証明しています。





こうした中、ソフトバンクはLTE接続率が69%と低く、低速な3GのUMTS(SoftBank 3G、W-CDMA)接続が19%と、繋がってはいるものの実利用レベルとしては厳しい結果になりました。



イー・モバイルは、宮沢賢治記念館近くで下り43.21Mbps、北上市で下り最速50.46Mbpsと高速な場所があった一方で、山間ルートはLTE接続率36%、UMTS接続46%と、ソフトバンクよりもさらに厳しい状況になりました。Pocket WiFiに代表されるデータ通信の利用者が中心のイー・モバイル、今後スマートフォンの拡大を目指すには、早急な改善を期待したいところです。



揺らぎ(Jitter)についても、auが最も安定しており、ドコモは花巻の一部エリアで電波状況が厳しかったものの全般には安定。この区間もソフトバンクとイー・モバイルの品質が低い結果でした。



東北通信計測隊

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【気仙沼から南三陸町の海沿い国道45号は、auの圧勝】


海沿いのルートは、海側に基地局が設置できず、地形的に入り組んでいる場所も多いため、LTE化に手間とコストを要するはずです。このルートでもauの強さ、ドコモの安定志向、ソフトバンクおよびイー・モバイルが厳しい結果となりました。



ドコモは、下り最速38.74Mbps・平均12.82Mbpsとまずまず。しかし、LTE接続率が72%と、国道4号線を南下するルートの結果と比較してもかなり低い数字になりました。auに負けない、もう一段上のLTEエリア構築を期待したいところです。ちなみにauは、下り最速43.19 Mbps・平均17.37 Mbps、上り最速13.54 Mbps・平均7.9 Mbps、ping応答時間(Latency)168 ms、LTE接続率97%と、他社を圧倒するダントツのトップでした。



ソフトバンクは、LTE接続率38%・ping応答時間(Latency)平均339msなど、エリア化にまったく力が入っていません。駅などの主要スポットこそLTEでの高速化に注力しているものの、人口カバー率に影響がないエリアでは、「とりあえず繋がる」という課題をこなしただけ。線や面でのLTEエリア化は進める気が無いとさえ思える、そんな状況でした。



またイー・モバイルについても、LTE接続率36%、それ以外では接続できない状況が続きました。使用した端末が電波を掴めなかった可能性もありそうですが、計測できていた区間だけを見ても、山間ルートと同様に厳しい状況に変わりはありません。



揺らぎ(Jitter)について確認してみると、auが最も安定しており、ドコモは一定間隔で厳しい状態に。1つの基地局がカバーする範囲の境界を示す、セルエッジでうまく電波が掴めていない状況と推定できます。ソフトバンクは気仙沼市街地こそ良好ながら、海沿いルートでは通信品質が低い状態が続き、イー・モバイルは、気仙沼市街で厳しい状態が続いた後に、海沿いルートでは接続できない状態になりました。



東北通信計測隊

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【南三陸から国道45号 三陸自動車道 県道で石巻経由し仙台。最後は東北自動車道で福島まで】


できすぎた展開ですが、結果は現実です。この区間も、ドコモとauの2強状態が続きます。

ドコモは、仙台駅前で下り最速74.66Mbps、下り平均20.95Mbpsと、東北エリアで早期に高速化をスタートさせた面目を保ちました。石巻・東松島・塩竈エリアおよび東北自動車道の一部区間でHSDPAに落ちる区間があったものの、全体としてはLTE接続率92%とまずまずの結果。ただし、上り速度については、平均3.9Mbpsとワースト。



auは、東北自動車道の菅生パーキングエリアで最速50.08 Mbpsを記録し、全区間で安定した高速性を維持。下り平均はドコモに次ぐ17.37Mbpsと良好で、上り平均7.05Mbps、ping応答時間(Latency) 175ms、LTE接続率93%はトップ。



ソフトバンクは、仙台駅周辺で下り最速50.46Mbpsを記録し、auを超えました。ただし、全般的にはLTE接続率67%と低く、仙台市内を除き、断続的にHSDPAまたはUMTSに落ちたため、下り平均9Mbps・上り平均5.11Mbpsに留まっています。ping応答時間(Latency)はワーストの250msということで、もう少し密なエリア構築に期待したいところです。



イー・モバイルは、LTE接続率74%とソフトバンクを上回ったものの、三陸自動車道や東北自動車道などで、端末の問題からかうまく電波を掴めない区間がありました。このため、下り平均5.65Mbps・上り平均4.38 Mbpsと低調。ソフトバンクの3G網へローミング接続できていれば、もう少し良い結果になっていたと思われますが、いずれにしても高速道路でのLTE接続に難がある結果になりました。



なお、揺らぎ(Jitter)は、こでもauが最も安定しており、ドコモは仙台周辺エリアのみ良好で、三陸自動車道および東北自動車道では、ドコモ・ソフトバンク・イー・モバイルの3社とも、品質の低い状態が続きました。イー・モバイルは、仙台市内においても、品質の低い状態。



東北通信計測隊

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道路網のLTE、8つの指標のベストとワースト

5つの計測区間ごとに、8つの指標のベストとワーストをカウントしました。なお各区間の計測数や移動距離が異なるので、各指標区間毎にベスト・ワーストを決めるやり方に異論もあるかとは思います。しかし、傾向に大きな誤りはないものと判断しました。ちなみに今回、区間別のスコアは省きましたが、全区間でauが首位に立ち、イー・モバイルがワーストという結果です。



【計測区間】
・盛岡から花巻
・花巻から気仙沼
・気仙沼エリア
・気仙沼から南三陸町
・南三陸町から福島
【指標】
・データ接続率
・LTE接続率
・電波信号の強さ(Signal)
・下り速度の平均・最速
・上り速度(Uplink)の平均・最速
・ping応答速度(ping応答時間(Latency))

28の区間・指標で勝利し、ワーストなしという圧倒的なLTEネットワークの強さを見せつけたau。 追随するドコモは、上り速度の改善と一部区間のLTE化により、この差をかなり縮める事ができるはずです。

ドコモは、車ルートに限らず上り速度が遅く、ファイルアップロードの多いユーザーにとっては満足度が下がるかもしれません。しかし、平均下り速度や仙台市内など主要エリアは高速。音声通話を最重要視しているドコモだけに、通話品質を含めたトータルバランスや安心感で選びたいところです。

auは、AndroidおよびiPhone5s/5cユーザにとっては、LTEデータ通信がもっとも高速で、ストレスなく利用できるはずです。国道、山間ルート、高速道路、県道の何れのルートでも安定してLTEに接続できました。



ソフトバンクとイー・モバイルの2社は、LTEから3Gに落ちた際の電波信号の強さ(Signal)や上り速度で踏ん張っているものの、LTE接続率で大きく突き放されています。 ダブルLTE(2社間のローミング)により、広がりや帯域の有効活用が可能になるものの、弱い2社のネットワークをシームレスに使用できる状況になっても改善には限界があるようです。このまま対策を取らないのか、根本原因となるLTE接続率(エリア化)の早期改善を実施するのか、引き続き調査すべき結果となりました。

ソフトバンクは、主要スポットで高速な通信ができれば十分というユーザーにとっては良い選択肢となるでしょう。東北エリアのシェアが全国平均と比較すると低いため、ネットワークも比較的空いているはずです。 但し、圏外にはならずとはいえLTEの接続率は低く、ping応答が遅いために、データ通信が思うようにできない場合が予想されます。このままであれば、SNSのヘビーユーザーやビジネス利用者の選択肢から外れることも考えられます。



イー・モバイルは、LTEで繋がればある程度速いものの、山間ルート、沿岸ルート、高速道路に弱いため、街中など市街地での利用がメインのユーザーや、月額3,880円という通信料を優先する人に向いています。

地方ではスマホ化が都市部よりも遅れています。運転中にスマートフォンは操作をできないため、通勤通学などがクルマの場合、LTEの高速通信による恩恵は少ないかもしれません。しかし、今後のスマホの普及拡大を考えると、東北地域でどこでも安定的かつ高速に繋がる携帯電話会社を選ぶなら、ドコモかauが無難と言えるかもしれません。

被災地域では、鉄道網が絶たれた後、代替交通手段としてバス網が広がっています。高速通信のエリア化が遅れているソフトバンクとイー・モバイルの2社については、せめてバスの走っているところではLTEが繋がるよう再整備に期待したいところです。