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翔太郎「フィリップがいなくなって一週間か……」|エレファント速報:SSまとめブログ

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翔太郎「フィリップがいなくなって一週間か……」

1 : ◆NrFF2h.q26 2013/12/03(火) 10:38:53.14 ID:YYxXQf340

~風都の街中~


翔太郎「…」トボトボ

翔太郎「フィリップが消えて一週間…今のところガイアメモリの事件は起こってない…」

翔太郎「もし起こったとしても、アイツが遺してくれたロストドライバーがあるから俺一人で戦える…」

翔太郎「…でも…」

翔太郎「…はー…」

翔太郎「まだ事件が起こらねーといいんだがな…」

翔太郎「…あ、ミックの餌が無いんだった」

翔太郎「…買いに行くか…」




2 : ◆NrFF2h.q26 2013/12/03(火) 10:58:11.14 ID:YYxXQf340

俺の相棒、フィリップが消えて一週間。
ミュージアムを統べていた園咲一家も、そしてその後を引き継いでガイアインパクトを起こそうとしていた財団Xもいなくなった。
照井は怪我が大分マシになったが、まだ完治していないくせに連日風都署に泊り込んでいる。
組織の長がいなくなったミュージアムの残党は浮き足立っていて、放っておけばいつ新たなガイアメモリ犯罪の組織が生れてしまうかも分からない。
その前に園咲家の運営していた会社に一斉にがさ入れをして大規模な検挙を行っているのだ。
屋敷はほぼ全焼だったけど、それでも隠し切れないガイアメモリ犯罪の証拠が多数見つかって、それで捜査令状がやっと取れたと照井は言っていた。


亜樹子はそれに少し不満そうだが、あまり口には出さないで毎日事務所に来る。
ペット探しの依頼を取ってきては俺に押し付けてくる。
それは俺が引きこもって一人で考え込まないよう、亜樹子なりに考えてのことだと思う。



3 : ◆NrFF2h.q26 2013/12/03(火) 11:08:26.13 ID:YYxXQf340

一方の俺は、つい一昨日、園咲若菜が入院している病院へ行った。
若菜姫が入院している場所は警察の極秘事項だが、照井が上に内緒で俺が面会できるよう取り計らってくれた。
彼女は俺が加頭から助け出した後、ずっと意識が戻らないまま眠り続けている。


彼女の目が覚めたら俺は、フィリップは生きている、なんて嘘をつかなければならない。
上手くつける気もしないが、相棒の最期の頼みを無碍にするわけにもいかないのだ。
若菜姫には申し訳ないが、あと少しだけ眠っていて欲しい、と思った。
こんなことは誰にも言えないが。





4 : ◆NrFF2h.q26 2013/12/03(火) 11:22:21.21 ID:YYxXQf340


~雑貨店前~

サンタ「あれ~?翔ちゃんじゃない!」

翔太郎「サンタちゃん。何でここにいるんだよ」

サンタ「ふふふ…聞いて驚いてよ。つい昨日からここの雇われ店長になっちゃいました★」

翔太郎「へー」

サンタ「んん?反応薄いぞ~もっと驚いてよ!」

翔太郎「悪ぃ悪ぃ」

サンタ「それで、本日のお求めは何でしょーか」

翔太郎「あー猫の餌なんだけど、その猫が結構グルメでさ…安物は食べねーんだよ。いいやつない?」

サンタ「それなら、じゃーん!これです!レジェンド・デリシャス・ゴールデン缶!うちで一番の高級だね」

翔太郎「明らかに高そうだな…ま、それでいいや」

サンタ「まいどあり~★」




6 : ◆NrFF2h.q26 2013/12/03(火) 12:40:34.57 ID:3Pym8JbNO


翔太郎「ただいまー」

亜樹子「あ、翔太郎くん。翔太郎くんにお手紙届いてるよ」

翔太郎「手紙?」

亜樹子「うん。津村真理奈さんから。この人って、確かティーレックスのメモリを使ってた……」

翔太郎「ってことは刑務所からか?もうあの事件も一年くらい前だし、真理奈もある程度は落ち着いてきたのかもしれないな。どれどれ……」




7 : ◆NrFF2h.q26 2013/12/03(火) 12:59:31.04 ID:3Pym8JbNO


翔太郎「……」

亜樹子「どうしたのよ、なんか難しい顔して。まずいことでも書いてあった?」

翔太郎「いや、ガイアメモリの後遺症もだいぶマシになって、元気でやってるって内容なんだけど……三日前、真里奈の所に知らない男が面会を求めてきたんだと。仮面ライダーの正体が知りたいって」

亜樹子「え?何で?」

翔太郎「なんでもそいつの職業は三流週刊誌のライターで、仮面ライダーの謎に迫る記事を書きたいから取材してるって言ってたらしい。ガイアメモリ関係の事件の当事者に一通り聞いて回ってるって……でも真里奈はなんか胡散臭い奴だったから、何も教えなかったって手紙に書いてある。雑誌名も会社も何も言わなかったらしいし、一応気を付けてね、だって」

亜樹子「え~なんかやばそうじゃん……」

翔太郎「すっかり有名になってたんだなぁ。しかしこの怪しい奴も、自分が探してる仮面ライダーがもういないなんて、思ってもないだろうよ」

亜樹子「……」

翔太郎「あ……悪い」

亜樹子「もー、なんで翔太郎くんが謝るのよ。それよりホラ、ミックに餌あげといてよ。かなりお腹空いてるみたいだからさ」

翔太郎「……そうだな」





10 : ◆NrFF2h.q26 2013/12/03(火) 14:43:31.99 ID:3Pym8JbNO


事務所のソファの上でくつろぐミックの床に、餌を入れた皿を置いてやると、ぐるぐると低く唸りながらミックがゆっくり降りてきた。
皿に鼻を寄せて匂いを嗅ぎ、品定めをするように一口頬張ると、暫く口を動かす。
しかも心なしか俺を睨みながら。
腹が減っていたのだろうから、これでまずかったら相当のご立腹になるのは間違いない。


翔太郎「あのーミックさん、お味はどうでしょうか……?」


恐る恐る尋ねると、ミックはやがて独特のしゃがれた鳴き声を出し、また餌を口に含んだ。
どうやらお気に召したようだ。

また出費がかさむな……。

およそハードボイルドからかけ離れた悩みに溜め息を吐きながら、真里奈からの手紙を思い出していた。


仮面ライダーの正体を探る謎の男。
男が本当に記者だとして、もし俺の正体がバレて記事にでもなったら、こうやって探偵なんてやってられなくなるかもしれない。


それに何より、フィリップの事まで調べられるとまずいことになる。
死んだ筈の園咲家の長男が、実は蘇っていてガイアメモリの開発に携わっていた、なんて事で騒がれたくはない。
この街のために、そして家族のために戦い、消えていったアイツは、俺の相棒で鳴海探偵事務所の探偵の一人、その肩書きだけでいい。


どうにかして謎の男を追わなくては。
あの男は、確か過去のガイアメモリ犯罪の事件の関係者をあたっている、と真里奈の手紙にはあった。


そう言えば最近、近くの公園であいつがいたっけ……。
もしかしたら謎の男と接触しているかもしれない。
思い当たった俺は早速公園に出向くことにした。





15 : ◆NrFF2h.q26 2013/12/03(火) 18:51:28.93 ID:3Pym8JbNO


~公園~

翔太郎「あ、いたいた」

翔太郎「よう、またダンスの練習か?」

弾吾「探偵さんか。なに?用?」


公園の片隅でダンスの練習をしているこの少年は、稲本弾吾。
コックローチ・ドーパントの事件で出会ったダンス小僧だ。
あの時揉めてた千鶴とは今もコンビを続けており、学校が終わると、よく人前でのダンスの練習のために公園や広場で練習していて、最近は事務所の近くの公園にその場を移していた。
今日は弾吾一人のようで、千鶴の姿は見えない。


弾吾は音楽を流していたコンポのスイッチを切り、汗をタオルで拭きながら俺の方を向いた。


翔太郎「いやちょっと聞きたい事があってな」

弾吾「聞きたいこと?」

翔太郎「最近、仮面ライダーのことで何か尋ねられたことはないか?」

弾吾「うーん、俺は別に……あ、でも千鶴が聞かれてたかも」

翔太郎「本当か」

弾吾「ああ。今、完ペキに思い出した。前に千鶴が言ってたんだ。胡散臭い記者の人が仮面ライダーのことを聞いてきたって。でも探偵さんのことは話してないって言ってたぜ。一ヶ月くらい前?」

翔太郎「ふうん……千鶴ちゃんは今どこに?」

弾吾「今日はあいつ、日直の係で遅いんだ。まだ暫く来ないと思うぜ」

翔太郎「そっか。んじゃ、また時間を置いて来るよ」




17 : ◆NrFF2h.q26 2013/12/03(火) 19:05:33.82 ID:3Pym8JbNO


弾吾「……何かあったのか?深刻そうに見えるけど。ていうか、あの時の変な奴は一緒じゃないの?外人みたいな名前の」

翔太郎「……変な奴じゃないし外人じゃねーぞ、フィリップな。……あいつは、留学してるんだよ」

弾吾「へぇーすげーじゃん。俺もダンス留学したいんだよね。留学ってどこ?やっぱアメリカ?」

翔太郎「え、あー……そうそう。アメリカ、だったかな……」

弾吾「アメリカか~いいな~」

翔太郎「……じゃ、またな」


そそくさと会話を打ち切って、弾吾から離れる。
やっぱり仮面ライダーを探る謎の男がいるようだ。


……という事実より、俺は弾吾との会話で言葉に詰まってしまった自分のことしか考えられなかった。
ちょっとあいつの名前が出ただけでこれだ。
若菜姫が目を覚ます、その先が思いやられる。





18 : ◆NrFF2h.q26 2013/12/03(火) 19:22:11.30 ID:3Pym8JbNO

でも、フィリップがいなくなったことを忘れられるわけがない。


文字通り二人で一人、俺たちは戦ってきた。
くじけそうな時も辛い時も怖くて投げ出したい時でも、アイツが一緒にいることを感じられたから戦えたんだ。
アイツがいるから、俺も戦える。
そうやって戦いを乗り越え、事件を解決するたびに、その事をますます強く実感させられていった。
それはアイツも同じだったと思う。
誰も完璧ではないのだから。


通常ダブルは変身を解除しても、ドライバーを装着していれば俺はフィリップの意識を感じられる。
だけどフィリップが消えた時、ドライバーを装着していたのに、いつもあったその感覚がどこにもなかった。
あったのは、俺が一人になったのだ、という孤独だけだった。
あの感覚はもう二度と味わいたくない。



翔太郎「…は~…いかん、また考えすぎだ」

翔太郎「とりあえず、千鶴ちゃんが戻るまで他の所へ聴き込みでもするか。此処からなら……あの店に行くか」





19 : ◆NrFF2h.q26 2013/12/03(火) 23:16:53.32 ID:3Pym8JbNO


~和泉和菓子店~

優子「いらっしゃーい!あら、探偵さん」

翔太郎「久しぶり。ちゃんと店の手伝いしてるんだな」

優子「当たり前じゃない。もうギャンブルは懲り懲りだよ」


愛想良く笑ってくれる彼女、和泉優子は、風都名物風花饅頭の元祖である和泉和菓子店の看板娘だ。
彼女は以前、マネー・ドーパントが催していた闇カジノ『ミリオンコロッセオ』にのめり込んでしまい、それを心配した両親の依頼で俺たちは事件を解決した。
出会ったばかりの頃はかなりスレていたが、今ではすっかり看板娘の貫禄を見せている。


優子「ちょうど新作のお饅頭があるんだけど、よかったら食べてく?」

翔太郎「お、じゃあいただこうかな。でもその前に、一つ」

優子「なに?」

翔太郎「仮面ライダーの正体を探ってる男が来なかったか?」

優子「んー……そう言えばあのミリオンコロッセオのこと聞きに来た人が結構前にいたね。でもあたし、実際に仮面ライダーと会ったことないって言ったら、すぐ帰っちゃった」

翔太郎(そういや彼女の前ではダブルに変身しなかったな……。しかし謎の男がここまで調べてるのは何でなんだ?うーんさっぱり分からね~。せめて何かキーワードになりそうなものは……って、検索できるアイツもいないのに何を考えてるんだ、俺は)

優子「どうしたの?顔色悪いけど」

翔太郎「……いや、何でもない。ありがとな。んじゃ」

優子「あ、ち
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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 22:43
      • AtoZでジョーカーの姿観てなかったんだっけ?
        まぁ、少し離れて戦ってたしね。
      • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 22:43
      • 5 良いSSだった!
      • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 22:44
      • まさか、久しぶりにWを見たよ!
      • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 22:49
      • あれ?T2メモリのAtoZにファング入ってなかったっけ?
      • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 23:04
      • まんま本編と言ってもいい出来だな、感動した
        ただ惜しむらくはT2メモリのFはファングなんだよなぁ…
      • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 23:17
      • 5 本当にWが好きな人が書いてくれたことがよく伝わってきた。
        久々に面白いSSに出会えてゾクゾクするねぇ
      • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 23:21
      • 面白かった。
        T2ファングがあるのは…
        T2は精神汚染を薄めて能力を下げたとかの脳内補完でどうにかなるんじゃね
      • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 23:37
      • Wって仮面ライダーとしては異色扱いなのにヒーロー活劇としては王道ド真ん中って感じがする
      • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 23:39
      • 面白かった
        1年の間に何してたのかなって気になってたしこれはいい
      • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 23:39
      • 照井の翔太郎への二人称が『君』になってるのが若干違和感あった。

        けど全体として面白かった。これでVシネジョーカー作ってほしいくらい。
      • 11. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 23:41
      • 最後に「お前が困ったときはいつだって力を貸すぜ」とか言えないあたりハーフボイルドやな

        AtoZのおやっさんってシュラウドが化けてたんだっけ?
      • 12. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 23:43
      • 井坂の中の人が亡くなったって聞いた時はびっくりしたな
      • 13. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月11日 23:59
      • 5 途中で何度か涙が出るほど感動した。
        描写がすごいツボだったわ

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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