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米国で極大宇宙望遠鏡「MOIRE(モアレ)」の建造計画が進行中…レンズ口径は20メートル超 - Technity

米国で極大宇宙望遠鏡「MOIRE(モアレ)」の建造計画が進行中…レンズ口径は20メートル超

2013年12月11日 15:56 │Comments(7)

Written by くまむん

米国の国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency, 以降DARPA)はこのたび、プラスチック製の薄膜レンズを用いた超巨大宇宙望遠鏡「MOIRE(モアレ)」の開発計画を明らかにしました。

folding-telescope-moire

現在運用されている巨大望遠鏡のほとんどは、巨大なガラスレンズと光学ミラーを用いて集光・イメージングを行っています。

しかし、これらの “硬い” 素材を使用した巨大望遠鏡では、製造や輸送の過程で膨大なコストと時間が必要となる上、一定レベル以上に巨大化させると機械的な歪みが無視できなくなるなどの技術的課題を抱えています。特に、宇宙空間で使用する宇宙望遠鏡となれば、そうした点が非常に大きなデメリットとなってきます。

こうしたガラスレンズの機械的・経済的限界を、プラスチック製の「薄膜レンズ」で打ち破ってやろうというのが今回のDARPAの試み。もちろん、プラスチックで出来たレンズでは、鏡やガラスレンズで従来の宇宙望遠鏡のように光を「反射」させることはできませんが、その代わりにMOIREでは光を「回折」させることでイメージングを行います。

回折というのはなかなか馴染みのない単語かもしれませんが、光の通り道に小さな穴が開いたプレートを設置すると、後段のスクリーン状に下図のような幾何学的な模様が浮かび上がります。このパターンをセンサーによって検出し、数学的に解析することで、光の発生源を画像化することが可能になるという仕組みです。

folding-telescope-moire-04

MOIREに搭載される回折レンズの原理実験の様子。奥側に設置されているのが
薄膜レンズで、ここを通った光が手前のスクリーン上に回折パターンを描き出す。

このような薄膜レンズを用いる意義は非常に大きく、パッと思いつくだけでも例えば以下のようなメリットが挙げられます。

  • 材料コストがガラスレンズを用いた場合に比べて圧倒的に安く抑えられる
  • 比較的小型の人工衛星で運搬可能であるため輸送コストが大幅に低減する
  • 打ち上げ時の振動などによる破損リスク考慮する必要がない
  • 宇宙空間での光軸合わせなど、危険かつ精密な調整作業がほとんど不要

以下は、これらの薄膜レンズを人工衛星に搭載したコンセプトモデルのイメージ図。MOIREを搭載した人工衛星が軌道上に到達すると、折り紙のように折りたたまれた薄膜レンズを展開してゆき、最終的に戦艦ヤマトを想起させるような巨大宇宙望遠鏡が出来上がります。

folding-telescope-moire-03

展開前はこんな感じ。ぱっと見では、一般的な人工衛星とあまり変わりありません。

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折りたたまれたレンズユニットをスルスルと伸ばしてゆきます。
無重力下で展開するため、フレームなどの支持構造を必要としないのも大きなポイント。

folding-telescope-moire-05

伸ばしきるとこんな感じに。衛星本体よりも遥かに長い構造となっています。

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先端部分の固定を解除し、折り紙のように折りたたまれたレンズを展開してゆきます。

folding-telescope-moire-07

最終的にはこんな形状に。先端部分の黄色いディスクが薄膜レンズユニットで、
ここから入った回折光を衛星側で解析、イメージングを行う仕組み。(Youtubeより引用)

薄膜レンズを最大展開すると、なんと口径部分は68フィート(約20メートル)にも達するとのことですが、下の画像を見ると、これがいかに巨大なものなのかが良くわかります。

folding-telescope-moire-02

スピッツァーやハッブル、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(2018年頃に稼働予定)
ハワイのマウナケア山頂にあるケック天文台と、MOIREレンズの比較。

このMOIRE宇宙望遠鏡、現在の試算では高度3万6000メートルの宇宙空間から中型犬サイズの物体を認識することが可能であり、また一度のスキャンで地球表面の実に40%という膨大なエリアを観測することが可能とのこと。

ここまで壮大な計画だと、ついつい「また絵に描いた餅か…」と思ってしまいがちですが、DARPAによると、本プロジェクトの主要委託先であるBall Aerospace & Technologies社が既に5メートル級のプロトタイプが製作しており、実際のイメージングにも成功しているとのこと。

今後実施される第二フェーズでは実際に軌道上に望遠鏡を展開した実験を予定しているそうですが、具体的な打ち上げ時期については公開されていません。

なんだかエヴァンゲリオンの世界を彷彿とさせるようなとんでもない望遠鏡ですが、DARPAが主導しているプロジェクトだけに、スパイ衛星としての運用も想定されているようです。こんなモンスターにはるか上空から監視されているなんて、想像しただけでも恐ろしくなってきますね…。

[DARPA via Gizmag] [Extremetech] [Wired.com]

くまむん

著者 : くまむん@むっちゃん育成中

企業の研究所で家電関連技術の研究開発に携わっておりましたが、2013年4月をもって退職し、当サイトの専属となりました。今後ともよろしくお願いいたします。

7 件のコメント

  1. No Name 2013年12月11日 16:38 No.586735 返信

    地上監視が捗るな

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  2. No Name 2013年12月11日 16:53 No.586776 返信

    なんかこの望遠鏡が地球の周りを飛んでるとか超近未来な感じがするな

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  3. No Name 2013年12月11日 17:27 No.586875 返信

    なるほど分からん。。。
    エヴァなの?ヤマトなの?
    ハッブル宇宙望遠鏡と目的はなにが違うの?

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    • No Name 2013年12月11日 23:20 No.587864 返信

      このプロジェクト自体は新しい望遠鏡技術を開発するのが目的で用途は特に限定していない
      成果を利用して偵察衛星を開発することもできるし
      KH-12型偵察衛星を改造してつくられたハッブルのような科学衛星を開発することもできる
      まぁ静止軌道前提なあたりからすると一番有り得るのは早期警戒衛星SBIRS-Highの後継だろうね
      ちょうどコスト高に悩んでるところだし

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  4. No Name 2013年12月11日 20:30 No.587411 返信

    ハップルのようなミス起きなきゃ良いけどな

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    • No Name 2013年12月11日 22:58 No.587820 返信

      ハッブルというかガリレオじゃないか。
      展開式のハイゲインアンテナが開かなくなったって言う。

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  5. No Name 2013年12月11日 21:04 No.587578 返信

    もうどうみても魔方陣

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この記事にコメント
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