2:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:27:24 ID:c06v5Vfg
山岡 「市場で買って来たのを煮込んだんですが、結構いけるでしょう」
サンタ「これが、トナカイの肉だと!? まるで牛肉じゃないか!」
山岡 「ええ、その通り。北欧諸国ではトナカイは”北の牛”と呼ばれていて、大変美味です」
サンタ「長い間、トナカイと暮らしてきたが、食べるなんて思いもよらなかった」
山岡 「少し獣臭いので、鹿や猪に似ているかもしれません。
ちゃんと臭み抜きをしてやれば、その味は、十分に通常食として耐えうるものですよ」
3:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:28:25 ID:c06v5Vfg
サンタ「ワインとの相性もいい。あんたも飲みなさい」
山岡 「いやぁ、ごちそうになります。ワインと食べるとまた格別だなぁ」
サンタ「匂いを抜いているからかな、味に癖が無く食べやすい。
それに、このソースが甘酸っぱくて美味い。肉にも良くあっているよ」
山岡 「ここにあったコケモモでソースを作りました。
それだけだと酸っぱすぎるんで、砂糖で甘くしてあります」
サンタ「コケモモ……ああ、リンゴンベリーか。トナカイのエサのつもりで置いておいたんだが」
山岡 「栄養豊富で保存も利きますから、人間が食べない手は無いですよ」
4:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:29:47 ID:c06v5Vfg
サンタ「美味いなぁ、人と食事をするのは久しぶりだ」
山岡 「こんな雪山の奥に住んでたらそうでしょう。最も、そのおかげで、俺は助かりましたけど」
サンタ「まさか、こんな日に来客があるとは思っていなかったよ」
山岡 「俺も、まさかこんな温かいものにありつけるとは」
サンタ「いやぁ、どちらも身近にあるものだが、口に入れたのは初めてだ」
山岡 「珍しいですね。トナカイの肉なんて、ここらじゃあ当たり前でしょう」
5:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:30:24 ID:c06v5Vfg
サンタ「わしは人里から離れて暮らしてるからな。トナカイは相棒だよ」
山岡 「なるほど……」
サンタ「まぁ、あんたのおかげで、久しぶりに美味いものと楽しい時間を過ごせたよ。
明日は、街まで送っていこう。今日はゆっくり休んでくれ」
山岡 「恩に着ます」
6:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:31:03 ID:c06v5Vfg
〜
「……か」
「……おか!」
「やまおか!!!」
7:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:31:41 ID:c06v5Vfg
山岡 「……んあ?」
探検部長「おお! 生きてるぞ! こっちだ! タンカ持ってきてくれ!」
山岡 「部長、どうしたんですか。面白い顔しちゃって」
探検部長「馬鹿野郎め! お前、雪山ではぐれて遭難してたんだよ! 覚えてないのか!?」
山岡 「そうなん……あれ、爺さんは?」
探検部長「大分、錯乱しているな。まぁいい、今は休め!」
山岡 「うん?」
8:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:32:13 ID:c06v5Vfg
〜
数日後
山岡 「やっと退院か。浪人の末に大学に入れたから、冒険探検部なんて入ってみたが、
やれノルウェーだのフィンランドだのに連れて行かれるわ、体力が無いとついていけないわ、
雪山に置いていかれるわ、吹雪で迷うわ。二度とゴメンだ」
探検部長「しかし無事で何よりだ」
山岡 「偶然、山小屋に行き当たって良かったですよ。あの爺さんに礼を言わないと」
探検部長「山小屋? あの山にはそんなものないはずだぞ」
山岡 「へ? いや、だって」
探検部長「寒さで幻覚でも見たんじゃないか?」
9:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:32:47 ID:c06v5Vfg
山岡 「幻覚で吹雪がしのげますかね……?」
探検部長「ん? お前の、ポケットのそれは何だ」
山岡 「これは……木彫りの馬……」
探検部長「このへんの工芸品のおもちゃだな。
案外、サンタクロースの家にたどり着いたのかもしれんな。ははは」
山岡 「やめてくださいよ、バカバカしい。
それに俺は爺さんにトナカイの肉を食わせてやったんです。
本当にサンタクロースなら、とんでもなく悪い子ですよ」
10:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:33:44 ID:c06v5Vfg
探検部長「最初から、そんな経験をするやつなんて滅多にいないぞ。
お前、意外と冒険探検が向いてるんじゃないか」
山岡 「嫌ですよ。アウトドアなんてこりごりだ。飲み会のときだけ呼んで下さい」
探検部長「やれやれ、サンタとトナカイを食っただの飲み会だけ呼べだの、
お前はとんでもないことしか口にしないな」
山岡 「俺は真実しか言いませんよ。何だったら新聞社に勤めたっていいくらいです」
探検部長「悪いことは言わん、向いてないからやめておけ」
山岡 「……ですよね」
(おわり)
11:コバトン:2013/12/10(火) 00:30:07 ID:WhFnMj2g
乙おもしろかったよ
12:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/10(火) 00:34:16 ID:NyBzY40k
乙
13:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/10(火) 03:12:19 ID:vJOP8qZc
乙乙
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山岡 「市場で買って来たのを煮込んだんですが、結構いけるでしょう」
サンタ「これが、トナカイの肉だと!? まるで牛肉じゃないか!」
山岡 「ええ、その通り。北欧諸国ではトナカイは”北の牛”と呼ばれていて、大変美味です」
サンタ「長い間、トナカイと暮らしてきたが、食べるなんて思いもよらなかった」
山岡 「少し獣臭いので、鹿や猪に似ているかもしれません。
ちゃんと臭み抜きをしてやれば、その味は、十分に通常食として耐えうるものですよ」
サンタ「ワインとの相性もいい。あんたも飲みなさい」
山岡 「いやぁ、ごちそうになります。ワインと食べるとまた格別だなぁ」
サンタ「匂いを抜いているからかな、味に癖が無く食べやすい。
それに、このソースが甘酸っぱくて美味い。肉にも良くあっているよ」
山岡 「ここにあったコケモモでソースを作りました。
それだけだと酸っぱすぎるんで、砂糖で甘くしてあります」
サンタ「コケモモ……ああ、リンゴンベリーか。トナカイのエサのつもりで置いておいたんだが」
山岡 「栄養豊富で保存も利きますから、人間が食べない手は無いですよ」
4:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:29:47 ID:c06v5Vfg
サンタ「美味いなぁ、人と食事をするのは久しぶりだ」
山岡 「こんな雪山の奥に住んでたらそうでしょう。最も、そのおかげで、俺は助かりましたけど」
サンタ「まさか、こんな日に来客があるとは思っていなかったよ」
山岡 「俺も、まさかこんな温かいものにありつけるとは」
サンタ「いやぁ、どちらも身近にあるものだが、口に入れたのは初めてだ」
山岡 「珍しいですね。トナカイの肉なんて、ここらじゃあ当たり前でしょう」
5:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:30:24 ID:c06v5Vfg
サンタ「わしは人里から離れて暮らしてるからな。トナカイは相棒だよ」
山岡 「なるほど……」
サンタ「まぁ、あんたのおかげで、久しぶりに美味いものと楽しい時間を過ごせたよ。
明日は、街まで送っていこう。今日はゆっくり休んでくれ」
山岡 「恩に着ます」
6:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:31:03 ID:c06v5Vfg
〜
「……か」
「……おか!」
「やまおか!!!」
7:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:31:41 ID:c06v5Vfg
山岡 「……んあ?」
探検部長「おお! 生きてるぞ! こっちだ! タンカ持ってきてくれ!」
山岡 「部長、どうしたんですか。面白い顔しちゃって」
探検部長「馬鹿野郎め! お前、雪山ではぐれて遭難してたんだよ! 覚えてないのか!?」
山岡 「そうなん……あれ、爺さんは?」
探検部長「大分、錯乱しているな。まぁいい、今は休め!」
山岡 「うん?」
8:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:32:13 ID:c06v5Vfg
〜
数日後
山岡 「やっと退院か。浪人の末に大学に入れたから、冒険探検部なんて入ってみたが、
やれノルウェーだのフィンランドだのに連れて行かれるわ、体力が無いとついていけないわ、
雪山に置いていかれるわ、吹雪で迷うわ。二度とゴメンだ」
探検部長「しかし無事で何よりだ」
山岡 「偶然、山小屋に行き当たって良かったですよ。あの爺さんに礼を言わないと」
探検部長「山小屋? あの山にはそんなものないはずだぞ」
山岡 「へ? いや、だって」
探検部長「寒さで幻覚でも見たんじゃないか?」
9:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:32:47 ID:c06v5Vfg
山岡 「幻覚で吹雪がしのげますかね……?」
探検部長「ん? お前の、ポケットのそれは何だ」
山岡 「これは……木彫りの馬……」
探検部長「このへんの工芸品のおもちゃだな。
案外、サンタクロースの家にたどり着いたのかもしれんな。ははは」
山岡 「やめてくださいよ、バカバカしい。
それに俺は爺さんにトナカイの肉を食わせてやったんです。
本当にサンタクロースなら、とんでもなく悪い子ですよ」
10:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/09(月) 22:33:44 ID:c06v5Vfg
探検部長「最初から、そんな経験をするやつなんて滅多にいないぞ。
お前、意外と冒険探検が向いてるんじゃないか」
山岡 「嫌ですよ。アウトドアなんてこりごりだ。飲み会のときだけ呼んで下さい」
探検部長「やれやれ、サンタとトナカイを食っただの飲み会だけ呼べだの、
お前はとんでもないことしか口にしないな」
山岡 「俺は真実しか言いませんよ。何だったら新聞社に勤めたっていいくらいです」
探検部長「悪いことは言わん、向いてないからやめておけ」
山岡 「……ですよね」
(おわり)
11:コバトン:2013/12/10(火) 00:30:07 ID:WhFnMj2g
乙おもしろかったよ
12:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/10(火) 00:34:16 ID:NyBzY40k
乙
13:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/10(火) 03:12:19 ID:vJOP8qZc
乙乙
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