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259:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/20(日) 21:53:56 ID:LTZ6xAAk

第6話 淫されていく想い

〜客船〜
勇者「僧侶さん、魔法使いちゃんは?」

僧侶「図書室で魔法医学の勉強中です」カチャカチャ

勇者「そうなんだ。この間の天使のことだけど、やっぱり魔法使いちゃんには次の街に残ってもらうほうがいいと思う?」

僧侶「それなら、一緒に行くことに決まったじゃないですか」

僧侶「天使は魔法使いちゃんのことが気に入っているようですし、私たち三人を指名しています。別行動は良くない結果を招く気がします」

勇者「やっぱりそうかな……」





260:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/20(日) 22:20:06 ID:LTZ6xAAk

勇者「ところで、何をやってるの?」

僧侶「ペントミノを直方体に積上げています。よし、出来た!」カチャカチャ

勇者「ほんと、僧侶さんはいつも楽しそうだな」

僧侶「そう見えますか? 私だって、いろいろ悩みがあるんですよ」

勇者「たとえば?」

僧侶「そうですねえ……」

僧侶「……」

僧侶「勇者さま、一緒にペントミノ牧場を考えませんか。ピースを柵に見立てて、一番大きな牧場を作るのです」

勇者「今、ごまかした?」

僧侶「そんなことないですよ。私たちがこの世界の中で、いつも幸せに過ごせたら良いなと思って言いました」カチャカチャ

勇者「そうだね。そのためにも、南の調査を早く終わらせないとな」

僧侶「ふふっ、そうですね」





261:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/20(日) 22:29:31 ID:LTZ6xAAk


〜南の都〜
勇者「やっと南の大地に到着したなあ」

魔法使い「船旅も楽しかったです。ここって確か、魔術の研究が盛んな都ですよね」

勇者「そうだよ。きっと色んな書物が置いてあるんじゃないかな」

魔法使い「うわぁ、楽しみです。何冊か買って、村に送ってもらうことって出来ますかねえ」

勇者「お店の人に聞いてごらん」

魔法使い「はいっ」





262:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/20(日) 22:55:46 ID:LTZ6xAAk

僧侶「ところで、ここは白夜温泉が有名だそうですよ。その温かいお湯で育った鮮魚が、とても美味しいらしいです」

魔法使い「白夜……。そういえば、昨日は夜でも明るかったです」

僧侶「ここは南極圏だしね。夏も終わりが近いし、この辺りはもうすぐ日が沈むようになるんじゃないかな」

魔法使い「そして秋から、ここは極夜ですよね。どうして、こんな場所で魔術の研究をするのでしょうか?」

僧侶「昔は呪術的な現象だと思っていたから、その名残だと思うよ」





263:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/20(日) 23:04:01 ID:LTZ6xAAk

魔法使い「なるほど……。言われてみれば、呪術的なものを感じる気がします」

僧侶「皆既日食なども、呪術的な現象だと信じられていたよね」

魔法使い「いや、そうじゃなくて本当に感じるんです」

僧侶「そうなんだ。でも、魔術の研究が盛んな都だしね」

魔法使い「それもそっか」

勇者「僧侶さん。白夜温泉と魚料理は、あの旅館が良いみたいだね」

僧侶「そうですね、そこに泊まりましょう。お魚、楽しみです♪」





264:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/20(日) 23:13:46 ID:LTZ6xAAk


〜宿〜
僧侶「魔法使いちゃん、見てみて。この窓、南向きだから白夜を満喫できそうだよ。遮光カーテンも付いてるし、観光客のニーズに応えた間取りだよね」

魔法使い「ですね〜。日が沈まないときに来られて良かったです」

勇者「今後の予定なんだけど、二人とも良いかな?」

僧侶・魔法使い「はい」

勇者「明日はこの国の王様に会いに行くから、二人は自由行動。明後日はみんなで、買出しをしようと思う」

僧侶「分かりました」

魔法使い「了解です!」

勇者「じゃあ、今から観光に行こうか」

魔法使い「今日のうちに、本屋さんと雑貨屋さんを見つけておきたいです」ルンルン





265:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/20(日) 23:34:41 ID:LTZ6xAAk


〜街〜
勇者「この街は24時間営業の店が多いんだな」

僧侶「やっぱり明るいからじゃないですか?」

勇者「そういう土地柄だもんな。うちの近所でも、そういう店があったらいいのに」

魔法使い「勇者さま、雑貨屋さんがありましたよ」

店主「お嬢ちゃん、いらっしゃい。魔道具や民芸品など幅広く取り揃えているよ」

魔法使い「色んな知恵の輪が置いてありますね。あっ! 九連環ですよ、これ」

僧侶「どれどれ? ほんとだ。神の遺産も売ってるんだ。触っても良いですか?」

店主「見本なら大丈夫だよ」

僧侶「ありがとうございます」カチャカチャ





266:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/20(日) 23:51:29 ID:LTZ6xAAk

勇者「僧侶さん、神の遺産ってことは、何か意味があるの?」

僧侶「前から三番目の輪を外すためには、この二番目の輪を利用しないと外せないですよね」

勇者「そうだね」

僧侶「そして四番目の輪を外すためには、三番目の輪を利用しないといけない。後は、この手順の繰り返しです」

僧侶「というわけで、九連環は献身や協調性の大切さを教えてくれるパズルなんです」

勇者「ふぅん」

僧侶「私たちも、大切な人のために何が出来るのか。それを考えられる人になりたいですね」

勇者「大切な人か……」





267:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 00:04:46 ID:XhUo2.6o

魔法使い「僧侶さん、僧侶さん! このお店、チリ人の輪やキャストパズルもありますよ!」

僧侶「すごいっ、このお店は難関な知恵の輪の宝庫だね」

魔法使い「ねえねえ、これは何でしょうか?」

店主「その知恵の輪は、チャレンジ知恵の輪だよ。その砂時計が落ちるまでに紐を外せたら、商品を一つ3割引きにします」

魔法使い「何でも安くしてもらえるんですか?! 頑張ります!」





268:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 00:16:44 ID:XhUo2.6o

僧侶「針金の先端を輪にして、その輪を通るように針金を曲げて、もう一方の先端も同じように輪にして『8の字』みたいな形にしたものですね」

僧侶「それに付属している紐の輪を、針金から外せばいいのですか?」

店主「そうだよ」

僧侶「……。でもこれ、インチキですよね?」

店主「!! な、何を根拠に!」





269:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 00:21:01 ID:XhUo2.6o

僧侶「8の字知恵の輪は、両端の輪で閉じる場所によって2種類作れます。これは、外せない作り方です」

店主「それに気付いたところで、お客に損はないだろ。ちょっとした遊び心じゃないか」

僧侶「インチキだと認めましたね」ニコッ

魔法使い「インチキパズルの紐を外すには、結び目をほどくしかありません」

店主「!!」

魔法使い「砂時計が落ちるまでに、紐を外すことが出来ました」ルンルン

僧侶「ちゃんとサービスしてくださいね♪」

店主「お嬢ちゃんたちには負けたよ……」





270:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 00:30:36 ID:XhUo2.6o

勇者「おっ、割引きしてもらえるんだ。ところで、このチリ人の輪って、どうやって外すの?」

僧侶「すみません、知らないです。それは、とても難しい知恵の輪なんです。馬蹄パズルと同じように、抜け道があるのだと思いますよ」

勇者「抜け道か。そういう感じには見えないけどなあ」

魔法使い「リングが中にあるように見えて、実は同時に外でもあるんですよね」

勇者「中にあるように見えて、実は外にある……か」

僧侶「そうです。主観が絶対ではないことが分かりますよね」

勇者「どうしても、この知恵の輪だけは外したいっ!」

僧侶「勇者さまも、パズルの楽しさが分かってきましたね♪ ここは良いものが多いので、買って帰りましょうよ」





271:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 00:37:26 ID:XhUo2.6o

店主「ありがとうございます。一つだけ3割引きにしますよ!」

僧侶「安い知恵の輪で、割引特約を使う訳ないじゃないですか。もちろん、魔道具を見てから考えます」

店主「そ、そうですな。お買い物をお楽しみくださいませ」

魔法使い「僧侶さん、魔封じの腕輪や賢者の石なんて高級品がありますよ!」

僧侶「その賢者の石は、純度が低い中クラス品ですよ」

魔法使い「そうなんですね。見分けがつかないです」

僧侶「さっきのパズルのことがあるから、魔道具選びは慎重にね」

魔法使い「は〜いっ」

店主「……」





272:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 21:56:35 ID:XhUo2.6o

僧侶「勇者さま、この転移の羽を魔法使いちゃんに買いませんか?」

勇者「転移の羽?」

僧侶「魔力を解放すると、一度行ったことのある場所に転移することができる魔道具です。これを西の村に行けるように設定しておけば、魔法使いちゃんだけは無事に帰すことが出来ます」

僧侶「天使とのこともあるし、絶対に必要だと思います」

勇者「そうだね」

魔法使い「良いのですか?! だってそれ、ものすごく高級な魔道具ですよ」





273:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 22:05:59 ID:XhUo2.6o

勇者「僕たちにとって、魔法使いちゃんの無事が一番重要なことだからね。砂漠の富豪さんの報酬があるし、一つくらいなら大丈夫だよ」

魔法使い「ありがとうございます」

店主「そ、それを安く買うとはお目が高い……」アセアセ

勇者「ははっ、サービス助かるよ。じゃあ、転移の羽と知恵の輪で」

店主「ありがとうございました」


僧侶「とても良い買い物をしましたね〜。浮いたお金で、白夜まんじゅうを食べませんか?」ルンルン

勇者「そうだね。あの喫茶店に寄っていこうか」





274:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 22:12:36 ID:XhUo2.6o


〜宿・夜〜
僧侶「温泉育ちのお魚、美味しかったです」

勇者「メインの鍋をポン酢で食べるのが、あっさりしてて良かったね」

魔法使い「から揚げも美味しかったですよ」

勇者「ところで、明日はどうするか決めたの?」

魔法使い「魔術師の街というだけあって、本屋さんや図書館が充実していたので入り浸ります」

僧侶「転移配送サービスも手頃だったし、行きたい喫茶店もあります。明日が楽しみだね」ルンルン

魔法使い「日が沈まないから、明日って感覚があまりしないですけど」

僧侶「そうだね。今夜は太陽がぐる〜っと地平線を回るところを見ていようかな」

魔法使い「私も一度見てみたいです!」





275:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 22:15:30 ID:XhUo2.6o

僧侶「じゃあ、先に温泉に行きましょうか。ここは白夜にちなんで混浴だそうですよ」

勇者(混浴だと?)

魔法使い「混浴って、複数の源泉が混ざっているんですか?」

僧侶「どうなんだろ? とりあえず、露天風呂って書いてあるし楽しみだよ〜」

魔法使い「露天風呂って、確か景色を見ながら温泉に入れるんでしたよね」

僧侶「そうそう。それでは勇者さま、お風呂に行ってきます」

魔法使い「行ってきます♪」

勇者(こ、これはチャンスだ!)





276:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 22:18:02 ID:XhUo2.6o


〜宿・温泉〜
魔法使い「もう夜なのに明るいって、本当に不思議ですよね〜。何だか、神秘的です」

僧侶「さっきから、そればっかりだね。ところで魔法使いちゃん、今日もいい?」

魔法使い「はい」

僧侶「もうちょっと抱き寄せるね」ぎゅっ

魔法使い「……// じゃあ、軽く風魔法いきます」シュッ

僧侶「うぅん、分かりにくいな。外だし、一発ドカンと決めてくれない?」





277:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 22:22:30 ID:XhUo2.6o

魔法使い「じゃあ、水精霊と風精霊であの雲を散らします」

僧侶「地味だけど、すごいんだよね?」

魔法使い「はい。では、いきます!」


ボォォンッ


僧侶「おおっ、すごい!! これって、天気を操れるんじゃないの?」

魔法使い「天気を操ろうと思ったら、魔力が空っぽになっても無理ですよぉ」

僧侶「局地的なら行けるんじゃないかな。じゃあ、最後に継続的な魔法よろしく」

魔法使い「風精霊さん、涼しい風をお願いします」ソヨソヨ





278:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 22:24:53 ID:XhUo2.6o

僧侶「やっぱり、脳が魔法の発動に関わっているみたいね」

僧侶「客船で何人か調査してみたけど、魔法を使える人と使えない人は脳の使い方に微妙な違いがあるみたい」

魔法使い「そうなんですか?」

僧侶「何て言うのかな、魔法を少しでも使える人には、一箇所だけ不自然な部位があるの」

魔法使い「不自然?」





279:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 22:32:53 ID:XhUo2.6o

僧侶「魔法を使おうとすると脳がとても活発になるんだけど、そのときに魔力が収束されて、そのまま消えてしまう場所があるの」

魔法使い「それが世界の扉じゃないですか」

僧侶「私もそう思う。だけどね、そこから先が問題なのよ」

魔法使い「問題って何ですか?」

僧侶「その部位を破壊しても、魔法を使うことができることが確認されているの」

魔法使い「そっか。堕天使しか使った事例がないし、それで研究が止まっちゃったのですね」





280:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/21(月) 22:37:06 ID:XhUo2.6o

僧侶「あのとき天使が、『魔法のエネルギーをどうやって調達しているんだろうね』って言ってたでしょ。それってつまり、ヘクソミノが示す別世界から調達しているんじゃないかな」

魔法使い「だとしたら、転移魔法の範疇に入りますよね。魔力が収束して脳が消費しているのではなくて、魔力を使って別世界に干渉しているんだから」

僧侶「転移魔法か……。ありがと、サクッと勉強してみるよ」

魔法使い「やっぱり封印魔法は難しいのですね。魔法医学を極めるのでさえ大変なのに、さらに転移魔法まで覚えないといけないんだから」

僧侶「そう考えると、天使の知識は人間を軽く超えてるんだなって畏怖しちゃうね」

魔法使い「はい……、すごいです」





281:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 20:21:25 ID:BNWysf3o


勇者「ふうん、二人はお風呂でそんな話をしているんだ」

僧侶「!!」
魔法使い「きゃあああぁぁぁっ!!」

僧侶「あわわ// ゆ、勇者さま、ここは女湯ですよ」

勇者「いやいや、僧侶さん。自分で混浴だと言ってたじゃないですか。ほら、あそこ見て」

僧侶「だ、脱衣所が繋がってます!!」





282:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 20:29:40 ID:BNWysf3o

魔法使い「じゃ、じゃあ混浴というのは……」

勇者「白夜にちなんで昼と夜の区別がない、つまり男と女の区別がないという意味だと思うけど」

魔法使い「ええぇぇっ! い、いつから居たんですか?!」

勇者「雲を消す辺りから。魔法の研究をしているみたいだったし、邪魔したら悪いなって思って……」

僧侶「というか、知ってましたよね?」

勇者「ははっ、ま、まさかぁ。二人がいて、びっくりしたよ」アセアセ





283:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 20:44:13 ID:BNWysf3o

魔法使い「うぅ、もういいです。私の裸をたくさん見ましたよね? 見ましたよねえ!」

勇者「それは……、見ました。ご、ごめんなさい」

魔法使い「じゃ、じゃあ、勇者さまの裸も見せてください//」チラッ

勇者「ええっ!!」
僧侶「いやいやいや。魔法使いちゃん、それは駄目ですっ」

魔法使い「魔法医学の勉強で、殿方の身体構造と生体エネルギーの分布が図解では理解できなくて……。そ、それで勇者さまなら//」

僧侶「ちゃんと理解すれば、裸にならなくても読み取れるようになるんだけど。実技研修のたびに、みんなに裸になってもらう訳にはいかないでしょ」





284:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 20:52:22 ID:BNWysf3o

魔法使い「それはそうですけど、殿方のことが全然分からないです」

僧侶「あっ、そうか……。そのための、基礎知識が身に付いていないのか」

魔法使い「僧侶さんがお風呂で私を抱き寄せるのは、魔力分布を詳しく把握するためですよね。それと同じで……」

僧侶「はいはい、分かったから。私も最初は理解できなかったし、見たほうが手っ取り早いのは確かだよね」

魔法使い「はい、そうですよね//」

僧侶「でも、生体エネルギーの分布は読めるようになったの?」

魔法使い「それはもう完璧です」ブイッ





285:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 21:18:49 ID:BNWysf3o

僧侶「えっ、魔法医学の勉強を始めてまだ一ヶ月でしょ。じゃあ、もしかして回復魔法のステップに入ってるの?」

魔法使い「はい。軽い創傷はもう治せるようになりました。でも血管の処理が難しくて、上手く出来ないときもあるけど……」

僧侶「すごいじゃない! 血管と血液の理解は回復魔法の基礎だから、まずはそこをしっかりね」

魔法使い「はい」





286:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 21:25:10 ID:BNWysf3o

僧侶「それが出来るようになったら、次のステップかな」

魔法使い「まだまだ先は長いですね」

僧侶「いやいや、一ヶ月で回復魔法も出来るって、すごいことだと思う。そこまで出来ているなら、殿方の身体構造を見ておかないと性差が出てきたときに苦労するかも……」

魔法使い「ですよね//」

僧侶「本当は駄目だけど、あ……あくまでも学問のためだから、今回だけは特別に許可をして、許してあげるんですからね」





287:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 21:59:03 ID:BNWysf3o

勇者「あれっ、許しちゃうんだ……」

僧侶「さっきの話、聞いてましたよね?」

勇者「それは、まあ」

僧侶「変な意味じゃなくて、魔法医学の実技研修のために、男性モデルになってくださいとお願いしているだけですから。他のお客さんが来る前に、さくっとやりましょう!」

魔法使い「恥ずかしいけど、勇者さまなら信じられます。協力してください//」





288:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 22:04:22 ID:BNWysf3o

勇者「分かったよ。魔法使いちゃんがずっと頑張っているのは知ってるし、そのモデルって何をすればいいの?」

魔法使い「あ、洗い場に移動してください。大鏡が一枚あるので、その前にお願いします//」


勇者「こ、ここで良いかな?」

魔法使い「あわわ、本当に亀さんの頭みたいです// べ、勉強、勉強!」マジマジ

僧侶「魔法使いちゃん、焦らずに落ち着いてやれば大丈夫だから」

魔法使い「はい。ちょっと抱きつきます」ギュッ

勇者(身体が柔らかい……。いや、無心無心!)





289:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 22:34:52 ID:BNWysf3o

魔法使い「やっぱり、骨格や筋肉量が女性とは違いますね」

勇者「そりゃあ、いつも鍛えているから」

魔法使い「身体付き以外に内分泌も違うし、ここも……」

勇者「まだ終わらないのかな?」

魔法使い「あの、今は基本的な身体構造を確認しているだけで……。殿方の身体構造は、男性器と生殖細胞の確認が中心になります」

勇者「そ、そうなんだ……」

僧侶(やっぱり、許すんじゃなかった。これを既成事実にしたくない……)





290:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 22:39:42 ID:BNWysf3o

魔法使い「勇者さま、鏡のほうを向いてください。あの、触りますね」さわさわ

勇者「さすがに触られると……」

魔法使い「あっ、ここで反応して大きくなるんだ」にぎにぎ

僧侶「ねえ、勇者さま。今なら興奮しやすいように、私の身体を許しますよ」ムニュッ

勇者「えっ、僧侶さん、それって……」

僧侶「……はい。性的に興奮して射精することが、男性モデルの役目です//」

勇者「いやいや、うれしいけど冗談だろ」

魔法使い「うれしいなら問題ないですよね。射精してください、お願いします//」





291:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 23:10:35 ID:BNWysf3o

僧侶「別に我慢しなくても良いんですよ。触りたくありませんか?」

勇者「じゃ、じゃあ、その大きなおっぱいを」

僧侶「あぅ//」

魔法使い「完全に勃起して硬くなりました// こんなに早くて複雑な反応なんですね」

勇者「ヤバい、気持ちいい……」





292:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 23:25:14 ID:BNWysf3o

僧侶「魔法使いちゃん。殿方の生体エネルギーの分布が、性的な興奮でどう変化していくのかよく覚えておいてね」

魔法使い「は、はいっ」

僧侶「もちろん、全身の反応もすべて読み取るのよ」

魔法使い「勇者さま、もう少し抱き締めます」ギュッ

僧侶「――で、その変化が安定したら脊髄にある射精中枢が反応して、射精反射が発生するから。男性器の変化は早いから気をつけてね」

魔法使い「はい。何か出てきましたよ……。へぇ、ここから分泌されてるんだ」





293:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 23:27:57 ID:BNWysf3o

僧侶「あぅんっ……// 勇者さま、そこは駄目です」

勇者「でも、すごく濡れてるよ」ヌルッ

僧侶「……。じゃあ、優しくしてくださいね//」

勇者「これは痛くない?」クチュクチュ

僧侶「そう、そこ……そんな感じ」ビクッ

魔法使い(二人とも興奮してる。ううん、今は集中しないと!)





294:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 23:35:30 ID:BNWysf3o

勇者「びくって、僧侶さん感じてるんだ」クチュクチュ

僧侶「はぃ……気持ちいいです//」ハァハァ

魔法使い「精子が移動してますね。あっ、ついに脊髄反射が来ました!」シコシコ

勇者「ちょっと待って、それ以上されると」

魔法使い「今、精液がたくさん作られています。もう出すしかないですよ」

僧侶「勇者さま、私の手に出してください//」

勇者「イクっ!」ドピュッ

魔法使い「わわっ、飛び出すんだ……// す、すごいです!!」





295:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/22(火) 23:46:18 ID:BNWysf3o

僧侶「ほら、一緒に興奮しない。殿方は射精したらすぐに醒めるから、身体反応の確認をしておいて」

魔法使い「えっ、あっはい」アセアセ

僧侶「どう、分かる?」

魔法使い「何かの酵素が影響して、男性器への血液の流量が変化しています。それと脳内で、新たにホルモン分泌がされているみたいです。あとは少し難しいです」

僧侶「そこまで分かるって、すごいじゃない。じゃあ、最後に精液を確認して」ドロッ

魔法使い「みんな元気ですね。でも、ごめんなさい。流しちゃいます」

僧侶「ちゃんと分泌液の役割とか、精液の変化を観察してからね。それも大切なことだよ」

魔法使い「えっと、頑張ってみます」





296:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/23(水) 00:27:36 ID:FxQvtEIQ

魔王「支援」





297:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/23(水) 09:05:04 ID:9M2ykIPc

側近「ふぅ…魔王様戻りますよ」





298:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/23(水) 22:58:24 ID:46UAt9kY


僧侶「勇者さま、お疲れさまでした。身体が冷えるし、私たちは湯船に戻りましょう」

勇者「そうだね。僧侶さん、このあと二人で出かけて続きをしませんか?」さわさわ

僧侶「う〜ん、すみません。今夜はちょっと無理です。それに身体を許したのは学問のためですから、勘違いしないでくださいね」

勇者「そっか……」

僧侶「でも、もう良いかなと思いはじめています。だから、少し考えさせてください。私には、とても大切なことなので――」





299:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/23(水) 23:07:58 ID:46UAt9kY

僧侶「ところで勇者さま、魔法使いちゃんの手で射精しましたよねえ」

勇者「あれは不可抗力というか……」

僧侶「それが目的だったので怒っていません。魔法使いちゃんは、勇者さまなら信じられると言いましたよね」

勇者「……ああ」

僧侶「どうか、それを裏切らないであげてください。特に今回のことで、彼女を利用したりしないよう、お願いします」

勇者「分かってるよ。魔法使いちゃんは妹みたいなものだし、さっきのことは割り切るつもりだから」

僧侶「そうなんですね……」





300:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/23(水) 23:37:31 ID:46UAt9kY

勇者「ふと思ったんだけど、魔法使いちゃんって、僧侶さんから見てどうなの?」

僧侶「きっと、すごい賢者になりますよ。まだ身体構造は理解してないけど、もう的確に把握できているみたいです。一ヶ月で出来ることではありません」

勇者「そうなんだ。僧侶さんは、どれくらいかかったの?」

僧侶「私は12歳から勉強をはじめて、半年くらいかな。私が魔法使いちゃんと同じ歳のときは、怒られてばっかりでしたよ」

勇者「今の僧侶さんからは、想像出来ないね」

僧侶「でもそういう時期があって、今の私があるんです。厳しかった先生に感謝しています」

勇者「でも僧侶さんって、どうして賢者を目指さないの?」

僧侶「人の命について、深く知りたかったからです。だから――」





301:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/23(水) 23:47:05 ID:46UAt9kY

魔法使い「勇者さまぁ//」ジャブジャブ

勇者「どうしたの?」

魔法使い「今日は協力してくれてありがとうございました。殿方の性がこんなにも精巧で複雑だなんて、全然思ってなかったです。すごく勉強になりました!」

勇者「それは良かったね。応援してるから、勉強頑張って」

魔法使い「はいっ! あの、気持ちよかったですか?」

勇者「そういうことは聞かない」

魔法使い「ふふっ、私は全部お見通しですよ//」

勇者「なっ……、女の子はそういうことも言わない!」

魔法使い「えへへ//」





302:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/24(木) 00:20:19 ID:Uu9qq1KE

魔法使い「あの、僧侶さん。手伝ってくれてありがとうございました。勇気を出してお願いして、本当に良かったです」

僧侶「今回は、特別に許してあげただけだからね」

魔法使い「……分かっています。それと僧侶さんの身体反応は、やっぱり私と同じなんですね」

僧侶「えっ、そんなことまでしてたの?!」

魔法使い「背中がずっと触れていたので、ついでに……。二人同時はちょっと疲れました」

僧侶「そうなんだ……」

勇者「というか、さらっとすごいことを言ったような」

魔法使い「わ、私だって、そういう気分になるときがあります//」

勇者「そう……だよね」





303:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/24(木) 00:23:58 ID:Uu9qq1KE

僧侶「それは良いけど、精液のほうはどうしたの?」

魔法使い「バッチリです! そういえば、流そうとしたら固まりました。勇者さまがいつも部屋でなさるのは、流しにくいからなんですね」

勇者「えっ、あぁ、うん……」

僧侶「たんぱく質は熱に弱いの。後で一緒に、さっきの復習をしましょうね。ちゃんと理解すれば、身体構造や神経作用が飛躍的に分かるようになるから」

魔法使い「はいっ、お願いします。人の身体って、すごく面白いです!」





304:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/24(木) 19:55:22 ID:Uu9qq1KE


勇者「じゃあ、僕は先に戻ってるから」ジャブ

魔法使い「勇者さま……。ここは混浴だし、明日から一緒に入りませんか」

勇者「いやいや、さすがにそれは……」

魔法使い(勇者さまが一人で入っているときに、知らない女の人がいたら……)

僧侶「あの……、知らない殿方に声を掛けられたら怖いし、勇者さまに居てほしいです」

勇者「まあ、そこまで言うなら……」チラッ





305:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/24(木) 20:10:27 ID:Uu9qq1KE

魔法使い「わわっ、勇者さまがまた勃起しました//」

僧侶「えっ」
勇者「あっ!」ジャブ

魔法使い「さっき出したのに、本当にエッチですね//」

勇者「はは……」

魔法使い「一緒に入って興奮させて、ずっと我慢させるのは申し訳ないです」

勇者「心配しなくても大丈夫だから」

魔法使い「でも、したいから勃つんですよね――」





306:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/24(木) 20:19:09 ID:Uu9qq1KE

僧侶「じゃあ、今夜から勇者さまの更衣室を広げてあげましょうか」

魔法使い「それでどうするんですか?」

僧侶「私たちが部屋にいても、一人でしやすくなるでしょ」

魔法使い「あっ、そうですね。それなら、勇者さまがいつでも出来ますね」

勇者「僕は、二人がいたら気になるんだけど……」





307:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/24(木) 20:34:09 ID:Uu9qq1KE

僧侶「私たちは一緒にお風呂に入って、勇者さまを射精させたのですよ。もう今さらじゃないですか」

勇者「それもそうだな」

僧侶「だから私たちの関係に合わせて、部屋の間取りも工夫しましょうよ」

魔法使い「そうです。いつでも出来るようになれば、時間の使い方も変わりますよ」

勇者「じゃあ、部屋に戻ったら頼むよ」

魔法使い「はい、任せてください//」





309:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/24(木) 22:49:46 ID:Uu9qq1KE

10
〜部屋・深夜〜
魔法使い「――つまり回復魔法は、自然回復しない創傷は治せないということですか?」

僧侶「そうです。回復魔法は自然治癒力を加速させる魔法なんです。だから、瀕死の重傷や破裂した内臓は治せません」

魔法使い「そうなると、治癒魔法や蘇生魔法が必要なんですね」

僧侶「そうそう。治癒魔法は生体エネルギーを増幅させて、自然回復を超えた治癒をする魔法。蘇生魔法は失った生体エネルギーを取り戻して、身体機能を再生させる魔法なの」





310:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/24(木) 22:52:11 ID:Uu9qq1KE

魔法使い「蘇生魔法は、生き返らせる魔法じゃないんですか?」

僧侶「その生き返らせるというのが、そもそも間違っているの。生体エネルギーを取り戻せる身体でなければ、生きていられないでしょ」

魔法使い「そうですね……」

僧侶「欠損した身体の修復はさらに高度な魔法だし、蘇生魔法があっても人の命は一つしかないということは忘れないでね」

魔法使い「はいっ」

僧侶「じゃあ、勉強はこれでお仕舞い。白夜を見ながら、もう休みましょ」





311:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/24(木) 23:11:41 ID:Uu9qq1KE

魔法使い「太陽がちょうど真南に来ていますよ。もう真夜中ですね」

僧侶「太陽が南中して夜中っていうのも、不思議だよね」

魔法使い「はい」

僧侶「勇者さま、チリ人の輪は外れそうですか?」

勇者「んっ? 勉強終わったんだ。さっきから同じことの繰り返しで、外れる気がしないよ」カチャカチャ

僧侶「少し休んで、みんなで白夜を見ませんか? いい眺めですよ」

勇者「そうだな」





312:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/24(木) 23:27:52 ID:Uu9qq1KE

魔法使い「勇者さま、見てください。太陽が沈まずに、円を描くようにして動いてますよ」

勇者「実際に見てみると、白夜って幻想的なんだな」

魔法使い「はい。みんなで見られてうれしいです♪」

勇者「そうだね。良い思い出になりそうだね」

魔法使い「あの、勇者さま……。私たちは今、太陽が描く円の中にいるのでしょうか? それとも、円の外にいるのでしょうか?」

勇者「もしかして、なぞなぞ?」

魔法使い「いえ、そういう訳じゃないです」

勇者「普通に考えたら、ここは円の中だよね」





313:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/24(木) 23:38:43 ID:Uu9qq1KE

魔法使い「円の中か……」

勇者「それがどうしたの?」

魔法使い「円の中にいるなら、私たちの絆は外れないですよね。あのお店にあった、インチキな知恵の輪と同じです」

勇者「魔法使いちゃん、それは少し違うかな」

魔法使い「えっ、何がですか?」

勇者「僕たちは知恵の輪と同じ。中にいるように見えて、実は外にいるんだよ」

魔法使い「外……ですか?」

勇者「だから絆を深めあって、固く結びつくことが大切なんだ。そうしないと、絆がバラバラになってしまうから」

魔法使い「そっか、知恵の輪なんだ……」





314:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/24(木) 23:49:21 ID:Uu9qq1KE

僧侶「外せないから言い訳ですか? ふふっ」

勇者「良いことを言ってるんだから、茶化すなよ。というか、僧侶さんも外せないんだろ?」

僧侶「九連環なら外せます」

魔法使い「あの……。知恵の輪を外した後は、また元に戻しますよね。いつか別れることになっても、私は勇者さまや僧侶さんと一緒にいたいです」

僧侶「大丈夫だよ。魔法使いちゃんは、私たちの大切な仲間だから。私たちの関係が変わったとしても、それだけは変わらないよ」





315:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/25(金) 00:14:43 ID:NkEvtqMw

魔法使い「はぁ……。今の会話に反応しないなんて、鈍いですねえ。それなら明日、露天風呂でたくさん誘惑しちゃいます//」

僧侶「それは駄目です! 勇者さまは私が……」

勇者「僧侶さん。それって、もう身体を許して――」

僧侶「ろ……、露天風呂は、そんなことをする場所ではありません!」

勇者「だよね……」

僧侶「せっかく更衣室を広くしたんだし、そちらでなさってください」プイッ

魔法使い「あらら、怒らせちゃいましたね」

勇者「まあ、いつものことだから」


僧侶(いつものこと……か。やっぱり勇者さまは、したいだけなのかな。それとも――)

魔法使い「……」





316:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/25(金) 00:22:01 ID:NkEvtqMw

第6話 おわり

(知恵の輪)
・チャイニーズリング(九連環)
・チリ人の輪

・キャストパズル

(不可能知恵の輪)
・タオ





317:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/25(金) 00:54:41 ID:NkEvtqMw

今回はここまでです。

雰囲気が変わって、
ようやくエロ展開です。
空気を読んだっぽいレスも、ありがとうございます。


パズルネタは、チリ人の輪。
解き方と答えが、三人の関係を暗示している!
そんな気がして、勇者に解かせています。

入手困難だけど、ダイソー知恵の輪が遊びやすいです。


次回の話は、後編になります。
三人の関係が変化しつつ、ラストも近付いてきた感じです。





318:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/25(金) 01:54:34 ID:3h7BEyTM

俺、魔王城の壁を補強してくるわ





319:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/25(金) 09:18:03 ID:bHEdhzPQ

>>318
最近壁がよく壊れるって話だもんな





321:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/25(金) 17:51:59 ID:DDRFrLxA

覗き穴の補強か… バレないようにな

魔法使い支援





322:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 21:00:49 ID:BBm.kHXg

第7話 幸せはどこにある

〜南の都・図書館〜
僧侶「魔法使いちゃんは、何を読んでるの?」

魔法使い「宿から持ってきた、魔法医学の本です。予定しているところまで読んだら、精霊魔術の研究論文にも目を通そうと思います」

僧侶「そうなんだ。魔法医学のことは、何でも聞いてね」

魔法使い「はい。僧侶さんは、何を借りてきたんですか?」

僧侶「転移魔法の入門書。これはここで目を通して、研究論文は書店で買う予定かな」

魔法使い「本当に勉強するんですね」

僧侶「まあね。白夜だから夜も明るいし、本を読むには打ってつけだね」

魔法使い「そうですよね〜。今日はゆっくり勉強できそうです」





323:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 21:10:07 ID:BBm.kHXg

・・・
・・・・・・


僧侶「魔法使いちゃん、これを見てみて」

魔法使い「何ですか?」

僧侶「絵のパズル、だまし絵です」

魔法使い「これはエッシャーの滝ですよね。こっちは階段ですか? それくらいなら、私も見たことがありますよ」

僧侶「これを実際に作ってみた研究者がいるんだって」

魔法使い「えっ……、あり得ないでしょ」

僧侶「ほらっ」

魔法使い「うわぁ、すごいです! 一見すると不可能なことでも、視点を変えれば再現することが出来るんですね。無理やり作った感じが、逆に好感を持てます」





324:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 21:13:20 ID:BBm.kHXg

僧侶「今度は逆さ絵だよ」

魔法使い「変わった帽子を被った貴族の絵ですね」

僧侶「その絵を逆さまにすると、馬の絵になるの」

魔法使い「面白いけど、それが転移魔法とどんな関係があるんですか? メビウスの輪やクラインの壷のほうが、ベースになっていそうな気がするんだけど」

僧侶「認識や錯覚の仕組みを考えて、世界を柔軟に捉えるという意図があるみたい。魔法医学の分野でも興味深いテーマですよ」

魔法使い「それで私に見せてくれていたんですね」

僧侶「えっ、もしかして邪魔をしてると思ってたの?」

魔法使い「そんなつもりで言ったんじゃないです」アセアセ





325:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 22:03:31 ID:BBm.kHXg

僧侶「じゃあ、最後に面白い隠し絵を見せてあげるね。何に見える?」

魔法使い「あわわ// 男女が裸でキスをしています」

僧侶「ふふっ。魔法使いちゃんは、昨日からエッチなことばっかり考えているもんね。それにしか見えないよね」

魔法使い「むうっ……、私はエッチじゃないです」

僧侶「拗ねる魔法使いちゃん、すごくかわいい//」

魔法使い「もしかして、昨日の勇者さまと僧侶さんを連想させるために、わざとこれを選んで私に見せたんですか?」





326:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 23:23:00 ID:BBm.kHXg

僧侶「……そうだよ。私は今、魔法使いちゃんに心の準備をしてほしいと考えているから」

魔法使い「やっぱり、そうなんですね……」

僧侶「魔法使いちゃんは、勇者さまのことをどう思っているの?」

魔法使い「そ、それは……」

僧侶「それは、何?」

魔法使い「……ぃぃんです」

僧侶「えっ?」

魔法使い「僧侶さんが勇者さまを好きなら、それで良いんです……」





327:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 23:27:32 ID:BBm.kHXg

僧侶「それで良いの?」

魔法使い「勇者さまは、いつも僧侶さんを見てるから……。私はまだ子供なんです」

僧侶「……」

魔法使い「でも私だって、もうすぐ結婚出来る歳だもん。僧侶さんが早くしないなら、私が誘惑しちゃいますから!」

僧侶「どうするかは勇者さまの態度しだいなんだけど、今言ったことは後悔しないでね」

魔法使い「わ、分かってます。避妊具なら、道具屋さんにありました」

僧侶「うん、分かった……」





328:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 23:39:00 ID:BBm.kHXg

魔法使い「……はぁ」

僧侶「ところで、イルカは見つかった?」

魔法使い「イルカですか? そんなのいませんよ」

僧侶「ほらほら、邪念を払って。イルカは何頭いるかなぁ」

魔法使い「駄目です、見つけられません……」ショボン





329:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 23:44:48 ID:BBm.kHXg


〜宿・部屋〜
勇者「おかえり」

魔法使い「ただいま」

僧侶「ただいま戻りました。王様の話はいかがでしたか?」

勇者「それはあとで話すよ。いつも頑張ってくれているお礼に、今日は二人にプレゼントがあるんだ」

魔法使い「プレゼントですか? うれしいです」

勇者「これが魔法使いちゃんで、こっちが僧侶さん」

魔法使い「ありがとうございます。開けても良いですか?」

勇者「開けてもいいよ」





330:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 23:59:58 ID:BBm.kHXg

魔法使い「え、エメラルドのネックレスです!」

勇者「エメラルドには魔力を宿す力があるって聞いたから、魔法使いちゃんにちょうど良いかなって。それがあれば、魔力が空っぽになるリスクを減らせるだろ」

魔法使い「はい、ありがとうございます。エメラルドには魔力を増幅する力もあって、ずっと欲しいと思っていたんです」

勇者「それは良かった」

魔法使い「あの……、似合いますか?」

勇者「すごくかわいいよ」

魔法使い「えへへ//」





331:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/27(日) 00:37:05 ID:N4qM2o.I

僧侶「勇者さま、この指輪はどう解釈したら良いんですか?」

勇者「僧侶さんはパズル好きだし、パズルリングなら喜ぶかなって。ミスリル製だし、装飾品として遜色しないと思うよ」

僧侶「ありがとうございます。これを選ぶとき、何か言われませんでしたか?」

勇者「いや、別に」

僧侶「そうなんですね……」

魔法使い「そ、それじゃあ、夕食の前にお風呂に入りませんか。勇者さまにお礼をしたいです//」

勇者「そっか、一緒に入ることになっていたっけ」

魔法使い「そうですよ。早く入りましょう//」

僧侶「では、勇者さま。一緒に入りましょうか」





332:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/27(日) 00:45:22 ID:N4qM2o.I

今日はここまでです。

イルカのだまし絵は、
『Message d'amour des dauphins』
を検索すると見られると思います。





336:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/27(日) 21:51:05 ID:N4qM2o.I


〜温泉・混浴〜
僧侶「魔法使いちゃん、今日もいい?」ギュッ

魔法使い「……はい。風精霊」ソヨソヨ

勇者「昨日もやってたけど、それって何の研究をしてるの?」

僧侶「天使がしていた封印魔法の研究です」

勇者「そうなんだ。素人考えだけど、魔力を吸収する魔法ってないのかな」

僧侶「ありますが意味がないんです。人の力では魔力を空っぽに出来ないんです」





337:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/27(日) 22:56:18 ID:N4qM2o.I

勇者「でも魔力を吸収する魔道具があるじゃないか」

僧侶「その昔、人間と魔族の戦争がありましたよね」

勇者「ああ、人間側が勝利した戦争だね」

僧侶「そのときに堕天使が持ち込んだ神の道具があって、そのレプリカが魔力を吸収する魔道具なんです」

勇者「そうなんだ」

僧侶「つまり人間には、その魔道具以上のことが出来ないのです」

勇者「なるほど……」

僧侶「分かっていることは、魔力が心臓から生み出されていること。そして魔法を使うときに、脳の一部で消滅することです」

僧侶「人の力で魔力を空っぽに出来ないのは、別の世界に魔力が貯蔵されているからかもしれません」

勇者「なんだか難しいね……」





338:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/27(日) 23:08:53 ID:N4qM2o.I

僧侶「そう言えば、勇者さまも魔法を使えましたよね」

勇者「まあ、少しくらいなら」

僧侶「風と土、電撃の魔法でしたっけ。性差があるのか確認したいので、ぜひ見させてほしいです」

勇者「でも剣術に特化させているから、魔法使いちゃんみたいに使いこなせないよ」

僧侶「それでもいいですよ。じゃあ、抱き寄せるので何か見せてください」ムニュッ

勇者「……// じゃあ、水妖斬」パシュッ

魔法使い「手刀で水が二つに割れました!」

勇者「魔法って言うか、これは水中の魔物を斬る体術だね」

僧侶「ありがとうございます。魔法使いちゃんと同じでした」





339:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/27(日) 23:37:12 ID:N4qM2o.I

勇者「ところで、王様の話だけど……。極南の地が闇に包まれているという話は、どうやら本当みたいなんだ」

僧侶「やっぱり、噂ではなかったのですね」

勇者「ああ。単なる噂なら、天使が現れたりする訳がないからな」

僧侶「そうですね」

勇者「それでだ、闇には結界が張られていて、近付くことが出来ないらしい。だから、この国でも手をこまねいているそうなんだ」

僧侶「結界で近付けないなら、私たちの調査も終わりですね……」





340:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/27(日) 23:44:42 ID:N4qM2o.I

勇者「いや、そうじゃない。女神の神託があった者とそれが選んだ者だけは、結界の中に入れるみたいなんだ」

僧侶「女神の加護があるのは勇者さまで、選んだ者は私と魔法使いちゃんですね」

魔法使い「天使さんの言葉と符合します」

勇者「ただ、問題が一つあって……。結界に侵入して帰ってきた者は、数人しかいないんだ」

僧侶「えっ?!」





341:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 00:09:31 ID:eb6T1Hg2

魔法使い「それってつまり、生きて帰ることができないということですか?!」

僧侶「だから、情報が集まらないのですね」

勇者「恐らく……」

魔法使い「私たちは、天使さんに期待されていますよね。だから、帰るわけにはいかないですよね」

僧侶「そうだね。魔法使いちゃんも、行くしかないと思う」

勇者「でも転移の羽がある訳だし、魔法使いちゃんだけは守ってあげられるから。何かがあったときは、王様に真実を伝えてくれないかな」

魔法使い「分かりました……」

勇者「じゃあ、結界内では何が起きるか分からないから。二人とも自衛策を講じておいてほしい」

魔法使い「……はい」

僧侶「私は、勇者さまと共に歩みます。回復なら任せてください!」





342:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 00:24:39 ID:eb6T1Hg2

勇者「それで、次は明日の予定なんだけど……」

僧侶「はい」

勇者「この国の王様が、魔法使いちゃんに会いたいそうなんだ」

魔法使い「ええっ! 私にですか?!」

勇者「この国は、魔術の研究が盛んな都でもあるだろ。それで天使と戦闘経験がある魔法使いちゃんに、ぜひ実力を見せてほしいんだって」





343:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 00:31:17 ID:eb6T1Hg2

魔法使い「戦闘経験って、ほとんど一方的に攻撃されただけです」

勇者「そんな事ないよ。この世界に天使と対峙した魔道師は、魔法使いちゃんだけなんだから。それは偉大なことだと思う」

魔法使い「そ、そうですよね」

僧侶「そうですよ、すごいことです! 他国の王様が会いたいとおっしゃるなんて、もう有名人だね」

魔法使い「は、はいっ。明日、頑張ります」

勇者「じゃあ、そういう訳で、しばらくここに滞在することになるから」

魔法使い「わ、分かりました」





344:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 22:26:19 ID:eb6T1Hg2


〜宿・深夜〜
僧侶「勇者さま、起きていますか?」ガサゴソ

勇者「ん? あぁ、僧侶さん。白夜が眩しくて寝られないんですか?」

僧侶「いえ、どうしても話したいことがあって……」

勇者「話したいこと?」

僧侶「はい。今日くださった、この指輪のことです。本当に装飾品以上の意味はないんですか?」

勇者「そうだけど、寝るときも着けてくれているんだ」

僧侶「あの……、これは浮気防止用のリングなんです。いわゆる、結婚指輪です」

勇者「えっ?!」

僧侶「この指輪は指から外すと、簡単にバラバラになるんです。だから婦人は、指輪を外すことが出来ません」

僧侶「そのため、出兵などで長期間の旅に出る殿方が、妻に贈るのです」

勇者「宝石店では、アクセサリーとして売っていたんだけど……」





345:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 22:33:06 ID:eb6T1Hg2

僧侶「勇者さまに、ずっと聞きたいことがありました」

勇者「聞きたいこと?」

僧侶「エルグの城で仲間を選ぶとき、勇者さまは女僧侶を指名して、戦士や魔法使いの同行を断りましたよね。女性の身体が目当てで、二人旅を選んだのですか?」

勇者「それは……」

僧侶「答えてください。勇者さまは、私と交わりたいだけなのですか?」

勇者「最初はそのつもりだった」

僧侶「……!」

勇者「だけど、すぐに別の気持ちに変わったよ。魔法使いちゃんと姉妹みたいに楽しそうな姿を見ていたら、この二人を守らないといけないなって」

勇者「それに食べることが好きなところが、一緒にいて気が合う女性だなと思ってる」

僧侶「……」

勇者「怒った……かな?」





346:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 22:41:56 ID:eb6T1Hg2

僧侶「いえ……、正直にありがとうございます。おかげで、決意出来ました」

勇者「決意?」


僧侶「私も食べることが好きな勇者さまと気が合うし、一緒にいて楽しいです。この人となら仕事の関係だけじゃなくて、ずっと信頼して一緒にいられそうだなと思っています」

勇者「それって……」

僧侶「はい、私は勇者さまが好きです。それで……、避妊具も用意しました」

勇者「僧侶さん、気持ちはうれしいけど逃げてない?」





347:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 22:46:22 ID:eb6T1Hg2

僧侶「逃げる……ですか?」

勇者「生きて帰れる保証がないから、その前にさせてあげようって」

僧侶「やっぱり、勇者さまは信頼出来る方ですね。でも私が聞きたいのは、そんな言葉じゃないんです。勇者さまが私とどうしたいのか、それを聞かせてほしいんです」

勇者「分かった。これ以上は言わなくていい」

僧侶「……」

勇者「僕は僧侶さんのことが好きだ。好きだから、僧侶さんのことが欲しい」

僧侶「うれしい……。私も勇者さまが好きです」チュッ





348:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 23:05:50 ID:eb6T1Hg2

勇者「ローブの下は、こんな下着を着ているんだ」

僧侶「このランジェリーは、刺繍がかわいいんですよ//」

勇者「ほんとだね。僧侶さん、可愛いよ」さわさわ

僧侶「あんっ……// 触り方がいやらしいです」

勇者「おっぱいが大きくて柔らかいから」

僧侶「大きいおっぱいが好きなんですか?」

勇者「僧侶さんだから、好きなんだ」モミモミ

僧侶「えへへ// 私のおっぱいはぷるぷるですよ」チュッ

勇者「じゃあ、脱がすね」

僧侶「……//」





349:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 23:42:55 ID:eb6T1Hg2

勇者「裸になっちゃったね」

僧侶「なっちゃいました。恥ずかしいです//」

ちゅっ

僧侶「んっ……んんっ」

勇者「僧侶さん……」

僧侶「ふふっ// 勇者さまぁ」

勇者「好きだ」チュッ

僧侶「はい……、んっ……ぅんっ」





350:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 23:55:11 ID:eb6T1Hg2

僧侶「あうん……」

勇者「おっぱい、ぷるぷるだね。乳首が硬くなってきたよ」チュパ

僧侶「はぅっ……、ぅん。勇者さま、いやらしいです」

勇者「僧侶さんこそ。ほらっ、もうすごく濡れてるよ」クチュクチュ

僧侶「やぁん// 言わないで」

勇者「いっぱいヌルヌルになって、感じてくれているんだね」

僧侶「……//」

勇者「この辺りが好きなんだっけ?」

僧侶「ひゃうっ、そこが気持ちいいです//」ハァハァ

勇者「いいなぁ……。可愛いよ、僧侶さん」クチュクチュ

僧侶「あんっ、あぅんっ……んっ//」





352:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 00:22:34 ID:FE2DHKq.

僧侶「はぁはぁ……// 勇者さまのアソコが、すごく硬くなってますよ」

勇者「それは、僧侶さんがエッチだから」

僧侶「ふふっ♪ 先っぽから、何か出てますね//」シコシコ

勇者「僧侶さん……気持ち良い」

僧侶「いっぱい出てきた// 今度は、私が気持ちよくしてあげるね」

勇者「じゃあ、フェラを頑張れる? 口でするんだけど」

僧侶「や、やってみます!」

僧侶「はむっ、ちゅぱちゅぱ……。くちゅっ……、こんな感じですか?」

勇者「気持ちいいよ、歯は立てないようにね」

僧侶「はい。……ちゅっ、んんっ……ちゅぱちゅる」

勇者「すごく上手だよ」モミモミ

僧侶「ちゅぱちゅぱ……はうんっ……ぅんっ」





353:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 00:40:38 ID:FE2DHKq.

勇者「僧侶さん、やばい……いきそう」

僧侶「もういっちゃいそうですか?」

勇者「それ以上されたら、もうヤバいって」

僧侶「では、出してください// 二回戦を、一緒に楽しみましょう!」

勇者「初めては、僧侶さんと一緒になりたい」

僧侶「……// じゃあ、射精中枢が反応しないギリギリまで、めいっぱい気持ちよくしてあげますね」チュパチュパ

勇者「うおっ、ちょっ……僧侶さん……いくっ」ハアハア

僧侶「ちゅぱちゅぱ……ちゅる、ちゅっ……くちゅくちゅ、ちゅぱ……」





354:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 00:54:48 ID:FE2DHKq.

僧侶「ちゅぱちゅぱ、くちゅ……。勇者さまぁ、いかがですか?」

勇者「はあはあ……気持ちいい。僧侶さん、絶妙すぎるよ……」ハアハア

僧侶「私は魔法医学を極めた女僧侶ですよ。性反応も性感も、魔力で全部お見通しなんです//」

勇者「はあはあ……」

僧侶「だから勇者さまと一緒に、二人でめいっぱい性感を高め合いたいです//」チュッ

勇者「僧侶さんって、実はすごくエッチなんだ」

僧侶「すごくエッチな女性は駄目ですか?」

勇者「僕はそんな僧侶さんも大好きだよ。もう手放したくない」クチュクチュ

僧侶「はぅん……、うれしい。ああっ、いぃ……んぅ」





355:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 22:15:29 ID:FE2DHKq.


勇者「僧侶さん、もう入れて良い?」ハァハァ

僧侶「いい……ですよ。勇者さまと一つになりたいです// 一応、アレを着けてくださいね」

勇者「分かってるよ。僧侶さん」チュッ

僧侶「ぁん……// こ、こんなに大きいのが入るんですよね」

勇者「そうだよ」

僧侶「あの……、優しくしてくださいね//」

勇者「じゃあ、入れるよ」クチュッ





356:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 22:17:44 ID:FE2DHKq.

僧侶「あぅん……ぅんっ……」

勇者「僧侶さん、痛かったら言ってね」クチュクチュ

僧侶「はいっ……」

勇者「ゆっくり入れてるから」

僧侶「くっ、んんっ……」

勇者「はぁはぁ……、奥まで入ったよ」

僧侶「んっ……。一つになれてうれしい……です//」

勇者「僕も今、すごくうれしい。それじゃあ動くね」

僧侶「はうっ、やぁっ……あうんっ…」





357:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 22:25:44 ID:FE2DHKq.

ギシギシとベッドが軋む音。
そして、僧侶さんのあえぎ声で目が覚めた。

白夜の影響で、遮光カーテンを閉めていても室内はわずかに明るい。
ちらりと見ると、二人が裸で絡み合っていた。


魔法使い(ああ、本当にしてる……)


図書館の帰り道、僧侶さんは道具屋さんに寄っていた。
そこに避妊具が売っていることを教えたのは私なので、すぐにそれだと分かった。

きっと、今夜するつもりだ――。

そう思って心の準備をしていたけど、実際にその行為を見てしまうと心が痛い。





358:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 22:37:48 ID:FE2DHKq.

僧侶「ああっ……いぃ、はぅん…………」

勇者「僧侶さん、いきそう」

僧侶「いいですよ……中に出してっ、勇者さまぁ」

勇者「イクっ!」ドピュドピュッ

僧侶「……んっ…………はぁはぁ」

勇者「僧侶さん、大好きだよ」

僧侶「私もです……。勇者さま、いっぱい出ましたね//」

勇者「ものすごく気持ちよかったから// 僧侶さんと一つになれて、すごく幸せだよ//」

僧侶「ふふっ// 何だか、恥ずかしいです」

勇者「もう僧侶さんを放さないよ。絶対に大切にするから」ぎゅっ

僧侶「はぃ……//」





359:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 23:30:30 ID:FE2DHKq.

僧侶さんは、この部屋で交わって、私が起きるとは思わなかったのだろうか。

そう考えて、寝ている私を一人に出来ないことに気が付いた。

それに、僧侶さんの背中を押しておきながら、二人きりになれる時間を作ってあげなかった。

私が寝るのを待つのは、当然かもしれない。


僧侶「勇者さまぁ、また勃ってますよ。二回目、出来そうですね//」

勇者「僧侶さん、本当にエッチだなぁ」クチュクチュ

僧侶「ひゃうんっ// 勇者さまこそ、エッチです。また二人で、めいっぱい気持ち良くなりましょ♪」


魔法使い(……はぁ。僧侶さん、すごく幸せそう)

それなのに、
私は嫉妬している――。





360:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/31(木) 20:22:22 ID:jv7QuFkY


勇者「ふと思ったんだけど、今日はずっと魔法使いちゃんと一緒だったはずだろ。ということは、このことに気付いてるんじゃないのか?」


僧侶「実は、魔法使いちゃんが背中を押してくれたんです。もしかしたら、寝たふりをしているのかもしれないですね」

魔法使い(……!!)

勇者「それはそれでまずいんじゃない?」アセアセ

僧侶「睡眠魔法も考えたけど、精神感応系の魔法は身体への負担が大きいのです。そんなこと、大切な魔法使いちゃんに出来るわけないじゃないですか」

勇者「そうだよな……」

僧侶「それに私たちは、後ろめたいことは何もしていません。受け入れてくれると信じています」





361:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/31(木) 20:37:07 ID:jv7QuFkY

勇者「まあ寝てるみたいだし、次から気をつけようか」

僧侶「そうですね」

勇者「僧侶さん……。僕たちが結ばれたのは魔法使いちゃんのおかげだし、彼女との絆はもっと大切にしないといけないと思うんだ」

僧侶「もちろんです」

勇者「だから、何があっても、僕たちも生きて帰ろう。今まで魔法使いちゃんを逃がす方法を考えていたけど、それだけじゃ駄目なんだよ。彼女の未来のためにも、三人で一緒に帰ろうな」

僧侶「はいっ。魔法使いちゃんと話したいことが、これからいっぱい増えそうですしね。さくっと目的を済まして、みんなで楽しく帰りましょう」

魔法使い(やっぱり二人は、私のことを想ってくれているんだ……)





362:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/31(木) 21:55:55 ID:jv7QuFkY

僧侶「あっ! でも三人で帰ると、一緒に出来ないですね」

勇者「そっか、まあ一人で我慢するから良いよ……」

僧侶「いえっ、落ち着いたら魔法使いちゃんと話し合って、私たちが出来るように工夫しましょう。それまで、浮気だけはしないでくださいね」

勇者「分かってるよ」

僧侶「いっその事、勇者さまがこの指輪を嵌めますか?」

勇者「いやいや、サイズが合わないよ。絶対に二人を裏切らないから」

僧侶「その言葉、信じています。魔法使いちゃん、こんな私だけど応援してくれますか?」

魔法使い(ば、バレてる……)

僧侶「なんて、起きてるわけないよね。魔法使いちゃん、本当にありがとう。またちゃんと話すから、これからも一緒に旅をしようね。おやすみなさい」





363:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/31(木) 21:59:50 ID:jv7QuFkY


〜翌日・お城〜
魔法使い「あ、あの、お城で、ど、どのようなことをするのでしょうか」

僧侶「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。私たちも一緒だから」ニコッ

勇者「そうだよ。栄誉あることだから、もっと堂々としないと」

魔法使い「は、はいっ」

魔法使い(何だか、昨夜のことを意識しているのは私だけみたいです……)

王様「待たせたな。で、どなたが魔法使いなのじゃ」

魔法使い「わ、私です」





364:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/31(木) 22:07:05 ID:jv7QuFkY

王様「おぉ、まだ少女ではないか。その歳で勇者一行として旅に出るとは、よほど優秀と見える。天使と戦ったと聞いたが、それは真か?」

魔法使い「は、はい。海の都の支援施設で訓練をすることになって、そこに現れた天使さんに指導してもらいました」

王様「なるほど。魔法使いよ、実はわが国の魔法兵団の兵長が、手合わせを願いたいと申しておるのだ。よもや少女だとは思っていなかったので、断っても良いがどうかな」

魔法使い「が、頑張ります」

王様「おお、そうか。この男が兵長だ。良い試合を楽しみにしておるぞ」

兵長「俺が兵長だ、よろしく頼む。では、魔法使い殿。訓練施設に参ろうか」

魔法使い「お願いします」

僧侶「魔法使いちゃん、頑張ってね」

魔法使い「はいっ」





365:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 21:33:09 ID:hqFMTWH2


〜屋外訓練所〜
兵長「ルールはどちらかが気絶するか、降参するまでの一本勝負」

兵長「この闘技場は占星術の術式により守られていて、致命傷となる攻撃は魔法陣の媒体となった魔道具により封じられる。その場合は、魔法を行使した者の勝ちとする」

魔法使い「じゃあ、思いっきりしてもいいんですね」

兵長「言うではないか。そちらの僧侶殿にはやや及ばぬが、医療班も多数控えているので安心してくれ」

王様「では、試合始め!」

兵長「今回の趣旨は、魔法使い殿の実力を見せてもらうことだ。全力で来てほしい」

魔法使い「は、はい。火精霊、風精霊、火炎魔法行きます!」





366:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 21:38:11 ID:hqFMTWH2

兵長「あ、青い炎!?」


たかが火炎魔法なのに、火精霊を丁寧に制御しているようだ。
それが彼女の実力というわけか。


兵長「水魔法!」


多量の水を生成し、猛烈な炎の消火を試みる。
しかしその桁外れな熱量で、水が瞬時に蒸発してしまった。


兵長「な……、まるで効かない。風精霊!」


風精霊の力を借りて右に飛び、炎を回避した。
すると行き場を失った炎は、ブロック壁に直撃して鉄扉を変形させてしまった。
こんなものを食らったら、一瞬で消し炭にされてしまいそうだ。


兵長「おいおい、冗談だろ。しかし、その熱量は諸刃の剣だ!」





367:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 21:44:43 ID:hqFMTWH2

魔法使い「きゃっ! な、何なの?」


右腕が高温の何かに触れ、慌てて手を引いた。
しかし、そこには何もない。


魔法使い「まさか見えない炎?!」

兵長「火炎魔法ではない。魔法使い殿が使役した鉄扉を溶かすほどの火炎魔法で作られた、高温の水蒸気だ」


魔法使い「水蒸気?」

兵長「なぜ、水魔法で消そうとしたか。直線的な攻撃だけが、精霊魔法ではない!」


言われてみれば、周囲が陽炎のように揺らめいていた。

水精霊で防御しつつ、それを攻撃に転化する。
炎の魔法を火精霊で分解することに慣れていたので、まったく思いつかなかった。

沸点を遥かに超えた水蒸気が、勢いよく迫ってくる。
そして、腕や脚を焼いた。





368:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 21:47:22 ID:hqFMTWH2

魔法使い「いやあぁぁっ……」

兵長「我慢するな。負けを認めろ」

魔法使い「ま、負けない……。凍結魔法、回復魔法!」


高温の水蒸気を凍結させ、手足の熱傷を回復させた。
軽いものなら、容易に治すことが出来る。


兵長「魔法使い殿、その歳で賢者なのか?!」

魔法使い「まだまだ見習いです」

兵長「なるほど、向上心があって素晴らしい。うちの新兵にも見習ってほしいものだ」

魔法使い「ありがとうございます。では、勝たせてもらいます」





369:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 21:50:43 ID:hqFMTWH2

魔法使い「土精霊、水精霊召喚!」


土精霊で床を変形させて、兵長さんが動けないように足を固定する。
そして凍結させた氷を融解し、兵長さんの顔を包み込んだ。

兵長さんは人間だから、息が出来なければ死んでしまう。
天使さんならば、きっとこんな攻撃をしてくるだろう。


兵長「?! ゴボボボ、ゲホッ……」

魔法使い「どうですか? 自分が生成した水で窒息する気分は」


もちろん殺めるつもりはない。
だけど、これは試合だ。
どんなにもがいても、絶対に息はさせない。
気を失うか降参してくれれば、私の勝ちだ。





370:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 21:59:28 ID:hqFMTWH2

兵長(この水をどうにかしないと……)


まさか彼女が、こんな魔法の使い方をするとは思わなかった。

一般的な魔道師は、威力のある派手な精霊魔法を好む。
それは過程と結果が分かりやすく、威嚇にもなるからだ。

しかし彼女は、純粋に人を殺す方法を追求している。
水が多量にあったから窒息を選んだだけで、もっと効果的な殺し方も出来るはずだ。
並みの魔道師では、この少女に勝つことは出来ないだろう。





371:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 22:02:09 ID:hqFMTWH2

兵長(転移魔法!)


顔を包んでいた水を、別の場所に転移させた。
その直後、大きく息を吸う。


魔法使い「ええっ、転移魔法なんてずるいです!」

兵長「油断するな! 土精霊!」


足の拘束を解くついでに、石のこん棒を作り出す。
そして、殴りかかった。





372:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 22:05:12 ID:hqFMTWH2

魔法使い「爆発魔法!」


ドオォォンッ!
猛烈な爆風が、兵長さんを吹き飛ばした。


兵長「風精霊召喚、加速魔法!」


まさか爆風に乗っている?!
兵長さんは、私の魔法を何らかの形で攻撃に利用してくる。
魔法は威力だけではなく、その使い方が重要なんだなと、改めて実感させられる。

兵長さんは左手側を風に乗って舞い、攻撃の機会を窺っているようだ。
そして、猛スピードで向かってきた。


兵長「障壁魔法!!」





373:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 22:07:45 ID:hqFMTWH2

魔法使い「うぅっ……」


目の前に光のカーテンが現れ、視界を塞がれた。
さらに近距離で展開されたせいで、目がくらんで前が見えない。

風精霊と土精霊の魔力を感じる。
そこに兵長さんがいるはずだ。
だけど、速すぎて捉えられない。

だったら、全体に攻撃すれば良い。
予測が困難な方法で――。


兵長「もらった!」

魔法使い「土精霊さん、頑張って!」





374:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 22:13:37 ID:hqFMTWH2

どんなに速く動けても、地面は絶対に踏む。
ならば、その地面をすべて刃にしてしまえば良い。

尖った槍の先端をイメージする。
そして魔力を振り絞り、一面に石槍を敷き詰めた。


兵長「ぐあぁぁっ!!」


石槍を踏んだのか、絶叫が聞こえた。
兵長さんは加速魔法を使っている。
だから、踏みとどまることは出来ない。


ズザァァッ
兵長「――!!」





375:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 22:22:14 ID:hqFMTWH2

視力が回復して、声が聞こえた方向を見た。
目の前で、全身が血塗れの兵長さんが倒れていた。


魔法使い「兵長さん! 回復魔法!」


出血は弱まったが、たくさん石槍が刺さっていて傷が塞がらない。


兵長「ぐっ……」

魔法使い「魔法解除。回復魔法!」


ようやく傷が塞がり、出血が止まった。
しかし、動くと傷口が開いた。





376:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 22:22:53 ID:hqFMTWH2

魔法使い「私では未熟で、まだ治せないです」

兵長「ゼェゼェ……。良いよ、応急処置で楽になった。ありがとう」

魔法使い「そうだ、試合!」

兵長「俺の負けだ。『綺麗な娘には棘がある』とは、よく言ったものだな。触ると痛かったよ」

魔法使い「ふふっ、兵長さんって面白いです。それを言うなら、『綺麗なバラ』ですよ」

兵長「そうだったな、今日はありがとう。また来てくれたら、君を歓迎するよ」

魔法使い「はい♪ 今日は勉強になりました。ありがとうございました」





377:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:23:24 ID:Q.W57bqY


〜お城〜
魔法使い「勇者さま、勝ちましたよ〜!」

勇者「魔法使いちゃん、頑張ったね」

魔法使い「はいっ」

僧侶「私は回復魔法を使えたことに驚いたかな。すごく心配したんだからね」

魔法使い「えへへ// だけど、兵長さんは治せなかったです……」

僧侶「まだまだ、これからだよ」

王様「魔法使いよ、見事であった。兵長がとても高く評価しておったぞ。火炎魔法だが、あれは天使の技術なのか? あの鉄扉を溶かすとは、恐ろしい魔力だ」

魔法使い「ありがとうございます。火炎魔法は、風精霊と併せて使うものだと教えてもらいました。壊してしまってすみません」

王様「よいよい。それ以上のものを見せてもらった。そなたに相応しい褒美を用意しよう」

魔法使い「ありがとうございます」





378:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:26:08 ID:Q.W57bqY

王様「しかし他国民ながら、この才能を失うのは惜しいな。大臣よ、占星術師を呼んで参れ」

大臣「かしこまりました」


・・・
・・・・・・


王様「占星術師よ、優秀な魔法使いに希望の未来を」

占星術師「かしこまりました。それでは、彼女への褒美をわたくしにお預けください」

王様「うむっ」





379:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:28:42 ID:Q.W57bqY

占星術師「この台は、わたくしが占うときに用意するものです。魔法使い殿、あなたは海の都で一度未来を見てもらっていますね」

魔法使い「はい」

占星術師「あなたには陰が見える。そんなことを二度言われても、面白くはないでしょう。そこで一つ、余興をしようではありませんか」

魔法使い「余興ですか?」

占星術師「お仲間である勇者殿と僧侶殿は、席を外していただけませんか。これは占いですからね」

勇者・僧侶「分かりました」

大臣「それでは、お二人は別室に案内いたします」





380:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:34:37 ID:Q.W57bqY

占星術師「魔法使い殿、始めましょうか。障壁魔法!」


用意された台の上に、半球状の障壁魔法が三つ並べて展開された。
ちょうどお茶碗を反したくらいの大きさだ。


魔法使い「これは……?」

占星術師「障壁魔法を展開するときに、あなたへの褒美を中に入れておきました。三つの半球は、ちょうど勇者殿ご一行と同じ数ですね」

魔法使い「……はい」

占星術師「さしずめ、あなたから見て左から順番に、勇者殿と僧侶殿、魔法使い殿といったところでしょうか」

魔法使い「は、はい」

占星術師「では、どこに褒美が入っているのか、言ってみてください」





381:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:39:25 ID:Q.W57bqY

魔法使い「勇者さまがリーダーなので、一番左を……」

占星術師「なるほど。実は、魔法使い殿を表す半球には、褒美が入っていません」


そう言うと、一番右の障壁魔法が解除された。
台の上には、勇者さまと僧侶さんを表す半球が残されている。

占星術師「さて、あなたはもう一度選ぶチャンスがあります。今なら、違う半球を選んでも構いませんよ。どちらにしますか?」

魔法使い「!!」





382:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:41:59 ID:Q.W57bqY

これはモンティ・ホール問題だ。
それならば、この確率は二分の一ではない。
僧侶さんの半球に変えたほうが、褒美を三分の二の確率で貰えることになる。
確率に従うならば、変えるべきだ。

だけど、これは占星術でもある。
私への褒美は、私の未来を表している。
それを手にすることが出来るのは、勇者さまか僧侶さんか……。

二人が交わる姿を見た後で、僧侶さんを選べるわけがない。
私も勇者さまが好きだから。
だけど――。





383:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:44:42 ID:Q.W57bqY

占星術師「あなたは勇者殿を選ぶのですね? それなら……」

魔法使い「いえ、私は……僧侶さんを選びます」


勇者さまと僧侶さんは、私のことを大切に想ってくれている。
ならば、私はそれに応えたい。
僧侶さんの背中を押した私が嫉妬するなんて、とても身勝手だと思う。


占星術師「分かりました。では、開放します」


その言葉と同時に、僧侶さんを表す半球の障壁魔法が解除された。
するとそこには、賢者の石で作ったブレスレットが置かれていた。





384:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:46:33 ID:Q.W57bqY

占星術師「正解です。あなたへの褒美は、賢者の石です」

魔法使い「ううっ……、やっぱりつらいです」

占星術師「先ほども言いましたが、あなたには陰が見える。もうすぐ、それと向き合うことになるでしょう。今の選択はより絆を深め、あなた方に希望をもたらしてくれるはずです」

魔法使い「ありがとう……ございます…………」

占星術師「あなたには華がある。わたくしも、それを楽しみにしていますよ」





385:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 10:23:19 ID:Iv5.g6BY

10
〜宿〜
魔法使い(僧侶さん、私に言うことがあるんじゃないですか?)

魔法使い(……、やっぱり言い出せない)


お城から戻り、僧侶さんはずっと転移魔法の書物を読んでいる。
ときどき気晴らしに、ペントミノや知恵の輪で遊んでいるようだ。
しかし一向に、昨夜のことは話してくれない。
勇者さまもずっと、知恵の輪と格闘しているようだ。


僧侶「魔法使いちゃん、さっきからどうかしたの?」

魔法使い「いえ、何でもありません」

僧侶「占星術師さんに何を言われたのか知らないけど、悩んでいることがあったら何でも言ってね。私も気持ちの整理が出来たら、魔法使いちゃんに話すから」

魔法使い「あっ……」





386:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 10:30:39 ID:Iv5.g6BY

僧侶「やっぱり、悩みはそのことなんだね」

魔法使い「……はい」

僧侶「昨日、私は勇者さまと好きあうようになりました」

魔法使い「知っています……」

僧侶「魔法使いちゃんに背中を押してもらって、そのおかげ告白――って、あれ?」

魔法使い「んっ……?」

僧侶「知ってるって……えっ、なんで!? も、もしかして起きてたの?」

魔法使い「えっ、気付いてなかったの?」





387:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 10:45:34 ID:Iv5.g6BY

僧侶「あわわ// い、いつから……」

魔法使い「恥ずかしくて言えないです//」

僧侶「ひえぇっ……。も、もしかして見てた?」

魔法使い「少しだけ……」

僧侶「ま……まあ、私は勇者さまとそういう関係になったのです」

魔法使い「あの……、私も勇者さまが……す、好きなんです。だからその、心の準備をさせてほしいです」

僧侶「うん。私も落ち着いたらちゃんと話すから、そのときは……」

魔法使い「……はい」





388:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 10:48:01 ID:Iv5.g6BY

勇者「キターーーーーッ!!」

魔法使い「!!」ビクッ

僧侶「勇者さま、少しは空気を読んでください!」

勇者「えっ? これ見てよ、ついに外れたんだ!」キリッ

僧侶「ああっ、すごいじゃないですか! チリ人の輪が解けたんですね」

勇者「ふふん。勇者として、これくらいは解けないと示しが付かないじゃないか」

僧侶「戻せますか?」

勇者「ああ、それは簡単。このなが――」カチャカチャ

僧侶「わあぁぁっ! 見せないでください、言わないでください。私が解く楽しみがなくなるじゃないですか!」





389:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 10:52:19 ID:Iv5.g6BY

勇者「――はい、もう戻ったよ」カチャカチャ

僧侶「あっ、ほんとだ。勇者さまに解けるなら、私も負けてられないですよね」

魔法使い「あはは、なんだか少し吹っ切れた気がします」

僧侶「魔法使いちゃん?」

魔法使い「その知恵の輪は、やっぱり私たちの関係を表していたんですね」

僧侶「どういうこと?」

魔法使い「二人が愛し合って、私は嫉妬しました。でも二人の愛を受け入れられたら、私はまた一緒にいられるんです」

僧侶「後悔してない?」

魔法使い「それは……」





390:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 10:56:28 ID:Iv5.g6BY

僧侶「怒ってもいいよ。私は魔法使いちゃんの気持ちも知りつつ、勇者さまを奪ったんだから」

魔法使い「ううん、それで良いんです」

僧侶「勇者さま、少し早いけど一緒にお風呂に入りませんか? もちろん、魔法使いちゃんも一緒に」

勇者「そうだね……」

僧侶「私たちにとって大切な社交の場ですし、みんなで話せることから話し合いましょう。ねっ、魔法使いちゃん」

魔法使い「はい」


僧侶「……あれ? さっきのって、チリ人の輪のヒントになってるじゃないっ!」

魔法使い「〜♪」フフッ





391:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 11:04:46 ID:Iv5.g6BY

11
〜北の街・エルグの城〜
大臣「王様、ただいま極北の地より第一調査団が戻りました」

王様「うむ、通せ」

大臣「承知しました」

団長「ただいま帰還いたしました!」

王様「ご苦労であった。して、極北の地はどうであったか報告せよ」





392:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 11:06:04 ID:Iv5.g6BY

団長「極北の地は、ただいま極夜でございます。しかしながら極地には結界が張られ、内部は光に満たされているようでした」

王様「なるほど。極南の地が闇ならば、極北の地は光というわけか」

団長「それで結界内に入ることを試みたのですが、入ることが出来ませんでした。そのため、内側がどうなっているのか未確認です」

王様「極南は今、白夜であったな。もしかすると、そこの光が集められているのかもしれん。バロックの国王に協力を要請し、強力な魔道師を含む部隊を編成して向かわせよう。下がってよいぞ」

団長「はっ!」





393:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 11:13:01 ID:Iv5.g6BY

大臣「王様、結界が張られているとあれば、女神の加護がある者でなければ入ることは叶わないのではないでしょうか」

王様「分かっておる。第二調査団と並行して、神託を賜わる術式の準備も進めよ」

大臣「かしこまりました」

王様「ところで大臣、何のために白夜の光を集めるのだろうか」

大臣「私には分かりかねます」

王様「以前、勇者が神の遺産を持ってきたであろう。世界をドーナツ状にするという話、本当に計画している者がいるのかもしれんな」





394:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 11:22:49 ID:Iv5.g6BY

第7話 おわり

・だまし絵
"Message d'amour des dauphins"

・メビウスの輪
・クラインの壷

・確率
モンティ・ホール問題





398:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/04(月) 22:10:54 ID:4/EyZrwg

第8話 悲しい再会

〜南の大地・フィールド〜
勇者「そろそろ夜営の準備をしようか」

僧侶「そうですね」

勇者「じゃあ、僕は簡易テントを組み立てるから」

魔法使い「あ、私は燃えるものを探してきます」

勇者「気をつけてね」

魔法使い「はい」





399:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/04(月) 22:19:46 ID:4/EyZrwg

勇者「あの、僧侶さん。今夜は良いかな……」

僧侶「結界に入るまでは、魔法使いちゃんと勉強することになっているので……」

勇者「そっか、残念だな」

僧侶「私もしたいのだけど避妊具が残り少ないし、帰り道まで我慢してもらえませんか」

勇者「帰り道まで?!」

僧侶「はい。でも、結界内の調査が終わったら魔法使いちゃんと相談して、気兼ねなく出来るように工夫しましょうね」チュッ

勇者「そ、そうだな//」ギュッ

僧侶「では私は、食べられる野草を探してきます」ニコッ





400:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/04(月) 22:46:43 ID:4/EyZrwg


〜簡易テント〜
魔法使い「――ということは、欲求や感情は脳内物質によって作られているとも言えるんですね」

僧侶「そういうこと。大脳辺縁系が、本能や感情と関係している部分なの。それらを理解することで精神感応系の魔法を使えるようになるから、脳の仕組みを覚えることも大切だよ」

魔法使い「睡眠魔法って簡単そうだと思っていたけど、実は高度な魔法だったのですね」

僧侶「そうだよ。だから賢者とは言っても、治癒魔法しか使えない人が多いの」

魔法使い「そうなんだ」





401:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/04(月) 23:00:15 ID:4/EyZrwg

僧侶「とりあえず、魔法使いちゃんは構造を勉強しましょ。脳の仕組みは、後で良いよ」

魔法使い「ふぅ……。治癒魔法になったとたん、覚えることが増えて難しいです」

僧侶「勉強ばかりで、成果が見えない時期だよね」

魔法使い「はい……」

僧侶「生体エネルギーの増幅を最初に覚えると、回復魔法を治癒魔法にして使えるよ。その分、モチベーションを保ちやすいんじゃないかな」

魔法使い「あぁ、なるほど。そうします!」





402:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/04(月) 23:32:05 ID:4/EyZrwg

魔法使い「ところで、僧侶さんは転移魔法、どうですか?」

僧侶「軽い物なら動かせるようになったかな。そのコップを、左に動かしてみるね。転移魔法……」

パッ

魔法使い「わぁっ! 一瞬で動きました!」

僧侶「これくらいなら簡単なんだけど、見えない場所に転移させるのが難しくて」

魔法使い「見えない場所ですか?」





403:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/04(月) 23:36:14 ID:4/EyZrwg

僧侶「移動先に何があるのか、魔力で読み取らないといけないの。もし障害物があった場合、それをどう処理するか問題になるのよね」

魔法使い「そっか、壁の中にコップは入らないですよね」


僧侶「厳密には空気も障害物なんだけど、気体は固体と違って容易に押しのけられるから――」

魔法使い「よく分からないけど、たった数日で転移魔法を使えるって、すごいです!」

僧侶「私は、記憶の仕組みを理解してるからね」

魔法使い「それも魔法医学の範囲ですか?」

僧侶「そうだよ。でも記憶力が良くても、転移魔法で転移させない方法は思い付かないよ……」





404:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/04(月) 23:54:19 ID:4/EyZrwg

魔法使い「転移魔法って、どうして一瞬で移動するんですか?」

僧侶「分かりやすく言えば、世界と世界を折り曲げて繋げる感じかな。だまし絵のように世界を柔軟に捉えて、空間を魔力で繋げてしまうの」

魔法使い「じゃあ結局、メビウスの輪やクラインの壷は関係ないのですか? 私は、そっちの方が相応しいと思いますけど」

僧侶「それだと表も裏もなくて、元の位置に戻ってきちゃうじゃない」

魔法使い「そっか、それじゃあ転移魔法になりませんね」

僧侶「あっ! 元の位置に戻る?! そういう方法も、ありかもしれない。魔法使いちゃん、ありがとう」

魔法使い「え? はい」

僧侶「なるほど、メビウスの輪か――」





405:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/05(火) 20:55:22 ID:MkVY6x/E


僧侶「じゃあ、私は先に休むわね」

魔法使い「……そうですね。私も、もうすぐしたら寝ます」

ガサッ

僧侶「勇者さま、お疲れ様です。外は少し冷えますね」

勇者「少しね。ここは日差しがあるから、日向ぼっこみたいで温かいよ」

僧侶「ふふっ、本当です」ピトッ

勇者「魔法使いちゃんはどう? 勉強は順調に進んでる?」

僧侶「もう回復魔法のステップを修了したので、治癒魔法を頑張っています。驚異的な速さで修得していくから、教えていて楽しいです」

勇者「僧侶さんの教え方が上手だからだよ」





406:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/05(火) 21:08:15 ID:MkVY6x/E

僧侶「私も転移魔法を覚えたら、今度は薬師の勉強をしていこうかな」

勇者「どうして、薬師なの?」

僧侶「対症療法だけではなくて、原因となるウイルスや細菌を処理して、病の治療をしたいからです」

勇者「身体構造を理解しないと、治癒魔法は効果がないんだっけ」

僧侶「はい。私が治癒魔法を使えるのは人と馬、ネコだけです」





407:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/05(火) 21:14:03 ID:MkVY6x/E

勇者「馬は何となく分かるけど、ネコ?」

僧侶「実はネコが好きなんです。子供の頃に飼っていました、にゃ〜//」

勇者「にゃ〜って、ははっ。僕もネコ派かな」

僧侶「そうなんですね♪ 勇者さまぁ。今夜はもう、抜いてしまったのかにゃ」さわさわ

勇者「いや、まだ」

僧侶「じゃ、じゃあ、やっぱりしませんか。ちょっと良いことがあったので、気分を上げたいにゃ//」





408:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/05(火) 21:20:26 ID:MkVY6x/E

勇者「『にゃあ』って可愛いよ」

僧侶「恥ずかしいにゃ//」チュッ

勇者「僧侶さん、好きだよ」モミモミ

僧侶「……にゃんっ」

勇者「おっぱいの頂上はこの辺りかな」

僧侶「勇者さまのエッチ//」ヌギヌギ

勇者「今日のランジェリーも可愛いね」

僧侶「このベビードール、ここにリボンが付いているんですよ」

勇者「いいねぇ。僧侶さん、セクシーだよ」

僧侶「ふふっ//」


・・・
・・・・・・





409:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/05(火) 22:01:27 ID:MkVY6x/E


僧侶「そろそろ入れてほしいです//」

勇者「じゃあ、その樹に手を添えて、脚を広げて前屈みになってみて」

僧侶「こ、こう……ですか//」

勇者「そうそう、いやらしいね」クチュ

僧侶「はうん……ああっ、入ってくる…………あうっ……」

勇者「僧侶さんの中、温かくて気持ちいい」

僧侶「わ、私も……。はぅ……んんっ……」

勇者「僧侶さん、僧侶さん……」





410:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/05(火) 22:17:06 ID:MkVY6x/E

僧侶「勇者さまぁ……はうっ……あぁ、いぃ……」

カサコソ
ガサゴソ

??「い、いやああぁぁぁぁっ」バタリ

僧侶「えっ」
勇者「あっ……」

魔法使い「あの、女性の叫び声が……って、あわわ// ご、ごめんなさい。二人がなさっているとは知らなくて、お邪魔しましたっ//」

僧侶「ううっ、また見られた」ショボン





411:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/05(火) 22:27:11 ID:MkVY6x/E

勇者「なんだかなぁ……。この女性は確か――」

僧侶「魔女さんですね。血塗れですし放っておけないので、続きはまた今度でもいいですか」

勇者「さすがに、この状況だしな。今回は我慢して静めるよ……」

僧侶「ですね……。また今度しましょうね」さわさわ

勇者「とりあえず服を着て、魔女さんを治してあげよう。僕は近くにバトマスたちがいないか、少し見回りに行ってくるよ。深手を負って、倒れているかもしれない」

僧侶「分かりました。気をつけて行って来てくださいね//」チュッ





412:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/05(火) 22:43:29 ID:MkVY6x/E


〜簡易テント〜
魔女「んっ……ここは…………」

僧侶「ここは私たちが夜営しているテントです」

魔女「!! いやっ……」ビクビク

勇者「別に何もしないから」

僧侶「殿方がいると話しにくいことがあるかもしれないし、少し外に出てもらっても良いですか?」

勇者「分かった」

魔女「……きれいになってる。僧侶ちゃん……ありがと」

僧侶「困ったときはお互い様ですから」





413:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/05(火) 23:00:08 ID:MkVY6x/E

魔女「あの……、いつもあんな目に遭わされてるの?」

僧侶「あんな目って?」

魔女「その、無理やり犯されるって言うか……、そういうこと」

僧侶「あ、あぁ。私たちは好きあっているんです。だから、あれは合意で……」

魔女「そんなの、女を抱きたいから都合のいいことを言ってるだけでしょ! 性欲の処理に困っているから、やりたくて利用してるだけよ。僧侶ちゃん、騙されてるわよ!」

僧侶「……えっ?」

魔法使い「魔女さん、その言い方は酷いです。勇者さまはエッチが好きだけど、そんな事をする人じゃないです。今のは、僧侶さんにも失礼です!」

魔女「……」





414:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/05(火) 23:11:13 ID:MkVY6x/E

僧侶「魔女さん、何かあったのですか? 賢者さんや他の方は、どちらにいるのですか?」

魔女「みんな殺した。もう嫌だったの、嫌だったの……」

僧侶「殺した?! どうして、そんなことに……」

魔女「寄せ集めの男女が旅をするなんて、そんなの無理だったのよ! 毎日脅されて、無理やり犯されて、憎くて憎くて――」

魔法使い「そ、そんな。でも一緒に食事をしたときは、そんなことは一言も……」

魔女「それ、もう一ヶ月も前の話でしょ。あなたたちも変わったんじゃないの、この一ヶ月で」

僧侶「そうですね。私たちも変わりました」

魔女「そう、人は変わるのよ」





415:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/05(火) 23:25:01 ID:MkVY6x/E

魔女「ところで、どうして南の大地に魔道師の都があると思う?」

僧侶「それは、白夜や極夜が呪術的な現象だと信じられていたからでしょ」

魔女「その呪術的な影響が、心を惑わせているとは考えられない?」

僧侶「どういう意味ですか」

魔女「抑圧されていた心が、呪術で引きずり出されただけなんじゃないの? あなたの愛情なんて、すべて錯覚よ!」

僧侶「いいえ。魔女さんが言うように抑圧されていた心が解放されたのならば、私と勇者さまは本気で愛し合っていることになります」

僧侶「仮に呪術がきっかけだとしても、素敵なことじゃないですか」ニコッ

魔法使い「……」





416:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/05(火) 23:48:45 ID:MkVY6x/E

魔法使い「あの……。じゃあ、魔女さんも呪術の影響で……」

魔女「とにかく、もう限界だったの!」

魔法使い「だからって、そんな……」

魔女「だから、二人を殺すしかなかったの。いやっ、もう斬らないで……するっ、何でもしますから…………」

魔法使い「?!」

魔女「うああぁぁっっ、もうやめてよ……、いやっ……いやあぁっ……」

僧侶「沈静魔法!」

魔女「……」スースー

僧侶「今はゆっくり休んでください。魔女さんは、何も悪くないですから……」

魔法使い「魔女さん……」





418:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/06(水) 22:49:13 ID:WkdrlSeQ


勇者「そうか、バトマスたちはもう――」

僧侶「身体がないと蘇生できませんし、身体があっても死を受け入れた後だと思います」

勇者「つまり、結界に入って生きて帰ることができたのは、魔女さんだけということか」

僧侶「そうなりますね。つらいことがあったようで、酷く錯乱していました」

魔法使い「とても見ていられなかったです……」





419:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/06(水) 22:57:14 ID:WkdrlSeQ

僧侶「そんな中、魔女さんが気になることを言っていたのです」

勇者「気になること?」

僧侶「はい。私たちの関係を、『抑圧されていた心が、呪術で引きずり出されただけだ』と言っていました。もしかすると、私たちへのメッセージではないでしょうか」

勇者「それは、僕の気持ちを疑っているのか?」

僧侶「いいえ、『結界の中には、呪術的な何かがある』という意味だと思います。魔女さんはつらいことがあって、今もその影響が残っていますから……」

勇者「呪術のせいで、仲間同士で殺しあったのか」





420:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/06(水) 23:15:17 ID:WkdrlSeQ

僧侶「仲間同士で殺しあったというよりは、正当防衛だったと思います。それだけが、魔女さんにとって救いかもしれません」

勇者「そうか、やるせないな」

魔法使い「あの、賢者さんにはもう会えないんですよね……」

僧侶「そうだね。また一緒に、ご飯を食べに行きたかったな……」

魔法使い「……はい」

僧侶「きっと賢者さんも、毎日つらかったと思います。魔法使いちゃん、私たちが賢者さんの冥福を祈ってあげましょう。彼女の魂が安らかに眠れるように――」

魔法使い「うぅっ、はい…………」





421:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/06(水) 23:24:23 ID:WkdrlSeQ


〜翌朝・簡易テント〜
魔女「……」

僧侶「魔女さん、おはようございます。気分はいかがですか?」

魔女「お、おはよう……。少し身体が重いくらいで、特には……」

僧侶「それは良かったです」

魔女「昨夜はごめんなさい。少し取り乱して……」

僧侶「大丈夫です。みんなで朝食を食べませんか? 見たところ荷物もないですし、しばらく何も食べていないですよね」





422:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/06(水) 23:32:29 ID:WkdrlSeQ

魔女「あたし、生きていても良いのかな……」

僧侶「生きていても良いに決まってるじゃないですか」

魔女「……」

僧侶「女性を無理やり暴行するなんて、とても許されることではありません。魔女さんは正当防衛だし、絶対に許されます」

魔女「そうだね。許されるよね……」





423:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/06(水) 23:44:25 ID:WkdrlSeQ

僧侶「こういうことは言いたくないけど、魔女さんは任務中だということも忘れてはいけないと思います」

魔女「……ぁ」

僧侶「魔王の存在を承知した上での任務だし、命を落とす覚悟はしていたはずですよね」

魔女「それは……」

僧侶「今回のことは、魔王から精神感応系の攻撃を受けて、同士討ちを誘発されただけです」

僧侶「ならば魔女さんは、国に仕える魔道師として次の作戦を検討するために、結界の中で起きたことを報告する義務があるはずです」





424:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/07(木) 00:21:17 ID:qgHCxrrc

魔女「あたしの気持ちも知らないで、よくそんな事を……」

僧侶「すみません。でも魔女さんの経験を次に繋げていかないと、苦しみだけのものになってしまうから、だから……」

魔女「ねえ、任務だと言うなら、どうして魔女っ子ちゃんをここまで連れて来たの? 彼女はただの村娘でしょ」

僧侶「!! それは……」

魔女「ねえ、答えて」





425:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/07(木) 00:23:31 ID:qgHCxrrc

僧侶「魔法使いちゃんは、神の使いに指名されているのです。だから、魔道師の都で村に帰すことが出来なかったのです」

魔女「つまり、神託があったから行くのね」

僧侶「……はい。だから転移の羽と賢者の石を持たせて、絶対に守れるようにしています」

魔女「一般人なんだから、当然でしょ」

僧侶「ですよね……」

魔女「あの子が頑張っているのに、あたしが落ち込む訳にはいかない――か」

僧侶「……」

魔女「それにしても、神の使いか。あれがあるのは、そういうことだったんだ」

僧侶「あれ、ですか?」

魔女「考えをまとめてから話す。はぁ、どうしてこうなったんだろ……」





426:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/07(木) 22:50:11 ID:qgHCxrrc

僧侶「あの、そろそろ朝食を食べませんか」

魔女「……そうだね」

僧侶「昨日の夜、勇者さまと魔法使いちゃんが、カンガルーを捕まえてきてくれたんですよ。お肉は柔らかいし、味付けは私がしたので保障します!」

魔女「二人とも、勇者さんといい関係を築いているんだね。あたしたちは、性欲の捌け口でしかなかったのに……」

僧侶「私たちも、勇者さまの性欲には悩んでいましたよ。だけどその欲求と向き合って、どのように解消させるか三人で話し合ってきました。もしかすると、それが良かったのかもしれません」

魔女「そういえば、以前そんな話をしてたわね。というか、どうして過去形なの?」

僧侶「勇者さまは、もう彼氏ですから//」





427:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/07(木) 23:05:45 ID:qgHCxrrc

魔女「ひょっとして、その指輪は勇者さんから?」

僧侶「はい」

勇者「でもそれ、ミスリルだけど魔道具じゃないよね」

僧侶「浮気防止用のパズルリングです。そんなものを渡されたら、もう勇者さまのことを一途に想い続けるしかないじゃないですか//」

魔女「そっか、本気だったんだ……。僧侶ちゃん、昨夜は邪魔をしちゃってごめんね――」

僧侶「改まって言われると恥ずかしいです//」





428:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/07(木) 23:07:43 ID:qgHCxrrc

僧侶「あっ、そうだ。魔女さん、少しお腹を触りますね」

魔女「えっ?」

僧侶「……、破壊魔法!」

僧侶「体内のすべての精子を、魔法で破壊しました。今までのことで、望まない妊娠をすることはありません。感染症の心配もなさそうですよ」

魔女「ほ、本当に?!」

僧侶「はい、つらかったですよね。もう大丈夫ですよ」

魔女「うぅっ……、うわぁぁん......」

僧侶「魔女さん……」

魔女「ありがとう。僧侶ちゃん、ありがとう……」





429:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/07(木) 23:09:34 ID:mNZkMl4Y

僧侶さんぱねぇ





430:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/07(木) 23:12:13 ID:qgHCxrrc


僧侶「ごちそうさまです。カンガルー鍋、うまうまでしたぁ」

魔法使い「うまうまでしたぁ」

魔女「う、うまでした……」テレ

僧侶「勇者さま、燻製のほうは順調ですか?」

勇者「有り合わせにしては順調だと思う。完成が楽しみだね」

魔法使い「美味しく出来るかなぁ」

僧侶「当分、食べ物には困らないですね」





431:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/07(木) 23:20:31 ID:qgHCxrrc

勇者「ところで魔女さん、これからどうするんですか?」

魔女「皆さんは、これから結界の中に入るんですよね」

勇者「それが僕たちの仕事だから」

魔女「あたしは……、もうあんな思いをしたくないです。一人で帰ろうと思います」

勇者「帰るって言っても、荷物も何もないよね。はっきり言って、一人で帰るのは無理だと思う」

僧侶「砂漠もあるし、手ぶらで帰れるほどあまくないよね」

魔法使い「あの、帰る方法が一つだけありますよ。私は転移の羽を持っています」

魔女「でもそれは、魔女っ子ちゃんの身を守るためのものでしょ」

魔法使い「私なら大丈夫です」





432:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/07(木) 23:35:37 ID:qgHCxrrc

勇者「魔法使いちゃん、さすがにそれは認められないな」

魔法使い「駄目ですか?」

勇者「魔女さん、南の都までなら一人で行けるかな? 食料は今、燻製を作っているから」

僧侶「何か思いついたんですか?」

勇者「魔女さんは、結界からの生還者だろ。情報は絶対に必要だし、あの王様なら魔女さんを優遇してくれると思うんだ」

僧侶「そうですね」

勇者「バロックの城にも情報が伝わるだろうし、しばらく働いて資金を稼ぐことも出来るだろ」

魔女「勇者さん、ありがとうございます。そうさせてください」





433:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/08(金) 00:20:15 ID:sIIKMJa6


魔女「あの……、皆さんが結界へと向かう前に、どうしても話しておきたいことがあります」

勇者「何をですか?」

魔女「結界の中のことです」

勇者「話せるなら、ぜひお願いします!」

魔女「……はい」





434:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/08(金) 00:24:47 ID:sIIKMJa6

魔女「魔王に支配されたと言われている極南の村ですが、中に入ると呪術の影響が強くなります。ただ、賢者さんだけはその影響がないようでした」

勇者「それは、女賢者だからですか?」

魔女「職業的なことではなくて、女神の加護を受けていたからだと思います」

僧侶「そういえば、勇者さまだけは、天使の封印魔法が無効化されていましたよね」

勇者「なるほど。女神の加護があれば、中に入っても大丈夫なのか」

魔女「でもそこで、賢者さんは男たちに襲われて殺されました。それに耐えられなくて、あたしは彼らを殺しました。村の中では、悪意や恐怖が増幅されるのだと思います」

勇者「……」





435:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/08(金) 00:39:13 ID:sIIKMJa6

魔女「その後は村を出て、付近をさまよっていたんだけど……。極南の地で、ハノイの塔を見たんです」

僧侶「えっ?! 本当に、ハノイの塔があったのですか!」

魔女「はい。あれは間違いなく、ハノイの塔だと思います」

魔法使い「呪術よりも、そっちの方が恐ろしいです――」

僧侶「だよね……」

勇者「よく分からないけど、それってそんなに驚くことなの?」





436:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/08(金) 22:39:16 ID:sIIKMJa6

僧侶「ハノイの塔は三本の支柱が立っていて、その棒に64枚の円盤が刺さっているパズルです。そしてそのパズルが完成したとき、世界が消滅すると言われているのです」

勇者「世界が消滅するパズル?!」

僧侶「はい。ハノイの塔は終末時計なんです」

魔法使い「一体、どれくらい手数が進んでいるのでしょうか……」

魔女「あたしには女神の加護がないので、近付けなくて……」





437:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/08(金) 22:43:48 ID:sIIKMJa6

僧侶「魔女さん、私……任務中とか偉そうなことを言ってしまって申し訳ないです。つらいときなのに、一人でこんなに調査してたなんて知らなくて……」

魔女「いいよ。下手に同情されるより、あたしにはそれが良かったかも」

僧侶「本当にごめんなさい」

魔女「それで、ハノイって神の遺産だよね。今回のことに天使が関わっているならば、あれは原典かもしれません。つまり、あたしたちがすべきことは――」

勇者「ハノイの塔を破壊することか」





438:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/08(金) 23:01:09 ID:sIIKMJa6

僧侶「勇者さま、時計を壊しても時間が分からなくなるだけです」

魔女「そうです。ハノイを破壊するのではなくて、その進行を止める方法を考えるべきだと思います」

勇者「言われてみれば、そうだな……」

魔法使い「勇者さま、15パズルや天使さんからのメッセージも忘れないでください。もしかすると、ハノイの塔はドーナツ世界までの時間をカウントしているのかもしれません」

勇者「ドーナツ世界と世界への侵入者、そして終末時計か――。魔女さん、極南の村に魔物はいるの?」

魔女「特にいなかった……と思います」

勇者「はっきりしないな。危険だけど、そこに原因があるかもしれないから、行かないといけないな」

僧侶「それならば、精神感応系の魔法対策が必要ですね」





439:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/08(金) 23:44:25 ID:sIIKMJa6

勇者「予防策はあるの?」

僧侶「有効な方法は特にないです」

勇者「えっ」

僧侶「精神感応系の魔法を予防することは、あらかじめ感情を固定しておくことになるので、正常な判断力を阻害されてしまいます。それに、身体への負担も大きいです」

勇者「結局は、僕たちの関係次第ってことか」

僧侶「そうなりますね。でも勇者さまには女神の加護がありますし、魔法使いちゃんは守りが万全なので――」

勇者「ということは、魔法対策が必要なのは僧侶さんか」

僧侶「……はい。私も精神感応系の魔法を使えますし、何か考えておきます」

魔法使い「わ、私も心構えをしておきます」





440:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/08(金) 23:48:32 ID:sIIKMJa6

勇者「じゃあ、僕たちの目的を確認しよう」


1、極南の村の調査
2、ハノイの塔の残り時間を調べる
3、可能ならば世界の侵入者を排除する


僧侶「精神感応の脅威を取り払うことが出来れば、今後の戦略も優位になってきますよね」

勇者「そうだな。それだけでも、どうにかしたいよな」

僧侶「はい」

勇者「……で、それに伴って、情報を提供してくれた魔女さんを、僕たちの仲間に迎え入れたいと思う」





441:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/08(金) 23:54:09 ID:sIIKMJa6

魔女「無理です。あたしは、仲間を殺すような魔道師ですよ」

魔法使い「でもそれは、理由があってのことですよね」

魔女「それは……」

魔法使い「四色あれば、どんな地図でも塗り分けることが出来ます。それと同じで、三人では出来なかったことが、魔女さんが仲間になることで出来るようになると思います」

魔女「四色問題か……。あたしたちは塗り方を間違えてしまったんだろうな……」

僧侶「それならば、私たちと塗り直しましょう。魔法使いちゃんもそのほうが喜びますし、私も魔女さんが居てくれると助かります」





442:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/08(金) 23:54:48 ID:sIIKMJa6

魔女「本当に、こんなあたしで良いの?」

魔法使い「はい、お願いします!」

僧侶「もちろんです」

魔女「……、分かりました。よろしくお願いします」

勇者「では今から僕たちの仲間として、別行動をしてほしいです。南の都の王様にこのことを話して、僕たちが戻るか帰還費用が貯まるまで、その場で待機しておいてください」

魔女「はい。皆さんが無事に戻って来れるよう、祈っております」





443:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/08(金) 23:56:53 ID:sIIKMJa6

第8話 おわり

・ハノイの塔
・四色問題

・パズルリング





445:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 00:33:41 ID:gIHIUKQ6

今回はここまでです。

パズルネタは、ハノイの塔。
終末時計ということで、勇者ものに相応しいネタだと思います。

そしてストーリーも、魔女さんが仲間になって佳境に入りました。
ある意味、次が最終決戦になりそうです。





446:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 01:27:28 ID:SzI4dWRw

毎度毎度パズルが知らないのばかりでワクワクする





447:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 01:33:53 ID:rib/WW0o

しずかに盛り上がってきたって感じやね
支援





448:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 21:57:06 ID:gIHIUKQ6

第9話 心をさらけ出して

〜結界内部〜
魔法使い「白夜だというのに、結界の中は本当に夜みたいです」

僧侶「結界で光が侵入できないのか、光がどこかに集められているから暗いのか」

魔法使い「どっちなんでしょうね。照明魔法……あれ?」

僧侶「もしかして、この中は魔法が使えないの?」

魔法使い「いえ、一瞬で消えたみたいです」

僧侶「つまり、光がどこかに集められているということね」

勇者「案外、極北の地に集められていたりしてな」





449:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 22:10:42 ID:gIHIUKQ6

僧侶「極北に光がですか?」

勇者「南が白夜なら、北は極夜だ。ここが闇ならば、向こうは光と考えても良いと思うけどな」

僧侶「そうかもしれないですね」

勇者「そうだろ。みんな闇を恐れて、南側の調査ばかりしてきた。北側のことは、まだ何も分かってないしな」

僧侶「でもそれが正しいなら、何のためでしょうか」

勇者「光を集めて、世界に穴を開けるつもりかもしれない。ほら、ドーナツ世界と世界の終末が、両方同時に達成できるじゃないか」

僧侶「なるほど……。それならば、ハノイの塔の手数は調べておきたいですね」

勇者「そのためにも、極南の村の調査は心してかかろう」

僧侶・魔法使い「はい」





450:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 22:23:09 ID:gIHIUKQ6


〜極南の村〜
魔法使い「人の気配はないですね。闇に包まれるまでは、ここも賑わっていたのでしょうか?」

僧侶「そうだね。賑わっていたら、カンガルーやエミューの料理が美味しい場所だったんだろうな。香草をたっぷり使って、焼いて食べるんです」

魔法使い「あぁ、美味しそう」

僧侶「この間は魔女さんがいたから、食べやすいお鍋にしたけど、焼いても最高だよ」

勇者「僧侶さん、今度みんなでバーベキューをしたいね」

僧侶「そうですね。帰ったら魔女さんを呼んで、四人で楽しみましょう!」





451:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 22:28:10 ID:gIHIUKQ6

魔法使い「あっ、勇者さま!」

勇者「どうしたの?」

魔法使い「あそこの建物だけ、明かりが点いています!」

勇者「光属性の魔法が使えない場所なのに、明かりが灯っているのは怪しいな……」

魔法使い「どうしますか? 調べに行くんですよねえ」

勇者「どう考えてもワナだから、油断だけはしないようにしよう」

魔法使い「はい」





452:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 22:40:50 ID:gIHIUKQ6

勇者「そういえば、二人とも精神感応の影響を受けてないよね」

魔法使い「言われてみれば、そんな気がしないです」

勇者「そこまで心配する必要はなかったのか?」

僧侶「魔女さんは、『中に入ると影響が強くなる』と言っていました。それは村の中ではなくて、建物の中なのかもしれませんよ」

勇者「となると、安直だけどあれだよな」

魔法使い「……ですよね」





453:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 22:46:10 ID:gIHIUKQ6

僧侶「あの、勇者さま。光が届かない深海の話ですけど、光で獲物をおびき寄せて捕食する魚類がいるそうです」

勇者「えっ、そんな魚がいるの?」

僧侶「はい。あの光を見てしまった瞬間から、私たちはもう影響を受けているかもしれません」

魔法使い「あそこに向かっていることも、精神感応の影響ということですか?」

僧侶「勇者さまには、そんな覚悟もしておいてほしいです。私たちには女神の加護がないので、不審な行動をしないか注意しておいてください」

勇者「そうだな……」





454:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 22:51:02 ID:gIHIUKQ6


魔法使い「どうやら、この旅館の一室から光が漏れているみたいですね」

勇者「そこに来いって意味なんだろうな」

魔法使い「行きます……よね?」

僧侶「きっとこの中に、賢者さんの遺体もあると思います」

勇者「この中に入ると、精神感応の影響が強くなるかもしれない。お互いに信じる気持ちを大切にしよう」

僧侶・魔法使い「はい」





455:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 22:56:15 ID:gIHIUKQ6

ガラララッ


勇者「受付には誰もいないみたいだな」

魔法使い「でも、どこからか魔力を感じますよ」

僧侶「光が漏れていたのは、上の階ですよね」

勇者「行ってみよう」

魔法使い「何だか緊張してきました……」

勇者「どうやら、この部屋みたいだな。準備は良いか?」シャキッ

僧侶「はい……」

魔法使い「大丈夫です」

勇者「開けるぞっ!」





456:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 23:18:24 ID:gIHIUKQ6

バタンッ!!


勇者「誰もいない」

僧侶「……ですね。寝具も何もないです」

魔法使い「僧侶さん、あの壁際にある物は何でしょうか?」

僧侶「迷路とソリティア……、神の遺産がどうしてこんな所に」

勇者「神の遺産?」





457:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 23:21:14 ID:gIHIUKQ6

僧侶「はい。迷路は、世界でもっとも古いパズルなんです」

勇者「ありふれていて、そんな気がしないけどな……」

僧侶「入り組んだ洞窟などは、自然が作り出した迷路ですよね。それらは人類が誕生する前から、この世界に存在していました。だから迷路は、神の遺産として扱われているのです」

勇者「なるほど。じゃあ、迷路の意味は?」

僧侶「迷路は死を象徴していて、抜け出すことで復活を表しています」

勇者「死と復活か。入り組んだダンジョンなら、そうかもしれないな」





458:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 23:31:59 ID:gIHIUKQ6

勇者「じゃあ、ソリティアというパズルは?」

僧侶「ソリティアは、一人で遊ぶパズルの総称です」

勇者「でも確か、ソリティアって、トランプじゃなかったっけ?」

僧侶「最近はトランプ遊戯のクロンダイクを、ソリティアとして認識している人が多いみたいです」
勇者「そうなのか……」

僧侶「これはペグ・ソリティアという由緒あるソリティアで、配置された駒を飛び越しながら取り除いていき、最後に一つだけ駒を残すことが出来れば成功となる盤上パズルです」

勇者「一つだけ残すと成功か……」





459:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/09(土) 23:47:21 ID:gIHIUKQ6

勇者「つまりこの部屋から出ることが出来るのは、最後に残った一人だけと言いたいのか」

僧侶「これらのパズルを解くと、そういう意味になりますよね」

勇者「じゃあ、解かなければ良いということか……」

僧侶「魔力が込められているので、そういう訳でもなさそうです」

勇者「それにしても、ここに神の遺産があるということは、この闇を作り出しているのは魔王ではなくて女神なのかもしれないな」

僧侶「女神……ですか?」





460:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/10(日) 00:22:32 ID:dyvHSL9.

勇者「極南の地にあるハノイの塔も、神の遺産なんだろ」

僧侶「はい」

勇者「そして結界に入れるのは、女神の加護がある者とそれに選ばれた者だけだ。女神が首謀者だと考えるのが、理にかなっていると思わないか?」

僧侶「だとしたら、世界を破壊しようとしているのは女神という事に……」


魔法使い「Envy」


僧侶「えっ?」

魔法使い「その迷路の答えです」

僧侶「これを解くと、文字が出るの?」

魔法使い「私はやっぱり諦められません! どうしても、勇者さまが好きなんです!」

勇者「その話はもう終わったはず。まさか、これが精神感応?!」





462:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/10(日) 22:12:51 ID:dyvHSL9.


魔法使い「風精霊召喚!」

僧侶「うぐぅ……」ドスッ


突風を引き起こし、僧侶さんを吹き飛ばす。
そして風の力で勇者さまを床に押さえつけた。


魔法使い「土精霊召喚!」


土精霊で壁を変形させ、僧侶さんを壁に磔にする。
そして、手首と足首に杭を打ち込んだ。





463:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/10(日) 22:18:45 ID:dyvHSL9.

僧侶「ぃやあぁぁっ!! 治癒魔法……」

魔法使い「刺さったままだと、治癒することは出来ませんよ」

勇者「ぐっ……、僧侶さんっ!」

魔法使い「魔力が尽きるまで、頑張ってくださいね。次は勇者さまです」


床を『∩字』に変形させ、仰向けに倒した勇者さまの手足を拘束する。
これで二人の自由を奪うことが出来た。
もう思うがままだ。





464:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/10(日) 22:29:17 ID:dyvHSL9.

魔法使い「勇者さま、もう離しませんよ♪ 勇者さまが大好きなんです、私の気持ちに応えてほしいんです!」

勇者「魔法使いちゃん……、僧侶さんに何てことを!」

魔法使い「どうして……。どうして、僧侶さんの心配をするの?」

勇者「魔法使いちゃん、精神感応に負けないでくれ! 僧侶さんを解放してくれ!」

魔法使い「私の気持ちだけに応えて! どうして、いつもいつも僧侶さんばかり見てるの!」





465:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/10(日) 22:55:18 ID:dyvHSL9.

魔法使い「勇者さまを射精に導いてあげたのは、私のほうが先なのに……。どうして、私じゃないんですか!」

勇者「あれはあくまでも学問として頼まれただけだし、僕は僧侶さんが好きだから!」

魔法使い「では、私のことは嫌いですか?」

勇者「そんなことはない。魔法使いちゃんのことは、大切な仲間だと思ってる」

魔法使い「嫌いじゃないなら、問題ありません。勇者さまを、いっぱい射精させてあげます! そうしたら、私の気持ちに応えてくれますよね//」

勇者「それは違うだろ。もっと自分を大切にしてほしい――」





466:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/10(日) 22:58:39 ID:dyvHSL9.

魔法使い「私を子供扱いしないで! 私だって、一人の女なんです。それを証明して、僧侶さんから奪い返してみせます!」チュッ

勇者「くっ、止めるんだ」

魔法使い「勇者さまぁ// ちゅっ、んっ、んんっ……」

僧侶「うぅっ……、魔法使いちゃん、そんなことはしないで!」

魔法使い「あぁ、私に興奮しているんだ。こんなに硬くなって、私の中に出したいんだ」さわさわ

勇者「僧侶さん……」

魔法使い「ふふっ、私が忘れさせてあげますよ」カチャカチャ





467:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/10(日) 23:13:33 ID:dyvHSL9.

勇者「魔法使いちゃん、止めるんだ。そんなの間違ってる!」

魔法使い「間違ってると言うなら、どうしてこんなに勃起しているんですか? 本当は早くしたいんですよね?」シコシコ

勇者「大地斬!」

魔法使い「ふふっ。剣がなければ、私が使役している土精霊は壊せませんよ」ヌギヌギ

魔法使い「ほらっ、勇者さまぁ。入れたいですか」


ショーツだけを脱ぎ、勇者さまの腰に跨がった。





468:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/10(日) 23:27:17 ID:dyvHSL9.

濡れた陰唇が、ぬるりと陰茎を包み込む。


魔法使い「あんっ……はぁっ、いぃ。僧侶さん、見てますか〜?」クチュクチュ

僧侶「もう止めて! 今なら許してあげるから」

魔法使い「許してあげる? ふふっ、まだまだ元気ですね」

勇者「止めるんだ。そんなことをしても、魔法使いちゃんが傷付くだけだ」

魔法使い「そんな事ないです。あぁ……、好きぃ。勇者さま、勇者さまぁ//」ハァハァ





469:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/10(日) 23:31:04 ID:dyvHSL9.

勇者「頼むから、もう止めてくれ。これ以上は……」

魔法使い「射精しちゃうの? いいよ、出して。全部受け入れるから」

勇者「!!」

魔法使い「いっぱい気持ち良くなって、中にたくさん出してくださいね//」チュッ


腰を浮かせて、陰茎を手で直立させる。
そして、ゆっくりと腰を下ろした。
膣前庭に亀頭が触れ、嬌声が漏れる。


魔法使い「あぅん、もうすぐ一つになれる。勇者さまぁ、好きだよ//」





470:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/10(日) 23:38:08 ID:dyvHSL9.

僧侶「破壊魔法!」

魔法使い「いやあ゛ぁっ……」


両脚に激痛が走って、体勢を崩した。
すかさず、回復魔法で回復する。


魔法使い「痛いわねぇ! 邪魔をしないでよ!!」


顔を上げると、磔にしたはずの僧侶さんが自由の身になっていた。
どうやったのか分からないが、すべての杭が足元に落ちていた。





471:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/10(日) 23:57:18 ID:dyvHSL9.

勇者「破壊魔法って、まさか僧侶さんまで……」

魔法使い「どうやって、磔刑から逃れたの!?」

僧侶「さあ、どうやったのかしらね? これ以上は、魔法使いちゃんでも許しません。もう絶対に許さない!」

魔法使い「また私から、勇者さまを奪うの?」

僧侶「魔法使いちゃんには、勇者さまを渡しません!」

魔法使い「私もあなたを、勇者さまと二人きりになんて絶対にさせない!」


だからあの日、私は僧侶さんを二人きりにさせなかった。
告白するチャンスを与えなかった。

見つけられない、だまし絵のイルカ。
どんなに納得させようとしても、この気持ちはもう抑えきれない。





472:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/11(月) 00:02:53 ID:rjoHEwwQ

転移の羽を取り出し、天にかざした。

これを使えば、僧侶さんをエルグの村に飛ばすことが出来る。
そうすれば邪魔者がいなくなる。
勇者さまと思う存分、気持ちを確かめ合うことが出来る。


僧侶「転移魔法!」パッ

魔法使い「えっ……、しまった!」





473:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/11(月) 00:17:18 ID:rjoHEwwQ

僧侶「帰るのはあなたよ、魔法使いちゃん。もう役目は終わったの」

魔法使い「役目?」

僧侶「そう……、私があなたの同行を許したのは、勇者さまが私の身体目当てだったからよ」

勇者「冗談だろ……」

僧侶「だから優しく接して、いつも味方をしてあげて、あなたが帰らないようにしていたの。子供を連れて歩くことで、その気を起こさせないためにね」

魔法使い「じゃあやっぱり、私のほうが勇者さまに相応しいです!」

僧侶「いいえ、私は勇者さまを本気で好きになったの! その気持ちは、絶対に誰にも負けない!」





474:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/11(月) 00:25:36 ID:rjoHEwwQ

魔法使い「あなたは相応しくないです!」

僧侶「転移の羽はここにあるんだから、村に帰るのは魔法使いちゃんだよ」

魔法使い「いやだっ、風精霊召喚っ!」


空気の刃を転移の羽に放つ。
僧侶さんの右腕を切り裂きながら、転移の羽は舞い散った。
そして、込められていた魔力が霧散する。


魔法使い「転移の羽がなければ、私を村に帰すことは出来ないわ!」

僧侶「だったら、死ぬ覚悟が出来ているということだよね。即死魔法!」





475:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/11(月) 21:51:09 ID:rjoHEwwQ

勇者「僧侶さん、やめろっ! そんなことをしたら取り返しがつかなくなる!」

魔法使い「いやああぁぁあっっ……」


ブレスレットに加工されている賢者の石が、一つ砕けた。
契約者である私の修復を行い、新しい命を吹き込む。

そして、また一つ砕ける。
次々と命が消えていく。





476:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/11(月) 21:54:35 ID:rjoHEwwQ

魔法使い「……治癒魔法!」


エメラルドの魔力と賢者の石を活用して、必死に治癒魔法を詠唱した。

まだ傷を治すことは出来ない。
だけど生体エネルギーを増幅させれば、即死魔法を防御することが出来るかもしれない。

効果があったのか、少し身体が楽になった。





477:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/11(月) 22:07:45 ID:rjoHEwwQ

僧侶「そんなことをしても無駄よ。絶対に勇者さまは渡さないから!」

魔法使い「土精霊……召喚!」


建物の壁から土を集め、太めの石槍をイメージした。
そして、それを床から突き上げる。

脚と脚の間。
僧侶さんの女性器めがけて、石槍を突き上げる。


僧侶「あ゛あ゛あああぁぁっ!!」


膣口を強引に破り、濡れていない膣を血塗れにしながら突き進む。
さらに子宮口を切り開き、子宮を押し広げた。





478:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/11(月) 22:40:59 ID:rjoHEwwQ

激痛に絶えられず、僧侶さんがもがく。
しかし、もがけばもがくほど石槍は子宮を傷付ける。

集中力を失ったのか、即死魔法が止まった。


魔法使い「ゼェゼェ……、僧侶さんにはそれがお似合いよ」

僧侶「……治癒魔法」

魔法使い「そんなことをしても無駄ですよ。それに今度は、重くて転移魔法でも動かせないですよね」


僧侶さんの生体エネルギーを読み取る。
出血は止まっているが、内性器は傷付いたままだ。
激痛は消えず、未だにもだえている。





479:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/11(月) 23:17:14 ID:rjoHEwwQ

僧侶「う゛う゛うっ!!」


脚が振るえ、膝が折れた。
それにより腰が下がって、石槍が子宮を貫く。
そしてそのまま、僧侶さんはズブズブとへたり込んだ。


僧侶「いやあ゛あ゛あああぁぁっ!!」


石槍の先端に、体重が圧し掛かる。
そして、体内を斬り裂きながら進んでいく。

消化管を斬って押しのけ、突き破る。
動脈を斬り、肉を斬り、体腔を血で満たす。
最後に心臓と肺に穴を開け、石槍は背骨で止まった。





480:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/11(月) 23:57:46 ID:rjoHEwwQ

体内に一本の串が通り、僧侶さんは苦悶の表情を浮かべながら脱力した。


その瞬間、装身具が二つ壊れたのを感じた。
修復魔法と蘇生魔法の装身具だ。

そしてまた、何かの魔法が発動して一つ壊れた。
どうやら、神経系の魔法のようだ。





481:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 00:00:23 ID:7T8/Xw3w

僧侶「げほっげほっ、ううっ……」

勇者「僧侶さん!! 魔法使いちゃん、もう止めてくれ! 止めてくれ……」

魔法使い「勇者さまは、そこで待っていてください。終わったら、続きを楽しみましょ♪」

魔法使い「さてと、僧侶さん。奥の奥まで、入っちゃいましたよ。すごくエッチです//」

僧侶「…魔法使いちゃん……」

魔法使い「ゆっくり動かしてあげますから、たくさん気持ち良くなってくださいね♪」





482:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 00:36:42 ID:7T8/Xw3w

魔法使い「土精霊!」

僧侶「あ゛あぁっ……んんっ。蘇生修復魔法」


石槍に笠状の刃を増やし、伸縮を繰り返した。

内臓を引き千切り、
卵巣と子宮に刃を刺して、そのまま押し潰す。
さらに血液と腸の内容物を、ぐちゃぐちゃにかき混ぜる。

しかし、それらは修復魔法で正常な位置で再生する。
腸内環境も、適正に管理されているようだ。





483:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 00:40:55 ID:7T8/Xw3w

それを私は、再び破壊する。
肺と心臓に石槍を刺し、
卵巣と子宮を壊すために、石槍を引いて押し潰す。


僧侶「はうっ……」

魔法使い「あはは。身体の中、いっぱい濡れてきたね」

僧侶「もう…やめ……」

魔法使い「あなたが妊娠するなんて、絶対に認めない! 勇者さまと愛し合うのは、絶対に私なんだから!」





484:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 00:50:03 ID:7T8/Xw3w

今日はここまでにします。

拷問というか、
惨殺刑というか……、
修羅場がもうしばらく続きます。

R-18宣言はしてますし、
苦手な人はすみません。





485:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 01:01:26 ID:HHOpa.uc

oh





487:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 18:47:05 ID:7T8/Xw3w

やがて赤黒い汚物が、膣から掻き出されるようになった。
ついに、体内の再生が間に合わなくなったのだ。


僧侶「うぐっ……、んっ」

魔法使い「もう逝きそう? いつでも逝っていいよ」グチャグチャ

僧侶「魔法使いちゃん……」


もうすぐだ。
もうすぐ、僧侶さんを殺せる。
勇者さまと二人きりになれる。





488:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 19:21:56 ID:7T8/Xw3w

魔法使い「早く逝っちゃえ、逝っちゃえっ!」


膣から、子宮や卵巣の肉片がはみ出る。
そして掻き出された汚物が、床を汚していく。
力無く、僧侶さんが笑みを浮かべた。


僧侶「…魔法使いちゃん……、もう気が……済んだ?」

ぐちゃぐちゃ.....

僧侶「私の背中を……押したこと、ずっと後悔していた……んでしょ。だから、こん……な殺し方をするんでしょ?」

魔法使い「何を言いたいの?」

ぐちゅ....

僧侶「本当は、もっと簡単に私を殺せるのに――」





489:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 20:15:58 ID:7T8/Xw3w

魔法使い「私は本当は、二人の愛を受け入れるつもりでした。だけど、違ったんです。魔女さんが言ってましたよね」


『呪術的な影響じゃないか』って――。

魔法使い「それで分かったんです」

僧侶「……分かった?」ゼェゼェ

魔法使い「僧侶さんが告白した日、私が寝た振りをしている可能性に気付いていましたよね。それなのに、勇者さまと何度も何度も激しく交わりました」

魔法使い「それは、私に見せ付けたかったからじゃないんですか!」

僧侶「それは……」





490:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 20:24:32 ID:7T8/Xw3w

魔法使い「僧侶さんの愛は偽りです! あなたは、私から勇者さまを奪いたかっただけなんです。見せ付けたかっただけなんです!」

僧侶「奪ったことは認めるわ……。一線を越えようとしている魔法使いちゃんに、私は我慢することができなかったの」

魔法使い「それが呪術の影響、偽りの愛の証拠じゃないんですか? あなたは交わる姿を見せつけたかっただけなんです」

僧侶「違う、違うっ……。睡眠魔法は負担が大きくて――」

魔法使い「同じことよ! 絶対に許せない。だから、淫らなあなたに相応しい殺し方をするんです!」





491:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 20:40:14 ID:7T8/Xw3w

僧侶「魔法使いちゃん……。どうしても許せないなら、本気で私を殺せば良いわ。修復魔法の装身具は、これが最後だから……」

僧侶「魔法使いちゃんの気持ちを知っていたのに、勇者さまを奪ってごめんなさい」


そう言うと、僧侶さんの装身具が砕け散った。
修復魔法が解放され、石槍をよけて臓器が再生していく。

それと同時、何かの魔法が発動して装身具が砕け散った。


僧侶「……でもね、私は勇者さまを本気で愛してるの!」

魔法使い「それは偽り!」

僧侶「いいえ! その気持ちだけは、誰に何と言われても絶対に譲れない! だから、魔法使いちゃんに許してほしいのっ!」

魔法使い「それなら、私はあなたを殺します! そして、勇者さまを返してもらいます!」





492:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 20:52:44 ID:7T8/Xw3w

魔法使い「土精霊、もう逝っちゃえ!!」

僧侶「ふふっ……」

魔法使い「えっ?!」


なぜか、土精霊の使役が出来ない。
まさか……、この違和感は封印魔法?!


僧侶「精神感応対策で、沈静魔法と修復魔法の装身具を使い切ったときに、魔法使いちゃんに対して封印魔法が発動するようにしていたの。だからもう……」

魔法使い「あはは、そんなことをすると石槍は抜けませんよ! だから、内臓を正常に修復することは出来ない。僧侶さんは必ず死にます!」

僧侶「そうかなぁ……」

魔法使い「そうです!」

僧侶「魔法使いちゃん、ごめんね。私を許してくれないなら、殺すしかないよね。即死魔法!!」





493:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 21:20:14 ID:nT8JI1S6

ああ…





494:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/12(火) 22:10:37 ID:iQxHKyNA

むぅ…





495:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/13(水) 21:43:14 ID:Kk0FG4jk

魔法使い「!! いやあぁぁっっ……」


生体エネルギーと魂が削り取られ、もだえながら崩れ落ちた。
魔法を封じられているので、治癒魔法を使えない。

命が尽きて、賢者の石が一つ砕けた。
そして、また一つ砕ける。
絶望的な速さで、賢者の石が砕けていく。

これがすべて砕けたら、本当に死んでしまうのかな……。

そうなる前に、僧侶さんを殺さないと!


魔法使い「殺す! 殺す、殺す、殺す……」





496:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/13(水) 21:49:41 ID:Kk0FG4jk

魔法が使えなくなったときのために、装身具に四大精霊を宿している。
水精霊と土精霊を解放すれば、僧侶さんを確実に殺せるはずだ。

全身の血液や細胞を凍結させれば、瞬時に生命活動を奪うことが出来る。
そして体内の石槍で、身体を粉々に砕いてしまえばいい。
そうすれば、どんな魔法でも蘇生することは出来ない。

顔を上げ、攻撃目標を見定めた。
すると、僧侶さんは泣いていた――。





497:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/13(水) 22:07:39 ID:Kk0FG4jk

魔法使い「どう……して…………」


目が合うと同時、僧侶さんが微笑した。
即死魔法の勢いが衰え、少し身体が楽になる。
もしかして、魔力が尽きてきた?!


僧侶「……いいよ。しな……ないで」

魔法使い「……えっ」





498:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/13(水) 22:16:09 ID:Kk0FG4jk

死なないで――。
その言葉と涙に戸惑った。


僧侶さんは、精神感応に支配されているのに謝ってくれた。
殺そうとしている私を、気遣ってくれた。

こんなときでも、
僧侶さんは私を想ってくれている。

それなのに、
私は何をしているのだろう――。





499:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/13(水) 22:36:17 ID:Kk0FG4jk

・・・
・・・・・・

天使『どんな理由があろうとも、命を奪うことは未来を奪うことだ。魔法使いちゃん、ただの村娘に過ぎないキミに、その犠牲を背負う覚悟があるのかい?』

魔法使い『無益な殺生で命を奪うことは、絶対にするべきではないです。だけど身を守るために、やむを得ない場合もあると思います。私は、命を無価値なものにするつもりはありません!』





500:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/13(水) 22:42:04 ID:Kk0FG4jk

・・・
・・・・・・

天使『魔法使いちゃん、苦しい思いをさせてごめんね。命が命で繋がっていることは、絶対的な真実だ。だからこそ命を奪う重さ、奪われる苦しみを知っておいてほしかったんだ』

魔法使い『は、はい……』

僧侶『魔法使いちゃんを殺しておいて、「命を奪われる苦しみを知っておいてほしかった」とか、勝手なことを言わないでください!』

・・・
・・・・・・

僧侶『欠損した身体の修復はさらに高度な魔法だし、蘇生魔法があっても人の命は一つしかないということは忘れないでね』





501:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/13(水) 22:56:17 ID:Kk0FG4jk

殺さなければ、殺される。
だけど、本当にそれでいいの?
私は、僧侶さんを殺してもいいの?


・・・
・・・・・・

僧侶『殿方と愛し合い、そして結ばれて、私たち女性は新しい命を授かります。だから……』

僧侶『これを矢に見立てれば、ほらっ♪ ハートに矢が刺さって、とても素敵ではないですかぁ//』





502:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/13(水) 23:00:35 ID:Kk0FG4jk

・・・
・・・・・・

勇者『今まで魔法使いちゃんを逃がす方法を考えていたけど、それだけじゃ駄目なんだよ。彼女の未来のためにも、三人で一緒に帰ろうな』

僧侶『はいっ。魔法使いちゃんと話したいことが、これからいっぱい増えそうですしね』

僧侶『魔法使いちゃん、こんな私だけど応援してくれますか? 魔法使いちゃん、本当にありがとう。これからも一緒に旅をしようね』





503:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/13(水) 23:02:23 ID:Kk0FG4jk

・・・
・・・・・・

僧侶『魔法使いちゃん。新しい命を宿すのは素敵なことだし、私たちも愛し合える殿方と出会って授かりたいものですね』

魔法使い『はいっ』





504:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/13(水) 23:10:39 ID:Kk0FG4jk

私は勇者さまが好きだ!

それでも、私は……僧侶さんを選ぶ。
僧侶さんが幸せだと、私もうれしいから。
僧侶さんはこの旅で、愛し合える殿方に出逢えたのだ――。

二人の幸せを、
ううん、私たち三人の幸せを壊したくないっ!





505:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/13(水) 23:18:17 ID:Kk0FG4jk

魔法使い「……土精霊、解放します!」


その言葉と同時、土精霊を宿していた装身具が崩れ落ちた。

勇者さまの拘束を解き、僧侶さんの石槍を取り除く。
ちらりと視線を交わすと勇者さまは頷き、僧侶さんの元へと駆け出した。





506:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/13(水) 23:24:48 ID:Kk0FG4jk

あぁ、やっぱり……。
やっぱり私と勇者さまは、心が繋がっている。

愛や恋ではないけれど、私のことを信じて想ってくれている。
それだけで十分だったはずなのに――。

勇者さまが、僧侶さんを抱きしめた。
僧侶さんは艶やかに微笑み、背中に腕を回す。

その瞬間、最後の賢者の石が砕け散った。
そしてそのまま、私の意識は遠退いていった。





511:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/14(木) 20:10:42 ID:HTPSCM1k


僧侶「う……うぅん」

勇者「僧侶さん、気がついた?」

僧侶「ま、魔法使いちゃんは?!」

勇者「大丈夫、気を失っているだけだから」

僧侶「大丈夫って……、昏睡状態じゃないっ!」

勇者「昏睡?!」

僧侶「そ、蘇生魔法! お願いだから、死なないで。死なないで……」





512:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/14(木) 20:19:32 ID:HTPSCM1k

僧侶「!!」


魔法使い「……、僧侶…さん」

僧侶「良かった、目が覚めてくれて……」

魔法使い「私、助かったんだ……」

僧侶「魔法使いちゃん、賢者の石は?!」





513:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/14(木) 20:27:55 ID:HTPSCM1k

魔法使い「あ……、ゴム紐だけになっちゃいましたね」

僧侶「そんな……、うそでしょ。賢者の石が全部砕けるなんて、私は何回殺してしまったの!?」

魔法使い「僧侶さん、私は死んでないから。大丈夫ですから……」

僧侶「大丈夫って、石の数だけ殺されたってことなのよ!」

魔法使い「賢者の石は砕けてしまったけど、私は生きています。もう、それだけで十分です」





514:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/14(木) 21:02:42 ID:HTPSCM1k

僧侶「また、そうやって我慢するの? 私のこと、本当は憎いはずでしょ」

魔法使い「我慢なんてしていません。僧侶さんは精神感応の影響を受けていても、私のことを想ってくれていました。そんな人を、どうして憎むことが出来るんですか?」

僧侶「私は魔法使いちゃんを殺したのよ」

魔法使い「私のほうこそ、取り返しの付かないことをしてしまいました。どんなに償っても、償いきれないです……」





515:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/14(木) 21:08:26 ID:HTPSCM1k

僧侶「好きな人を奪われて、さらに見せ付けられて……。ずっと辛かったんでしょ」

魔法使い「私は本当に、二人の愛を受け入れるつもりでした。それなのに、私はあんなに残酷なことを――」

僧侶「魔法使いちゃん……」

魔法使い「私は僧侶さんを許します。私は、私を想ってくれている僧侶さんが好きなんです。だから、幸せになってほしいんです!」





516:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/14(木) 22:04:23 ID:HTPSCM1k

僧侶「勇者さまは、私を嫌いになりましたよね。醜悪で愚かな姿を見せてしまったから……」

勇者「僧侶さんは、精神感応に支配されていたんだろ。僕は僧侶さんを、絶対に大切にするから」

僧侶「私は、魔法使いちゃんを殺しました。勇者さまに相応しくないです」

勇者「僧侶さんは魔法使いちゃんのこと、精神感応で引き出された歪んだ狂気と、さっきの本心から出た言葉、どっちを信じるんだ?」

僧侶「それは……」

勇者「自分ばかり責めるんじゃなくて、もっと魔法使いちゃんの気持ちと向き合えよ!」





517:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/14(木) 22:10:21 ID:HTPSCM1k

勇者「正直言って、殺し合う二人の姿を見ていることがつらかった。だけど二人は、それ以上の信頼関係を築いていたんだなと感じた。だから、精神感応に打ち勝てたんだろ」

勇者「ありのままの姿をも受け止めることが出来たなら、それだけ僕たちの絆は固く繋がることになるんじゃないかな」

魔法使い「私もそう思います。お互いに本音をさらけ出して、それでもまた向かい合うことが出来たのだから、賢者の石を消費しただけの価値があると思います。それで良いじゃないですか」

僧侶「……」





518:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/14(木) 22:41:54 ID:HTPSCM1k

勇者「魔法使いちゃん……。今回のことで、僕は魔法使いちゃんの気持ちを軽んじていたと思い知らされた。普段通りに接することが、正しいと思っていたんだ」

魔法使い「私は勇者さまが好きです。だから以前は、愛し合う二人を見て嫉妬していました」

魔法使い「でも今は、温かい気持ちになれるんです。幸せそうだなって」

勇者「幸せそう……」

魔法使い「だから私は、今まで通りに接してほしいです。気持ちの整理を、ちゃんとしますから。さっきの事は、すみませんでした」

勇者「そっか……、分かったよ。これからも、よろしくね」

魔法使い「はいっ//」





519:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/14(木) 22:49:21 ID:HTPSCM1k

魔法使い「僧侶さん。私がしたことを許してくれるなら、私は私たち三人の幸せを大切にしたいです」

魔法使い「これからも仲間として、大切な友人として一緒にいてほしいです。本当にごめんなさい!」


僧侶「いつの間にか、こんなに大きく成長していたんだね……」

僧侶「魔法使いちゃん、本当にごめんなさい。そして、ありがとう。ありがとう……」

魔法使い「ふふっ♪」





520:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/14(木) 22:51:19 ID:HTPSCM1k

僧侶「勇者さま、こんな私でも好きでいてくれますか?」

勇者「言っただろ、僕は僧侶さんを絶対に大切にするって。二人で一緒に、幸せな未来を築いていこうな」

僧侶「はいっ、勇者さまのことが大好きです!」チュッ

魔法使い「いつか私も、愛し合える殿方に出逢いたいな//」

僧侶「魔法使いちゃんなら、素敵な人が見つかるよ」

魔法使い「そうかなぁ」

僧侶「うん、絶対に大丈夫だよ」





521:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/14(木) 23:17:47 ID:HTPSCM1k

勇者「ところで、魔法使いちゃん……」

魔法使い「何ですか?」

勇者「そろそろ、何か着てほしいんだけど……」

魔法使い「わわっ// 脱いだままなの忘れてたぁ!」

勇者「いつ気付くのかなと思っていたけど、忘れてたんだ……」

魔法使い「もう、いつまで見てるんですか! さっきの続きは、僧侶さんとして下さいね//」

勇者「はは……」





524:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/15(金) 19:40:15 ID:mOOSMWJY


僧侶「勇者さま、着替え終わりました」

勇者「身体は大丈夫?」

僧侶「はい、もう大丈夫です。心配してくれてありがとうございます//」

勇者「そっか、良かったよ」

僧侶「欠損した卵胞も回収して本気で治癒したし、私は天使にその実力が認められた女僧侶ですから。だから、その……」





525:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/15(金) 19:48:40 ID:mOOSMWJY

勇者「んっ?」

僧侶「私と勇者さまの、元気な赤ちゃんを産めますから//」

勇者「そっか、子供かぁ」

僧侶「はい。だから、安心してください」

勇者「今度、二人で落ち着いて話をしような」

僧侶「はい、勇者さま♪」





526:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/15(金) 19:58:36 ID:mOOSMWJY

勇者「じゃあ、精神感応の被害状況を確認しておこうか」

魔法使い「私は、転移の羽と賢者の石を失いました。もう逃げられません。それと、土精霊の装身具を解放しました」

僧侶「私は魔法使いちゃんからネックレスを借りて、魔力の回復中です。用意した装身具も残り少ないです」

勇者「やっぱり、魔法使いちゃんが一番の問題だよな」

僧侶「そうですよね……。こんな形で転移の羽を失うとは、全然考えていなかったです」

魔法使い「すみません」





527:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/15(金) 20:09:38 ID:mOOSMWJY

勇者「そのおかげで、みんなで帰れる訳だし。ポジティブに考えようよ」

魔法使い「はいっ」

勇者「とりあえず今回のことは、かなり重要な情報となるはずだ。それを持ち帰ることを優先させたい」

僧侶「という事は、もう帰るのですか?」

勇者「精神感応の原因は、神の遺産だろ。その魔力を解放してハノイの塔を確認したら、結界内から離脱しようと思う」

僧侶「そうですね。一度戻って、態勢を整えましょう。では、パズルを解きますね」





528:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/15(金) 20:32:40 ID:mOOSMWJY

僧侶「この迷路を解くと、『Envy』という文字が浮かび上がるみたいです」

勇者「固有言語みたいだけど、意味は分かる?」

僧侶「はい。七つの大罪の一つで、これは『嫉妬』です。何だか、作為的なものを感じます」

魔法使い「つまりその迷路は、私の嫉妬心を煽るために用意されたということですか?」

僧侶「そうかもしれないわね。それが私たちに対して有効な攻撃手段として、精神感応の媒体になっていたのだと思う」カチャカチャ

魔法使い「私たちが来ることを知っていて、神の遺産を用意出来るのは……」

勇者「女神しかいないだろうな」





529:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/15(金) 22:08:08 ID:mOOSMWJY

僧侶「そうなると、精神感応はなくならないことになりますよね」

魔法使い「あっ! この迷路が私たちに対して用意されたのなら、魔女さんたちが来たときも、魔女さんたちに対して迷路が用意されたことになります!」

勇者「つまり、このパズルの魔力を解放しても、次の部隊が来たら、それに対して新しい迷路が用意されるということか」

僧侶「……はい。精神感応はなくなりません」

勇者「そうか……。精神感応が消えないと分かっただけでも、部隊編成に有効な情報だよ」





530:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/15(金) 22:13:48 ID:mOOSMWJY

僧侶「そもそも、女神は何をしたいのでしょうか? 精神感応の目的が不明です。あっ、ソリティアが完成しました♪」

勇者「精神感応で殺し合わせる目的か。何がしたいんだろ」

魔法使い「そういえば、天使さんが私たちのことを『試される者』と言ってましたよね」

勇者「精神感応で、何かを試しているのかな」





531:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/15(金) 22:24:00 ID:mOOSMWJY

??「あらあら、駄目じゃない。ここで生き残れるのは一人だけなんだよ。さあ、裁きの続きを始めましょうか!」


声がした場所を見ると、魔法使いちゃんが立っていた。
いや、魔法使いちゃんと同じ服を着た何者かだ。


勇者「お前は何者だ!」

??「私はここを管理する者です。変身魔法、洗脳魔法!」

魔法使い「えっ……。いやっ、いやあ!」


魔法使いちゃんの悲鳴と同時、障壁魔法で闇のカーテンが作られる。
次の瞬間、魔法使いちゃんが消失した。

そして闇のカーテンが外されると、そこには二人の魔法使いちゃんが立っていた。





533:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/15(金) 22:42:07 ID:mOOSMWJY

魔法使い『勇者さま御一行の絆をあまく見ていたわ。まさか、精神支配を乗り越えてしまうなんてね』

勇者「お前たちの目的は何なんだ!」

魔法使い『君たちと問答するつもりはない』

僧侶「魔法使いちゃん!」

魔法使い『君たちにとって、この子は特別な存在だよね。何があっても死なせられない。だから、そこに弱点が生まれる』

魔法使い『さあ、私だけを選んで殺すことが出来るかしら? 見せてもらうわ!』

僧侶「そんな、やっと心から分かり合えたのに……」

勇者「精神感応といい、なんて卑劣なんだ」





534:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/15(金) 22:54:46 ID:mOOSMWJY

いつの間にか用意されていたナイフを抜き、二人が勇者さまに切りかかった。

接近戦を選ぶのは、剣で殺されることが出来る間合いに入るためかもしれない。
そして、本物の魔法使いちゃんが殺されることを期待しているのだろう。

突き出される二本のナイフを、勇者さまが両手でいなす。


勇者「魔法使いちゃん、止めるんだ!」

魔法使い『あはは、あははははは』

勇者「ぐっ!」


魔法使いちゃんのナイフが、勇者さまの腕を掠めた。
さらにもう一方が、鎧の隙間を的確に狙って刺し込んだ。





535:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/15(金) 23:05:53 ID:mOOSMWJY

魔法使いちゃんは、体術全般が苦手だ。
だから、鎧を狙ったほうが偽者かもしれない。

しかし両者とも、勇者さまにナイフを当てることが出来ている。
やはり、ナイフ術で特定することは困難だ。


僧侶「勇者さま! 防御魔法、回復魔法!」

勇者「僧侶さん、ありがとう」





536:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/15(金) 23:14:58 ID:mOOSMWJY

魔法使い『ほらほら、殺さないと殺されるよ。勇者さまに、仲間を斬る覚悟はあるのかな?』

勇者「くっ……」


シュンッ
しかし、剣は空を斬る。


魔法使い『しっかり狙わないと、私は倒せないよ』

勇者「無理だ……。魔法使いちゃんを斬れるわけがない」





539:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 16:26:15 ID:rETjP0.6

勇者「僧侶さん! どっちが魔法使いちゃんか、魔法で分からないか?」

僧侶「そんな都合の良い魔法は――」

勇者「人以外に治癒魔法を使えないなら、それで識別が出来るだろ」


魔法で識別する。
どうして、そんな簡単なことを思い付かなかったのだろう。

精神を集中させ、二人の生体エネルギーを読み取った。





540:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 16:32:27 ID:rETjP0.6

左手側を攻めているのは、人間。
生体エネルギーの分布は、魔法使いちゃんだ。

という事は、
右手側を攻めているのが偽物だ。


……えっ?!


僧侶「勇者さま、無理です……」

勇者「無理?」





541:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 16:38:33 ID:rETjP0.6

僧侶「はい……、どっちも本物なんです。正真正銘、本物の魔法使いちゃんなんです!」

勇者「そんなバカな!」

魔法使い『ふふっ、遺伝子レベルで同じ身体に変身する魔法。服は有り合わせだけど、まるっきり同じだから見分ける術はない!』

僧侶「でも人と同じ状態なら、私の魔法が届きます!」

魔法使い『また私を殺すの? もう賢者の石がないのに……』

僧侶「あぁっ……」

魔法使い『あはは、君たちは私を殺せない。精神支配を乗り越えるほどの絆のせいで、私に殺されるのよ。いいわ、いいわぁ』





542:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 16:59:02 ID:rETjP0.6

勇者「そうだ、僧侶さん! 二人に魔法が効くなら、眠らせれば良いじゃないか」

僧侶「でも……」

魔法使い『ほらほら、よそ見をするなんて余裕だね』

勇者「くっ……」



精神感応系の魔法は、身体への負担が大きい。
だけど、今は非常事態だ。


僧侶「……、分かりました。睡眠魔法!」


しかし、睡眠魔法は効かなかった。





543:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 17:10:02 ID:rETjP0.6

僧侶「どうして?!」

魔法使い『あはは。確かに君は、人間の域を超えているわ。だけど、所詮は人間なのよね。私の精神支配には勝てない』

勇者「だったら、僕が取り押さえるまでだ!」

魔法使い『捌くだけで手一杯のあなたが、二人同時に? 仮にそれが出来たとして、どうやって私だけを拘束するの?』

勇者「それは後で考える!」

魔法使い『分かってないのね。洗脳魔法は、身体や脳への負担が大きいの。だから私を殺さないと、この子は死ぬ』





544:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 17:14:44 ID:rETjP0.6

勇者「死ぬって、冗談だろ……」

僧侶「恐らく、本当だと思います」


拘束しただけでは、魔法使いちゃんを特定できない。

特定して殺さなければ、魔法使いちゃんが人の力を超えた魔法で死んでしまう。

そもそも、精神感応を作り出しているのは、この偽物かもしれない。
ならば、今後の戦略のために倒す必要がある。





545:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 17:27:17 ID:rETjP0.6

僧侶「勇者さま……。私は覚悟を決めました」

勇者「覚悟って……」

僧侶「魔法使いちゃんなら、私を信じてくれるはずです」

魔法使い『ふふっ、なんて身勝手なの? 殺そうとしてくる仲間なんて、信じられるわけがないじゃない!』


二人の魔法使いちゃんが、私に切りかかってきた。
やはり、どちらが偽者か分からない。

だけどそんなことは、今は関係ない。
出来ることをするだけだ。

魔法使いちゃんを特定するために――。





546:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 19:07:26 ID:rETjP0.6

右と左から、ナイフが突き出された。
だけど私には、ナイフをいなす技術がない。

転移魔法も、激しく動いている物体は難しくて、まだ使いこなせない。

だから、ナイフを破壊する。


僧侶「金属破壊っ!」


左手側から突き出されたナイフの刃が触れた瞬間、魔力で金属を特定して刃を破壊した。

それに戸惑い、魔法使いちゃんたちは動きを止めた。


解毒魔法を行使するためには、毒物の構造を理解して無害なものに分解する必要がある。
その応用として覚えた魔法が、金属製の拘束具を破壊する錬金術だ。





547:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 19:15:03 ID:rETjP0.6

魔法使い『錬金術も使えるの?!』

僧侶「魔法使いちゃんには、話したことがあるはずですけど」


そう言うと、私は刺してきた魔法使いちゃんに、拳を突き出した。


僧侶「転移魔法!」
魔法使い「えっ?!」


腰に下げているナイフを転移させて、握り締める。
そして、そのまま突き刺した。





548:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 19:18:16 ID:rETjP0.6

魔法使い「うああぁぁっ! そ、僧侶さん、痛いよ……痛いよぉ」

僧侶「破壊魔法!」
彼女の呻き声を気にせず、ツインテールの右側を破壊する。

勇者「そ、僧侶さん! もし本当の魔法使いちゃんだったら、どうするつもりだ!」

僧侶「大丈夫です。これくらいなら、魔法使いちゃんは回復できます」





549:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 19:40:30 ID:rETjP0.6

ツインテール一本の魔法使いちゃんが、刺したままにした私のナイフを抜いて回復した。
そして、そのナイフを構える。

やはり偽者は、精神感応に特化しているようだ。
だから、攻撃魔法を使わないのだろう。

毎日のように見てきた、魔法使いちゃんの精霊魔法。
その魔力の流れで見抜く方法は、諦めるしかないようだ。





550:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 19:44:29 ID:rETjP0.6

魔法使い1「僧侶さん、本気で私を殺そうとするなんて酷いです!」

魔法使い2「正気でそんなことが出来るなんて、もうあなたのことは信じられないです!」

僧侶「よく聞いて、偽者さん。魔法使いちゃんを見分けられるように、ツインテールの本数で区別することにしました」

魔法使い『ツインテールの本数?』

僧侶「私は絶対に、魔法使いちゃんを特定して助けます!」





551:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 19:47:07 ID:rETjP0.6

魔法使い2「髪を切ったくらいで、私を特定できるわけないでしょ」

魔法使い1「あなたは魔法を封印すれば、もう簡単に死ぬよね」

魔法使い『それに、転移魔法は厄介だし』

僧侶「封印魔法って、やっぱりあなたは天使なの?!」

魔法使い『さぁ、どうかしら。封印魔法!』

僧侶「!!」





552:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/17(日) 19:54:14 ID:rETjP0.6

今日はここまでにします。

ちなみに、
魔法使いちゃんは、5話で髪型をツインテールにしています。





554:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 18:49:16 ID:LJqVxN96

魔法使い2「あははは、一気に行くわよ! 障壁魔法!」


闇の障壁が視界を隠す。
次の瞬間、首を切り裂かれた。

頚動脈から血液が噴出し、切り裂かれた気管から呼気が漏れる。
治癒魔法が自動で発動し、装身具が一つ砕け散った。
これで治癒魔法を宿した装身具は、残り二つだ。


魔法使い2「あれっ、死なないんだ。僧侶さんは、あと何回殺せば死ぬのかなぁ」

僧侶「げほっげほっ……ぜぇぜぇ。すぅはぁ……」

勇者「やめろっ!」





555:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 19:00:27 ID:LJqVxN96

勇者さまが私たちの間に割って入り、
ツインテール一本の魔法使いちゃんに剣を振り下ろした。

しかし迷いがあるからか、動きに切れがない。
あっさりかわされ、逆に魔法使いちゃんたちに切られた。


僧侶「治癒魔法!!」

魔法使い1「あはは、勇者さまぁ。勇者さまのことが大好きだよ。私の処女を、その大きなモノで貫いてほしいな」

勇者「魔法使いちゃん……」

魔法使い1「そんなものが入ってきたら、すぐに逝っちゃいそう。ねえ、私の愛を受け止めて」

勇者「くそっ、どうすればいいんだよ……」





556:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 19:23:10 ID:LJqVxN96

僧侶「勇者さま、今から私が偽物の正体を暴きます」

勇者「そんなことが出来るのか?!」

僧侶「上手くいけば……。だから勇者さまは、その偽物を斬ってほしいです」

勇者「上手くいけばって、失敗する可能性があるのか?」

僧侶「そのときは、魔法使いちゃんを生き返らせます」

勇者「生き返らせる?!」





557:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 19:39:48 ID:LJqVxN96

僧侶「はい。失敗したら、もう一方も斬ればいいだけなんです」

勇者「それ、本気で言っているのか……」

僧侶「もちろんです。破壊魔法と蘇生魔法、治癒魔法の装身具が一つずつ残っています。だから、絶対に成功します」

勇者「生き返るから殺してもいい。だから、二人とも殺せばいい。そんな理屈が通るわけないだろ!」





558:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 19:41:03 ID:LJqVxN96

僧侶「私たちには、もう後がないことも分かってください! 勇者さま、私を信じてください」

勇者「……、分かった」

僧侶「実はさっきの攻撃で、どちらが偽者か確信できました。ツインテール一本が偽者なんです」

勇者「ツインテール一本が偽者?」

僧侶「はい、間違いありません」





559:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 20:19:28 ID:LJqVxN96

魔法使い1「へぇ、興味深い作戦だね。根拠はあるの?」

僧侶「二人の魔法使いちゃんは、それぞれ攻撃に移るときの体運びが微妙に違います。それは、熟練者と洗脳魔法の差だと思います」

魔法使い2「ふうん……。筋肉量に相応しい動きしか、させていないはずだけどねぇ」

僧侶「そして私は、今までずっと魔法使いちゃんと過ごしてきました。その時間を、私は信じます」

僧侶「だから偽者は、ツインテール一本のほうなんです!」

魔法使い『ええっ?!』





560:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 20:25:26 ID:LJqVxN96

魔法使い1「そんな理由で、私を偽者呼ばわりするの?!」

魔法使い2「というか、その三段論法は何なの?!」

僧侶「私は論理的だと思いますけど」

魔法使い1「勇者さまは、こんな主観だけで私を殺すの?」

魔法使い2「一度でも間違えたら、絶対に後悔するわよ!」

勇者「くっ……」

魔法使い『もういいわ。それが君たちの答えなのね』

僧侶「はい」

魔法使い『もう終わらせます。障壁魔法!!』





561:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 21:40:19 ID:LJqVxN96

闇の障壁で視界を塞がれ、ナイフが突き出された。
激痛と同時に治癒魔法が発動して、最後の装身具が壊れる。
さらに、腕を切られた。
だけど、痛みで呻いている暇はない。


闇のカーテンから抜け出すと、魔法使いちゃんの『ローブ』を確認した。
それは明らかに異変が起きていた。





562:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 21:46:16 ID:LJqVxN96

私がナイフで刺したのは、ツインテール一本の魔法使いちゃんだ。
それなのに、今はツインテール二本の魔法使いちゃんが『破れたローブ』を着ている。

障壁魔法で見えなくなっていたのは一瞬だ。
その間に、攻撃をしながら着替えることは困難だ。
つまり、二人の髪型が入れ替わったことになる。


魔法使いちゃん……。
今、助けてあげるからね!





563:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 22:02:07 ID:LJqVxN96

僧侶「偽者はツインテール二本のほうね!」

魔法使い『えっ?!』

勇者「僧侶さん、話が違う!」


僧侶「破壊魔法を解放します!!」

魔法使い2「いやっ、いやああぁぁっ!」

魔法使い1「……!」

魔法使い2「僧侶さん、どうして私なの?! やめて、やめてええぇぇっ!!」





564:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 22:05:18 ID:LJqVxN96

魔法使いちゃんは、まだ治癒魔法を使いこなせない。
だから内臓を破壊すれば、彼女はなすすべなく死んでしまう。

もし偽者ならば、死んでしまう前に本来の姿に戻るはずだ。
本来の姿に戻れば、破壊魔法を無効化できるからだ。

そしてもし治癒が出来るならば、
やはり偽物を特定出来ることになる。

もだえ苦しむ魔法使いちゃん。
私は間違えていない、間違えていない……。





565:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 22:22:57 ID:LJqVxN96

僧侶「勇者さま! 覚悟を決めてください!」

勇者「分かった。僧侶さんを信じるよ!」


ツインテール二本の魔法使いちゃんに、勇者さまが剣を向ける。
そして小さな身体を、大きな剣が貫いた。


魔法使い2「ゆ、勇者さま……ごほっ。私、私は……」


魔法使いちゃんは涙を流し、苦しそうに呻いている。
大量の血があふれ出し、ローブが赤く染まっていく。

その間、ツインテール一本の魔法使いちゃんは沈黙していた。





566:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 22:23:40 ID:LJqVxN96

勇者「もう元の姿に戻れ。これ以上、魔法使いちゃんの苦しむ姿を見せないでくれっ」


勇者さまの声は震えていた。
魔法使いちゃんを斬る。
私は、なんという残酷なことをさせているのだろう。


僧侶「戻らないと死にますよ。私は確信していますから」

魔法使い2「……」


魔法使いちゃんの生気が消えていく。
やがて変身魔法が解け、その正体を現した。





567:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 22:42:12 ID:LJqVxN96

偽者「どうして分かった……」

僧侶「私が魔法使いちゃんを刺したのは、ローブを切り裂くためです」

偽物「ローブを切り裂くため?」

僧侶「はい。もし変身魔法で二人が入れ替われば、ローブの破れと髪型が一致しないことになります」

僧侶「そして私のナイフを持たせたのも、ナイフの交換に注意を向けさせて着替えさせないためです」

偽者「そういうこと……か。あの三段論法は、ミスリードだった訳か」

僧侶「このことから、ツインテール一本を殺すと宣言しているので、入れ替わりがあれば二本が偽者」

僧侶「もし入れ替わりがなければ、ツインテール一本は殺されてもいいわけだから、ツインテール二本が偽者だと分かります」





568:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 22:45:27 ID:LJqVxN96

勇者「そういうことは、事前に打ち合わせをしてくれないと困るんだけど」

僧侶「敵の前で打ち合わせなんて出来ないですよ」

勇者「……、そうだね」

偽者「まさか、この私が初歩的な論理パズルに引っかかるとは……」

僧侶「それでは偽者さん、魔法使いちゃんを返してください!」

偽者「どうやら、返さない訳にはいかないみたいね」





569:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 22:51:55 ID:LJqVxN96

勇者「最後に、いくつか聞きたいことがある。お前の主は女神なのか? 一体ここで何をするつもりなんだ!」

偽者「ここの目的は、試される者たちの罪を裁くことよ。そのために精神を解放させて、理性を取り払う」

僧侶「罪って、嫉妬ですか……」

偽物「そうね。だけど、その罪は赦されました。仲間を想う信頼と知恵、特別にそれを汲んであげましょう」

勇者「つまり女神は、僕たちに殺し合いをさせるために神託を下して、加護を与えるのか?!」

偽物「それは、私の役目を超えている。赦された者よ、最後の試練を乗り越えてくれることを期待しています」


そう言うと、偽物は光に包まれて転移した。





570:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 22:57:59 ID:LJqVxN96


魔法使い「そ、僧侶さん……私」

僧侶「もう大丈夫だよ。勇者さまが勝ったから」

魔法使い「勇者さま、ありがとうございます。ずっと信じていました」

勇者「天使を見破ったのは僧侶さんだから、お礼なら僧侶さんに」

魔法使い「はい、ありがとうございます」

僧侶「私こそ、精霊魔法を使わないでいてくれて、本当にありがとう」





571:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 23:00:05 ID:LJqVxN96

魔法使い「……あれっ。私のツインテール、片方だけになっちゃってる。勇者さまが可愛いって、褒めてくれたのに……」ショボン

僧侶「あっ、ごめんね。天使を特定するために、それ以外に思いつかなくて……」

魔法使い「そっか……、勇者さまが守ってくれたんだ」

僧侶「うん、きっとそうだね」

魔法使い「あの、もう片方の髪を勇者さまに切ってもらってもいいですか?」

僧侶「魔法使いちゃんがそれで納得できるなら、それでもいいよ」





572:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 23:04:21 ID:LJqVxN96

魔法使い「じゃあ、この僧侶さんのナイフでお願いします」

勇者「分かった。じゃあ切るよ」

パサッ・・・

魔法使い「ショートボブになりました。似合いますか?」

勇者「アクティブな印象で可愛いよ」

魔法使い「ふふっ、また勇者さまに褒められました♪」





573:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/18(月) 23:06:39 ID:LJqVxN96

魔法使い「それでは、賢者さんを探しに行きませんか?」

僧侶「そうだね」

勇者「天使が引き返して光が消えたけど、次の試練があると言っていた。精神感応の危険はなくなったけど、結界の中にいることは忘れないようにしよう」

僧侶・魔法使い「はいっ」





576:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 19:09:12 ID:rKhMjef.


魔法使い「この部屋から魔力を感じますね」

僧侶「入ってみましょうか」

勇者「そうだな」


バタンッ・・・。

扉を開けてすぐ、異様な光景が目に飛び込んできた。


僧侶「!!」

魔法使い「ああっ、むごい……」





577:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 19:13:45 ID:rKhMjef.

裸の男性二人の遺体が、四肢と胴体を八つ裂きにされて床に転がっていた。
流れ出た血液が固まり、こぼれ出た内臓がぐちゃぐちゃに潰されている。
切断された男性器が奇妙に膨らみ、何だか気味が悪い。

異臭と嫌悪感で、吐き気が込み上げてくる。





578:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 19:15:46 ID:rKhMjef.

そしてベッドの上には、全裸の女性の遺体があった。
脚を広げ、臀部だけにされた殿方と繋がっている。

さらに何ヶ所も刺された痕があり、喉元にはナイフが突き立てられたままになっていた。
抵抗する彼女を魔力が尽きるまで、執拗に刺し続けたのだろう。
シーツは赤黒く染まり、張りがあっただろう皮膚も網状に変色していた。

死に逝く中、賢者さんは何を思っていたのだろう。
二人を殺した魔女さんを、誰が責めることが出来るだろう。

混沌とした恐怖をまざまざと感じさせられる。





579:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 19:19:13 ID:rKhMjef.

僧侶「腐敗が進んでますね……。魔法使いちゃん、大丈夫?」

魔法使い「うぅっ、だ……大丈夫です」

勇者「僕たちでもつらいんだ。無理はしなくていいからね」

魔法使い「はい……」

勇者「ここにも神の遺産があるな」

僧侶「迷路とペグ・ソリティアですね。この迷路、少し形が違いますよ」

勇者「僕たちとは違うパズルということか」

僧侶「そうみたいですね。迷路の答えは『Lust』。七つの大罪の一つで『色欲』です」





580:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 19:40:27 ID:qZlh4m4U

他の大罪だとどうなんだろうか





581:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 19:41:21 ID:rKhMjef.

勇者「色欲か……」

僧侶「精神感応の影響があったとはいえ、ここで何が起きたのか想像すると恐ろしいです」

勇者「そう……だな」

僧侶「賢者さんへの仕打ちは、あまりにも惨いです。それに、魔女さんがしたことも……」

魔法使い「殿方は女性と交わるために、ここまで残酷になれるのですね」

勇者「それは、一部の人だけだから」

魔法使い「分かっています。でも人は、ここまで残忍になれるのですね……」

僧侶「私たちも、ついさっき経験した通りだよ」





582:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 19:49:53 ID:rKhMjef.

魔法使い「そう……ですよね。命は一つしかない大切なものなのに、とても悲しいです」

僧侶「だからこそ、命の尊さを理解しないといけないの。私も魔法使いちゃんも、今以上に――」

魔法使い「……はい。あのっ、賢者さんのお墓を作ってあげたいです。殿方と一緒なのはあんまりなので、丘があればそちらに」

僧侶「そうだね。賢者さんの魂が安らかに眠れるよう、改めて祈りましょう。そのナイフは、遺品として預かっておきますか?」

魔法使い「はい、そうします。風精霊さん……、近くの丘までお願いします」





583:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 20:18:33 ID:rKhMjef.


〜極南の村・丘〜 
魔法使い「……土精霊! これで良しっ」

僧侶「賢者さんの魂が安らかに眠れるよう、ご冥福をお祈りします」

魔法使い「ご冥福をお祈りします」

勇者「あの……」

僧侶「何ですか?」

勇者「こういう結果になってしまったから女性には言いづらいんだけど、バトマスたちはどうしようか。あいつらは友人だから、最低限、弔ってやりたいんだ」





584:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 20:22:03 ID:rKhMjef.

僧侶「……そうですね」

勇者「それにあの建物には、まだ多くの遺体があると思う。出来れば彼らも……」

魔法使い「いくら何でも、あの建物にいる全員となると、私の魔力では困難です」

勇者「やっぱり無理か……。実は気になることがあるんだ」

僧侶「気になることですか?」

勇者「魔女さんがここに来たのは、十日ほど前だろ。建物を管理する天使がいるのに、遺体が放置されているのはおかしいと思わないか?」





585:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 20:36:18 ID:rKhMjef.

僧侶「言われてみれば、気になりますね」

勇者「恐らく仲間同士で殺し合わせるために、そのまま放置されているんだ」

僧侶「遺体と殺し合うのですか?!」

勇者「砂漠にいた時、生きる屍を作り出していただろ。それと同じで、死んだ仲間と向き合って、どのように乗り越えるか試すつもりなんだと思う」

僧侶「私たちは第一陣だから、遺体ではなくて魔法使いちゃんが操られたわけですね」

勇者「そう考えると、やっぱり放っておけないだろ。何か手はないかな……」





586:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 20:54:09 ID:rKhMjef.

??「おやおや、素敵な相談をしているようだね」

勇者「!! お前は、いつぞやの天使!」

天使「やあ、久しぶり。まさか精神支配を突破するとは思わなかったよ」

勇者「僕たちの絆は、簡単には壊せない!」

天使「それは良いことだ。魔法使いちゃんも、しっかり頑張っているようだね」

魔法使い「は、はいっ」





587:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 20:56:06 ID:rKhMjef.

勇者「そんなことより、お前が次の相手なのか?」

天使「物騒だねえ。敵対するつもりはないから、剣を納めなよ」

勇者「では、何が目的だ!」

天使「キミたちは、あの建物をどうするって?」

魔法使い「亡くなった方を弔いたいのですが、私では魔力が足りないのです」

天使「なるほど、それは困ったね。じゃあ、弔ってあげるよ」

魔法使い「えっ、本当ですか」

天使「もう必要ないからね。隕石召喚、土精霊!」





588:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 21:43:13 ID:rKhMjef.

まばゆい光を放ちながら、巨大な岩石が降ってきた。
頭の上を通り過ぎて、村に落下する。


ズドオオオォォンッ!


建物に直撃し、強烈な空震が発生して周囲を吹き飛ばす。

やがて衝撃が治まると、村がきれいに無くなっていた。


天使「整地完了! こんな感じでどうだい?」





589:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 22:02:24 ID:rKhMjef.

僧侶「な、何てことを……。あの建物には、たくさんの亡くなった方々が――」

天使「手伝ってあげたのに、ひどい言い草だね」

僧侶「ひどいって、村が一つなくなったのですよ!」

天使「天使の恩寵があって、今頃は喜んでいる頃だと思うけどなあ。どうせ人間は、適当に埋葬するだけだろ」

勇者「結界内だし、そうなるかもしれないな……。天使が弔ったわけだし、これでみんなの魂が安らかに眠れることを祈るばかりだよ」





590:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 22:03:38 ID:rKhMjef.

僧侶「そう……ですね。相談したのは私たちですし、あなたに感謝します。皆さんの魂が、安らかに眠れますように」

魔法使い「安らかに眠れますように……」

天使「僕たちとしても残念だよ」

魔法使い「天使さん、ありがとうございました。魔法の使い方も勉強になりました」

天使「土精霊でこれくらい出来るようにならないと、人間の域は超えられないよ」

魔法使い「はいっ!」





591:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 22:30:05 ID:rKhMjef.

10
勇者「ところで、神の使いに聞きたいことがある」

天使「手短に頼むよ」

勇者「天使の恩寵と言うが、もともとは女神が殺した者たちだろ。この闇は、女神が作り出しているんじゃないのか?」

天使「ははっ、驚きの推理だね。女神さまが闇を作り出しているなら、人間に加護を与える必要なんてないじゃないか」

勇者「それは罪を裁いて、人を試すためだろ」





592:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 22:33:13 ID:rKhMjef.

天使「この間のメッセージは、受け取ってくれたかい?」

勇者「世界への侵入者を排除してほしい、という意味で良いのか?」

天使「その表現が正しいとは思えないけど、そう思ってくれても差し支えない」

天使「キミたちには、この闇を取り払ってほしい。それが、女神さまから加護を受けた者たちの役目だ」

勇者「闇を取り払う?! じゃあ、女神が闇を作っている訳ではなかったのか」

天使「無礼にも程があるよ。そのために、生きる価値があることを期限までに示してほしい」





593:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 22:40:01 ID:rKhMjef.

勇者「生きる価値?」

天使「ああ、そうだ。犠牲になった命を無価値なものにしないために、それらを未来に繋げてほしい」

魔法使い「分かりました!」

勇者「そうだな……。当初の目的通りか」

僧侶「ところで期限とは、ハノイの塔のことですか?」

天使「そう、もうすぐハノイが完成する。対象が仕掛けた精神支配を乗り越えたキミたちなら、それが出来ると信じているよ」

僧侶「やるしかないみたいですね……」

天使「僧侶さん、闇に打ち勝てたキミに我々からのプレゼントだ」





594:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 22:42:47 ID:rKhMjef.

僧侶「これは……?」

天使「正十二面体は宇宙を表している。これは、その広大な宇宙を模したパズルだよ」

僧侶「これが宇宙なんですか?!」

天使「面が回転するものは特に難しいけど、すべての色を揃えてほしい。気分転換にでも、気軽に遊んでくれたまえ」

僧侶「ありがとうございます!」

魔法使い「いいなぁ。バラバラの状態も、カラフルできれいなパズルですね」

僧侶「対角線が星型で、デザインが良いよね。ここを回して揃えていくみたいだよ」

魔法使い「どの面も回るんだ。これは難しそうですね」





595:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 22:57:14 ID:rKhMjef.

天使「魔法使いちゃん」

魔法使い「はいっ」

天使「キミには、僕の羽根をあげよう。祝福された未来が訪れ、天使の恩寵があるように」

魔法使い「わわっ、天使の羽根だなんて……。絶対に大切にします!」

天使「まあ、僕の翼を吹き飛ばしてくれたこともあったけどねぇ」

魔法使い「それはその……ごめんなさい」アセアセ

天使「いいよ、楽しかったから。キミたちが闇を取り払ってくれること、期待しているよ」

魔法使い「はいっ、頑張ります!」





596:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 23:10:56 ID:rKhMjef.

勇者「で、僕には?」

天使「えっ? ないよ」

勇者「ま、マジか! 攻略アイテムとか、そういうものは……」

天使「女神さまの加護があるのに、天使に出来ることなんて何もないだろ。それくらい、察してほしいんだけどなぁ」

勇者「すみません……」

魔法使い「勇者さまには僧侶さんがいるし、私もいます。それで良いじゃないですか」

僧侶「そうですよ、勇者さま。私たちがいるじゃないですか」

勇者「ああ、そうだったな。二人が居てくれたら心強いよ」

僧侶「もちろんです//」

勇者「それじゃあ、僕たちの最後の目的地、極南の地に向かおうか」

僧侶・魔法使い「はいっ、勇者さま!」





597:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/19(火) 23:14:21 ID:rKhMjef.

第9話 おわり

・迷路
・ソリティア

・論理パズル

・正十二面体パズル





599:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/20(水) 00:01:16 ID:zCrPW77c


エグかったわ~





600:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/20(水) 06:04:48 ID:upD7WTwY

ああいうショッキングな光景を書けるのがうらやましいというかなんと言うか
とにかく乙
続きも楽しみにしてる





601:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/20(水) 21:19:44 ID:2TBePBMs

第10話 終末のパズル

〜極北の地〜
調査団A「よし、結界に入るぞ!」

調査団B「あ、あぁ。この光の世界にあるのは、希望なのか絶望なのか……」

調査団A「そりゃあ、光だから希望だろうよ」

調査団B「そうだな」

魔道師C「ま、待て! この結界を越えるな!」





602:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/20(水) 21:23:39 ID:2TBePBMs

調査団A「ぐああぁぁぁぁぁっっ!!」

調査団B「足が、脚があっ!」

魔道師D「治癒魔法!」

魔道師C「な、何という莫大なエネルギーなんだ。これは光属性の攻撃魔法だ!」

調査団B「ぜぇぜぇ……。攻撃魔法だって?! こんなに巨大なものが放たれると、世界はどうなるんだ」

魔道師C「分からない。だから結界が必要なのかもしれない」

魔道師D「極南が闇に覆われている理由は、もしやこの魔法のためなのか……」





603:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/20(水) 22:06:55 ID:2TBePBMs


〜極南の地〜
魔法使い「これが魔女さんが見たハノイの塔ですね」

僧侶「うわぁ、本当にハノイの塔の原典だよ! こっそり持って帰りたいです!」

勇者「いやいや、無理だから。二枚あった結界には入れたけど、この結界のせいで触れないし」

僧侶「でも支柱はダイヤで、円盤は純金なんですよ。ものすごく価値が高い代物です」

魔法使い「僧侶さん、とりあえず今は残り時間を計りましょうよ」

僧侶「はぁ、そうだね」





604:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/20(水) 22:14:16 ID:2TBePBMs

勇者「でもどうやって時間を計るの?」

魔法使い「ハノイの塔は、その最小手順をメルセンヌ数で表すことが出来ます」

勇者「メルセンヌ数?」

魔法使い「メルセンヌ数は『2のn乗−1』で表せる数のことで、例えば3枚ならば『7』になります」

勇者「ふうん……」

魔法使い「ハノイの塔は64枚だから、メルセンヌ数は約1844京6744兆です。一枚一秒で動いているので、完成まで約5845億年かかることになります」

勇者「5845億年?! 気が遠くなるな……」

魔法使い「それが終末までの時間なので、まだまだ余裕があると思いますよ」





605:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/20(水) 22:29:47 ID:2TBePBMs

魔法使い「では、移動が終わっている枚数を数えませんか?」

勇者「一枚、二枚、三枚……」

魔法使い「揃っている枚数は、48枚ですね」

勇者「そうだね、48枚だ。つまり、残りは16枚か」

魔法使い「16枚で計算すると、最小手順は、えっと……65535手になります」





606:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/20(水) 22:36:49 ID:2TBePBMs

勇者「もう万単位なんだ。というか、計算早いなぁ」

魔法使い「暗算は得意です♪ えっと、一時間は3600秒だから、残り時間は約18時間ですね」

僧侶「魔法使いちゃん、もう手数が進んでいるし、半日の猶予しかないと思ったほうがいいんじゃない?」

魔法使い「じゃあ、世界の終末まで、あと半日です」

僧侶「つまり、秋分点を通過したときに、ハノイの塔が完成して終末を迎えるのね」

魔法使い「えっ?!」

勇者「えっ……」





607:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/20(水) 22:41:51 ID:2TBePBMs

魔法使い「きょ、今日が世界の終末なの!?」

僧侶「もうすぐ完成するって聞いてたけど、本当にもうすぐじゃないですか!」アセアセ

勇者「闇を取り払うって、どうすればいいんだよ」

魔法使い「勇者さま、あそこを見てください。何だか、空がキラキラしていませんか?」

勇者「確かに」

僧侶「時間がありませんし、行ってみましょう。そこに光があるなら、私たちは行かなければなりません」

勇者「そうだな。二人ともこれが最後の戦いだ。心してかかろう!」

僧侶・魔法使い「はいっ!」





608:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 19:12:02 ID:KzVkae5Q


勇者「何だろう、この天まで届きそうな塔は……」

魔法使い「このてっぺんから、キラキラした光が出ているように見えますよね」

僧侶「もしかして、勇者さまが言っていたアレじゃないですか?」

勇者「極北の地に、光が集められているかもしれないって話か」

僧侶「はい。この建造物に白夜の光が集められていて、極北に送られているのではないでしょうか」

勇者「ということは、これを破壊すれば闇を取り払うことが出来るという訳か」

僧侶「確証はありませんが、そうだと思います」





609:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 19:28:19 ID:KzVkae5Q

勇者「じゃあ、世界の終末が迫っているし、とりあえず倒してみよう」

魔法使い「分かりました。爆発魔法!!」


ドオォォォンッ!


魔法使い「少し穴が開いたくらいでは、びくともしないですね……」

勇者「やっぱり、柱があるから無理だな」





610:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 19:37:30 ID:KzVkae5Q

魔法使い「ところで、この柱は何で出来ているのでしょうか?」

僧侶「見たことがない素材だね」

勇者「金属なら、僧侶さんの魔法で壊せるだろ」

僧侶「私はあくまでも、拘束具を破壊することが目的だから……。こんなに巨大な建造物だと、私では無理です」

勇者「そうか……」





611:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 20:20:24 ID:KzVkae5Q

魔法使い「勇者さま、この中に入ってみますか?」

僧侶「入って大丈夫なのかな。これは兵器かもしれないですよ」

魔法使い「そっか……。じゃあ、何としてでも倒したいですね」


魔法使いちゃんがそう言ったとき、
一面が眩しい光に包まれた。


勇者「な、なんだ?!」





612:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 20:22:12 ID:KzVkae5Q

??「よく来たな、女神に選ばれし人間よ」

勇者「!! お前が世界への侵入者か」

??「侵入者だと? 我はこの世界の造物主だ。世界を創造し、生命を誕生させたもの。この世界の理を統べるものだ」

勇者「造物主……、まさか神なのか?!」

造物主「いかにも」

僧侶「じゃあ、天使のメッセージの本当の意味は――」





613:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 20:25:21 ID:KzVkae5Q

以前、天使から受け取ったメッセージは、ポリオミノ系のパズルだった。
ポリオミノにとって、枠は世界を表している。

そして、神の遺産であるペントミノは、
『神様は世界を破壊して創りかえることが出来る』ことを示すパズルでもある。

つまり、天使のメッセージは、世界への侵入者の排除を依頼するものではなかった。
神様が世界に干渉していることを示し、干渉前の状態に戻すことを依頼するものだったのだ。





614:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 21:57:46 ID:KzVkae5Q

魔法使い「か、神様がどうしてこんなことを……」

造物主「人間よ、この世界は美しいか?」

勇者「う、美しい?」

造物主「そうだ。人間は同族で争い、同じ過ちを繰り返す。見かねた我々が罰を与えたが、それでも人の心は変わらなかった」

造物主「国と国が争い、人と人とが殺しあう。あまつさえ、少人数で編成された部隊の仲間すら信頼できず、人は殺しあうのだ。お前たちのように」

魔法使い「それは……」





615:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 22:02:50 ID:KzVkae5Q

造物主「そんな人間の世界が、美しいと言えるのか!」

勇者「美しいに決まっている。もし美しくないと言うのなら、そのような世界を創造した神様の責任だ」

魔法使い「勇者さま、その一言は……」

造物主「そうだな。それもまた、真実であろう。罪を赦された者よ、お前たちに世界を見せてやろう」


その言葉と同時、五種類の正多面体が出現した。





616:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 22:50:24 ID:KzVkae5Q

造物主「プラトンの立体、これが世界だ」

魔法使い「これらが、世界そのものなんですか?」

造物主「正四面体は『火』、正六面体は『土』、正八面体は『風』、正二十面体は『水』。それぞれが四大元素を象徴し、世界を充たしている」

造物主「そして、正十二面体が第五元素『エーテル』。これが宇宙を形成して、世界の基盤となっているのだ」

魔法使い「それが世界なんですね」

勇者「でもそれが、さっきの話とどう繋がるんだ」





617:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 22:52:23 ID:KzVkae5Q

造物主「それでは、正六面体のキューブを使おうか。この調和が取れた大地は、人間を作ったことで醜く変化し始めた」


正六面体はルービックキューブのように分割されていて、それぞれの面が回転を始めた。
色が混ざり、バラバラになっていく。


造物主「人間は争い、殺しあう。その度に、世界が汚染されていく。世界の調和を図ったが、それでもバラバラになる」

造物主「どうすれば世界を揃えることが出来る。調和を取ることが出来るのだ」

造物主「女神に選ばれた者よ、このキューブを戻してみせよ」

勇者(天使が言っていたのは、生きる価値があることを示すこと。神を倒すことではない。今はこのパズルを解くしかないのか)





618:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 22:59:59 ID:KzVkae5Q

勇者「僧侶さんは、こういうパズルが得意だよね」

僧侶「神様直々のパズルです。ぜひ、挑戦させてください」


カシャカシャ……


僧侶「うぅん。一面揃えるのは出来たけど、二段目を揃えようとするとバラバラになっちゃいますね……」

造物主「このように、調和を乱すのは簡単だ。しかし一度乱れてしまえば、それを戻すことは容易ではない――」





619:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 23:01:47 ID:KzVkae5Q

魔法使い「僧侶さん、上段を回転させてこうすれば、このキューブが二段目に移動しますよ」

僧侶「あっ、ほんとだ。これを四回繰り返せば、二段目も完成しそうだね」


カシャカシャ……


僧侶「よしっ、出来たぁ! あと一段!!」





620:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 23:16:01 ID:KzVkae5Q

僧侶「……だめだぁ」カシャカシャ

魔法使い「まったく分からないですね……」

勇者「どこをどのように動かしたか、メモすれば良いんじゃない?」

僧侶「そうですね。メモをしながら、試行錯誤してみます」

造物主「どうだ、戻せぬであろう。揃ったように見えても、結局は乱雑になり、世界の秩序を破壊する」

僧侶「……」

造物主「それがお前たち人間なのだ。我々が過去二回、人類のあり方を見直す機会を与えたが、それも結局は――」

僧侶「すみません、静かにしてください。うるさいです」カシャカシャ

造物主「ぐぬぬ……」





621:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 23:42:53 ID:KzVkae5Q

魔法使い「僧侶さん、このパターンはどうでしょうか?」

僧侶「それいいね。角を三ヶ所、入れ替えながら向きを替えられるんだ。ということは、十字架を作れば良いんだね」


カシャカシャ……


僧侶「よしっ、あとは側面を入れ替えるだけだ!」

勇者「ここを半回転させて、上を回してみたらどうなるだろ」

僧侶「それだと、揃えた場所がバラバラになってしまいます。いや、こうすれば反対側と辻褄を合わせられるから――」





622:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/21(木) 23:43:50 ID:KzVkae5Q

魔法使い「!! 僧侶さん、さっきの所を逆に回してみてください」

僧侶「あっ、揃った! やったね、魔法使いちゃん!」

魔法使い「はいっ! 面白いパズルでしたね」

僧侶「そうだよね。つい時間を忘れちゃったよ」

勇者「神よ、パズルを揃えたぞ!」





623:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/22(金) 21:05:05 ID:46PFJEYg

造物主「そ、揃えただと?!」

勇者「例え神様が不可能だと言っても、僕たち人間は協力して困難を乗り越えることが出来るんだ!」

造物主「そしてまた、同じことを繰り返すのであろう。お前たち人間は、秩序を保つことが出来ない」

僧侶「そんなことはありません」

造物主「戦争の歴史が、それを物語っておる。そのキューブパズルを揃えても、容易にバラバラになるであろう」

僧侶「バラバラになっても、また揃えれば良いんです!」

造物主「その度に精霊たちが傷付き、世界が破壊されていると、なぜ分からんのだ」

僧侶「それは……」

造物主「世界の秩序を乱さない方法が、一つだけある。今から、それを教えてやろう」





624:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/22(金) 21:11:15 ID:46PFJEYg

僧侶「……!!」


正六面体、六色のキューブパズル。
その表面が闇に包まれ、黒一色になった。


造物主「こうすれば、どんなに回転しても秩序が乱れることはない。どんなに回しても、黒なのだからな。そう思わんか?」

勇者「それはまさか、世界中の人類を滅ぼすということか!」

僧侶「そんなの間違っています!」

造物主「乱れることのない秩序。精霊たちが傷付く事のない世界こそ、美しい世界のあり方だ!」





625:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/22(金) 21:48:54 ID:46PFJEYg

僧侶「神様、見てください。これは天使に貰った、正十二面体の立体パズルです」

僧侶「この形状は宇宙を表していますよね。見ての通り、まったく揃っていません。でも、すごく芸術的で美しいじゃないですか!」

僧侶「確かに、揃っているほうが美しいかもしれません。だけどパズルは、解く過程のすべてが美しいのです」

僧侶「人間もパズルと同じです。パズルを揃えて完成させることは、人で言えば死ぬことかもしれません。ならば、パズルを解く過程は生きることです」

僧侶「生きることは、それだけで素晴らしいことなんです!」





626:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/22(金) 22:02:49 ID:46PFJEYg

魔法使い「私はこの旅で、色んな経験をしました。僧侶さんには命の大切さを教えてもらい、勇者さまに会って恋と絆を知りました」

魔法使い「砂漠の都と港町では人々の生活に触れて、命を守ることや努力することを学びました。魔法医学を通じて、人体の神秘に触れることも出来ました」





627:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/22(金) 22:04:58 ID:46PFJEYg

魔法使い「でもそれだけではなくて、人の醜さも知りました。男女が交わることは、幸せなことばかりではないこと。嫉妬に狂い、己の欲望のために人を傷つけ殺せること。そして、どんな人でも残忍になれることを知りました」

魔法使い「確かに戦争の歴史があるように、人は愚かなのかもしれません」

魔法使い「だけど私たちはお互いを信じて絆を深め、精神感応を乗り越えました。世界中の人々も、目標のために協力しあっています」

魔法使い「人は努力して、成長していけるんです!」





628:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/22(金) 22:28:55 ID:46PFJEYg

勇者「極南の村の精神感応を、僕たちは乗り越えた。あれを仕掛けたのが神様ならば、僕たちの絆は神様でも壊せない! それでも、僕たち人間に生きる価値がないと言えるのか!」

造物主「さすが我の試練に耐え、ここまで来ただけはあるな」

造物主「調和の取れた世界には及ばぬが、それをも美しく見せて成長していこうとする人間がいる限り、まだまだ未来の可能性が残されているのかもしれんな」

勇者「そうだ! いくら神様とはいえ、成長の機会を一方的に奪うことは許されるのか」





629:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/22(金) 22:52:27 ID:46PFJEYg

造物主「我は二度、世界の調和を図った。それが、大洪水と魔族の投入だ」

魔法使い「大洪水と魔族?!」

造物主「大洪水で世界を初期化した後、人間は新技術によりバベルの塔を建造した。それは契約違反であり、我は罰として言語を多様化させた」

造物主「そして魔族の投入は、魔法という新技術を獲得した人間に対しての戒めだった。その戦いで人間は、ノアとその息子たちへの祝福を満たしつつ、言語を共通化することに成功した」

造物主「思い返せば、やはり人間は成長しているのかもしれないな」

魔法使い「そうです。人は努力し、成長しています! より良い世界を作るために、助け合っています!」

造物主「よし、分かった。お前たちにチャンスをやろう。ハノイの完成より早く、この世界の終焉を止めて見せよ」





630:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/22(金) 23:54:45 ID:46PFJEYg


勇者「世界の終焉を止める?」

造物主「あと数時間もすれば、極北に集められた光が極南へと撃ち放たれ、世界は終焉を迎えるであろう。すべての生命は絶え、そして新たな世界が創造される」

僧侶「そんな……。本当に世界を壊して、創りかえるだなんて――」

造物主「それが嫌なら、お前たちは制限時間内にパズルを解き、未来を獲得せよ」

僧侶「パズルとは、この建造物をどのように壊すかという事ですか?」

造物主「そうだ。この塔は二つの目的のために、遥か昔に建造されたバベルの塔を移転し改修したものだ」





631:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/22(金) 23:56:56 ID:46PFJEYg

僧侶「二つの目的?」

造物主「魔術で塔内に光を取り込み、収束させた地磁気に乗せて、極北まで飛ばすこと。そしてその光を再び誘導し、世界を貫くことが目的だ」

僧侶「つまり、この塔はトリック系のパズルなんですね」

魔法使い「トリック系か……」

造物主「では、このバベルの塔を破壊し、過去の罪を清算せよ」





632:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/23(土) 22:08:49 ID:GtdB5uHw

勇者「魔法使いちゃん、ハノイの塔の残り時間は?」

魔法使い「多分、5時間くらいです。少し前に見たときは、限りなく15段に近かったみたいですね」

勇者「あと5時間か……。土精霊で砂に変えるってのは、どうだろう?」

魔法使い「外壁を砂に変えても、柱があるので倒れないですよ」

勇者「じゃあ、極南の村で天使が見せてくれた、空から隕石が降ってくる魔法は?」

魔法使い「今の私では、とても難しいです。精緻に落とすためには、高度な技術と膨大な魔力が必要ですから」





633:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/23(土) 22:40:54 ID:GtdB5uHw

勇者「そうか……。僧侶さん、何とか柱を魔法で壊せないかな」

僧侶「未知の材料なので、壊すのは難しいです」

勇者「こんな太い柱は斬れないし、手詰まりか……」

僧侶「とりあえず、この塔の中がどうなっているのか調べましょう」

勇者「でも、この中に入るのは危険じゃないか?」

僧侶「中というか、私が調べるのは骨組みです」





634:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/23(土) 22:42:08 ID:GtdB5uHw

勇者「骨組み?」

僧侶「はい。トリック系のパズルは、内部構造を推量しなければ解けませんから」

勇者「外壁があるのに、そんなことが出来るの?」

僧侶「解毒魔法を応用すれば、調べるだけなら出来ると思います。それでは、ぐるっと一周してきます」

勇者「分かった。気をつけて行ってきてね」

僧侶「はいっ」トテトテ





635:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/23(土) 22:57:16 ID:GtdB5uHw

魔法使い「あっ、そうだ。神様に質問があります」

造物主「バベルの塔の壊し方なら教えんぞ」

魔法使い「いえ……。どうして、ハノイの塔を作ったのですか? 終末を前提として世界を創造したのですか?」

造物主「愚問だな。パズルは解くために創造するものであろう。人間も誕生すれば、明確な最期がある。この世界とて同じことだ」

魔法使い「それはそうかもしれませんが、何だか腑に落ちないのです」





636:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/23(土) 22:57:49 ID:GtdB5uHw

造物主「腑に落ちないだと?」

魔法使い「バベルの塔を破壊すれば、終末を止めることが出来るのですよね。だけど終末を止めると、ハノイの塔が完成しないという事になります」

造物主「それがどうした」

魔法使い「ハノイの塔が完成しないならば、『パズルは解くために創造するものだ』という発言が誤っていることになります」





637:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/23(土) 23:33:54 ID:GtdB5uHw

勇者「魔法使いちゃん、それはどういうことなんだ?」

魔法使い「つまり、この二つの塔はジレンマなのです」

勇者「ジレンマ?」

魔法使い「そうです。どちらか一方を解くと、もう一方のパズルを完成させることが出来ませんよね。それでは、パズルとして成立しません」

勇者「じゃあ、このバベルの塔は破壊することが出来ないということか……」

魔法使い「それは分かりません。恐らく、壊す方法は必ずあると思います」





638:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/23(土) 23:42:18 ID:GtdB5uHw

勇者「それで終末が止まるなら、別に良いじゃないか」

魔法使い「でも神様は、『パズルは解くために創造するものだ』と言いつつ、解くことが出来ないパズルを創造してしまいました。私は、それが気になります」

勇者「つまり、バベルの塔を壊しても終末が止まらない可能性もある訳か」

魔法使い「はい。本当に世界の理を統べることが出来るのなら、等しく解くことが出来るように作り直すべきなんです」





639:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 00:03:00 ID:XA4gwgFg

造物主「なるほど、このような形で切り崩しに来たか。実に面白い娘だ」

魔法使い「ハノイの塔に終末時計としての役割がなければ、パズルは成立します。それに、世界の破壊をやめてください」

造物主「どうやら、論拠があるようだな」

魔法使い「15パズルが示していたドーナツ世界と、ハノイの塔が示す世界の終末は矛盾しています」

造物主「矛盾しているだと?」

魔法使い「ドーナツ世界は形状を歪めることを示唆しているのであって、破壊を示唆するものではありません。両方のパズルが発動したとき、世界はどうなるのですか!」





640:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 00:17:28 ID:XA4gwgFg

造物主「15パズルなどは、すべて女神がヒントとしてばら撒いたものだ。したがって、実態と違っていたとしても、矛盾は発生しない」

魔法使い「ただのヒント?」

勇者「なるほど……。だから、魔力が込められていたのか。パズルが発見されやすいように」

造物主「ジレンマだろうが矛盾だろうが、バベルの塔を破壊しなければこの世界は終焉を迎える。娘よ、それが真実だ」

魔法使い「……分かりました」





641:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 00:23:05 ID:XA4gwgFg


僧侶「はぁはぁ……、ものすごく疲れたぁ」

勇者「僧侶さん、おかえり」

僧侶「ただいまです……」

魔法使い「僧侶さん、お帰りなさい。バベルの塔とハノイの塔のジレンマを追及してみたけど、取り付く島がなかったです……」

僧侶「そうなんだ。残念だったね」





642:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 00:23:51 ID:XA4gwgFg

勇者「それで、内部構造は分かったの?」

僧侶「高層階は分からないけど、土台周辺の構造なら何とか……。まず、この建造物は円筒形をしています。入り口はありませんでした」

魔法使い「トリック系のパズルなら、入り口がないのは想定内ですね」

僧侶「そうだね。骨組みは鉄柱が2本と、未知の素材の柱が等間隔に何本も立っていました。そして鉄柱を始点と終点にして、何本もの鉄材を繋いで、C字環が作られていました」

勇者「その骨組みを、外壁が固めているのか」

僧侶「はい。恐らく未知の素材の柱が、重要な魔道具なのだと思います」





643:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 00:25:52 ID:XA4gwgFg

勇者「巨大な魔道具か。それで、中の空間には何があるの?」

僧侶「さすがに、そこまでは……。でもこれがパズルである以上は、この情報の中に破壊する手がかりがあるはずです」

魔法使い「勇者さま、内部は空洞だと思います。少し穴を覗いてみたけど、キラキラした光が上っていくのが見えるだけでした」

僧侶「魔法使いちゃん、中は危ないって言ったでしょ。治癒魔法……」

魔法使い「ごめんなさい」

勇者「とりあえず、C字環の切れ目に行ってみよう。そこが攻略の糸口だと思う」

僧侶「そうですね」





644:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 19:51:44 ID:XA4gwgFg

・・・
・・・・・・


僧侶「ここです」

勇者「魔法使いちゃん、穴を開けて確かめてみて。爆発魔法は破片が飛び散るから、砂に変える方針で」

魔法使い「はい、土精霊召喚!」

勇者「本当に、切れ目になっているんだ」

魔法使い「そうみたいですね」

勇者「鉄柱が上まで続いているから、C字環が連なっているのかもしれない。問題は、どうやって土台を破壊するかだけど――」

魔法使い「あっ!!」

勇者「どうしたの?」

魔法使い「電撃魔法です!」





645:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 20:13:04 ID:XA4gwgFg

魔法使い「勇者さまは、電撃魔法を使えましたよね」

勇者「正確には、電撃をまとった魔法剣だけど」

魔法使い「その電撃魔法は、無理やり電流を流す魔法ですよねえ!」

勇者「それはそうだけど、それがどうかしたの?」

魔法使い「研究論文で読んだのですが、この状況ではフレミングの左手の法則が使えるんです!」





646:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 20:29:25 ID:XA4gwgFg

勇者「何、そのフレミングって?」

魔法使い「この塔の内部は光を極北に飛ばすために、磁界の向きが真上になっていますよね。そして、水平方向に設置されているC字環に電流を流すと、右ねじの法則で垂直方向に磁界の渦が発生します」

勇者「う、うん……」

魔法使い「すると、磁界の渦の方向によって、磁界が強まる場所と弱まる場所が出来ることになります」

勇者「そっか……、そうなるね」

魔法使い「その磁界の強弱がC字環に作用して、その力に押されて動くのです。それが、フレミングの左手の法則です」





647:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 20:39:41 ID:XA4gwgFg

勇者「なるほど……。それでバベルの塔を壊せるの?」

魔法使い「試す価値はあると思います。C字環に反時計回りの電流を流してやれば、外向きの力が働きます」

勇者「えっと……、その親指が外側を向いているから、塔を壊せるのか」

魔法使い「はい。C字環が外壁を壊して、すべて崩落するはずです」

勇者「そうなんだ。おおっ、おおぉぉっ!」

魔法使い「つまり、電撃魔法でバベルの塔を破壊できます!」





648:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 20:54:02 ID:XA4gwgFg

僧侶「でも問題は、勇者さまの魔力ですよね。この塔を破壊しようと思えば、それだけ大きな魔力が必要になります」

勇者「そうだよな……」

魔法使い「私のネックレスを使えば、魔力を補えます」

僧侶「だったら、私の装身具も使ってもらいましょう。蘇生魔法を宿したものが残っているので、生体エネルギーの強化に使ってください」

勇者「じゃあ、この魔道具を使って、全力で放てば良いのかな」

魔法使い「そうです。勇者さま、頑張ってください!」

僧侶「勇者さま……。私と勇者さまの幸せのために、魔法使いちゃんの未来のためにお願いします」

勇者「二人の気持ち、受け取ったよ。ありがとう。こっちの方向でいいんだよね」

魔法使い「はいっ!」





649:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 22:50:55 ID:XA4gwgFg

勇者「はあぁぁぁっ……、やってやる!」


蘇生魔法の装身具が崩れ、エメラルドが緑色に淡く輝いた。
全身が興奮して高ぶり、力がみなぎってくる。


勇者「神速・雷光剣っ!!」


刀身が光を纏い、小規模な放電を繰り返す。
そして激しい爆音とともに、電撃が鉄柱へと放たれた。





650:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 22:52:35 ID:XA4gwgFg

ドゴゴゴオオォォンッッ!!


鉄柱からC字環へと伝導し、電撃が塔全体を駆け巡る。
激しい電流が強力な磁界を発生させ、骨格が呻き声をあげた。

C字環の継ぎ目が外れ、強大な力が鉄材を押し飛ばす。
そして外壁を突き破り、崩落の連鎖反応が発生した。

眼前をC字環だった物が飛んでいく。
そして天高くから、無数の瓦礫が降ってきた。





651:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 23:15:36 ID:XA4gwgFg

魔法使い「土精霊、風精霊召喚!!」


降り注ぐ外壁と地面を変形させて、巨大な傘を作った。
その上に、次々と瓦礫が降り注ぐ。

傘に瓦礫が降り積もれば、その重みに耐えられないかもしれない。
だから砂に分解して、塔の中心へと風で吹き飛ばす。


ドスッ
一本の鉄材が、岩石の傘を貫いた。





652:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 23:20:58 ID:XA4gwgFg

魔法使い「きゃあっ!!」


ドスッドスッ
まるで雨のように、何本もの鉄材が降ってきた。
C字環が吹き飛んだことで、固定されていた鉄柱が外れたのだ。

どうしよう……。
こんなものが直撃すると、一溜まりもない。


僧侶「魔法使いちゃん、一緒に頑張りましょ! 防御魔法!」





653:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 23:31:13 ID:XA4gwgFg

僧侶さんが、防御魔法で傘を強化してくれた。
降り注ぐ鉄柱を受け止め、その鉄柱でさらに傘を強化する。
しかし、降り積もる瓦礫に耐え切れず、ひびが入り始めた。


魔法使い「だめっ、もう魔力が足りない……」

勇者「大丈夫だよ」


エメラルドのネックレスを、首に掛けてもらった。
これで魔力を補うことが出来る。


魔法使い「勇者さま、ありがとうございます。土精霊!」


土精霊の使役を強め、傘の補修を行う。
それに呼応して、ネックレスが淡く輝き、魔力を放つ。
しかし限界を超えたせいか、エメラルドが割れてしまった。





654:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 23:39:38 ID:XA4gwgFg

魔法使い「ああっ、エメラルドが……」

勇者「魔法使いちゃん、傘が崩落しないように柱を! それと、出口の確保」

魔法使い「そ、そんな余力は! えっと……」


水精霊の装身具を解放し、凍結魔法を発動させた。
大気中の水分が凍結し、何本もの氷の柱が傘を支える。

さらに、火精霊と風精霊の装身具も解放した。
爆発魔法が発動し、積もった瓦礫を吹き飛ばす。
そして、この出口を塞がれないように、突風を巻き起こした。





655:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 23:47:00 ID:XA4gwgFg

僧侶さんも私も、すべての魔道具と装身具を使い切った。
もう私たちには余力がない。


魔法使い「お願い! 早く終わって!!」


風が吹き荒れる音が弱くなってきた。
それと同時、降り積もる瓦礫の音が大きくなる。
土精霊の分解も追いついていない。


僧侶「魔法使いちゃん、もう少し! もう少しだから」

魔法使い「はいっ……」


傘を支える圧力で、氷柱が溶け始めている。
もう傘の崩落が近い。

やがて、
すべての音が聞こえなくなった。





656:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 23:58:57 ID:XA4gwgFg

魔法使い「音がやんだ?」

勇者「どうやら、崩落が終わったみたいだな」

僧侶「やった……、やりましたね!」

魔法使い「勇者さま、バベルの塔を破壊しましたっ!!」

勇者「よしっ!! 二人とも、よく頑張ったね」

僧侶・魔法使い「はいっ!!」


みんなで手を取り合えば、出来ないことはない。
一人では不可能なことも、手を取り合えば成し遂げることが出来るのだ!

バベルの塔の崩落が終わったとき、瓦礫の山には一本の道が出来ていた。





657:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/25(月) 22:03:54 ID:TiILGySs


〜極北の地〜
調査団A「お、おいっ。結界の様子がおかしいぞ」

魔道師D「ひ、光が空に昇っていく」

調査団B「いよいよ、地に放たれるということか……」

魔道師C「いや、違う。エネルギーが拡散している」


ピカッッ……
ドオォォォン!!


魔道師D「伏せろぉぉっ!!」





658:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/25(月) 22:05:17 ID:TiILGySs

・・・
・・・・・・


調査団B「いててて、何が起こったんだ」

魔道師D「全体回復魔法!」

調査団A「光が……、結界が消えたぞ」

魔道師C「もしかして、極南で魔王を倒したのか?」

調査団A「そうだと良いがな。内部調査を行い、城に戻ろう」

BCD「了解っ!」





659:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/25(月) 22:18:33 ID:TiILGySs


〜極南の地〜
??「勇者よ、お見事です」

勇者「あなたは?」

女神「私は女神です。仲間と力を合わせ、よくぞ神が定めし終焉を打ち破ってくれました。とても感謝しています」

勇者「……はい。女神さまよりそのような言葉をいただけるとは、身に余る光栄です」

女神「あなたたち二人も、よく頑張ってくれました。改めて、人間の強さを知ることが出来ました」

僧侶・魔法使い「は、はいっ」





660:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/25(月) 22:24:33 ID:TiILGySs

造物主「女神よ、人間はお前の言う通り、愚かなだけの生物ではなかった。力を合わせ、常に成長している」

女神「主よ、やっと分かってくれましたね」

造物主「そうだな。このような者がいれば、人間は世界の秩序を保ち、前に進むことが出来るだろう」

女神「では、終焉を破棄されるのですね」

造物主「そう伝令しろ。この者たちは、我の試練を乗り越えたのだからな」





661:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/25(月) 22:35:30 ID:TiILGySs

魔法使い「あの……、まだ終わっていません」

造物主「終わっていないだと?」

魔法使い「はいっ。ハノイの塔を完成させなければなりません」

造物主「それはもう良い。終焉への刻は止まったのだ」

魔法使い「いいえ、神様はおっしゃいました」

『パズルは解くために創造するものだ』、と――。

魔法使い「だから、解くことが出来ないパズルを存在させるわけにはいきません」





662:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/25(月) 22:39:10 ID:TiILGySs

僧侶「そうだね。約5845億年もの歳月を重ねて、ようやく完成が見えているんです。解いてあげましょう!」

勇者「おいおい、待てよ。ハノイの塔は終末時計なんだろ。それをもう一度動かしたら、どんな危険があるか分からないじゃないか」

魔法使い「だからこそ、完成させなければならないのです」

勇者「神様がいいと言ってるんだ、その必要はないんじゃないか?」

魔法使い「次に神様がハノイの塔を動かしたとき、残り時間はもう僅かしかありませんよね。そのとき、人々はどうしたら良いのですか?」

勇者「くっ……、そうだな。今、解かなければならないのか」





663:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/25(月) 22:54:26 ID:TiILGySs

造物主「面白い、やってみせよ。ハノイの塔が完成したとき、世界は砕け終焉を迎えるであろう」

女神「ちょ、ちょっと! そんなこと、勝手に決めないでくださいよ!」

造物主「女神よ、お前はお前が選んだ者を信じることが出来ぬのか?」

女神「それは……」

造物主「ならば、問題なかろう」

女神「……承知いたしました」





664:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/25(月) 22:55:36 ID:TiILGySs

勇者「とりあえず、残り時間を調べよう。ハノイの塔は、自動で解かれているしな」

魔法使い「残り枚数は、あと12段。つまり、終末まで一時間ちょっとです」

勇者「あと一時間か。二人のこと、信じているから」

僧侶「はい、任せてください!」

魔法使い「頑張ります!」





665:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/25(月) 23:08:52 ID:TiILGySs

魔法使い「神様。ハノイの塔が完成すれば、世界が終焉を迎えるんですよね」

造物主「それが、そのパズルの特性だ」

魔法使い「では、私からのお願いです。プラトンの立体を、すべて出してください。五つで世界になるのですよね?」

造物主「そうだ。必要だというならば、用意してやろう」

魔法使い「ありがとうございます」

僧侶「次は、私からのお願いです。本当に世界の理を統べることが出来るのならば、私たちにそれを証明してください」

造物主「証明してほしいだと?」

僧侶「この世界が滅びると、私たちは真実を確認することが出来ません。ハノイの塔で世界が終焉を迎えるならば、その仮想世界を壊してみせてください」





666:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/25(月) 23:13:10 ID:TiILGySs

造物主「それが、バベルの塔とハノイの塔のジレンマに対する答えか」

魔法使い「はい。それ以外に、両方のパズルを解く方法はありません」

造物主「この世界が破壊の運命から免れるために、別の世界を犠牲にするわけだな」

僧侶「命は命で繋がっています。その正多面体が犠牲だというなら、私たちはそれを無価値なものにするつもりはありません」

魔法使い「そうです。私はこの世界を、絶対に価値あるものにしてみせます!」

造物主「その言葉に偽りはないな。それでは証明してみせよう。我が世界を統べることが出来ることを――」





667:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/25(月) 23:24:56 ID:TiILGySs

ハノイの塔の結界内に、五種類のプラトンの立体が配置された。
火土風水と宇宙。
仮想世界に囲まれ、ハノイの円盤が時を刻む。

カタカタカタ……。

一枚。
そして、また一枚。
終末へのカウントが刻まれていく。





668:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/25(月) 23:42:55 ID:TiILGySs

そして一時間後、
ハノイの塔が完成して、仮想世界が砕け散った。

魔力が解放されて、闇に消えていく。
その魔力に、私は愕然とした。

この立体は、ただの模型ではなかったの?!
本当に、これが世界だったの?

たった今、
私は世界を滅ぼしたのだ――。





669:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/26(火) 18:10:56 ID:daNnlRAU


造物主「女神に選ばれし者よ、よくやり遂げた。ハノイを動かすという傲慢な選択も、転じれば勇気ある選択か」

魔法使い「あの……。さっきの立体は、まさか本当に……」

造物主「娘よ、我が模型だと言えば安心するのか?」

魔法使い「それは……」





670:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/26(火) 18:16:20 ID:daNnlRAU

造物主「お前は誓ったはずだ。この世界を価値あるものにする、と」

魔法使い「……はい」

造物主「ならば、その覚悟と決意を我に魅せてくれないか。一つの世界を犠牲にしてまで得た、お前たちの未来を」

魔法使い「!! は、はいっ!」

造物主「それでは、我は再び静観しよう。お前たち人間が導き出す、この世界の答え。見届けさせてもらうぞ」


その言葉と同時、一帯が光に包まれた。
その光が消えたときには、神様がいなくなっていた。





671:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/26(火) 18:40:28 ID:daNnlRAU

勇者「お疲れさま。よくやったよ、二人とも」

僧侶「終わりましたね。もうヘトヘトです」

魔法使い「……、勇者さま」

勇者「魔法使いちゃん?」

魔法使い「私はハノイの塔を完成させて、世界を一つ滅ぼしてしまいました。だから私は、より良い未来を築くために頑張りたいです」

勇者「そうだね。でも、一人で背負う必要はないからね。みんなで協力しないと、出来ないことだから」

僧侶「魔法使いちゃん。これからも、私たちと一緒に頑張ろうね」

魔法使い「はいっ。勇者さま、僧侶さん、これからもお願いします!」





672:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/26(火) 18:53:48 ID:daNnlRAU

僧侶「それじゃあ、魔法使いちゃん。帰りに、賢者さんのお墓に報告しましょうか」

魔法使い「はい、もちろんです。賢者さんや亡くなった方に報告をしたいです」

女神「そのことについて、私は謝罪しなければなりません。村の方々のみならず、数多の者が私の加護を受け、犠牲になってしまいました。本当に申し訳ないと思っています」

勇者「それは……」

女神「先日、極南の村にて弔ったと報告を受けました。来世では、彼らに祝福があることでしょう」
女神「それをもって、謝罪に代えさせてもらいたいと思います」

僧侶「そう……なんですね」

魔法使い「良かったです」





673:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/26(火) 19:26:02 ID:daNnlRAU

女神「あなたたちが困難を乗り越え、成し遂げてくれたことに心から敬意を表します」

女神「その来たる人生に、女神の祝福があることを約束しましょう。正しき道を歩み、前に進みなさい」

勇者「身に余る光栄です、ありがとうございます!」

僧侶「ありがとうございます」

魔法使い「女神さま、私をここまで導いてくれてありがとうございました」

女神「それでは、あなたたちに祝福された未来を――」


温かく優しい光に包まれる。
その光が消えると、女神さまがいなくなっていた。


勇者「僕たちも帰ろうか。魔女さんが待ってるし、報告すべきことが山ほどある」

僧侶・魔法使い「はいっ、勇者さまっ!」





674:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/26(火) 19:28:01 ID:daNnlRAU

第10話 おわり

(プラトンの立体)
・キューブパズル

(構造推測系パズル)
・バベルの塔

・ハノイの塔





675:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/26(火) 19:38:45 ID:daNnlRAU

今回はここまでです。

最終決戦なので、パズルSSの本領を発揮しました!
熱いバトルを期待していた方は、すみませんでした。


パズルネタは、プラトンの立体。
四大元素と宇宙を象徴しているので、勇者SSにぴったりな立体パズルです。

土属性の正六面体パズル『ルービックキューブ』は、絶対に外せないネタですね。(笑)

ちなみに、
正二十面体パズル『Eitan's Star』は、なんと1万円の高級品です。


という訳で、
次回は起承転結でいう『結』。
世界も救ったし、ついにエピローグです。





676:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/26(火) 19:45:17 ID:lgzgjWC.

実に乙





677:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/26(火) 20:05:19 ID:DBuBjXpA

おつおつ





678:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/28(木) 22:38:49 ID:DVp58IPE

最終話 私たちの幸せ

〜南の都・お城〜
王様「待っておったぞ、勇者よ」

勇者「極南の地の調査が終了し、闇の結界を解放して参りました」

王様「な、なんと! 結界を解放したじゃと?!」

勇者「はい。季節が巡って極夜になったので、日は昇りませんが間違いありません。魔女から報告を受けていると思いますが、結界はハノイの塔が示す終末の定めによるものでした」

王様「終末の定め?」





679:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/28(木) 23:11:51 ID:DVp58IPE

勇者「はい。世界の秩序を乱し、戦争を繰り返す人間に対して、この世界を創造した神様が裁きを下していたのです」

王様「なんと! 魔王ではなく、神の怒りじゃったのか!」

勇者「そうです。そのために結界が必要だったのです」

勇者「精神感応の報告も受けていると思いますが、それは人間を救済したい女神の意見を汲み、神様が人間を試して裁くために用意したものでした」

勇者「その裁きを乗り越える者が現れることで、人間の可能性を示すことが出来ます。だから女神は結界を越えられる者を選び、私たちに神託を下していたのです」

王様「闇が現れるまで、確かに人類は驕り高ぶっておったかもしれんな。して、神と女神はどうなったのじゃ」





680:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/28(木) 23:33:08 ID:DVp58IPE

勇者「私たちが人間の可能性を示し、闇を取り払うことで神の赦しを得ることに成功いたしました。女神からの祝福も獲得し、人間の未来を静観してくれるそうです」

王様「そうか。僧侶と魔法使い、そして魔女よ。勇者を支え、よくぞ無事に帰ってきてくれた」

王様「そなたらの国の王に代わり、わしからも礼を申し上げよう。書状を出しておくゆえ、返事があるまで休暇を取るが良い」

勇者「ありがとうございます。帰路は各国を訪問して帰るつもりなので、そのことも付記していただくようお願いいたします」

王様「なるほど、良い心がけじゃな。我らは手を取り合わねばならんからな」





681:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/28(木) 23:35:11 ID:DVp58IPE

魔法使い「あの、私はただの村娘なので……」

王様「おお、そうであった。魔法使いには、エルグ王から書状が届いておるぞ」
魔法使い「書状ですか?」

王様「今月から始まった研修のことじゃが、極南に向かう部隊で研修するようにとのことだ」

魔法使い「は、はいっ! 季節が逆で、すっかり忘れていました」

僧侶「じゃあ、今日から正式な部隊メンバーだね」

魔法使い「なんだか緊張します。勇者さま、僧侶さん、よろしくお願いします」ペコリ

王様「では、魔法使いよ。書状は国王と村長に出しておこう。勇者一行の魔道師として胸を張り、驕ることなく成長していくことを楽しみにしておるぞ」

魔法使い「はいっ、頑張ります!」





682:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/28(木) 23:41:47 ID:DVp58IPE


〜南の街〜
魔法使い「はぁ、緊張しました」

僧侶「お城に帰ったら、ご褒美が楽しみだね。美味しいものを食べて、可愛いドレスも欲しいな〜」

魔法使い「そうですね♪ 私も美味しいものを食べて、精霊魔術と魔法医学の書物を揃えたいです」

魔女「あたしは何もしてないのに、いいのかな?」

僧侶「魔女さんの情報のお陰で、私たちは助かったんだから。もう大切な仲間ですよ」

魔法使い「そうです。魔女さんのお陰です」

魔女「そっか。二人とも、ありがとう」





683:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/28(木) 23:46:13 ID:DVp58IPE

勇者「じゃあ、そろそろ宿に戻ろうか。魔女さんと合流して4人になったし、今日から部屋割りを変更するからね」

魔法使い「えっ、そうなんですか?」

勇者「僕と僧侶さん、魔法使いちゃんと魔女さんで二部屋に分かれるから、それでお願いします」

魔法使い「ああ、そういう事なんですね」

僧侶「えへへ//」

勇者「そういう訳で魔女さん、魔法使いちゃんと仲良くしてあげてください」

魔女「はい」

僧侶「じゃあ、後で二人の部屋に遊びに行きますね♪」





684:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/29(金) 22:05:15 ID:fA3Jqd42


〜宿・魔法使いと魔女の部屋〜
魔女「……」

魔女「…………」

『あぅん……あぁ、勇者さまぁ…………』

魔法使い「僧侶さんの声ですね」

魔女「ま、まあ、こういうことをするための部屋割りだし」

『……ひゃぁん。うんっ、いい……そこ気持ちいい』

魔法使い「そうですよね。いつもより楽しめているみたいで、本当に良かったです」

魔女「そ……そうなんだ」





685:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/29(金) 22:11:14 ID:fA3Jqd42

魔法使い「あの、失礼なことを訊きますけど、二人の声を聞いて、つらいことを思い出しますか?」

魔女「好きあっているのは知っているけど、こんな声を聞くとつらい……かな。魔女っ子ちゃんは?」

魔法使い「僧侶さんが幸せそうで、私も愛し合える人が欲しいなって思います」

魔女「そう……なんだ」

魔法使い「私、極南の村で、魔女さんがしたことを見てきました」

魔女「あれを見ちゃったんだ……」

魔法使い「はい。魔女さんが、バラバラにしたんですよね」

魔女「そうよ……。毎日毎日、嫌だった。憎くて憎くて、もう限界だったの!」





686:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/29(金) 22:15:52 ID:fA3Jqd42

魔法使い「そうですよね。魔女さんたちが、どんな事をされ続けてきたのか……。凄惨な光景を見て、私も恐怖を感じました」

魔女「……」

魔法使い「だけど、本当に殺すしかなかったのですか?」

魔女「あなたに、何が分かるって言うの?」

魔法使い「私も、精神感応で同じ経験をしましたから……」

魔女「あ……」

魔法使い「その影響で、僧侶さんと殺し合いました。私の嫉妬心が、精神感応の媒体でした」





687:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/29(金) 22:26:07 ID:fA3Jqd42

魔女「ごめん……。極南の村に行ったということは、そういうこと……なんだよね」

魔法使い「……はい。それでも私たちは、お互いの気持ちを受け入れあって、絆を深めることが出来ました」

魔女「毎日無理やり犯されていたのに、彼らを許せるわけがないでしょ」

魔法使い「普通なら、そうですよね。でも、神様による呪術の影響があったなら、どうですか?」

魔女「それは……」

魔法使い「だから許すべきだ、なんて言うつもりはありません。だけど今回のことで、殿方のことを避けたり嫌いになったりしないでほしいです」ニコッ

魔女「……えっ?」

魔法使い「勇者さまみたいに、優しくて頼りになる殿方もいるはずですから//」





688:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/29(金) 22:28:56 ID:fA3Jqd42

魔女「あの、そういう話だったの?」

魔法使い「そういう話?」

魔女「てっきり、あたしを責めているのかと……」

魔法使い「そんな事ないですよ〜。きっと、私より罪深い人はいないですし」

魔女「それって、どういう……」

魔法使い「多くの人は、他人には言えない闇を抱えています。私は魔女さんのそういう部分も受け入れて、絆を作っていきたいです」





689:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/29(金) 22:30:59 ID:fA3Jqd42

魔女「結界の中で、色々あったのね……。世界を救ってくれて、本当にありがとう」

魔法使い「魔女さん。私たちが世界を救えたのは、魔女さんがいてくれたからですよ」

魔女「はぁ……。もうあたしより、立派な魔道師になってるじゃない」

魔法使い「私はまだ研修生です。もっともっと、頑張りたいです!」

魔女「そっか、あたしも負けずに頑張らないとね……」

魔法使い「魔女さん、今日からよろしくお願いします」

魔女「うん、よろしくね。さっきの話、言えるようになったら話してね」

魔法使い「はい……」





690:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/29(金) 22:34:37 ID:fA3Jqd42

魔女「ところで賢者さんのナイフを持っているということは、遺体はどうなったの?」

魔法使い「賢者さんは、極南の村にお墓を作りました。他の方々も、天使さんが弔ってくれましたよ」

魔女「そうなんだ、ありがとう」

魔法使い「それで来世では、女神さまの祝福があるそうです」

魔女「そっか……。賢者さんのお墓、場所を教えてくれる?」

魔法使い「良いですよ、今度案内します」





691:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/29(金) 22:43:03 ID:fA3Jqd42

『……あぅん、勇者さまぁ……んっ、いくぅ……いっちゃうっ』

魔女「僧侶ちゃん、まだしてるし……」

魔法使い「この時間ならきっと、夕食の時間になるまでしているかもしれないですね」

魔女「えっ?! まさか……」

魔法使い「二人ともすごく好きで、私が許してあげたらもう遠慮なく楽しんでますから」

魔女「遠慮なく?」

魔法使い「そうそう。障壁魔法でテントに仕切りを作ってあげたらね、そこで一晩中してましたよ」





692:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/29(金) 22:45:30 ID:fA3Jqd42

魔女「そんなに?! 一緒にいて、それはキツいわね」

魔法使い「うーん、そうでもないかな。とても幸せそうだし、素敵なことじゃないですか」

魔女「そ、そう捉えるんだ」

魔法使い「それに、愛し合う時間を大切にして心から楽しむのが、僧侶さんらしいですから」

魔法使い「魔女さんも一緒にいれば、きっと変わりますよ。私も、僧侶さんのような女性でありたいです//」

魔女「そっか……。繋がりを大切にしている三人だから、世界を救えたのかもしれないわね」





693:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 15:27:15 ID:or0LxmF6


僧侶「魔法使いちゃん、魔女さん、遊びに来たよ〜」

魔女「そ、僧侶ちゃん……。いらっしゃい//」

僧侶「お邪魔します。どうして、そんなによそよそしいの?」

魔女「そ、それは……」

魔法使い「あっ、僧侶さん。ちょうどいい所に」

僧侶「何なに、ちょうどいい所って?」

魔法使い「勉強中なんですけど、分からない所があるんです」

僧侶「頑張ってるね。どんなところ?」





694:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 15:36:26 ID:or0LxmF6

魔法使い「今は、肺のガス交換の勉強をしてるんですけど……。肺胞が必要な理由が分からないんです」

僧侶「えっと、血中成分はもう理解してるはずだよねえ」

魔法使い「はい、完璧です」

僧侶「肺胞が無数にあるのは、表面積を大きくするためなの」

魔法使い「表面積ですか?」

僧侶「例えば、食パンが一斤あるとするでしょ」

魔女(何で食パンなの?!)

僧侶「その食パンにジャムを塗りたいのだけど、四枚切りにした場合と八枚切りにした場合では、どっちがジャムをたくさん使うと思う?」





695:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 16:34:40 ID:or0LxmF6

魔法使い「えっと、八枚切りですね」

僧侶「そうそう、八枚切りだね。パンを薄く切れば切るほど、ジャムを塗る面積が増えるでしょ」

魔法使い「はい」

僧侶「それが肺胞なら、血液が通る面積が増えることになるよね。すると、たくさんガス交換が出来るでしょ」

魔法使い「なるほど、そういうことなんですね」





696:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 16:42:39 ID:or0LxmF6

魔女「僧侶ちゃん、お腹減ってる? おやつがあるんだけど、どうかなあ」

僧侶「もちろん、いただきますっ!」

魔女「極夜まんじゅう。そこの喫茶店で買ってきたの」

僧侶「へぇ、そんなの売ってるんだ。私が行ったときは、白夜まんじゅうを食べましたよ」

魔女「白夜まんじゅう?」

僧侶「こしあんの素朴なおまんじゅうだったけど、あまくて美味しかったな」

魔法使い「極夜まんじゅうは、外が黒糖で中が白あんでしたよ。すごく美味しいです!」





697:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 16:54:26 ID:or0LxmF6

僧侶「そうなんだ、楽しみ〜。それにしても、やっぱり昼と夜をイメージしてたんだね」

魔女「一昨日までは昼と夜があったから、昼夜まんじゅうが売ってたわよ。もう買えないみたいだけど」

僧侶「うわぁ、究極の期間限定商品ですね。食べたかったな……」

魔女「そう言うだろうと思って、お土産用を買っておいたから」

僧侶「本当ですか?! 魔女さん、大好きっ!」

魔女「ちょっと、大袈裟だって」アセアセ





698:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 17:03:02 ID:or0LxmF6

僧侶「ところで、今夜は二人の歓迎会をすることに決まったから」

魔法使い「歓迎会ですか?」

僧侶「うん。魔法使いちゃんの研修が始まったし、魔女さんも仲間になったでしょ」

魔法使い「そうですね」

僧侶「だから二人を歓迎したくて、魚料理が美味しい料亭を予約してきたの」

魔法使い「白夜温泉の鮮魚ですよね。料亭、楽しみです♪」

魔女「僧侶ちゃん、あたしのために歓迎会だなんて、本当にありがとう。すごくうれしいです」

僧侶「今夜は二人が主役なんだし、みんなで楽しく過ごしましょうね♪」





699:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 17:05:43 ID:or0LxmF6


トントン・・・

魔女「ゆ、勇者さん。いらっしゃい……」

勇者「こんにちは。あれ? 何、そのおまんじゅう」

僧侶「ふふっ、さすが勇者さま。食べ物の匂いを敏感に感じ取りましたね」

勇者「そういうつもりで来た訳じゃないけど……、一個いいかな」

魔女「ど、どうぞ」





700:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 17:08:58 ID:or0LxmF6

勇者「ありがとう。極夜まんじゅうって言うんだ」

魔女「どうですか?」

勇者「美味しいね、これ。黒糖の風味がちょうどよくて、程よい甘さかな」

魔女「気に入ってもらえて良かったです」

僧侶「ねえねえ、昼夜まんじゅうも食べてみてよ。びっくりしますよ」

勇者「びっくりするの?」

僧侶「これこれ、期間限定の超レアモノだって」

勇者「黒と白のマーブル生地か……」





701:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 17:12:58 ID:or0LxmF6

勇者「何だこれっ?!」

僧侶「ねっ、びっくりするでしょ」

勇者「つぶあんと……まさかの生クリーム?! これがまた、意外と合うとはっ!」

僧侶「魔女さん、これって、もう買えないんですよね」

魔女「昼と夜がある一週間程度しか、製造販売されていないみたい」

勇者「うわぁ、美味しいのに買えないのか。魔女さん、ありがとう」





702:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 17:31:32 ID:or0LxmF6

魔法使い「ところで、勇者さま。何かあったのですか?」

勇者「そうそう。宿の主人が、オーロラが綺麗に見えてるよって教えてくれて。歓迎会まで時間があるし、先にお風呂に入らないか?」

魔法使い「あっ、いいですねえ。露天風呂でまったりしながら見たいです!」

僧侶「そうですね、お風呂にしましょうか」

勇者「じゃあ、先に行って待ってるから」

魔法使い「待って下さい、私も一緒に行きます」トテトテ





703:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 17:34:38 ID:or0LxmF6

僧侶「魔女さんはどうしますか? 混浴なので、一緒に入るほうが良いですよ」

魔女「深夜なら誰もいないし、殿方と一緒だなんて……」

僧侶「いやいや、混浴だから勇者さまと一緒に入るんです。知らない殿方に声を掛けられたら、困るじゃないですか」

魔女「それはそうだけど……」

僧侶「混浴の露天風呂は、私たち三人にとって大切な社交の場なんです。今日から魔女さんも合流したし、四人でゆっくり話をしたいです」





704:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 17:38:07 ID:or0LxmF6

魔女「女性と一緒に入るのが、勇者さんの方針なんだよね。結局、裸を見たいだけじゃない」

僧侶「勇者さまの方針じゃなくて、私たちが一緒に入ろうと提案して決めたことなの」

魔女「あぁ、そうか。よくよく考えてみたら、そうなるよね……」

僧侶「魔法使いちゃんも安心して入ってますし、そもそも私の彼氏なので大丈夫ですよ」

魔女「彼氏なら、貸切風呂にしたほうが楽しめるんじゃないの?」

僧侶「ここの貸切は、解放感が足りないです。身構えずに、みんなで親睦を深めましょうよ」

魔女「分かった。頑張ってみる……」





705:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 20:46:03 ID:or0LxmF6


〜温泉・混浴〜
魔法使い「オーロラ、はじめて見ました! すごく綺麗ですね」

僧侶「うん、幻想的だよね〜」

魔法使い「魔女さん、オーロラって障壁魔法に似ていると思いませんか?」

魔女「言われてみれば、そうだね」

魔法使い「どうやったら、あんなに鮮やかな緑色を出せるだろ」

魔女「光の色は波長が関係してるから、練習すれば分光できそうな気がするけど」

魔法使い「あっ、なるほど。今まで、光を出すことしか考えたことがなかったです」

魔女「光属性って、照明とか閃光弾の代わりにしか使わないしね」

魔法使い「でも分光できたら、パーティーとかに使えそうです。きっと雰囲気が良くなりますよ♪」

魔女「そうだね」





706:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 20:50:33 ID:or0LxmF6

勇者「そういえば、エルグの城からオーロラが見えたって記録を読んだことがあるよ」

魔法使い「えっ、本当ですか?!」

勇者「あれみたいに色鮮やかなものではなくて、赤くて暗いオーロラみたいだけど」

魔女「低緯度オーロラは珍しいらしいです。あたしの国でも観測されたことがあるみたいですよ」

魔法使い「そうなんだ。その低緯度オーロラも見てみたいです」





707:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 20:53:22 ID:or0LxmF6

僧侶「魔女さん、勇者さまがいても大丈夫?」

魔女「ときどき視線を感じるけど、不快ではないかな」

僧侶「それくらいなら安心だね」

魔女「少し恥ずかしいけど、勇者さんなら一緒にいても安心できそうかも……。あたしも、こういう殿方と旅をしたかったな」

僧侶「そっか……。お互いに自然な姿で打ち解けられるのは、仲間として素敵なことだよね。うん、仲間として」

魔女「あはは、そうだね」





708:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 21:07:27 ID:or0LxmF6


魔法使い「勇者さま……。私たちの旅は、もう帰るだけですね。何だか、あっという間だった気がします」

勇者「そうだね……。でも、世界を救って終わりじゃないから」

魔法使い「はい、そうですよね」

勇者「ああ。人々が手を取り合って、この平和を維持していかなければならない」

勇者「お城でも話したけど、そのために各国を訪問しながら帰路に着こうと思う。それは真実を知っている、僕たちにしか出来ないことだ」

勇者「だから、これからも僕を支えて欲しい。この四人で改めて再出発をしたい」





709:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 21:13:13 ID:or0LxmF6

魔法使い「もちろんです! でも、僧侶さんはどうするんですか?」

僧侶「えっ……?」

魔法使い「だって、今日は避妊をしてないですよね。それって、そういう事ですよねえ」

僧侶「魔法使いちゃんは、やっぱり分かってたんだ……」アセアセ

魔法使い「それくらい出来ないと、治癒魔法を使えないじゃないですか」

僧侶「そうだけど、初日で分かっちゃうとは思わなかったよ……」

魔法使い「どんなことでも、基礎が大事ですから」





710:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 21:32:08 ID:or0LxmF6

僧侶「じゃあ、魔法使いちゃん。私たちのこと、落ち着いたら話す約束だったし、聞いてくれる?」

魔法使い「……はい」

僧侶「私は、勇者さまと結婚することに決めました。それで一息ついたら、子供を作ろうって話し合っていたの」

僧侶「魔法使いちゃんは、私たちを祝福してくれますか?」

魔法使い「もちろんです。おめでとうございます!」

僧侶「魔法使いちゃん、ありがとう。すごくうれしいよ//」





711:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 21:33:39 ID:or0LxmF6

魔女「僧侶ちゃん、もう結婚しちゃうんだ……」

僧侶「はい。今までずっと一緒に生活していたし、お互いのことを分かっているつもりだから」

魔女「そっか……。勇者さん、僧侶ちゃん、おめでとうございます」

僧侶「魔女さん、ありがとう」

勇者「魔法使いちゃん、魔女さん。ありがとうございます」





712:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 21:38:30 ID:or0LxmF6

魔法使い「でも、どうして今なんですか?」

僧侶「世界の平和を維持するために活動をするわけだけど、人を愛したことのない人が平和や愛を語っても説得力がないですよね。それに新しい命を宿すのは素敵なことだし、愛する殿方の子供を早く授かりたいのです//」

魔法使い「なんだか、僧侶さんらしい理由ですね。特に後半が」

僧侶「ふふっ、そうかなあ」

勇者「とりあえず今日は、結婚報告と僕たち四人の再出発ということで。またこれからもお願いします」

魔法使い「はいっ、お願いします」

魔女「分かりました。あたしこそ、お願いします」





713:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 22:16:23 ID:or0LxmF6

魔女「ところで僧侶ちゃんが妊娠したら、身体を気遣いながらの旅になりますよね」

僧侶「それはその……、妊娠すると迷惑をかけるだろうなとは思っています。でも――」

魔女「それは承知しているから、お互いに助け合いましょ」

僧侶「すみません。お願いします」

魔女「子作りも自由にして良いから、産まれる前に一度帰るのか、しばらく都に身を寄せるのか。妊娠する前に、みんなでまた話し合いませんか」

勇者「そうだね。予定はある程度決めているんだけど、考えをまとめておくよ」





714:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 22:25:48 ID:or0LxmF6

魔女「僧侶ちゃん、子供が出来るのが楽しみだね」

僧侶「うふふ、赤ちゃんに会える日が楽しみです♪」

魔法使い「私も赤ちゃんに早く会いたいな//」

僧侶「あのね、人生はジグソーパズルに例えることが出来ますよね。幸せな未来を思い描いて、たくさんのピースをはめて行くの」

僧侶「そのピースには勇者さまがいて、産まれてくる赤ちゃんがいて、魔法使いちゃんと魔女さんがいて――」

僧侶「楽しいことやつらいことを、みんなで一緒に経験しながら、私の人生というパズルを愛情で彩って完成させていきたいです」

僧侶「そのために、今日から私は勇者さまと愛の証明をしていきます//」





715:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 22:30:23 ID:or0LxmF6

魔女「愛の証明かぁ……。愛は行動で示すものだよね」

魔法使い「だそうですよ、勇者さま。私たちに愛を見せてください」

勇者「わ、分かった!」ザバァ

魔女「きゃあっ// な、何を始めるんですか?!」


勇者さんは僧侶ちゃんに歩み寄ると、そっと手を差し伸べた。
僧侶ちゃんはその手を取って、ゆっくりと立ち上がる。
そして指を絡ませて、恥ずかしそうに視線を交わした。





716:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 22:31:48 ID:or0LxmF6

勇者「僧侶さん、愛してるよ」

僧侶「は、はいっ。私も愛しています//」


幸せそうにはにかみながら、僧侶ちゃんが応える。
二人は抱き合うと、ゆっくり唇を重ねた。


勇者「これから、二人で協力して歩んでいこうな」

僧侶「はい。あなたと共に歩むことを誓います」


オーロラが揺れる、幻想的な夜。
それは生まれたままの姿で愛を誓う二人を、優しく包み込んでいるようだった。





717:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 22:36:01 ID:or0LxmF6

魔法使い「何だか、見ている私たちのほうが恥ずかしいです」

魔女「ちょ、ちょっと勇者さんっ。た……、勃ってますよ//」アセアセ

僧侶「ふふっ、勇者さまは元気ですね♪ もう一度、頑張れそうですか//」

勇者「僧侶さんは、そんなにしたいんだ」

僧侶「……はい//」





718:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 22:38:21 ID:or0LxmF6

魔法使い「あわわ// 魔女さんが煽ったからですよ」

魔女「ええっ、あたしのせいなの?!」

勇者「じゃあ、僕たちは先に部屋に戻るから」

僧侶「魔法使いちゃん、魔女さん、私はとても幸せです。歓迎会の時間になったら、二人を呼びに行きますね。それまで、また頑張ってきます!!」

魔女「そ、そうなんだ。僧侶ちゃん、頑張ってね//」

魔法使い「僧侶さん、二人で愛を深めあってください//」

僧侶「魔法使いちゃん、色んなことがあったけど、本当にありがとう。これからも一緒に旅をしようね//」





719:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 22:44:22 ID:or0LxmF6


魔法使い「魔女さん、私たちはもう少しオーロラを見て行きませんか?」

魔女「そうだね。あの二人、本当に夕食の時間まで頑張るんだ……」

魔法使い「言った通りになりましたね」

魔女「何だか逆に、勇者さんの体力が心配なんだけど……」

魔法使い「おおっ、魔女さんが殿方の精力を気遣うとは!」

魔女「さすがに、ねえ……。あの僧侶ちゃんを満足させるのは、大変だろうなと思って」

魔法使い「そうですよね。勇者さま、凄いですね//」

魔女「今夜から、精が付く料理を食べてもらいましょうか」





720:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 22:49:29 ID:or0LxmF6

魔法使い「ねえねえ、あのオーロラを見てください。ピンク色のフリルみたいで可愛いですよ」

魔女「ほんとだ//」

魔法使い「オーロラの名前は、夜明けの女神が由来になっているらしいです」

魔女「へぇ、そうなんだ」

魔法使い「そして、神の世界と人間の世界が、オーロラで結ばれているという伝説もあるみたいです」

魔女「そう考えると、今日見えるのは偶然じゃないのかもしれないわね」

魔法使い「そうですよね。新たな出発をする私たちに、女神さまが希望と慈愛の光を届けてくれたのかもしれません」





721:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 22:53:17 ID:or0LxmF6

魔女「希望と慈愛の光か――」

魔法使い「私はあの時、僧侶さんを選んで良かったです。今、とても幸せです」

魔女「あたしも、こんなに穏やかな気持ちになれる日が来るなんて思ってなかったわ」

魔法使い「魔女さん。新しい命を宿すのは素敵なことだし、私たちも愛し合える殿方と出会って授かりたいものですね」

魔女「そうだね。あたしたちも、僧侶ちゃんみたいに幸せになりたいね」

魔法使い「はいっ、もっと幸せになりましょう♪」


そして、届けましょう。
世界中に女神さまの祝福を――。





722:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 22:57:32 ID:or0LxmF6

最終話 おわり

・ジグソーパズル



・勇者「ドーナツの世界?!」完





723:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 23:06:29 ID:or0LxmF6

無事に最終話が終わりました。
レスをくださっていた方、読んでくれていた方、
ありがとうございます!

最後のパズルネタは、ジグソーパズル。

ジグソーパズルは、学習用にロンドンの地図をパズルにしたものが世界初だそうです。

つまり、
47都道府県の地図をパズルにしたものが、正統派のジグソーパズルかもしれません。

ネタとしては、『ジガゾーパズル』や『純白地獄大王』が興味深いです。


それでは、
至らないところもあったかもしれませんが、これで完結です。
本当にありがとうございました!!





724:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 23:14:39 ID:ZuBe.shI


楽しく読ませてもらったよ
後半の展開と僧侶さんのキャラが好き





725:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/30(土) 23:33:42 ID:gPHlpDWk

魔法使いさん吹っ切れたな






726:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/01(日) 03:35:33 ID:W22h6eGg

完結乙です
数学専攻だったのでタイトルに惹かれて読み始めたが中身自体も毎回楽しく読ませてもらってたよ





727:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/01(日) 07:06:20 ID:n1m/9vBA

乙乙






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