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二宮飛鳥「魔法の星から届いた電波」|エレファント速報:SSまとめブログ

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二宮飛鳥「魔法の星から届いた電波」

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 17:27:17.18 ID:KigNYIPEo

この季節の曇り空は、冷たくて重くて。

人一人くらいなら、簡単に殺せてしまいそうだと思ってしまった。



だから、まぁ、冬は嫌いかな。




2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 17:27:43.48 ID:KigNYIPEo

二宮飛鳥(14)
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3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 17:28:54.96 ID:KigNYIPEo

世間は、どこもかしこもクリスマスで染まっていた。
その次の週には年が明けるっていうのに、せわしない話だ。

爆発しろ、なんて叫んでる連中もどうかとは思うけど、少し浮かれすぎてやしないだろうか。
顔も知らない聖人の誕生日を祝うより先に、やるべきことがある気がしてならない。

『トラプリの三人は、クリスマスの予定とか決まってるんですか?』

『今年は、蘭子や聖ちゃんと一緒にライブをするよ。その後は、事務所でパーティーかな』

『先月大きなパーティーやったばっかりだし、集まれる子だけ集まってーって感じだよな』

『菜々さんは? 川島さんが誘うって言ってた気がするけど』

『いや、あれはちょっと……ナナはJKなので、お酒の出る女子会は行けないかなって、あはは……』

『あれ? でも去年のクリスマス、菜々って確かシャンパ』

『うわぁぁぁぁ!!』



4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 17:30:09.07 ID:KigNYIPEo

『えーっと、ムーンウェーブラジオ、お便りが届いているので読ませていただきます!』

『菜々さん、ちょっと露骨すぎ……』

いつも聞かせてもらっているラジオも、今日はクリスマスの話題で盛り上がっている。
……仕方ない。動画サイトでも適当に漁るか。
そう思ってアプリを落とそうとして、

『メルヘンネーム、ブルーバードさん』

音量を、二段階ほど上げる。

『ナナさん、そしてゲストの方、こんばんは』

『こんばんはー』



5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 17:31:20.82 ID:KigNYIPEo

『僕は中学二年生です。二学期も終わるのですが、最近世界がつまらなく見えて仕方がないのです』

それは多分、ボクが背伸びしたいだけの子どもだからなんだとは思います。
でも、学校も家も何の変化も無くて、退屈で……息が詰まりそうです。
このまま、目的も持てないまま大学を出て社会人になって、
社会に対して斜に構えた、何もできない大人になるのかな……と少し不安になります。
ボクはどうしたらいいのでしょう。
いつかボクにも、灰色の世界に色を付けてくれるヒーローが現れるのでしょうか。

……気まぐれで送りつけた、ラジオの雰囲気にはそぐわないメール。
まさか、採用されるとは。



6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 17:33:03.40 ID:KigNYIPEo

『いやぁ……なんか、すごいメール来たね』

『心配ご無用ですよ♪ ナナのラジオは、ウサミン星の秘密から恋のお悩みまで、どんとこいです!』

『なんて言うんだっけな、こういうの……中二病?』

『でも、気持ちはなんとなく分かるかな。私もデビュー前は無愛想で、クラスでもちょっと浮いてたから』

渋谷凛。普段テレビを見ないボクでも、雑誌の表紙やラジオで顔と声を覚えているほどの有名アイドル。
ポスターに写る彼女は、学年二つ分以上に大人びて見える。

『ふーん、あんたが私のプロデューサー? ……まあ、悪くないかな』

『……奈緒。あとでちょっと加蓮と二人きりにさせて』

『あーあ。あたしは知らないからな、加蓮』

『まあまあ、そんな凛ちゃんも、今では笑顔が似合う素敵なアイドルなんですから』



7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 17:34:59.07 ID:KigNYIPEo

『凛もだいぶ変わったよね。前から話したらいい子なのに、周りと壁を作ってる感じでさ』

『今じゃすっかり、ツッコミ役と苦労人属性が板についてきて……あたしゃ嬉しいよ。およよ』

『好きでツッコミしてるわけじゃ……それに、うちの弄られ属性はずっと奈緒でしょ』

『だ、誰が……っ!』

『ほらね? でも、私自身変わったとは思うよ。スカウトされてから、毎日が変化の連続だからね』

『私はオーディション組だけど……うん。アイドルになってから、前よりも真剣に生きてる気がする』

渋谷凛、北条加蓮、神谷奈緒、緒方智絵里、十時愛梨、高森藍子……そして、安部菜々。
彼女たちはいつも、「アイドルになって自分は変わった」という。
そして、今自分たちが見ている世界は光り輝いている、と。



8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 17:35:42.66 ID:KigNYIPEo

ボクも……アイドルになれば、違う世界を見られるだろうか。

……なんて。そんなの、サンタクロースのような絵空事だ。
どこまで行っても一般人でしかないボクは、彼女たちのようにはなれないだろう。

「もしかしたら」ボクの何かが評価されて、アイドルになれるかもしれない。
そんな、ほんの僅かな希望に縋って生きていくなんて……今以上に息が詰まりそうだ。

『でも、いいのかこれ? なんかアイドルになろう、みたいな結論になってるけど』

『うーん……じゃあナナからも、アドバイスしちゃいますね』



9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 17:39:53.83 ID:KigNYIPEo

『ナナは、デビューするまで何度かオーディションを落ちてて……ひとりぼっち、でした。
 ウサミン星にも帰りづらくて、どうしよう、このままでいいのかなって、悩んでた時期もあったんです』

ウサミン星という、未知の星からやってきた彼女の言葉には……不思議な、力があった。
他のDJと比べて、トーク力が秀でているわけではないのに、彼女の世界に引き込まれているような錯覚。

『いつかアイドルになれるって漠然と信じたけど、現実と向き合ったら目を背けたくなりました。
 でも、立ち止まりたくなかったんです。止まったら、二度と動けなくなりそうだったから』

彼女は動き続けている。ボクは……一歩も踏み出せずに、立ち止まったままだ。
彼女にはアイドルになるという明確な夢があった。ならボクには?

『今いる世界がつまらない。でも、外の世界は怖い。きっと誰だってそうです。
 だけど、ヒーローは待ってるだけじゃ来てくれません。助けを叫ばないとね。
 魔法使いがシンデレラの前に現れるのは、できることをやりきった後なんですから』



10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 17:41:18.17 ID:KigNYIPEo

『……なんて、ちょっとかっこつけちゃいましたね、あはは……』

『菜々さん、よくアイドルは夢がないとって言ってるもんね。私、ちょっと感動しちゃった』

「……敵わないな」

気がつけば、そう呟いていた。冷たい空気に混ざった言葉は、エアコンに吸い込まれて消えていく。
世間知らずの、分かったつもりになっているボクの薄っぺらな言葉とは、まるで重みが違う。

『なんつーか……あたしらもホラ、結構背伸びしちゃってるガキみたいなとこあるしな』

『奈緒は衣装着るとスイッチ入るよね。凛も歌の時は集中力すごいし』

『トラプリは仲良いですよねー。ナナ、ちょっと羨ましいです』

『喧嘩もするけどね。仲間だけど、ライバルでもあるし』

仲間。ライバル。親友。
学校に友人がいないわけではないけれど……そういった類の単語とは、あまり縁がない。
「ほんとうのともだち」探しを言い訳に、ボクは一定の距離を保っていた。



11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 17:44:24.78 ID:KigNYIPEo

『少しは参考になったかな? ブルーバードさん、そして世界中の……あー、ナンデモナイデス』

『……? あ、菜々さん曲紹介だって』

本当は分かっていたことだ。
世界が灰色に見えるのは、ボクが灰色のフィルターを被っているからだってこと。

『な、なんでもないんですってば。えー、それでは聴いてください。
 ブルーバードさんのリクエストで、パンダヒーロー』
 
でも、ボクにそのフィルターを外す勇気があるか?
グレースケールを取り外した世界が極彩色ではなく、曖昧な灰色のままだとしたら。

答えは出ないまま、夜は更けていく。
ボクの部屋の窓からは、星は見えなかった。



12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 20:48:06.05 ID:KigNYIPEo

昨日が終業式だったから、今日からは冬季休暇になる。
新しいエクステでも買いに行こうと街まで出てきて、クリスマスシーズンだったことを思い出す。
人々は大勢街を歩いているけど、ボクを見ている人間は一人もいない。
せめてもの抵抗として学外ではエクステを付けているけど、それでもボクは人の群れに埋もれてしまっている。

駅前の大型ヴィジョンでは、サンタの格好をした少女たちがライブの宣伝をしていた。
……東京、か。あの大都会に行けば、ボクも変われるだろうか。
いや、違うかな。何も持たないボクが都会に出たからといって、結局はこの街同様埋もれるだけだ。

結局、素直に親や教師に従って勉強をするのが近道なんだろう。
頭では分かっている。でも、ボクにも……一歩を踏み出すことができるなら。

「アイドル、興味あるのかい?」

「!?」



13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 20:50:48.56 ID:KigNYIPEo

気が付くと、ヴィジョンを見上げて立ち止まっていたらしい。
振り返ると、スーツの上にコートを着込んだ大男が笑っていた。

「知ってるかい? 真ん中で歌ってる彼女、実はホンモノのサンタなんだ」

「は、はあ……それで、ボクに何か用かな? ナンパとかなら、悪いけど」

「おっと失礼。警戒させてしまったね……俺は、こういう仕事をしててね」

名刺を渡されて、言われるがままに肩書を見る。
どこかで聞いたことのある社名の下には、「プロデューサー」と書かれていた。
名刺の真贋が分からない以上、彼の胡散臭さは消えないけど……



14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 20:52:56.69 ID:KigNYIPEo

「神崎蘭子とか、トライアドプリムスとか知らない? まあ、あの辺の担当は俺じゃないんだけど」

聞いたことがあるはずだ。数多くの売れっ子アイドルを排出している、新進気鋭のアイドル事務所。
普段テレビを見ないボクですら、ネットや街角でその名前を刷り込まれるほどの。

「ああ……安部菜々の所属事務所」

「お、菜々のファン? ちょうどいいや、今からミニライブあるんだけど見ていかないか?」

昨日のラジオでは、そんな告知は無かったように思う。
ゲリラライブか、あるいは彼の方便か。

「……変なところに連れ込むようなら、警察を呼ばせてもらうけど」

「ま、それが普通の反応だよね……良かったらアイドルに、なんて思ってたんだけど」

「アイドル? ボクがかい?」



15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/21(土) 20:53:38.18 ID:KigNYIPEo

「担当が俺になるかは分からないけどね。君からは、何か不思議な魅力を感じるんだ」

プロデューサーとしての勘だと、彼は言う。

「もし良かったら、お試し体験ってことで。生で見ると、やっぱり違うものだからね」 <
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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月21日 22:20
      • 1かな?

        登場して間もないのにこの人気はなんなの
      • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月21日 22:39
      • はやくSRこねーかなー
      • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月21日 23:12
      • ネタにしやすいのもあるんだろうけど人気だね飛鳥
      • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月21日 23:38
      • 俺だけだと思うけど、飛鳥がフリクリのハルコに見えてしょうがないw
      • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2013年12月21日 23:50
      • SRになっても俺の資産じゃ買えないけどな!!(泣)

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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