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【Fate/stay night】桜「ライダーの馬、変わった名前ね」|エレファント速報:SSまとめブログ

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【Fate/stay night】桜「ライダーの馬、変わった名前ね」

1 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:15:02.36 ID:hkw2fN9Z0

時は二月。冬でも比較的温暖なこの冬木の街。

その中にある一件の武家屋敷から、今日も団らんの声が聞こえてくる。

居間のテーブルには沢山の夕食が並べられ、

それを囲んで三人の男女が思い思いに箸を運ぶ。

少年「桜。今日の煮物の味付け、どうかな?」

自分の作った料理の感想を尋ねている少年は、この屋敷の主である『衛宮士郎』。

五年前に他界した父、『衛宮切嗣』からこの屋敷を相続し

今ではこの広い屋敷に一人で住んでいる。

父と言っても血の繋がりがある訳ではなく、士郎は切嗣の養子である。

十年前の大火災で切嗣に救われた後、この屋敷に引き取られたのであった。




2 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:16:41.06 ID:hkw2fN9Zo

少女「はい、とっても美味しいです。味噌も案外合いますね、先輩」

そして士郎の問いに答えた少女は『間桐桜』。

士郎の後輩であり、一年程前から毎日家事の手伝いに来ている。

女性「う~ん、このカニのお味噌汁も絶品ね。いいモノ仕入れたんじゃない?」

吸い物に舌鼓を打つこの女性は『藤村大河』。

父親が居ない士郎にとっては保護者のような存在であり、

また二人の通う学校の英語教師でもある。

しかし保護者と言っても、二人の料理目当てにこの屋敷に入り浸る毎日。

これだけ見ればどちらが保護者か分からない。

しかし二人からはきちんと慕われており、

これも彼女の人柄によるものなのかもしれない。

最早この三人で食卓を囲むのは日常となっており、

今では家族同然の付き合いとなっていた。



3 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:17:33.60 ID:hkw2fN9Zo

と、そこへ障子を開けて金髪の少女が入ってきた。

金髪の少女「シロウ、夕飯の準備が出来ていたのですね」

桜「あ……」

大河「セイバーちゃん、お先に頂いてるよ~」

士郎「すまんセイバー。ぐっすり寝ていたから起こすのも悪くって……」

セイバーと呼ばれた少女は、士郎の答えにニッコリと笑みを返した。

セイバー「お気使い感謝します。ですが食事は私のささやかな楽しみでもあります」

セイバー「今度からは起こしていただいて構いません」

士郎「分かった、今度から気を付けるよ」

そうしてセイバーは開いた席に腰を下ろす。

桜と大河が彼女に出会ったのは数日前。

いつもの三人での食事中、突然士郎が居間へ連れてきたのだ。

士郎の説明では彼女は切嗣の知り合いであり、彼を頼って日本に来たらしい。

そして暫く日本に滞在するためこの屋敷に泊める事になったのだとか。



4 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:18:31.23 ID:hkw2fN9Zo

もちろん大河は、そして桜までもがセイバーの宿泊には抗議した。

理由の一つは彼女の容姿である。

金色の髪はイギリス巻きに整えられ、絹のような滑らかさ。

翠色の瞳はエメラルドのように美しく、

見つめられれば吸い込まれそうな位に透き通っている。

凛とした佇まいにどこか感じる神秘的な雰囲気は、

月並みではあるが『美少女』という以外に適切な言葉が思い付かない。

そんな彼女と士郎が一つ屋根の下で暮らすなど許せるはずが無いのである。

抗議は次第にヒートアップしてゆき、

最終的には大河とセイバーが竹刀を交えるまでに至った。



5 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:19:06.70 ID:hkw2fN9Zo

結果は大河の惨敗。渋々と宿泊を許可する事に。

屋敷の主である士郎、そして保護者とも言える大河の承諾を得たとあっては、

もはや桜に反対できる理由が無い。

しかし桜はある一点において彼女を敬遠していた。

士郎「桜、セイバーにご飯を入れてやってくれないか?」

そう、『セイバー』と言う彼女の名前。

桜はその名前に『ある役割』を持った人物を連想してしまうのであった。



6 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:19:36.81 ID:hkw2fN9Zo

『聖杯戦争』

聖杯によって選ばれた七人の『マスター』が

それぞれ『サーヴァント』と呼ばれる英霊を召喚して戦う一種の儀式。

最後まで残ったマスターとサーヴァントは

聖杯によってあらゆる願いが叶うと言われている。

そしてその召喚されるサーヴァントの中に

『セイバー』と呼ばれるクラスが存在しているのである。

桜は祖父からその事を聞き及んでおり、

彼女が現れた事による不安は日増しに強くなるばかりであった。



7 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:20:21.41 ID:hkw2fN9Zo

士郎「桜、どうしたんだボーっとして?」

その言葉に桜は我に返る。

桜「えっ!? すいません、どうしました先輩?」

士郎「セイバーにご飯を入れてやって欲しいんだ」

桜「あ、はい。どうぞセイバーさん」

セイバー「ありがとう、サクラ」

セイバーは桜から茶碗を受け取り、中央のおかずに手を伸ばした。

三人も中断していた食事を再開したが

桜は聖杯戦争の事を思い出して、ほんの少しだけ箸が進まないのであった。



8 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:20:56.44 ID:hkw2fN9Zo

大河「じゃじゃーん! 今日はお土産があるよーっ!」

夕食が終わった後、大河が取り出したのは

ショートケーキが入っていそうな小さな白い箱であった。

中を開けるとシュークリームが十個入っている。

桜「わぁ、藤村先生これどうしたんですか?」

大河「えっへん。気前の良い酒屋のおねーさんが譲ってくれたのでしたー」

士郎「……なあ藤ねえ。それって強奪したんじゃないよな?」

台所で食器を洗いながら、士郎は首だけ向けて非難の目線を送る。

彼の脳裏にはバイト先の娘であり、かつ大河の親友でもある

一人の女性が思い浮かんだのであった。



9 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:21:33.77 ID:hkw2fN9Zo

大河「細かい事はいいの! さあ、甘いものは別腹別腹!」

桜「あれ? 待って下さい。これじゃ余っちゃいますよね?」

ハタと気が付き、桜は大河を制止した。

そう。十個のシュークリームを四人で分けると二つ余る。

セイバー「困りましたね」

大河「う~ん。何かいい方法無いかなぁ」

暫く考える事数十秒。

突然大河がある提案を持ちかけた。

大河「そうだ、ゲームで決めよっか!」



10 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:22:13.29 ID:hkw2fN9Zo

大河「勝った人が三つ食べられるって事で。それなら文句無いでしょ?」

桜「はい」

セイバー「賛成です」

大河「じゃあ……勝負はこれ!」

そう言って大河はテレビの上のトランプを持ってきた。

桜「えっと、四人で出来るものと言えば……」

大河「ババ抜きね!」

しかし桜は大河の思惑を見逃さなかった。

桜「藤村先生、それは先輩に不利です」

桜「先輩ったら、ババ引いた時にすぐ顔に出るんだから……」

大河「ちぇっ、桜ちゃんにはお見通しかぁ~」

自身のセコイ目論見がバレた所で大河は反省の色無しである。

桜「先輩でも不利にならないルールにしないと……」

桜「そうだ! 『ジジ抜き』にしませんか?」



11 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:22:41.81 ID:hkw2fN9Zo

士郎「ジジ抜き?」

洗い物を済ませた士郎が台所から居間に戻ってきた。

大河「士郎、ジジ抜き知らないの?」

桜「先輩、ジジ抜きって言うのはですね、ジョーカーを使わないババ抜きなんです」

そう言って桜はトランプの山の中から一枚を取り出し、自分のポケットに仕舞い込んだ。

桜「こうやって一枚抜くと、その数字は山の中に三枚しかありません」

桜「だからペアにならず、一枚残ってしまいますよね? それがババの代わりです」

桜「でもその数字は誰にも判らないから、先輩にもやりやすいと思うんです」

士郎「分かった、それでいこう」



12 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:23:34.23 ID:hkw2fN9Zo

こうしてシュークリームを賭けたジジ抜きが始まった。

士郎「あれ? ジョーカーが二枚揃ってるぞ?」

桜「あ、それはペアとして捨てちゃって下さい」

大河「むむ……。桜ちゃん最初からかなり捨ててるわね」

セイバー「私の手札が一番多いみたいですね……」

ゲームが進むにつれ、一組、また一組とペアが捨てられてゆく。

その中で怒涛の快進撃を見せたのはセイバーだった。

まるで相手の手札が判っているかのように、

次から次へと自分の手札を捨ててゆく。

セイバー「これで終わりです」

宣言と共に最後の手札を場に捨てる。

士郎「早い……」

桜「嘘……」

大河「ちょっとセイバーちゃん? ズルしてない?」

しかしセイバーは大河の抗議を凛と跳ね除けた。

セイバー「私の直感を甘く見ないで頂きたい」

セイバー「食べ物を掛けたのが運の尽きでしたね」キラーン



13 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:24:15.84 ID:hkw2fN9Zo

そしてゲームも終盤。

士郎(あれ? この数字前にも回ってきたような?)

桜(もしかして……あれがジジかしら?)

大河(えっと……気のせい気のせい)

桜「やった! 上がりです」

大河「えー。もうゲーム続ける意味無いじゃなーい!」キー

士郎「まあ藤ねえ、最後までやろうよ。後は一騎討ちだな」



14 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:24:58.98 ID:hkw2fN9Zo

大河「えーと……こっち! キャー、また揃わないぃぃ!」

士郎「じゃあこっちか! よし、上がりだ!」

結果は一位セイバー、二位桜、三位士郎、四位大河で幕を閉じた。

大河「まさか『キング』がジジだったなんて……」

大河は最後まで残った『ダイヤのキング』を放り投げた。

士郎「えっと『スペード』と『クラブ』はペアとして捨てられてるから……」

桜「はい。つまり抜かれたカードは『ハートのキング』という事ですね」



15 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:25:38.70 ID:hkw2fN9Zo

セイバー「では、勝負も付いた事ですし頂きましょう」

セイバーは早速シュークリームを一つ取り出した。

その時、テレビから午後八時を告げるアナウンスが聞こえてきた。

桜「あっ、もうこんな時間!」

それを聞いた桜は慌てて立ち上がり、鞄を掴んで居間を出ようとする。

まだそれ程遅い時間ではないはずだが、桜の慌て様に士郎が尋ねた。

士郎「どうしたんだ桜? そんなに急いで」

桜「あの……今日は大事な用事があるんです。早めに帰らないと」

士郎「そっか。じゃあ送って行くよ」

桜「いえ、大丈夫ですっ! その、まだ人通りも多い時間帯ですし」

士郎「そうか? まあ、桜が大丈夫って言うなら問題無いけど……」

桜「ええ。それでは先輩、藤村先生、それにセイバーさんも、失礼します」

士郎「じゃあ残りは冷蔵庫に入れておくから、また今度来た時に食べてくれ」

士郎「藤ねえ、ゲームに負けたんだから桜の分まで食うんじゃないぞ?」

大河「失礼ねぇ。私がそんな事すると思う?」

士郎「思う」

大河「がーん」



16 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:26:11.39 ID:hkw2fN9Zo

桜「では、また明日」

玄関先で別れを告げ、桜は衛宮の屋敷を後にした。

今日は早く帰らなければならない。それは分かっている。

しかしその思いとは裏腹に、桜の足は自分の家が近づく度に重くなってゆく。

いつもなら数十分で到着するはずなのだが、

桜が間桐の屋敷に帰った時には、時刻は午後九時に差し掛かろうとしていた。



17 : ◆VUVWczQ0wI 2013/09/08(日) 12:26:53.33 ID:hkw2fN9Zo

深夜零時。

間桐の屋敷の地下室に、小さな二つの人影があった。

一人は桜。

そしてもう一人は桜の祖父『間桐臓硯』。

二人の間には魔法陣が描かれ、その役割を果たす瞬間を刻一刻と待ち受けている。

桜「……お爺様。マスターは全員殺さなければいけないのですか?」

桜は自分が臓硯に逆らえない事を知りつつ、

今から行う事に対するほんの些細な抵抗として質問を投げかける。

臓硯「そ