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受身って地味だけどかっこいい - デイリーポータルZ:@nifty
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土曜ワイド工場 2013年12月21日
 

受身って地味だけどかっこいい

あらゆる技の前に、受身は存在するのです。
あらゆる技の前に、受身は存在するのです。
クリスマス、独り身が身に沁みるよねー。
という話をすると、十中八九私の消極的な性格について言及され「受身だからダメなんだよ」みたいなアドバイスを受けるのですが、その度にもやもやしたものを感じていました。

受身とったこともないくせに、受身の何が分かるんだ!
どんなに素晴らしい攻撃だって、受ける相手がいなきゃどうしようもないだろ!
プロレスってのは、むしろ受身がないと始まらないんだよ!!

ということで完全に言い掛かりですけど、受身の面白さについて語ってもいいですか?
おおたかおる おおたかおる(おおたかおる)
1980年北海道生まれ。 気が付くと甘いものばかり食べている偏った食生活を送っています。

『受けの美学』

プロレスを語る上で避けては通れない言葉、それが『受けの美学』です。
普通スポーツや格闘技ではルールに則った形で勝利を収めれば、多少の反省点があったとしてもその栄誉は称えられるものですが、プロレスでは「対戦相手の両肩をマットに押し付けた状態で3カウント」や「ギブアップ」、「レフェリーストップ」などルールに従って勝利しても観客から祝福されないことが多々あります。
そればかりかブーイングを浴びせられることすらあり、何とも理不尽な話です。
マットに両肩を押し付けられた状態。
マットに両肩を押し付けられた状態。
確かアントニオ猪木が「首を極めれば試合で勝つのは簡単だ」というようなことを語ったように、ただ勝つのは簡単ですが、プロレスではそれ以上のものが求められます。
選手の個性やシチュエーションによっても変わりますが、基本的にプロレスにおける真の勝利とは「相手の技を受け、お互いの良さを引き出した上で勝利する」ということなのです。
私の記憶違いで、実は猪木がそんなこと言ってなかったらすみません。

あまりプロレスを見ない人は「何で避けないの?」と疑問を持つようですが、むしろ受けなければならないのだということが分かっていただけたでしょうか。
ロープの上から飛び込んできた人も受け入れるのがプロレスです。
ロープの上から飛び込んできた人も受け入れるのがプロレスです。

受身とは、大怪我をしないための技術

技は受けなければならないものだと分かったところで、次に技を受ける上で注意すべき点について考えてみましょう。

いくら相手の技を受けるのが醍醐味といえど、リング上で大怪我してしまっては選手同士はもとより、観客にもどんよりした雰囲気が流れます。
そのため、選手は怪我をしないように気を付けなければなりません。

怪我をしにくい人の特徴として、まず体が柔らかいことが挙げられます。
体が柔らかいと技を受ける際に変に力が入らないので、衝撃をほどよく分散させることができるようです。私は意外と体が柔らかいため、これまでさほど痛い思いをしないで済んでいます。

ただ、柔軟性のみに頼って攻撃を受けていると若干迫力に欠けるところがあります。ぶっちゃけかっこ悪いです。
吹っ飛んでゴロゴロ転がると、痛くはないけどかっこ悪い。
吹っ飛んでゴロゴロ転がると、痛くはないけどかっこ悪い。
そこで、登場するのが受身です。
受身は柔道などにもありますが、技を受ける時に取るべき姿勢や動作によって衝撃を和らげる技術です。
柔軟性にはある程度生まれ持った個人差もありますが、受身は練習によって誰もが習得することができるのが素晴らしいところです。
何より素晴らしいのは、受身を取ると技を受けた感じが出てきて見た目が格段にかっこいい。
上手い人の受身は見た目だけでなくスパーン!といい音が響くのですが、この音があると「技が決まった!」という雰囲気が出て客席も盛り上がります。
投げられていい音を響かせるのが今の目標です。
投げられていい音を響かせるのが今の目標です。

受身の種類

受ける技によって受身の取り方も違ってきますが、大きく分けて三種類の受身があります。
ひとつめは、前受身。前方に倒れこむ時に使う受身です。
何かの礼拝のように見えますが、前受身。
何かの礼拝のように見えますが、前受身。
これにより、顔面直撃や膝を痛めることを防ぎます。
顔面直撃で鼻血くらいで済めばいいですが鼻を骨折することもありますし、膝の皿がずれたり割れたりして運動できなくなってしまっては元も子もありません。
全然関係ないですが、『元も子も』という言葉を見る度に故・ジャイアント馬場の妻、馬場元子さんを思い出します。

ふたつめは後ろ受身。正面から技を受け、後ろに倒れこむ時に使います。
後ろ受身。背中を付けて脚を上げる。
後ろ受身。背中を付けて脚を上げる。
頭を打ったり、背中や腰を強打するのを防ぐことができます。
脚を上げるのは何故かと思われるかもしれませんが、以前後ろ受身に失敗して背中と足の裏を同時にマットに付けてしまったことがあり、足の裏にものすごい衝撃が走ってびりびりきました。かなり痛かったです。
皆さんも後ろ受身をとる時には、脚を上げるのを忘れないでください。

そして、前回り受身。個人的には一番好きな受身です。
受身だけで、ひとつの技のようなかっこよさがあります。
前転して、スパーン!と受身。
前転して、スパーン!と受身。
前転することで衝撃を和らげる効果が高くなるため、受けるダメージが最も少ない受身です。

前方へ倒れこむ場合、技を掛けられてからマットに付くまでに時間や空間的な余裕があれば前回り受身を、叩きつけられような形であれば前受身をとる、というように状況に応じて受身を使い分けます。
また、技によって立った状態からの受身なのか座った状態からの受身なのか違ってきますので、どんな姿勢からでも受身が取れるようにならなければなりません。

横向きに転倒する場合や高い位置から落とされる場合もありますが、基本的にはこの3つの受身で高さや角度などを調整して対応します。

技の練習を通して受身を学ぼう

技の種類に応じて使う受身が違うと言いましたが、たとえば基本的な投げ技であるボディスラムで見てみましょう。
基本的な投げ技のひとつ、ボディスラム。
基本的な投げ技のひとつ、ボディスラム。
ボディスラムは持ち上げた相手の背中をマットに叩きつける技なので、後ろ受身をとることになります。
後ろ受身はいいけど、投げる方まで一緒に倒れてしまった悪い例。
後ろ受身はいいけど、投げる方まで一緒に倒れてしまった悪い例。
受身そのものを練習することも重要ですが、技をかける練習を通して「この技を掛けられたらどのように受身をとるか」を実践すると身に付きやすい場合もありますので、皆さんも是非実際に技を掛けられてみてください。
特に後ろ受身の場合、倒れる方向が見えないので練習するのが少し怖いのですが、投げられてしまうと受身をとらざるを得なくなるのでお勧め!
自作自演の千尋の谷の獅子ですが、そんな状況になれば案外ちゃんと受身がとれるものですよ。

また、技を受ける側だけでなく仕掛ける側にも受身が求められる場合もあります。
ポピュラーな技でいうと、ドロップキック。誰もが聞いたことのある、プロレスの基本的な技のひとつです。
ジャンプして両足で相手を蹴りつけるドロップキック。
ジャンプして両足で相手を蹴りつけるドロップキック。
この場合、この後にふたつの受身が発生することになります。
後ろ受身も怖いけど、この前受身は高い位置からなので相当怖い。
後ろ受身も怖いけど、この前受身は高い位置からなので相当怖い。
技を受けた方が受身をとるのはもちろん、蹴りを仕掛けた方は跳びあがった位置からマットに落ちる際、体を反転させて前受身をとらなければなりません。
蹴りに成功しても、その後の受身に失敗したら自分もダメージを負ってしまう諸刃の剣です。
私だったら、相手へのダメージ以上に自分の膝を痛めつける自信があります。
近年の大技志向のせいかドロップキックのような基本技を侮る人がいますけど、結構難しいんですよ!

受身という技術のすごさ、多少は伝わったでしょうか。
ただ、どんなに受身が上手い人で試合中は疲れから姿勢が崩れることもあるし、技を掛ける側の態勢や角度が崩れて受身が取りにくいこともあります。慣れていないと技を掛けられてとっさに受身を出てこないこともあります。
技を掛けるのはもちろん楽しいのですが、受身が上手く取れるようになってくると「少しはプロレスができるようになってきたかな」という実感が湧いてきます。

皆さんもプロレスごっこをする時、これからは技を掛ける方ばかりでなく受ける方にも力を入れてみてください。
ブレーンバスターも技を掛ける側にも受身が必要な技。かっこよさの裏には技術がある。
ブレーンバスターも技を掛ける側にも受身が必要な技。かっこよさの裏には技術がある。

もう「受身だからダメだ」とは言わせない!

このように、受身とはダメージを緩和させるために自らとるべき行動であり、状況に応じて使い分ける必要があり、時には攻撃に付随することすらある、決して『ただ待っているだけの状態』ではありません。

なので、受身を軽く扱っているような説教に対して私は断固としてNOを付けつけます。

今後私に物申したい方は、「受身だから」ではなく「消極的だからダメ」「ネガティブだからダメ」と言うようにしてください。

それとこの前、前回り受身の練習をしていたら靴が脱げてリング外に飛んでいったので、多少履きづらくても脱げにくい靴を履いた方がいいと思います。私からの受身アドバイスでした。
こういう形式で受身の練習してたら靴が脱げた。
こういう形式で受身の練習してたら靴が脱げた。

  

 
 

 

 
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