「とある少女の聖誕捧呈 (クリスマス・プレゼント)」
- 2013年12月23日 13:10
- SS、とある魔術の禁書目録
- 14 コメント
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- 1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:15:46.09 ID:HqZl913B0
- 禁書SSです
黒子の一人称は通常『わたくし』ですが、ひらがな表記だと読み難いので
漢字表記で『私(わたくし)』としています。ご了承ください - 2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:16:44.74 ID:HqZl913Bo
- 「はぁ…… 不幸…… ですの」
風紀委員である事を示す腕章を腕に誂え、少女は街行く人を横目にそう小さく零した
今日はとある聖人の誕生日、時刻は夕刻、ともすると、一年で最も活気付き
そして最も浮わっ付いた時間帯、なのかもしれない
そんな時刻に少女は一人街を歩く、否、歩かねばならないわけが在った
「仕事とはいえ…… この日この時に警邏なんて…… 最悪ですの……」
そう、街行く人間が増えれば自ずと事件・事故の発生率も増え、警備委員・風紀委員の仕事は増加する
そして少女は風紀委員、しかもその中でも指折りの実力者、となれば当然今日もお仕事である
それは勿論少女とて理解しているが、そこはやはり遊びたい盛りのお年頃
幸せ一杯のバカップルを横目に全くの平静を保てる程、枯れてもなければ大人でもない
どうしたって愚痴の一つも言いたくなるだろう - 3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:17:19.74 ID:HqZl913Bo
- ただ、少女がフラストレーションを感じる理由はそれだけではない
少女の敬愛するお姉様は、とあるツンツン頭の類人猿と遭遇すべく、朝から街を出歩いている
つまり、まかり間違えば、愛しのお姉様と憎き類人猿は今頃デートと洒落込んでいる可能性すら在るということだ
それは少女にとって最悪の事態で在り、絶対に阻止せねば為らない事態にも関わらず
自身は職務の為、何の対策も取る事が出来ない
そんな事情もまた、少女のフラストレーション増大に拍車を掛ける一因と成っていた - 4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/22(日) 19:18:09.10 ID:HqZl913B0
- と、そこに
『白井さーん』
少女の耳におっとりとした声が届く
「なんですの?」
若干ズレかけていたインカムを調整しつつ少女は答えた
『お疲れのところを悪いんですがー、二丁目の青葉交差点付近で人だかりが起きたみたいなんです』
『念の為行ってもらえますか?』
「はぁ……」
どうせどこぞバカ共が、喧嘩でもおっ始めたに決まってますの
クリスマスに喧嘩の仲裁…… 不幸…… ですの……
と、共に頑張る同僚に愚痴れるハズもなく
『あの~…… 白井さん……?』
「あー!! もう! 了解ですの! 今すぐ急行致しますわ!!!」
そんな気合いと少しの怒気を込めた雄叫びと共に、少女の姿は音も無く掻き消えた - 5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/22(日) 19:18:38.27 ID:HqZl913B0
- 「ジャッジメントですの!!」
突如虚空から顕れた少女は、身分の証明と威嚇の為、開口一番そう声を張り上げた
本来なら突如顕れた風紀委員にスキルアウト共は動揺の声を洩らすものだが
何故か今回は何のレスポンスも無いどころか、人垣すらそこには無かった
「あら……?」
その事に少女も気付き、また、突如現れた風紀委員に訝しむ通行人は何人はいるが、人だかり等は無い
いや、通行人以外がいないワケでは無かった
20メートル程先の道端には人間が倒れており、その側に一組の男女が居た
少女はその三人が当事者だろうと当たりを付け、一旦側までテレポート、そして男性に声を掛けようとした瞬間
「げぇっ! 類人猿!」
そんな少女の風貌に似つかわしくない言葉を吐く - 6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:19:13.15 ID:HqZl913Bo
- 一方、突然現れた少女にそんな台詞を吐かれた少年は
「……上条さんと会うだけでそんなにピンチですかそうですか」
そう、何だかお疲れ気味に、少女へ言葉を返す
そんな少年の反応とは対照的に
「うーん、単なるお約束みたいな物ですの、深く考えないで頂けますかしら?」
頬に手を当て、先程とは打って変わって軽やかな声で応える
そして、その表情には薄らと笑みが浮かんでいた
不倶戴天の敵
常日頃、少女は少年にはそんな意識を抱いているが、果たしてそんな想いだけなのか
その声、その笑みから察するに、きっとそれだけではないのかもしれない
ただ、少女自身は自分が軽やかな声を上げた事にも、笑みを浮かべている事にも気付いていない
それだけは確かだろう - 7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:19:53.48 ID:HqZl913Bo
- 「で?」
「……で? っと言われてもなぁ」
「だから一体何が起こったか聴いてるんですの。ついに脳までお猿さんに退化してしまわれたんですの?」
「……何故このお嬢様は上条さんにここまで辛く当たるのでせうか」
「そんな黄昏てないでさっさと事情説明をして下さいまし」
「ハイハイ……」
「ハイは一回だけで結構ですの」
「……ハイ」 - 8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:20:40.11 ID:HqZl913Bo
- 「つまり、そのお嬢さんの鞄がそこでグースカ寝ている男性に引ったくりに遇い、それを偶々通り掛かった類人え…… 」
「……上条さんが取り返し、ついでに無力化もさせた…… という事ですのね?」
「正確には、そこの横路から出て来た上条さんと、逃走して来たそいつが衝突して、そいつだけ気絶した、なんですけどね 」
「……不幸だ」
少年が小さな声でそう補足する
「どっちでも同じ事ですの」
「それで……」
そう言って少女は被害にあった女性に向き直り
「先の状況説明に何か間違いや訂正は?」
確認を取った
「……いえ、間違いありません」
『こちらでも監視カメラの録画映像を確認したところ、お二人の証言に間違いは無さそうですよ』
情報集積に当たっていた同僚からも声が届き
「なるほど…… 確定……ですわね、これは……」
少女はそう一人ごちた - 9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:21:16.25 ID:HqZl913Bo
- 「では調書を作成する為、最寄りの警備員支部までご同行頂きたいのですが」
「構いませんが…… 時間の方は……?」
「ご心配には及びませんわ、簡単な書類に記入して頂ければ終わりですの」
「そういう事なら」
そう言って女性は頷いた
「では…… 余り時間を掛けるワケにはいかないご様子ですので、テレポートでも宜しいですの?」
「はい」
「では……」
そう言って少女は女性の手と伸びている男性の足を掴みテレポートの準備に入る
と、そこに慌てた声で少年が割って入る
「ちょっ! 俺はっ?!」
「貴方が居るとテレポーテーションが出来ませんの。ですから、お帰り頂いて……」
構いません、そう言い掛けた瞬間、少女はとある目下最大の懸案事項を思い出し
「……」
「……? どした? 白井?」
「って全然構わなくありませんのっ?!」
突如として声を上げた - 10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:21:56.16 ID:HqZl913Bo
- 「はあ?」
「と! とっ! 殿方っ! お姉様はどうしたんですの?!」
「はあ? お姉様って…… 御坂の事だよな?」
「御坂がどうかしたのか?」
「ですからっ! お姉様とは──」
そう少女が口を開いた時、道端で気絶していた男が
「ふぁ~……」
と、寝起き感丸出しの声を発し
「……なんかそいつ起きそうだぞ、白井?」
「……ならばもう一度眠らすだけですの」
そんな事を言い終える前に少女は
ゴツン!
と、男の顎に掌底を一発入れた - 11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:22:57.80 ID:HqZl913Bo
- 「……これは酷い」
「下手に暴れて余罪が付くよりかは、コチラの方が余程当人の為になりますの」
「ああ、そういう考え方も在るのか…… なぁ……?」
「そうですの」
「……まぁ、それはさておき、流石にこれ以上ご婦人を待たせるわけにもいきませんわね」
思わぬアクシデントにより平静を取り戻した少女が状況を再度理解する
「貴方には訊きたい事がありますの、ですのでお二人を支部まで送り届けて戻って来るまで
ここでお待ちになっていて下さいまし」
余りにも一方的なその物言いに、流石の少年も
「……拒否権は?」
と、小さな抵抗を試みるも
「在るとお思いですの?」
イタズラっぽく笑みを浮かべる少女を前にしては
「はぁ…… しゃーない、気を付けて行ってこいよ」
と、ただただ無条件の降伏を受け入れるのみだった - 12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:24:43.37 ID:HqZl913Bo
- 「良いお返事ですの」
「では」
そう言って少女は女性と寝こけた男性に手を伸ばし転移の準備に入る
と、そこで、黙って二人の漫談を眺めていた女性が口を開いた
「ちょっといいですか?」
「……? なにか問題でもありますの?」
「そうじゃないんですけど、最後にもう一度お礼を」
「はぁ…… そういう事でしたら、どうぞですの」
「それじゃあ」
そう言うと女性は少年に体を向け
「上条君! ありがとうございました!」
深くお辞儀をする - 13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:25:16.04 ID:HqZl913Bo
- 一方、お礼を言われた少年は若干照れながらも
「いや、だから、お礼を言われる様な事なんて……」
そう、謙遜、と言うべきか本音と言うべきか、そんな事を口にする
少年のそんな反応が気に入ったのだろう、女性は笑みを浮かべ
「そういう謙虚な姿勢は大切だけど、そんなのばっかじゃ出世レースで勝ち抜けないぞっ、少年!」
と、不出来な弟を窘める姉よろしく、少年のオデコを人差し指で軽くつっ突いた
そんな女性の仕種の前に若干照れながらも
「……えーと、善処します、って事で」
と、少年は答え
「うん、ヨロシイ」
女性も、上機嫌に返事をした
そんな二人の遣り取りを見詰めていた少女が声を掛ける - 14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:26:00.61 ID:HqZl913Bo
- 「……もう、よろしいですの?」
声こそ平静を保ってはいるが、内心苛ついていた。何故苛ついているのかは、少女自身にも分からなからない
きっと、それが分かる様に成るのには、もう暫く時間が掛かる…… のかもしれない
「あっ、ごめんなさい」
「いえいえ、それでは今度こそ」
そう言って少女は三度目の転移の準備に入る
そして
「上条君! お店にも寄ってね、絶対よ!」
女性のそんな声を最後に、少女等の姿は虚空に消え
寒空の中、少年だけが残された - 15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:28:02.16 ID:HqZl913Bo
- 「お待致しましたわ」
街行く量産型バカップルを眺め、なんだかアンニュイな気分に陥っていた少年の背中に声が掛かった
少年は振り向き声の発信者を認める
やはり発信者は白井黒子、その人であった
「結構早かったな」
そして少年もそんな言葉で迎え入れる
「流石にこの寒空の中、長らくお待たせするわけには参りませんもの」
「おぉ…… 白井がそんなしおらしい発言をするとは……!」
「私の個人的な用件でお待たせしてる以上、相応の対応は致しますわ…… 例え非ヒト科の生物であっても」
「聞こえてんぞ最後の」
「あら、嫌ですわ。私ったらつい本音が……」
「いや、そこは何か巧い言い訳考えろよ」
「まぁ、貴方がお猿さんか人間かの論争はさて置き」
バッサリとそう切り捨てた少女はスタスタと近くにあった自販機にまで歩き
「どれにしますの? 缶飲料で恐縮ですが、ご馳走致しますわ」
と、問い掛ける - 16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/22(日) 19:28:44.56 ID:HqZl913Bo
コメント一覧
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- 2013年12月23日 13:21
- 壱
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- 2013年12月23日 13:45
- 弐
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- 2013年12月23日 13:49
- 三
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- 2013年12月23日 13:53
- 参!
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- 2013年12月23日 14:11
- おい、コメントしろよ
とりあえず良かった
同時に悲しくなる
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- 2013年12月23日 14:36
- 最高じゃないの
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- 2013年12月23日 15:58
- ああ、上条さんと黒子の話は良いな
どっちのエンドもそれらしくて良い
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- 2013年12月23日 16:03
- (´・ω・`)
壁に穴が開いたわー
この季節寒いんだからあやまって?
-
- 2013年12月23日 19:17
- ・・・・この携帯のところのくだり、別のSSでも同じのを見たような・・・同作者?
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- 2013年12月23日 19:19
- 一人称を気にしてる余裕があったらもっと気にすべきとこあるだろww
ディティールに拘りすぎて全体が疎かになったことがよく分かる例
-
- 2013年12月23日 20:47
-
GJ!クリスマス前にえ~もん見れた!
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- 2013年12月23日 22:07
- おい。俺の部屋っていつの間に吹きさらしになったんだよ、どうしてくれる
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- 2013年12月23日 22:39
- 良かったわ
ちょっと黒子がデレすぎの気もするけど
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- 2013年12月23日 23:46
- わたくしと私に注釈する余裕があるなら他にも注意しろよ
黒子が上条呼ぶ時は「殿方」じゃなくてちゃんと「上条さん」って呼ぶわ
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