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人間の死期を予測する猫、「オスカー」についての考察 : カラパイア

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 これは今から数年前に話題になった1匹の猫の話だ。先日、余命あとわずかの病床にあるおばあさんのそばを離れない猫の記事をお伝えしたが(関連記事)、その時、是非「死期を予測する猫」、オスカーの話を紹介してほしいとの連絡をいただいたので改めて記事にすることにした。

 米国北東部ロードアイランド州にあるリハビリテーション介護センターには、患者の死期を感じ取り、死が間近に迫った患者の枕元に立つ猫がいる。三毛猫の"オスカー"だ。の施設に勤める医師デビット・ドーサによると、オスカーは患者の死期を予測するミステリアスな力を持っているという。

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 オスカーは施設内をぶらつき、余命いくばくもない患者の死に立ち会う為に立ち止まる。オスカーはその療養施設で過去5年間以上にわたり少なくとも50人の死を正確に予測しているという。

施設内を巡回するオスカー
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 オスカーが最初に注目を浴びたのは2007年、医師ドーサが有名な医学雑誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンにオスカーにまつわる記事を執筆した時だ。その記事は後に"Making the Rounds with Oscar: The Extraordinary Gift of an Ordinary Cat."というタイトルで出版され、2010年の話題の本になった。

 その医学雑誌に載ったドーサによるオスカーの記事は、ところどころ"研究"として述べられているにもかかわらず、中身はそういったものではなかった。ネコ科の動物が持つ"死を検知する能力"への科学的な実験や、医学的な調査は何も行われていなかったのだ。つまりそれは論文の類ではなく、個人的なエッセイだった。

 エッセイに問題があるというわけではない。だがエッセイというものは基本的に物語や逸話であって、科学的根拠や確固たる証拠を引き合いに出す必要がないものだ。

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 ドーサが書いたオスカーの本に対する批評が、超常現象などを科学的に調査するSkeptical Inquirerマガジンに掲載され、研究者のジョー・ニッケルが、その猫の驚異的な能力に関する科学的な厳密性が足りないことを言及した。

 「ドーサの証言は"あてにならないお話"として科学界で批判される類のものだ。それは個人的な身の上話に基づいたものであり、誤った認識や不完全な記憶、民俗学的作用りなどに影響を受けているようだ。」

 偏った選択とはありがちな問題で、"ある出来事を信じない人々がそれを否定する話を集める"ことがあるのと同様、"ある出来事を信じる人々も自然とそれを補強する話を集める"傾向がある。

 かくして医師ドーサは、著書の中でいくつかの出来事を作り上げ、想像上のキャラクターを生み出したことを認めた。そしてニッケルはこう結論づける。"その怪しいお話の証拠を分析しようとするのは無意味だ。それは良いお話を語るために操作されているからだ。だからもちろん科学的な価値は無い。"

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 オスカーの伝説の裏にあるデータに実際どの程度の信頼性があるのか。それにいくつか疑問がある。オスカーはその死の瞬間に立ち会ったのか、それは数分間?もしくは数時間か?彼は全ての死を見届けたのか?それともそのごく一部?彼は看護師のそばで鳴いて知らせたのか?または少々早めにその部屋にぶらりと立ち寄ったのか?

 このような疑問についてのしっかりしたデータは無い。しかしオスカーが他の患者に比べて、さらに末期状態にある患者達を実際に訪ねると仮定すれば、ある程度の科学的な説明がつくかもしれない。

 オスカーが、単に患者の状態に関わる看護師やスタッフの行動に反応している可能性はある。例えば、死期が近い患者達の居る部屋が慌ただしくなることはありそうだ(看護師達は容態が安定している患者より、特別に死の危険性がある患者の方に留意するというのは明白な理由であるため)。オスカーはそういったベッドを単純によく訪ねたのかもしれない。なぜならそこには大勢の人が向かっていたり、患者の容態が特に良くないみたいだからだ。

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 動物が彼らの周囲のかすかな匂いをしばしば感じとり、反応することはよく知られている。かつて"クレバー・ハンス"という馬の有名な実験があった。それは1800年代に読み書き、そして計算の驚異的な才能を持つといわれた一頭の馬、ハンスの話だ。

 ハンスがトレーナーからの合図に無意識に反応していたことを2人の心理学者が発見するまで、その馬は大勢の観客を困惑させた。ハンスはトレーナーが微笑んだり、身体を前に乗り出すといったわずかな動きにさえ反応した。"賢いハンス"の話とその無意識の合図の発見は、心理学者とアニマルコミュニケーションの専門家の間で今だに議論されている。実際に昨年のある実験では、犬達が飼い主の顔の表情から読み取った合図に従うことがわかった。

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 オスカーは余命わずかといわれる人々の枕元に運ばれることもあった。これはペットが死を和らげることができる、”ペットセラピー”というもっとな理由のためだ。

 オスカーがぶらつくのはただの病棟ではなく、41床のベッドがある高度な認知症の専門病棟であることに注意することも重要だ。ドーサが認めるように、"彼らの症状が進行し、数名の患者が亡くなることは予想外のことではない"のだ。

 仮にオスカーが十分長い間必要な数の部屋をうろつけば、亡くなる患者の部屋いるか、もしくはちょうど偶然その近くにいる可能性は高そうだ。だが、現在もドーサと他の人々はオスカーの予測はぞっとするほど当たる、と主張している。

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 他にあり得ることはないだろうか?犬は 「ガンやその他の病を検知できる」 という興味深い調査がある。最もありそうな説明としては、超自然的な能力の代わりに犬が持っている極めて敏感な鼻が、その病に対する反応として患者のから発せられるわずかな生化学的痕跡を嗅ぎつけることができる、というものだろう。
 
 イヌ科の動物による病気の検知は偶然以上に的中するという論文が示されているが、その多くは正規の医療検査レベルの精度には未だ達していない。2004年のブリティッシュ・メディカル・ジャーナルの研究に、犬達が偶然を25%上回る確率で膀胱がんを探知できたとの結果が示されているが、その精度は標準的な検査よりも低かったという。

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 ドーサはオスカーが持つ力の可能性を、犬のそれと同じように説明するが、死の直前にどういった特定の化学物質が放出するかについては不明だ。加えて病院設備の中には、どんな動物による検知も遮りそうな"匂い消し"がある。花や食べ物、消毒液、そして医薬品や香水といった、臭覚を混乱させる匂いが無数にあるのだ。

 死を嗅ぎつける猫オスカーの話は興味深く、平和な話だが科学的に説明がつかないものだ。だが科学では解明できないものがこの世には満ち溢れている。

 もし本当にオスカーが人の死に際に立ち会ったとした場合、その解釈は「人の死を見届けに来た猫」となるか、「ネコ科の殺人鬼現る。彼が訪ねる所にはどこでも死がもたらされる。」となるわけだが、前者の解釈の方が安心できることは確かである。

動画:Oscar the Cat

via:Can This Cat Predict Death?・原文翻訳:R

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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 20:52
  • ID:.8MSow8k0 #

ロシアではエルミタージュ美術館に猫住まわせてるし
アメリカではこれか
日本ではお役所が絶対に許さないだろうなぁ

岩合さんの番組見てると、世界のあちこちの国は
もっと猫に優しい・・・というか人間も猫ももっと
仲良く楽しく幸せに過ごしてる感じ・・・
日本もそうなって欲しいよね

2

2. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 21:02
  • ID:FYVJRcFO0 #

取り上げない方が良かった話にも思えるわ

3

3. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 21:02
  • ID:TCxaawI90 #

患者の僅かな死臭でも嗅ぎとるんかな?
なににあしても優秀なセラピストだな、老後はこの病院で過ごしたいくらいだ。

4

4. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 21:07
  • ID:RmXxdueT0 #

真実は猫だけが知っている

5

5. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 21:25
  • ID:AZ1ISUpT0 #

日本の昔話に死者の気を吸った猫は人と話し、化けるというのを聞いたことがある

6

6. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 21:26
  • ID:jNfPaijz0 #

本の中で紹介されていたオスカーは、患者の最期を看取る誰かとして家族に好意的にとらえられていたな。
死の間際でも、こんな猫が側にいたら恐怖も少し和らぐのかもしれない。

ケトンを嗅ぎ取ると言う話もあったけど、理由はネコらしく神秘的であってほしいな。

7

7. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 22:09
  • ID:GFUY6SUH0 #

空間を感じる独特の臭いがしてた
死んだじいちゃんとかばぁちゃんが

8

8. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 22:12
  • ID:57Tm09GZ0 #

オスカーの見透かすような上から目線がイイ

9

9. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 22:16
  • ID:TA.H1WAl0 #

自分が老いて死ぬときに猫がそばにいてほしいから
日本の病院や施設にも動物がいたらいいなぁ。
もふりながら死ねるなんて、自分にはこれ以上のシチュエーションは無い。
それにしてもきれいな猫だなぁ。

10

10. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 22:28
  • ID:EzKWFzFI0 #

最期にこんな可愛い子に看取られるなんて幸せ、と同時に居座ったらもうそろそろ死期が近い事を悟らないといけないのかあ〜、それにしてもこの子可愛い!

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11. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 22:32
  • ID:M6wY6iOM0 #

Dr.ハウスで死を予測する猫が出てきたけど、この猫が元になってるのかな?

12

12. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 22:46
  • ID:j.2FzYGy0 #

この手の話はきっと
後で科学的な証拠が出てくると
思うけどな

一つわかってることは
看取ってくれるニャンコちゃんは
大事な役目を果たしてるという事かな

13

13. 空缶

  • 2013年12月25日 22:49
  • ID:ey.G7h.f0 #

観察・研究不足な事が、オスカーが死臭を察知していないという証明にはならないし
結局、真相はどうなのかってデータが不足しすぎている。
「今後の研究に期待」でお流れだろ、今のところは。

14

14. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 23:05
  • ID:d2nQlQ.90 #

猫「来ちゃったぜ! あんた死ぬぜ!!」
患者「・・・」

15

15. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 23:09
  • ID:KmVJqPZA0 #

あの世に行く患者の準備を手伝う猫なんだと思う。
死後の世界を信じてない人は迷っちゃうし、
死に対する苦しみが大きすぎると執着になるし、
そういう事が無いように、癒しと心の準備を手伝ってるんだと思うな。

16

16. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 23:41
  • ID:eu5TgTrL0 #

我が家の猫は私が風邪引いたかなとか体調悪いとき猫から鼻をくっつけてきて私の鼻のにおいをクンクンかいでくるよ。
元気なときは鼻ちゅんの挨拶だけだから何かしらにおいをかぎとってるんだと思う。

17

17. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 23:44
  • ID:Tdd3QrIi0 #

このオスカーちゃんが死期を予測する猫として有名になってしまったことにより、返ってこの子が枕元に来た患者さんは「わぁ、次は自分が死ぬのか」と余計にガクッとこないのかな、とふと思った。死ぬほど弱っているときにそんな余裕なんてないかな。
なんにしても不思議な力だなぁ

18

18. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 23:48
  • ID:RFuab0W00 #

子供の頃、死期が近い人の周囲が黒く霞んで見えた。
親から「人を指差すんじゃない」とよく叱られてたけど
思い返すにその事を周りの人に教えようとしていたんだと思う。
今はもう見えないよ。

19

19. 匿名処理班

  • 2013年12月25日 23:55
  • ID:oYe1giT70 #

人間の考え方、受け取り方しだい。
猫は、何も考えてない。
おいしい物やふかふかの寝床気持ちいいところに行くだけ。

20

20.

  • 2013年12月25日 23:57
  • ID:e6rqhVus0 #
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