少女「あなた、サンタさん?」
- 2013年12月25日 20:10
- SS、神話・民話・不思議な話
- 5 コメント
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- 1 : ◆nlCx7YJs2Q 2013/12/08(日) 23:03:51.70 ID:plqfGK6d0
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全く持って違う
「おじさんはサンタさんでしょ?」
この俺のどこがサンタだというのか
「おじさんはサンタさんねっ!」
もはや確信か。違うと言っている
何処の世界に銃を突きつけるサンタがいるというのか
「今日はクリスマス・イブだもの」
イブの来訪者が皆、サンタだとでも?
「赤色の服を着ているわ」
お前ん家の警備員ぶっ殺した時に浴びた返り血だ
「袋も持っているもの」
依頼達成の証に『首』を持って帰れと言われたからな
「なんだ違うのか。じゃあ、誰?どうしてここにいるの?」
お前の父親を殺しに来た。だからここにいる
「なんだ、やっぱりおじさん、サンタさんじゃない」
……何だって?
「クネヒトループレヒトなんでしょ、おじさん。それともジェド・マロース?知ってるわ、お父様が悪い人だってこと、だから懲らしめに来た。そう、おじさんは『黒色のサンタさん』なのね?」
クネヒト…?ジェド・マ…?
※このSSは! クリスマスと童話や昔話を交えて、少女とおっさんがだらだら話すSSです
言うまでもなく実在の人物、出来事、あらゆる事象とは関係ありませんフィクションです
苦手な人はそっ閉じでお願いいたします
ちなみに理想郷で似たような話があったら多分私です
- 2 : ◆nlCx7YJs2Q 2013/12/08(日) 23:06:05.39 ID:plqfGK6d0
- 「お父様なら隣の部屋よ。『慌てんぼう』なのね、サンタのおじさん?」
頭がおかしいのかお前。いや、待て
そもそも俺はお前の父親を殺しに来た殺人鬼だぞ。怖くないのか?
「子供がサンタさんを怖がるはずないじゃない。むしろ待ちわびていたわ」
殺人鬼だと言っておろうに……
んん?待ちわびていた?
自分の父親の死を?
「ええ」
即答か
「そうね」
不気味なヤツだ。子供らしくない
「よく言われるわ」
『殺されるー』とか思ったりして人を呼んだりしないのか?
「おじさんにとって『良い子』なのは子供らしい子供?怯えて叫んだほうが良かった?」
騒げばお前も殺す
「そうね、だから大声は出さないわ……ね?私って『良い子』でしょ?」
子供らしくない子供の事は『糞ガキ』と呼ぶようにしている
もういい、時間の無駄だ
「あ、待って、今行ったらダメよ、お父様の部屋には部下の人たちが大勢いるから」
……何?
「今行っても蜂の巣にされるだけよ?壁に耳を当ててみて、ホントかどうかわかるわ」
……どうやら本当のようだな
- 3 : ◆nlCx7YJs2Q 2013/12/08(日) 23:07:06.25 ID:plqfGK6d0
- 「ね?もう少し待って、そうしたら一人になる時間だから」
調子の狂う餓鬼だ。だがそうさせてもらおう。ただし少しでもおかしな真似をしたら……
「しないわよ。ねえ、それより、退屈だわ」
俺はヒヤヒヤしているよ、少なくとも退屈じゃない
「そうなの?自分の家と思ってくれていいのよ?」
お前と違ってそこまで図太い神経は持ち合わせてはいない
「むー……ああ、それならお話をしてよ」
いきなり何を言い出す?
「お話をして?私この部屋から出たことがほとんどないの。色んな国の色んな人の話が聴きたい。おじさんはサンタさんだから、色んな国の、色んな人に会ってきたのでしょう?」
まあ、それは否定せんが、対面したヤツはほとんど殺したからな
「何でもいいわ。お話して?そうすればおじさんは落ち着けるし、私は退屈しない。ね?お互い得するわ」
ダメだ。隣の様子を伺うのが先決だ
「……大丈夫よ。お父様が一人になる時は……私に声が掛かるから」
それはどういう……ああ、そういうことか
「そうよ……『悪い子』で失望した?」
いいや。今日も一切の躊躇い無く仕事が出来そうだ。『良い子』だよ、お前は
「そう、なら良かった。なら『お話』してくれる?」
……そうだな、まあいいだろう
- 4 : ◆nlCx7YJs2Q 2013/12/08(日) 23:09:26.68 ID:plqfGK6d0
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・・・・・・・・・ ・ ・ ・
「……というわけだ。しかしなんだな?奴隷制が廃止されて随分になるのに、下層の労働者は奴隷と変わらない。食えない、止めれない。皮肉なもんだ」
俺には関係ない。ともかく今回の標的はその財閥のボスだな?
「その通りだ。一代であの財閥を築きあげた経営手腕は見事なものだが、力を付けすぎた上に付け上がりすぎた。政治にまで手を伸ばしてくるとは呆れた上昇志向だ。貴族様方に目を付けられて当然だろうに」
その貴族連中も、こいつから随分と金を借りてるそうじゃないか。大方本当の目的は『借金の踏み倒し』だろ?
「それもあるだろうね?だが考えてもみろ。コイツはあらゆる産業を独占している。対抗の企業が立ち上がろうとも根こそぎ叩き潰す。だから新しいものは生まれない。産業も停滞する。コイツが生きていても害は多いし、死んで得する人間は山といる。理由なんて数えだしたらキリがない」
それこそ知らん。路頭に迷う者も山といるだろうがそれも知らん
「びっくりすることにな……コイツに雇われた労働者の中には働きながら死ぬ奴等もいるらしい、なんだったかな……そう『カローシ』という病気だったかな?」
だから知らんと言っている
「まあ、お前も働きすぎて『カローシ』しないようにな?」
だったら報酬と休みを増やせよ
「俺がしてやれるのは安酒奢るくらいかな?ま、健闘を祈るよ」
- 5 : ◆nlCx7YJs2Q 2013/12/08(日) 23:11:11.62 ID:plqfGK6d0
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・・・・・・・・・ ・ ・ ・
「え?あの財閥の会長を殺したのおじさんだったの?」
そうだ。まあ時間は掛かったが、危ない橋を渡ることもない、楽な仕事だった
「フフ、お父様が聞いたら顔を真っ赤にして怒りそう」
ああ、やっぱりお前の父親とつながっていたのか
「そうよ。まあ私は大嫌いだった。いっつも私の事、いやらしい目で見てたもの」
ぶっ殺しておいて正解だったようだな
「筋違いかも知れないけれど言っておくわ。ありがとう」
自分の仕事に対して礼を言われたのは初めてだ
「それで?続きは?」
お前が口を挟んだんだろうに
……俺はヤツの調査を開始したんだが、街の連中の様子がおかしいことにすぐに気付いた。どいつもこいつも……目が死んでいた
何の目的も無く『労働すること』こそが『正義』だと妄信し、そうでないと自分を保てない。『楽をしているヤツは悪だ』と。だが自分は一向に楽にならず、疲れた体を引きずっていた
仲介役はあれを『奴隷』と言っていたが。なまじ思考する分、俺には奴隷以下に見えた
だがそんな中、安酒場から陽気な音楽が聞こえてきたんだ
- 6 : ◆nlCx7YJs2Q 2013/12/08(日) 23:13:10.19 ID:plqfGK6d0
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・・・・・・・・・ ・ ・ ・
「お客さん、ご注文は?」
店主のお勧めでいいよ。適当に頼む
街の雰囲気とは違ってここは随分と賑やかだな?
「ええ。あの演奏家……って言っていいんですかね?やっこさんのお陰で随分なもんでさ」
あれはこの街の者じゃないんだろう?
「ですね。この街にいる者には、あんな風にその日暮しな生活をする勇気は無いですよ」
結構悪し様に言うんだな?
「まあねえ。こうして店構えて安定した暮らしが私には性にあってます。それに街のヤツらだって。とりあえず、なんかしらの仕事についてりゃ食いッぱぐれることはないんだから、ああいった芸人みたいな暮らしは理解できませんよ」
そういう割には楽しそうだな、店主
「まあ、ああいった『自由』って言うんですか?憧れはしますからねぇ。本人は楽しそうですからこっちまで楽しくなるってモンです。けどねぇ……やっこさんの収入じゃこの冬も厳しいでしょうが」
……違いない
うるっせーんだよ!!止めろ下手糞がッ!!
「あーあ……まただよ」
あれは……労働者か
「昼から夜までジャンジャンやかましいんだよ!祭りじゃあるまいし!仕事しろよ、遊び人がぁ!!」
「私の演奏がお気に召さなかったらすみません!どうか暴力はおよしになってください!」
「気に召さねぇのはテメェだよ!!こっちは働いて社会に貢献してんのに、こんな遊びで金儲けしようとしやがって!いいご身分だなぁ、あぁ!?」
「……皆さんは『遊ばない』のですか?」
「……あぁ?」
「生きるために『働く』ことは確かに必要なことです。私だってこんな拙い演奏で御代を頂戴している身分ですからそれはわかります。でもこうして身を立てているのは、私は『楽しんで生きたいから』です。それは悪いことですか?」
「……」
- 7 : ◆nlCx7YJs2Q 2013/12/08(日) 23:15:10.36 ID:plqfGK6d0
- 「私にとっての『幸せ』はこうして大好きな音楽を演奏して、貧しいながらも面白おかしく生きていくことです。そう望んで、そう生きていくことはおかしいことですか?」
「コイツ……」
「演奏がうるさいというのなら、それは本当に申し訳ありませんでした。でも私がこの生き方をすることで貴方様方にご迷惑をお掛けいたしましたか?」
「……ヤメロ」
「どうして働いているのですか?社会に貢献するのはなんの為ですか?最終的に自分の為なのではないのですか?どうして生きているのですか?働くのは何のためですか?生きるためだけですか?楽しむ為、幸せになる為ではないのですか?」
「うるせぇんだよ、この女ァ!!……グッ!?なんだテメェは!?離しやがれ!!」
そこまでにしてくれ。酒が不味くなる
「知るかっ!さっさと離さねぇと……」
離さないと……なんだ?
「グッ!?クソッ!解ったよ!何もしない、離してくれ!!」
この場で一番迷惑なのはアンタだ。とっとと失せろ
「……ケッ!テメェも他所者か。どいつもこいつも働きもしねぇで気楽なもんだ、テメェらさっさと野垂れ死ねっ!この『キリギリス』共!!」
お前は死ぬまで働かされるんだろうな、勤勉な『アリ』さん?
- 8 : ◆nlCx7YJs2Q 2013/12/08(日) 23:17:48.74 ID:plqfGK6d0
- 「あの……先程はありがとうございました」
ああ、さっきの芸人さんか
気にするな。俺も気にしてない
「いえ……まさか助けてもらえるとは思わなかったので」
助けが来るとも思えない状況でああまで突っ張ったのか?
頭がいいとは言えないな?
「ええ……この街でなくとも、私の生き方は賛成を得るのは難しいことなのでしょうね……でも、私には自分を偽って生きていくことなど出来ません」
だとしてもだ
「そうですか……」
ああ
自分でそういう風に生きるのは勝手だろうとも
だが、人の生き方にまでケチを付けるのはやりすぎじゃないか?
ああなって当然だ
「先に生き方を侮辱してきたのはあちらです」
まあその通りだな
だが、アンタがやってることは黒人街で『黒は嫌いだ』と書いた看板背負って歩き回っているのと同じだ。随分、直線的な喧嘩の訪問販売だよ
「は?」
この街では……いや、『今の時代』の『この国』では、あんたみたいな生き方をすること自体が悪なんだ。それが解っていないわけでもないんだろう?
「それは……まあ。ですが私が間違っているとは思えません」
そりゃあどちらが正しいかなんてのはないだろう
時代や国の主義によってまちまちだ
だから国が違えばアンタの考えも認められるだろうし、ヤツ等の考え方を馬鹿だと言う事だってある。そもそも『部外者』あーだこーだ言うのが間違いなんだ
「そうですね……でも『だからこそ』この国にいる以上、非難されるのは避けられないんでしょうね……」
そういうことだ
あんたは良い芸人だとは思うが、来る場所を間違えてる
「……踏ん切りがつきました。私、近々この国を出ます。貴方のお陰です、ありがとうございました」
別に
アンタを擁護したわけでもない
むしろこの国から追い出そうとしたように思われてもしょうがないからな
礼を言われる筋合いはない
- 9 : ◆nlCx7YJs2Q 2013/12/08(日) 23:19:36.75 ID:plqfGK6d0
- 「いいんです。私がそうしたいから、そうするんです」
あ、そう
「はい『今日くらいは』と思って頑張りましたが、駄目なものはしょうがないでコメント一覧
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- 2013年12月25日 20:46
- はい
-
- 2013年12月25日 20:57
- 完成度高いな
タグが神話なせいでまたシュールなアレかと思ったけど
-
- 2013年12月25日 22:34
- いいサンタだった
-
- 2013年12月25日 23:25
- いいわ、すごく良いです。
くぅ~、引き込まれた!
-
- 2013年12月26日 00:02
- 嫌いじゃない、むしろ大好きだ
なかなか、否、至極気に入った
有意義な時間が過ごせた
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