男「サラリーマンとは、闘い也!」
- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:00:28.55 ID:1OuKcuB10
< 自宅 >
ジリリリリ……!
男「起床ッ!」バッ
起床とは、闘い也!
布団をすみやかに脱出し、目覚めから0.15秒未満で直立すべし!
夢への未練、目覚めから0.25秒未満で断ち切るべし!
辛く険しい現(うつつ)と、向き合わねばならぬのだから……。
男「完全覚醒ッ!」キリッ
- 2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:05:25.43 ID:1OuKcuB10
男「洗顔ッ!」
洗顔とは、闘い也!
妻が用意せし熱く煮えたぎった湯の摂氏、限界突破の800℃!
これを躊躇なく顔面に浴びせられる漢でなくば、サラリーマンは務まらない!
バシャッ! バシャッ! バシャッ!
男「適温ッ!」
- 3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:10:05.72 ID:1OuKcuB10
妻「ヒゲを剃りましょうね、あなた」チャキッ
男「頼むよ」
ヒゲ剃りとは、闘い也!
エプロン姿の新妻が持ちし、金剛石をも断ち切る名刀『愛妻』!
これを秒速500kmを超える速度で振り回し、ヒゲを剃るのである!
むろん、妻の手元が僅かでも狂わば、男の首が飛ぶことスペースシャトルの如し!
サラリーマンとは常に死と隣り合わせである!
たとえ不慮の事故で命失おうとも、一片の悔いなし!
ヒュバババババッ!
妻「ヒゲ剃り完了」チン…
男「剃り残し、無しッ!」ツルツルッ
- 5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:16:31.85 ID:1OuKcuB10
男「いただきます」
妻「バターを塗ったトーストと玉露は、よく合いますのよ」
男「ありがとう」
朝食とは、安らぎ也!
朝のニュースを眺めながらの、ブレックファストとティータイム!
会社という戦場に旅立つ前の、ほんの一時の至福である!
焼け石に水、と嘲笑(わら)う者があるかもしれない。
だが、笑いたいものには笑わせておけばよい!
笑う門には、福が来るのだから……。
- 6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:21:37.68 ID:1OuKcuB10
男「行ってきます」ザッ
妻「行ってらっしゃい」
出勤とは、闘い也!
夫婦の別れに涙はいらぬ!
夫の外出を見届けた妻は、即座に白装束となり液体窒素を体に浴びせるのである!
これすなわち、祈願!
我が身を凍結する代わり、夫を生還させよという自己犠牲的発想!
夫の身を案ずる余り、誰に命じられたわけでもなく身についた習慣である!
ザバァァァ……!
妻「あなた……どうかご無事で」
- 8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:26:25.56 ID:1OuKcuB10
< 電車 >
ガタンゴトン……
満員電車とは、闘い也!
座席、壁際、手すり、つり革、乗客同士の寄りかかり!
生き馬の目を抜くようなポジションの奪い合い!
コーナーキックを待ち受ける、プロサッカー選手に匹敵する攻防!
中年(さて降りるか……)スッ…
男(チャンス!)ダダダッ
男(ポジション、ゲット!)スチャッ
座れはせずとも!
男はドアの両側、通称“寄りかかれるスペース”をゲット!
本日、絶好調!
- 9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:30:26.19 ID:1OuKcuB10
しかし──
満員電車には恐ろしい罠(トラップ)が存在する!
女子高生「きゃあ~!」
女子高生「この人、痴漢ですぅ! お尻をさわってきました~!」
男「!」
男(痴漢など、私はやっていない……!)
女子高生「…………」ニヤッ
男は見た!
女子高生のデーモン笑み! 犯罪! 冤罪! 万歳!
- 10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:36:37.75 ID:1OuKcuB10
ザワザワ…… ドヨドヨ……
絶体絶命!
痴漢冤罪の罠にかからば、懲戒免職、家庭崩壊、実刑判決は免れない!
もはや男は、蜘蛛の巣に捕らわれた哀れな蝶々!
男(先手を取られた──ならばッ!)
男「ああ、私を痴漢をした」
女子高生「え?」
男「さわったばかりではない」
男「私はこの可憐な少女を──押し倒し、接吻し、なぶり、犯したッ!」
女子高生「!?」
女子高生の言いがかりを“先の先”とするならば──
男はあえて冤罪を受け入れることで“後の先”を取ったのである!
これすなわち、カウンター! 威力は倍増され、敵に返還される!
- 11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:41:25.18 ID:1OuKcuB10
女子高生(この人、私のウソをあえて全部受け止めてくれた……!)ドキン…
女子高生「ごめんなさいっ! 全部、ウソなんですっ!」
女子高生「なんか最近ムシャクシャしてて、つい──」
男「気にするな。過ちを悔いる心、それだけで私は嬉しい」
男の度量にて、不良女子高生の凍てついた心は春の雪解け水が如く溶解した。
この女子高生、この事件を機に自らの半生を猛省し、
後にノーベル平和賞を受賞することになるが──それはまた別の話。
女子高生「本当にあなたの女になったらダメですか?」
男「悪いが、私には愛する妻がいる」
パチパチ……! パチパチ……!
拍手喝采である。
満員電車では皆が敵同士、だからとて祝福の心を忘れたわけではない。
- 12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:45:39.96 ID:1OuKcuB10
男(む、あの座席が空いたッ!)キリッ
男(初速1,200m/sで動けば、あの座席に座れるッ!)ダッ
シュザッ!
男「!」
エリート「…………」ニコッ
男(先に座られた……! 速いッ……!)
エリート「残念、この座席はボクのものです」
エリート「でも……どうしても座りたければ、ボクの膝の上に座ってかまいませんよ」
タッチの差で座席に奪われた男を見上げながら見下ろす、エリートの露骨な挑発である。
だが男はあえて──
男「座らせてもらう」スッ…
- 13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:49:30.77 ID:1OuKcuB10
直後、尻全体に鋭利な痛みが走った!
自らの尻を確認するや否や、目に飛び込んできたのは無数の画鋲!
男「貴様ッ! いつの間に膝の上に画鋲を……ッ!」
エリート「最初からですよ」
エリート「しかし、ボクの挑発に乗り、冷静さを失っていたアナタは気づかなかった」
エリート「社会人にあるまじき、注意力散漫だ……」
エリート「先ほど女子高生を手玉に取った実力を見込んで、試してみたんですが──」
エリート「どうやら期待外れだったらしい。ガッカリだ」
男「あ……あ、あ……」
ガーン!
男の目に涙を浮かばせたるは、尻の痛みでなく心の痛み!
完 全 敗 北 ! ! !
- 14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:55:40.35 ID:1OuKcuB10
< 駅 >
キヨスクとは、闘い也!
目的駅についた男、まっすぐ会社には向かわずキヨスクへ直行!
理由はもちろん、完全敗北を喫した我が身を奮い立たせるため──
おばちゃん「いらっしゃいませ」
男「棚にある栄養ドリンクを──全部ッ!」
おばちゃん「あいよッ!」
宇宙最強の栄養素と名高いタウリンが、男の打ちひしがれた心を復活させる!
これぞモーニングドーピング!
サラリーマンにとって、ドーピングは反則ではない。日常である!
- 15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 20:59:31.98 ID:1OuKcuB10
< 会社 >
男「おはようございます」
同僚「よう」
OL「おはよう!」
係長「おはよう」
課長「うむ、おはよう」
男「……しかし、私はキヨスクに寄ったせいで始業時間には間に合ったとはいえ」
男「いつもの出勤時刻より五分ほど、遅れてしまいました」
男「よって、私に対して『おはよう』は相応しくないのです」
男「やり直しを要求させていただくッ!」
挨拶とは、闘い也!
漫然と決まり文句を交わす習慣にあらず!
自分に相応しくないとあらば、断じて拒否せねばならない!
- 16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 21:03:29.14 ID:1OuKcuB10
同僚「おおそう! 待ちくたびれたぜ」
OL「おおそう!」
係長「おおそう」
課長「うむ、おおそう」
男の心意気を飲み込んだ課の仲間4名!
即座に『おはよう』を『おおそう』に切り替える、チーター以上の瞬発力!
男の目に、またもうっすらと涙が光る……。
男(みんな……ありがとう……)キラッ…
- 17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 21:07:49.04 ID:1OuKcuB10
電話取りとは、闘い也!
電話のベルが鳴ってからでは遅すぎる!
先方が電話をかけてきた瞬間では遅すぎる!
真のサラリーマンたる者、先方が電話をしてくるのを見切って、
こちらから電話をかけねばならない!
先手必勝の精神が、予知能力の如き直感を生むのである!
男「お電話ありがとうございます」
客『おお、今まさに君に電話をかけようとしていたところだよ』
客『やられたよ……完敗だ!』ニィッ
男(勝利ッ!)
- 18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 21:12:25.73 ID:1OuKcuB10
デスクワークとは、闘い也!
男のパソコンの実力たるや──
ワード二段! エクセル四段! パワーポイント六級!
すなわち、2×4×6=四十八!
これはかの忠臣蔵の赤穂浪士四十七名をも上回る、驚異的数値である!
なお──
男(ここでエンターキーを押すッ!)
男「はっ!」
メキィッ!
男はエンターキーだけは、肘(エルボー)で押すという
非常に厳しい制約を課している! 壊したキーボードの数、実に数千!
- 19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/25(木) 21:16:57.67 ID:1OuKcuB10
男(この書類、10部ほどコピーするか)ダダダッ
同僚「この資料、コピーしねえと!」ダダダッ
男「!」
同僚「俺の方が0.18秒、コピー機に着くのが早かった」
同僚「だが──お前だって急いでるんだろ? 俺に勝てたら先にコピーしていいぜ」
男「望むところッ!」
コピー取りとは、闘い也!
コメント一覧
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- 2013年12月27日 21:33
- 目が覚めてそんな勢いで立ち上がったら身体に悪い
-
- 2013年12月27日 21:36
- ※1
つっこむとこそこかよ!?
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- 2013年12月27日 21:59
- 忍殺めいた地の文だった…
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- 2013年12月27日 22:01
- 熱い良いSSだった
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- 2013年12月27日 22:16
- 覚悟完了してそうなリーマンだった
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- 2013年12月27日 22:23
- サラリーマンってスゲェな・・・・・
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- 2013年12月27日 22:29
- 愛という名の後方支援‼︎
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- 2013年12月27日 22:52
- 久々に笑ったわw
-
- 2013年12月27日 22:56
- これは良作
-
- 2013年12月27日 23:05
- これ年内最終日にまとめるものか?
出勤初日に読みたかったぜ
-
- 2013年12月27日 23:14
- 熱いストーリーだった……
-
- 2013年12月27日 23:15
- 熱いwwwww
面白かったです!!!
-
- 2013年12月27日 23:27
- 勢いで流されてるが、エクセル四級て大したこと無いよな……
-
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