Kindle Fire HDX 8.9は、アマゾンが自ら販売するオリジナルタブレット「Kindle Fire」シリーズの最新機種。8.9インチ、WQXGAの高解像度ディスプレイを備えたKindle Fireの最上位モデルです。
まずKindle Fire を整理、画面サイズと解像度で4モデル
Kindle Fireの名を冠したタブレットは非常に種類が多く、Amazonで検索しても非常にややこしい状況となっているため、まずは型番と端末の整理から。Kindle Fireが日本に上陸したのは2012年冬のことで、この時にAmazonは「Kindle Fire」「Kindle Fire HD」の2機種を発売しました。2013年には後継モデルの「Kindle Fire HD 7」「Kindle Fire HD 8.9」を発売し、製品名の最後にディスプレイサイズを示す数字が付くようになりました。数字のつかない製品については過去モデルとしてすでに販売が終了しているものもあるため、「数字付きが現行モデル、数字なしは型落ちモデル」と考えるとわかりやすくなります。
現行のKindle Fireについては前述の通りディスプレイサイズに加え、ディスプレイ解像度で4種類に分かれます。「HD」型番の製品は名前の通りHD解像度ですが、「HDX」はディスプレイサイズが同じでも解像度が高く、画素密度を表すppiの数値も高くなります。
ディスプレイ以外にも、機種によってカメラやマイク、Micro HDMIの有無が異なります。とはいえ利用できるサービスやコンテンツはすべての端末で共通のため、コンテンツやサービスに関する部分はほかのKindle Fireシリーズでもほぼ同様に利用できるとお考えください。
Kindle Fireシリーズのスペック比較
Kindle Fire HDX 8.9 | Kindle Fire HDX 7 | Kindle Fire HD 8.9 | Kindle Fire HD 7 | |
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ディスプレイサイズ | 8.9インチ | 7インチ | 8.9インチ | 7インチ |
画面解像度 | 2560 x 1600 | 1920 x 1200 | 1920 x 1200 | 1280 x 800 |
画素密度 | 339ppi | 323ppi | 254ppi | 216ppi |
CPU | 2.2GHzクアッドコアSnapdragon 800 | 2.2GHzクアッドコアSnapdragon 800 | 1.5GHzデュアルコアCPU | 1.5GHzデュアルコアCPU |
グラフィック | Adreno 330 | Adreno 330 | POWERVR SGX544 | POWERVR SGX540 |
メモリ | 2GB | 2GB | 1GB | 1GB |
内蔵ストレージ | 16GB/32GB/64GB | 16GB/32GB/64GB | 16GB/32GB | 8GB/16GB |
バッテリー | 最大12時間 | 最大11時間 | 最大10時間 | 最大10時間 |
充電時間 | 5時間 | 6時間 | 5時間 | 6時間 |
無線LAN | IEEE 802.11a/b/g/n (デュアルアンテナ) |
IEEE 802.11a/b/g/n (デュアルアンテナ) |
IEEE 802.11a/b/g/n (デュアルアンテナ) |
IEEE 802.11a/b/g/n (シングルアンテナ) |
カメラ | 720p 前面HDカメラ 8メガピクセル背面カメラ |
720p 前面HDカメラ | 前面HDカメラ | なし |
オーディオ | ドルビーデジタルプラス | ドルビーデジタルプラス | ドルビーデジタルプラス | ドルビーデジタルプラス |
Bluetooth | 4.0 | 4.0 | 3.0 | 4.0 |
Micro HDMI | × | × | ○ | × |
Miracast | ○ | ○ | × | × |
マイク | ○ | ○ | ○ | × |
本体サイズ | 231×158×7.8mm | 186× 128×9.0mm | 240× 164×8.8mm | 191×128× 10.6mm |
重量 | 374g | 303g | 567g | 345g |
8.9インチWQXGAディスプレイを搭載した最上位モデル「HDX8.9」
今回紹介するKindle Fire HDX 8.9は、解像度が2560×1600ドット(WQXGA)、画面サイズが8.9インチと、Kindle Fireシリーズのなかでは最もスペックの高い端末。ストレージ容量は16GB、32GB、64GBの3モデルを用意しており、価格は16GBモデルが3万9800円、32GBモデルが4万5800円、64GBモデルが5万1800円となっています。本体正面
本体サイズは231×158×7.8mm、重量は374gで、約9インチの大画面ディスプレイを搭載しながらも本体は非常に薄く軽いのが特徴。9.7インチのiPad Air Wi-Fiモデルの469gと比べて100g近く軽く、7.9インチのiPad mini Wi-Fiモデルの331gとも40g程度の差しかありません。実際に手に取ると本体が非常に薄いこともあり、画面の大きさに対して非常に軽く感じます。
本体背面
本体側面。厚さは7.8mmと8mmを切る薄さ
ボタン類はすべて背面で、左側に電源ボタン、右側に音量ボタンを搭載。背面には上部中央にカメラとフラッシュ、上部左右にスピーカーを搭載。背面カメラを搭載するのはKindle Fireシリーズの中でこのKindle Fire HDX 8.9のみです。このほか右側面にはイヤフォンジャック、左側面にはMicro USB端子を備えています。
背面左側に電源ボタン
背面右側に音量ボタン
背面上部にカメラとフラッシュ
設定は簡単、操作もチュートリアルで丁寧に解説
設定は非常にシンプルで、言語を選び、無線LANに接続した後に自分のAmazon.co.jpアカウントでログインすれば基本的な初期設定は完了。Amazon.co.jpアカウントを持っていない場合は初期設定から作成することもできます。Amazonプライムの登録やFacebook、Twitter連携は後でも行なえるので好みに応じて設定しておきましょう。画面上部はコンテンツのカテゴリ、中央には最近開いた電子書籍やアプリ、ゲームなどといったコンテンツを表示。縦向き時は選択しているコンテンツに応じたお薦めも表示します。画面下部にはアプリが並び、上方向にスワイプすることでアプリ一覧を確認できます。
ホーム画面
画面上部から下に向かってスワイプすると画面の回転や明るさ、無線LANのオンオフや設定などのショートカットを、ホーム画面以外の場所で画面左からスワイプするとメニューを表示する仕組み。スワイプが操作の中心となるためわかりにくく思えますが、基本的な操作は初期設定完了後にチュートリアルを表示するほか、新しい機能を使うたびに細かいチュートリアルがあるので、操作で迷うことはなさそうです。
電子書籍やアプリ、音楽などのコンテンツは画面左上の「お買い物」から購入可能。電子書籍や音楽、アプリに加えて11月からサービスを開始した動画配信サービス「Amazonインスタント・ビデオ」からも動画の購入が可能です。
「お買い物」メニューからコンテンツ購入が可能 |
ストアのトップページ |
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Amazonインスタント・ビデオにも対応 |
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購入したコンテンツは本体に自動的にダウンロードされ、閲覧や視聴が可能です。また、スマートフォンやPCなどほかの端末で購入していた電子書籍や動画、音楽がある場合は自動でKindle Fireにも反映するため、これまでに購入済みの電子書籍や動画も簡単にKindle Fireで楽しめます。
購入画面 |
購入後は自動で端末に保存
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アプリは独自ストアのみながらAndroidアプリのインストールも可能
なお、Kindle FireシリーズはAndroidをベースとした独自OS「Fire OS」を搭載しているため、電子書籍や音楽配信、オンラインショッピングといったAmazonのサービスは利用できる一方、Google Playを利用して好きなアプリを追加することはできません。アプリに関してはAmazon独自運営のアプリストアからダウンロードできますが、Google Playに比べると数も少なく、すべてのAndroidアプリが使えるわけではありません。アプリはAmazon独自のアプリストアからインストール
FacebookやTwitterなど世界展開するソーシャルネットワークは公式アプリがありますが、LINEやmixiといった国産SNSはアプリストアでは利用できず、クラウドストレージのDropboxも公式アプリはありません。なお、LINEで検索すると一見LINEのようなアプリが検索結果に現われますが、こちらは開発元が「Villahermosa App」となっており、LINE公式のアプリではない点に注意しておきましょう。
FacebookやTwitterなど世界展開するSNSは公式アプリがリリース
利用できるアプリの数が少ないのは若干ネックではあるものの、複数台Androidを所有しているユーザーであれば、別の端末のAndroidアプリをKindle Fireにインストールすることも可能です。設定画面でほかのアプリインストールをオンにした上で、「ESファイルエクスプローラ」などのファイラーアプリをapkファイルとしてバックアップし、Kindle Fireへメールで送信。添付ファイルから一度ファイラーアプリをインストールしておけば、あとはUSB経由でKindle Fireへapkファイルを保存、ファイラーアプリから開くことでアプリのインストールが可能です。
設定の「アプリケーション」から「不明ソースからのアプリ」をオン
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添付ファイルからファイラーアプリ「ESファイルエクスプローラ」をインストール
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バックアップ機能で保存できないアプリもあるため、すべてのアプリが利用できるわけではありませんが、メイン端末としてAndroidスマートフォンなどを持っているユーザーには便利でしょう。
ベンチマークは好成績。バッテリーは10時間超
ベンチマークは上記のアプリインストール方法を利用し、AnTuTu Benchmarkを使って計測。Androidベースとはいえ独自OSのため一概に比較はできませんが、AnTuTuの測定結果は33000を超えてXperia Z Ultraよりも高い値。Nexus 7の2013年モデルと比べても圧倒的に高いスペックとなりました。Antutu Benchmarkの測定結果
実際の動作もこのベンチマーク結果を裏付ける快適さ。アプリの起動や電子書籍のページめくり、動画再生などが非常にスムーズで、操作にストレスを感じることはほとんどありません。パフォーマンスに関してはほぼ問題ないレベルに達していると言えるでしょう。
バッテリー持続時間は「MX 動画プレーヤー」を利用し、無線LANオンの状態でフルHD動画を輝度最低にして再生し続けたところ、公称の最大12時間を超える15時間30分でバッテリーが空になりました。輝度設定が最低のため非常に画面が暗いこともあって公称を上回る結果となりましたが、それを踏まえても、この薄型でこれだけのロングバッテリーは非常に魅力的です。
高い解像度で読書は快適。読書補助機能も多彩
Kindleの名を冠する端末だけに、電子書籍リーダーとしての使い勝手も気になるところですが、解像度は2560×1600ドット、画素密度は339ppiというハイスペックモデルだけのことはあり、視認性が高く非常に美しいフォントで文字を表示します。前述の通りスペックも非常に高いため、ページめくりで待たされる感覚はほとんどありません。電子書籍は解像度が高く読みやすい
解像度が高いため、縦ではなく横表示で読んでも1文字1文字がはっきりと読めるので、文庫本を見開きで読んでいるような感覚で読書を楽しめます。また、マンガであれば左右それぞれにページを表示するため、電子書籍に不向きな見開きカットでの表示にも適しています。
横表示でも文字がはっきり読める
コミックは2ページを同時に表示
読書補助機能も画面右上タッチでしおり設定、画面長押しで指定した文章にマーカーやコメントをつけたり、Wikipediaや辞書で検索したり、SNSへシェアする機能など、Kinleシリーズの機能をほぼ網羅。以前までKindle Paperwhiteでしか利用できなかったコレクション機能もFire OS 3.0でサポートし、購入した書籍をカテゴリごと区分できるようになるなど、電子書籍端末としてはスペック面でも機能面でも非常に充実した端末です。
マーカーなど読書補助機能は充実
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カテゴリごとまとめられるコレクション機能
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動画や音楽、ブラウザなど読書以外の機能も充実
電子書籍に限らず動画や音楽、ブラウザも楽しめるのがFireシリーズの特徴。静止画や動画、音楽などをストアから有料購入できるほか、手持ちのファイルをKindle Fireに保存して楽しむことも可能。PCとUSBで接続するとKindle Fireをマスストレージとして認識するため、PCからファイルを保存するだけで簡単に再生できます。USBでPCと接続するとマスストレージとして認識
フルHDの動画を本体ストレージに保存して再生したところ、コマ落ちすることもなく滑らかに再生。スピーカーもタブレットとは思えないほど音質がよく、搭載しているドルビーデジタルプラスをオンにするとより臨場感を高められます。2560×1600ドットの高解像度ディスプレイと組み合わせることで、映画やドラマなどを楽しむのにも向いています。
Fire OS 3.0で新たに搭載した「お休みモード」は、動画や電子書籍を楽しんでいる間、通知やアラームをオフにすることが可能。読書に没入している時に余計な通知で邪魔されたくない、という人は設定からお休みモードをオンにしておきましょう。
動画や電子書籍を見ている時は通知をオフにする「お休みモード」
ブラウザは独自のSilkブラウザを搭載。Amazonのクラウドサービス「Amazon EC2」を介してサイトをキャッシュすることでレスポンスを高めています。機能面でもタブブラウザやデスクトップ・スマートフォン表示切り替えなど必要最低限の機能を搭載、本体スペックの高さも相まって快適なブラウジングが可能です。なお、検索エンジンは初期設定でBingになっていますが、こちらは設定からGoogleまたはYahoo! JAPANに切り替えられます。
独自ブラウザ「Silkブラウザ」
カメラはシンプルながら実用には十分
Kindle Fireシリーズの中でKindle Fire HDX 8.9のみとなるのが背面のカメラ機能。オートフォーカス対応の800万画素イメージセンサーを搭載し、デジタルカメラ代わりに使うことが可能です。カメラのインターフェイス
機能は非常にシンプルで、設定できるのは静止画と動画の切り替え、インカメラとアウトかめらの切り替えのほか、フラッシュ、HDRのオンオフができる程度。パノラマ撮影機能はありますが、写真サイズの変更などはない非常に割り切った作りです。
設定できる機能はシンプル
横向き時に表示する左下のフィルムアイコンを選択すると撮影済みの写真を確認しながら撮影できるほか、画面右に表示する最新の写真を選択するとギャラリーになります。撮影機能に比べると撮影済み画像の編集機能は非常に充実しており、切り抜きや回転、赤目補正、美白など多彩な写真編集が可能になっています。シェア機能も搭載しており、撮影済みの画像はFacebookやTwitter、インストール済みアプリなどへ送れます。
横向き時はギャラリーとカメラの同時表示が可能
編集機能は充実
撮影済み写真のシェア機能
カメラの画質は明るいところで若干白飛びするものの、実用には十分な画質。非常に動作が速く、タッチした瞬間に撮影できるので気軽に写真が撮影できます。インターフェイスも非常にシンプルなため、あまり余計なことを考えず気軽に写真を撮影できます。
作例
読書や映画、音楽を楽しむのに最適な1台
大画面ながらも薄型軽量を実現し、動作も非常に高速で使い勝手も良好なKindle Fire HDX 8.9。ディスプレイだけでなくスピーカーの性能も高いため、電子書籍はもちろん動画や音楽を楽しむのにも向いています。
難点を挙げるなら利用できるアプリに制限がある点と、16GBモデルで4万円近い価格の2点ですが、前者に関しては「電子書籍や動画、音楽とブラウザが楽しめれば十分」という人であればさほど問題ではなく、後者の価格もこれだけのハイスペックタブレットということを考えれば納得の水準。電子書籍を初めとしたAmazonのコンテンツを堪能するために最適の1台と言えるでしょう。