モバP「Happy New Year, Happy Birthday」
- 1 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 06:08:35.02 ID:EfrQsPtno
- 鷹富士茄子さんのSSです。特にオチや山場はない、のんびりとしたものです。
以前書いた作品である”モバP「七人目の正直」”の設定を少し引き継いでいます。
初見の方でも問題ないように書いているつもりではありますが、分かりにくい所があれば申しわけありません。
都合上、茄子さんのPに対する呼び方が『Pさん』になっておりますので、その点ご注意ください。
モバP「七人目の正直」 - 2 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 06:09:54.58 ID:EfrQsPtno
- 静寂。もう、枯葉一枚さえない、冬の装いの木々を見上げながら、小さく息を吐きます。
そうして吐いたゆっくりと広がる白い吐息は、ふわり、ふわりと舞う粉雪に溶け込み、消えてしまいます。
辺りにはじじ、と明滅する電燈が一本立っているだけで、他に人はいません。まあ、それも仕方のないことだと思います。
きっと皆さん、ご自宅のおこたに入っているか、あるいはお蕎麦をゆでている頃でしょう。
そんな中、なぜ私はここに居るのか。ええ、もちろん、私だっておこたに入って、ぬくぬくしたいです。でも、そういうわけにはいきません。
『……遅い、なあ』
思わず、言葉が零れてしまいます。こんなに待ち遠しいなんて、本当に久しぶり。このところ、ずっとずっと忙しかったのですから。
まだかな、まだかな。自分でも、子供っぽいとは思います。それでも、楽しみで仕方がないのは、止めることはできません。
なぜって?
単純なことです。だって――。
- 3 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 06:10:50.68 ID:EfrQsPtno
- 「ぜっ、はっ……。済まない、茄子っ! 遅れた……っ!」
刹那、私の耳に声と、足音が聞こえます。一気に、心が、体が温かくなります。頬が緩み、駆け寄りたくなります。
ですが、そこはぐっとこらえ、私は少し不機嫌そうな顔を作ると、口をとがらせ、
『遅いですよ、Pさんっ』
と、少し拗ねてみせます。同時に、電燈の下に人影が走り込んできては、その身を照らしました。
そこにいたのは、紛れもなく私のプロデューサーで、私の大好きな人。ぷい、とそっぽを向いた私に、Pさんは、
「済まない、茄子さん。抜けて来るのに、少し手間取った。他の子たちがなかなか解放してくれなくてね」
と、少しマフラーに積もった雪を払いながら言います。
- 4 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 06:11:29.99 ID:EfrQsPtno
- 『つまり、Pさんは私よりも、他の子の方が大事だったんですね?』
「いや、そういうわけじゃないが……。ああ、もう。そんなこと言わずに、機嫌直してくれ、茄子さん」
少し意地悪が過ぎたかな? そう思って、ちょっとだけPさんの方を見ます。彼は、少し困った表情で私を見ていました。
『……えへへ、冗談ですよっ! 怒ってなんていません♪』
私は笑顔を浮かべると、Pさんへと抱きつきます。外は寒いけれど、じんわりと心があったかくなって、そして嬉しくなりました。
「あっ、こらっ! だ、誰かに見られたらどうするんだっ」
『平気ですよっ! みなさんきっと、家の中でおこたに包まって、ぬくぬくしている頃ですから』
そのまま、私はPさんの腕を取り、早く早く、と急かします。私たちの目の前には、寂れた雰囲気を醸し出す、一つの石段。
それが、ぽつ、ぽつとぼんやり光る灯篭に導かれ、奥の方へと延びています。
- 5 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 06:12:48.50 ID:EfrQsPtno
- 「結構久しぶりだ、ここも。夏祭りの、帰り道に寄った時が最後かな」
『そう、ですね。あの時のPさん、可愛かったですよー?』
「まったく、そうやってすぐ人をからかう。その……、茄子さんの方が可愛いに決まってるだろ」
そんな風に、少し照れながら言ってくれるPさんの横顔は、この夜の中でもはっきり分かるほど真っ赤でした。
まあ、その。私も、なのですが……。
『う、そっ、そんなこと言っても、誤魔化されませんよーっ!』
「はは、いや、その、なんだ。早く茄子さんをトップアイドルにしたくてたまらないんだよ」
俺のみ込んだ人が、トップアイドルになれないわけがない。そんな風にPさんは言ってくれます。
こんな、Pさんの正直者なところが、私は大好きです。そして、私を気遣って自分の巻いていたマフラーを巻いてくれる、優しい所も。
- 6 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 06:13:55.75 ID:EfrQsPtno
- 「それに、いい加減俺の理性も持ちそうにないしな」
『理性、ですか?』
「ああ、いや。こっちの話」
そういうと、Pさんは少しばつの悪そうな顔をして、苦笑します。また、社長さんに何か言われたのかな、と思いますが、あまり深くは追及はしません。
きっと、アイドルとプロデューサーでの恋愛なんて、ご法度なのでしょう。……まあ、それでも私は、Pさんのことが大好きです。それは変わりませんねっ♪
「とりあえず、行こう。もうすぐ日付も変わる」
『そうですねっ』
私とPさんは、顔を見合わせると少し笑い、そのまま石段を登り始めます。合わせて二十段もない、小さな石段ですが、Pさんと登るとその段数以上に、とても短く感じます。
やはり好きな人と一緒に何かをすると、時間は短く感じます。出会ってから二度目の冬を迎えていますが、今までの時間はとても、とても早く過ぎたように思います。
- 7 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 06:14:36.23 ID:EfrQsPtno
- 今ではそれなりに名前の売れたアイドルにはなりましたが、やはりまだまだトップアイドルとは言えません。
きっと、Pさんもトップアイドルになることを期待してくれています。だから、私は頑張ります。Pさんが、私を信じてくれていますから。
だから私は、いくらでも頑張れるんですっ♪
「足元が暗い、茄子さん。気を付けて」
『はいっ♪』
しっかりと、Pさんの腕を掴んだまま、ゆっくりと登り切りました。ざり、という玉砂利を踏みしめる音が、梢を通り抜ける風の音に混ざります。
そして、その先にあるのは、ぽう、と微かな光に照らされた――神社の本殿でした。
- 11 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 17:58:53.11 ID:EfrQsPtno
- 相変らず、寂れた神社だ。罰当たりなことではあるが、そう思う。だが、俺と茄子さんの思い出の場所だ。
二年前の、ある日。ここで俺と茄子さんは出会った。本当に奇跡だった。初めて会った時から、きっと惚れていたのだろう。
その場でスカウトし、でも俺の身勝手で彼女を傷つけ、それでも彼女は俺を許してくれた。もちろん、今の社長にも頭は上がらない。
(ぶっ飛んでる人だけど、基本的にはいい人なんだよな……)
俺を含め、他のプロデューサーたちに関しても、効率重視、実利重視の姿勢を貫いているが、それらの関わらないところではだいぶ、というよりとんでもなく自由な人だ。何せ――。
(半分、俺らの仲を認めてるんだから、ホント頭が上がらねえよ)
そう、内心呟く。もちろん実際に公認しているわけじゃないのだろうが、それにつけても早くくっつけと言わんばかりにせっついてくる。
- 12 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 17:59:38.67 ID:EfrQsPtno
- それを躱しつつ、茄子さんにはプロデューサーとして接するように努力はしているが、実際のところそれも限界が来てたりする。
俺も男だ。こんな可愛くて、思いやりがあって、しかも俺なんかを立ててくれる女性が傍にいて、しかも好いてくれている。
もし耐えられる男が居るなら、そいつは間違いなく同性愛者か、悟りを開いた釈迦か何かだろう。あるいは全身合金でできたサイボーグかもしれない。
「どうか、したんですか、Pさん?」
『ああ、いや。なんでもない。……そろそろ時間だな』
俺は内心抱き寄せたい衝動にかられながらも、そうするわけにはいかない葛藤を抱きつつ、彼女を導く。石畳の上を歩き、そして全く変わらない、寂れた本殿の前へと立つ。
そういえば、ここの管理は誰がしているのだろうか。結構きれいにされているし、灯篭には火が燈っている。
まあ、それにしてもこんな日にもかかわらず、誰もいないのは少し驚いた。何組かぐらいは居るものだと思ってはいたのだが……。
- 13 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 18:00:12.75 ID:EfrQsPtno
- 「Pさん、あと何分ですか?」
『ええと……』
俺は、腕時計を見る。時間は十一時と五十七分。もう、間もなくだ。
『あと、三分だ』
「わあっ、もうすぐですねっ♪」
そんな調子で、とても楽しそうに、そして嬉しそうに笑う茄子さんは、少し子供っぽくもあり、そして純粋無垢だった。
こんな子が、俺の隣に居ても良い物だろうか、と思ってしまうときがある。それは、やましいことがあると言う事ではない。
単純に、幸せすぎる。それに尽きていた。この幸せを失うのが怖い。彼女に見限られるのが怖い。それはどうしても抱いてしまう。
- 14 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 18:00:50.67 ID:EfrQsPtno
- (惚れた弱みってやつかな)
内心苦笑すると、また腕時計を見る。後、一分と少しだった。そうして、そのまましばらく静寂が辺りを包む。
はらり、はらりと僅かに舞う粉雪が、地面を薄く彩り始める。彼女の着ている、ベージュのコートには良く映える、純白の粉雪だ。
やがて、時間が迫る。あと、十秒。九、八、七、六。
『あと、五秒』
「よん、さんっ」
『二、一……』
次の瞬間、同時に俺たちは声を出す。
- 15 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 18:01:20.46 ID:EfrQsPtno
- “あけまして、おめでとうございます!”
そんなハーモニーが、神社の境内に響く。そして二人して顔を見合わせると、どちらからでもなくはにかみ、そして笑い声を上げて笑います。
「ピッタリでしたねっ♪」
『ああ、完璧だった』
俺はそう言って、歯を見せて笑った。彼女の笑顔を見て、尋常じゃなく胸が高まる。こうして、今年も一年彼女と過ごせる。それが、何よりも嬉しかった。
『お賽銭は、用意してきたか?』
「もちろんですよっ」
茄子さんは、コートのポケットに手を入れると、小さな小銭入れを取り出す。それを頑張って開けようとしているが、どうも手袋をつけたままなので、開けられないらしい。
- 16 : ◆m03zzdT6fs 2014/01/01(水) 18:01:47.18 ID:EfrQsPtno
- 『こら、横着はしない』
「えへ、ごめんなさいっ」
小銭入れの口を、俺が開けてやると、彼女は嬉しそうに笑う。ああもう、可愛いったらありゃしない。こう、愛でたくて仕方がなくなる。
そうして、俺もポケットから小銭を取り出す。もちろん、五円玉だ。後で札を突っ込むつもりではあるが、最初のお賽銭はこれ、と相場が決まっている。
『よし、じゃあ行くぞ?』
「はいっ」
二人同時に、五円玉を賽銭箱へ投げ入れる。ちゃりん、ちゃりん、ことん。賽銭箱の中へと五円玉が落ちて行く音が響く。
そして、どちらから言うわけでもなく、境内に提げられた大きな本坪鈴の綱を手に取り、そして同時に揺らす。
がらん、ごろん。
がらん、ごろん。
少しくぐもった、鈴の音が境内に響く。そして、俺は二度、手を叩いた。ほとんど同じタイミングで、茄子さんも手を叩く。
また、しばらく静寂が辺りを包む。その静寂さえ、俺の中から消えていく。願うのは、一心に茄子さんの栄コメント一覧
-
- 2014年01月01日 22:01
- ???「1コメはもらったよ。来年の今頃は花屋の娘と過ごすんだよね、Pさん。」
-
- 2014年01月01日 22:06
- ※2
渋谷ァ!
店番はどうしたァ!
-
- 2014年01月01日 22:20
- ※2
店番?今日は休みだよ
-
- 2014年01月01日 22:38
- ※3
しぶりんばっかしてんじゃねーぞ渋谷ァ!
あ、茄子さんは可愛かったです それと誕生日おめでとう!歌鈴もおめでとう!
-
- 2014年01月01日 22:42
- ※2おいwww
-
- 2014年01月01日 22:53
- SSより※2クソワロタ
-
- 2014年01月01日 23:04
- 茄子さんは女神。
-
- 2014年01月01日 23:07
- みじけーんだよ!!
もっと下さい何でもしりむら
-
- 2014年01月01日 23:27
- ※8
え?今なんでもするって
-
- 2014年01月01日 23:39
- ※2
仕事って言ってやれよw
それはそうと、苺好きな娘が今度の休みは一緒に過ごしたいそうですよ、プロデューサー。
-
- 2014年01月01日 23:46
- ※10
年始回りに行け橘ァッ!!
-
- 2014年01月02日 00:00
- 地の文書くの流行ってんのか
-
スポンサードリンク
ウイークリーランキング
最新記事
アンテナサイト
新着コメント
QRコード
スポンサードリンク