299 名前:大人の名無しさん[sage] 投稿日:2005/07/23(土) 19:55:26 ID:avRt4w5C [1/2]
私が中学の頃に祖母が癌になった。
その頃の私は少し感情の起伏が乏しい奴で、祖母が癌になって余命幾ばくもないと
聞いても「そうなんだ」くらいにしか思わなかった。
多分心のどこかで「今までもそう言う事あったし、きっと大丈夫」と考えてた。
しかし春休みの頃に祖母の見舞いに行ってその考えは間違いだと気づく。

福の神みたいに頬がぽってりしていて、いつも笑顔の祖母は死人のように頬がこけ
腕は枯れ木のように痩せ細り、目は暗く窪んでいた。
医学知識が全くない私でももう祖母は本当に駄目なのだとわかった。
それでも私はまだ何とかなるのでは?と思い祖母に元気になってもらうため折り紙を
折ってみた。
鶴は勿論龍や鷹、七福神などのめでたい折り紙を作っては祖母に送った。

折り紙を作っては送り作っては送る日々が1ヶ月続いた頃、とうとう祖母の訃報が届いた。
それを聞いたとき、私はただぽかーんと呆けた。
「え、マジで死んじゃったの?」とまだ信じられない様子だったと思う。
訃報を聞いた私と兄は父に荷物をまとめるように指示され、荷物をまとめ祖母がいる
母の実家に向かった。実家に着くと母が真っ赤な目で私達を迎えた。

次の日には葬式が始まり午前中にお坊さんが訪れ、お経を始めた。
私と兄以外みんな泣いた。多分、兄も私と同様まだ何が起きているのか理解して
いなかったのだと思う。

300 名前:大人の名無しさん[sage] 投稿日:2005/07/23(土) 19:57:29 ID:avRt4w5C [2/2]
そして葬式が終わりお坊さんを見送るときに、祖父が私に私が折った折り紙を見せた。
私の折り紙は綺麗な半紙が張られた箱に大事に保管され、まるで宝物のようだった。
どれも不器用で下手糞な出来上がりなのに祖母はこんなにも私の折り紙を大事にし、
大切にしてくれたのかと思うと何か熱いものがこみ上げてきた。
祖父は私にそれを見せると一言こういった。
「○○(私)ちゃん、ありがとう」
ここでようやく私は祖母の死を受け入れ、泣いた。

たかが折り紙に泣きながら感謝されるなんて夢にも思わなかったため、不意打ちに
近い感覚も覚えた。
どうせならもっと折ってやればなぁ、とも思った。
その後祖母と折り紙は一緒に燃やされ、共に灰となった。


祖母へ。私の折り紙は今でも持っていますか?
今度貴方の命日に私はまた折り紙を折ろうと思います。相変わらず下手糞な折り紙
ですが、貴方のために一生懸命折ろうと思います。

以上長文失礼しました。