曲面スクリーンって意味あるの? どんな意味?
次々出てるけどさー。
曲面スクリーンって、映画館ではもう前から使われてきてましたが、今はTVとかスマートフォンみたいなもっと小さな端末でも搭載され始めています。ハイエンドな有機ELTVとか、サムスンとかLGのスマートフォンです。TVとかスマートフォンにおける曲面ディスプレイは本当にこれから「来る」んでしょうか? それともただ、たくさん売るための話題づくり的ギミックなんでしょうか?
映画館のスクリーンが曲面になってる理由
多くの映画館では、スクリーンが凹型になっています。これは、映像を特大サイズで、かつ23:9シネマスコープみたいな超ワイドなフォーマットで投影することによる歪みを修正するためのものです。
ひとつの点から平面のスクリーンに映像を投影すると、スクリーンの端の方に行くほど、光は光源のプロジェクターから遠く離れていきます。これによって映像の端の方が歪んでしまいます。これはピンクッション効果と呼ばれるもので、せっかく映画を見てもちょっと残念な画質になります。
でもスクリーンにちょっとカーブを付けると、スクリーンの端が光源により近くなるので、歪みを緩和でき、観客側から見てフラットに見えるんです。ただそれでも、Displaymateのレイモンド・ソネイラ博士によると、完全にフラットではありません。ほぼすべてのカメラにおいて、焦点面は曲面じゃなく平面なので、スクリーンをカーブさせることで新たに若干の歪みが発生します。だからカーブ度合いはつねに控えめにしなきゃいけません。
この歪み緩和効果は映画館の「スイート・スポット」から離れるほど薄れてしまいます。だから、映画館でベストな席を確保する方法が大事なんですね。
そんなわけで曲面スクリーンは、超巨大なIMAXシアターでも積極的に使われてます。IMAX CorpのCTO、ブライアン・ボニック氏が米Gizmodoに語ったところによると、スクリーンをカーブさせることでピンクッション効果を緩和できるだけでなく、3D映像ももっと楽しめるようになるそうです。
最近では、IMAX 3D用に指向性の高いシルバースクリーンが登場したので、我々は曲面スクリーンを使うことでより多くの光が観客側から見えるようにしています。これによりスクリーン全体の光の配分をより均一にでき、スクリーンの中でそこだけ明るく見えてしまう「ホットスポット」を減らすことができます。そうすることで、IMAX 3Dでより明るくクリアな映像が楽しめるんです。
TVではどうなの?
でもピンクッション効果は、TVでは問題になりません。というのは、TVの場合は映像が1点から投影されてるわけじゃないからです。それに、VizioとかPhilipsの21:9のモデルみたいな変わったものを除けば、HDTV標準の16:9というアスペクト比は歪みが起こるほどワイドじゃありません。それでもカーブさせるメリットはあるんでしょうか?
実はいくつかあるんです。
・スイート・スポットじゃなくても見やすく
映画館同様、家庭のTVでも視聴に最適なポジションがあります。THXでは、ユーザーの視野の40%をディスプレイが占める状態を進めています。ということは、スクリーンサイズから最適な距離を計算できます。その式は、「スクリーンサイズ+0.84=距離」です。「0.84の意味は…THXがそう言ってるからです。
映画館ならその「スイート・スポット」に10人くらい人が座れますが、リビングルームだとひとりか、せいぜいふたりくらいです。だからベストポジションはど真ん中、スクリーンの真ん中が目の高さになるところです。ここから外れてしまうと、画質が少しまたはかなり落ちるのと同時に「キーストーン(台形)効果」ってのも出てきます。これは自分から遠い側のTVのスミが近い方のスミより近く、台形みたいに見える現象で、真ん中から遠くなるほど大きく感じます。
LGとかサムスンの有機ELHDTVの曲面スクリーンでは、このキーストーン効果を緩和して、スイート・スポットから外れた人からも見やすくなっています。というのは、ちょっとカーブしてることで有効な視野角が大きくなるからです。たとえばLGの55インチTV、EA9800の場合についてソネイラ博士が説明してるところでは、「カーブは本当に微妙なもので、曲率半径(訳注:このTVで円を描いたとした場合の円の半径)は5mほどのゆったりしたものになります。だからスクリーンの端の方が中央よりも3.6cm前に出ているだけです。」でも、その小さなカーブが大きな違いを生むんです。
完全にフラットなTVスクリーンを見ていると、スクリーンのスミは中央より遠くにあります。だから目には台形(キーストーン形)に歪んだスクリーンが見えて、長方形には見えていません。でも見ている本人の中では、脳がキーストーン効果を修正しているために、ちゃんとまっすぐに見えています。キーストーン効果は実はピンクッション効果よりずっと大きいんです。でも一定時間映像を見ていると、脳が曲面スクリーンと同様の働きをして台形を補正してしまうんです。
言い換えれば、理想的でない視野角で見ていると、脳が慣れてしまいます。視覚から来る素の情報と、想定される見え方の間の違いに適応して、想定される見え方に合わせて情報を修正しちゃうんです。カーブしたスクリーンなら、この適応しなきゃいけない歪みが少ないので、より早くなじむことができるんです。
・映り込みが軽減
もっとわかりやすいメリットは、周りの光の反射を抑えられるってことです。スクリーンの開いた角度が小さいので、横からの光の反射を和らげられるだけじゃなく、スクリーンにあたった光をユーザーに返さず反らすこともできるんです。
スクリーン上の映像を色あせさせる光が減るってことは、黒はより黒くなり、コントラストや色再現は改善するってことです。
急カーブに注意
LGもサムスンも、100インチ超えの有機ELTVを出していますが、大きくたってカーブ度合いには限界があります。スクリーンがカーブしすぎてると、キーストーン効果を緩和する一方で、カーブ自体がうっとうしくなってきます。それにカーブがきつすぎると、左右どちらかの端に寄っている人からは死角もできてしまいます。
さらに、これは画質とは別の話ですが、壁にマウントできなくなります。車が買えるような値段でTVを買う人にとっては、これまでフラットなTVがマウントされてた場所にはカーブしたTVが載らないとなると大問題でしょう。ただサムスンの広報の人によると、サムスンのカーブ型TVは(7月に発表された55インチカーブ型OLEDTV以外は)みんな壁にマウントできるそうです。2014年モデルでも、VESA標準の特別設計のキットを使えばマウントできるとのことでした。
それから価格の問題があります。カーブ型のソニーのTVは、今3000ドル(約31万5000円)です。サムスンのは9000ドル(約94万5000円)です。価格相当の「違い」を感じられるかどうかは、人それぞれ違ってくると思われます。
モバイルでも意味あるの?
カーブしたスマートフォンなんてギミックでしょ、と思われるかもしれませんが、モバイルでも上に書いたようなメリットがあります。スマートフォンでもほんのちょっとカーブさせておくと、たとえばサムスンのGalaxy Roundでは高さにして10分の1インチ(約2.5mm)程度の違いですが、周りの光の反射率はぱっと見てわかるほど小さくなります。相対的に薄暗い屋内で見るTVと違って、スマートフォンはいつも周囲の光にさらされてるので、これは重要です。
反射率の重要さは、スマートフォンのスクリーンをオフにした状態で見てみるとすぐわかります。自分とか周りのものがくっきり映りますね。つまりそれが、スマートフォンが映し出す画像の上に反射してくる光です。この反射が多いほどスクリーンを明るくしなきゃいけなくて、ということはバッテリーをどんどん消費してしまいます。
でも曲面スマートフォンなら、曲面TVと同様スクリーンの開いた角度が小さいので、横からの光はブロックされ、さらに反射する光をユーザーの目から反らします。さらに凹型であることで、縦位置でもったときには微妙な拡大効果もあります。それによって、ユーザーの頭の部分の反射が少なくとも2倍にはなり、他の光の反射をより多くブロックします。だからスクリーンの明るさはますます不要になります。
ソネイラ博士は「Galaxy Note 3とGalaxy Roundでは5%ほどの反射率があるが、これは今までモバイルディスプレイで見た中では最低の部類に入る」としています。Displaymateの同様のテストでは、フラットなNexus 7やiPad Airでは平均してそれぞれ5.9%、7.3%の反射率があったそうです。
反射率が1~3%落ちたって大したことないように思われるかもしれません。でもバッテリーに少しでも長持ちしてほしいなら、反射率が少しでも低い方が良いはずです。
ということで、曲面スクリーンは多くの場合従来の平面スクリーンよりベターです。ただそれが、価格に見合うかってこと、デザイン的に好きかってことは、個人個人で評価が分かれるんでしょうね。
[Displaymate(1、2、The Guardian、Cnet、How Stuff Works、Cinerama Image:Andreas Praefcke]
Andrew Tarantola(原文/miho)
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