モノクマ「舞園さんには、鳥になってもらいます!」
- 1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/11/12(火) 20:52:46.93 ID:10dviv0DO
※ダンガンロンパネタバレ
※亀進行
――――舞園の自室
舞園「えっと……クマさん?」
クマ「クマさんじゃないよ!モノクマだよ!」
舞園「何を言っているんですか?」
モノクマ「ナニって、言葉通りだよ! 聞こえなかったのなら、もう一回言ってあげます!」
モノクマ「舞園さんには」
モノクマ「鳥になってもらいまぁす!!」- 2:1:2013/11/12(火) 20:54:29.06 ID:10dviv0DO
何をバカなことを。そう思ったのが顔に出ていたのか。目の前の彼は言います。
モノクマ「バターがあり得るんだから、鳥もあり得ると思うけどねぇ!」
モノクマ「まあ、ごたくはこのへんで終わりにしましょう!」
モノクマ「それじゃあ、いってみよう!」
そう目の前のクマが言い終えると同時に、私の背中に熱い物を感じました。
――いいえ、熱いなんてものじゃあありません。鋭い痛み。皮膚が避け、中から何かが飛び出してくる。そんな感覚です。堪えきれず、床に膝を付きます。
- 3:※酉テスト ◆MDcgDmVUsE:2013/11/12(火) 20:59:24.87 ID:10dviv0DO
「いっぎっ! あ゙!」
醜い声。苦痛に喘ぎながらも背中の方に顔を向けます。涙に滲む視界に、薄い桃色の棒――羽の元型のようなものが1対、飛び出しているのが映りました。
「なに゙っ……ごれぇ……!」
お腹が、熱い。刺すような痛みに目を向けると、藍色の毛がうっすらと伸びてきていて。
目の前のそれは笑顔を崩しません。姿を変えていく私を、ゆらゆらと肩を揺らしながら眺めているだけです。
- 4: ◆MDcgDmVUsE:2013/11/12(火) 21:03:12.24 ID:10dviv0DO
口が妙な形に伸びて、喋れなくなります。生えてきた翼と両腕とが、引っ付いて離れません。
身体が、熱い。
周りの物がだんだんと、大きくなっていくような錯覚に陥って、景色がぐるぐる回って。
意識がぼんやりと侵蝕されていく中、嘲るような声が聞こえました。
「うぷぷぷぷ……1日以内、と言いたいところですが。ゆとり世代のお前らに合わせて、2日以内に戻れば大丈夫、ということにしておきましたぁ!
」
「え? 戻れなかったら?」
「そりゃ、一生そのままに決まってるじゃん! あーっはっはっは!」
――――
――
- 5: ◆MDcgDmVUsE:2013/11/12(火) 21:04:33.15 ID:10dviv0DO
――――???
…………。
…………。
頭が……痛い。
変な夢を見たせいでしょうか。ずきずきします。
気のせいか、普段よりも身体が重い気もします。
お布団がとっても暖かくて、丸呑みにされちゃいそう。
それでも、学校に行かなくてはいけません。……寄宿舎に住んでいると、登校時間が5分とかからないので、遅くまでぬくぬくと出来ますが。それでも、そろそろ時間です。
まだぼんやりとしながらも、目を開けました。
――――?
何かがヘンです。何が、と聞かれても上手く答えられませんが……。
あ、やけに天井が広いような気がします。
それと、なんだか身体がフワフワするような……。
- 6: ◆MDcgDmVUsE:2013/11/12(火) 21:05:36.66 ID:10dviv0DO
「ぴぃ……」
……あれ?
「ぴぴ?」
声が……あれ?
「ぴっ……ぴぴっぴ!」
一気に覚醒。嫌な予感がします。昨日見た悪夢が、脳裏を過ります。
まさか、そんな。
目の下に、黒くて細長い嘴(くちばし)。右を見れば、すらりと伸びた藍色の翼。左も同じく。胴は羽が生え揃っていて、窓から射し込んだ光を浴びててらてら光って。
鳥肌が立つ、というのはこういうことを言うんでしょうか。全身の毛穴が開いて、べったりとした汗が吹き出してくるような感じがします。
まさか、まさか。
私は。
――本当に鳥になってしまった、とでもいうのでしょうか!?
- 12: ◆MDcgDmVUsE:2013/11/12(火) 22:54:27.23 ID:10dviv0DO
「ぴい、ぴい!」
私の存在を確かめようと叫ぶ声は、あまりに調子が高く、か細く。
ひんやりとした朝の空気と照る朝日がやけに意識されました。
――どういうことなんだろう。
なぜ、どうして。そんな言葉が頭の中を駆け巡りますが、一向に答えに辿り着く気配がありません。
考えすぎで胸が痛いほど苦しくなって、ようやく『まだわからない』という結論に及びました。
そして、次の疑問。
――今の私にとって、『なぜ、どうして』なんかよりも、ずっとこっちの方が重要だったのです。
どうしよう。
- 14: ◆MDcgDmVUsE:2013/11/12(火) 22:56:20.80 ID:10dviv0DO
ふと、昔読んだ本を思い出しました。
主人公ことグレゴール・ザムザは何の前触れもなく巨大な毒虫に変身してしまう。彼は、家族から、世間から見捨てられ――
――そして、死ぬ。
悪寒。
漠然とした不安に襲われて。何故、そんなことを思い出してしまったのだろうか。数秒前の自分を恨みます。
そんな妄想、あまりに、あんまりです。妄想です。妄想でしかないんです!
「ぴぃ……」
- 15: ◆MDcgDmVUsE:2013/11/12(火) 22:57:25.80 ID:10dviv0DO
――どうしよう。
いったい、どうすればいいんでしょう。
ベッドの上で1人――1匹、途方に暮れてしまいました。
とりあえず、動かないと。
ただじっとしていると、真っ黒な不安に押し潰されてしまいそうで、怖くて。
――教わっていないのに、不思議と飛び方は分かりました。
- 17: ◆MDcgDmVUsE:2013/11/12(火) 22:58:35.28 ID:10dviv0DO
腕を上下させるのと同じ要領で、翼が動かせます。
身体中に風を受けるのを感じた瞬間には、私は宙に浮いていました。
私は少し羽ばたいて、窓のサッシの上へと移りました。
何故そこへ向かったのかは、不思議なことに自分でも分かりません。本能か、何かでしょうか。
ただ、暗い部屋から明るい外の世界へ。そう目指すのが動物の性(さが)だとしたなら、ずいぶんと素敵な物だと思うことが出来ました。
- 18: ◆MDcgDmVUsE:2013/11/12(火) 22:59:55.78 ID:10dviv0DO
少し開かれた窓から、さあ、外の世界へ飛び立とう、という時に。なんだか嫌な感じがしました。
もう、二度とここへは戻ってこれないような。
私が――『舞園さやか』が『舞園さやか』でいられるこの部屋が、もう、そうで無くなってしまうかのような。
……また、あのよくわからない不安な感覚です。思わず部屋の中を振り替えってしまいます。
部屋の中は、小綺麗に片付いていました。
壁にかけていた制服も、飾っていた写真も、本棚に並べておいた教科書も。何もかも、きれいさっぱり。
無くなっていました。
小さな心臓が、きゅっと締まって。情けない悲鳴をあげそうになって。
「ぴぃ」
たまらず、私はぎらぎらと照らす日差しの中へと飛び込んでいきました。
- 26: ◆MDcgDmVUsE:2013/11/13(水) 20:07:35.20 ID:bZnv3b4DO
――――空。
身体が軽い。
外に出て数分、ある程度高く翔んだら翼を広げるだけで滑空出来ることに気付いたので、楽に泳げます。
嬉しくなって口を開けば、いつの間にか囀(さえ)ずっていて。
ほんの一瞬ですが、あの暗くて重い感情を忘れる事が出来たのです。
雲1つない大空の下、まだ朝が早かったのか、私の他に鳥は見当たりませんでした。
- 27: ◆MDcgDmVUsE:2013/11/13(水) 20:09:46.56 ID:bZnv3b4DO
ふと我に返って見下ろすと、希望ヶ峰学園がありました。とても美しく。無駄な装飾など一切なく。
どこか、白々しいほどよそよそしい。そんな印象を受けます。
急にばつが悪くなり、口をつぐんで囀ずるのを止めます。
――私が通うクラスに行けば、何か分かるかも知れない。
ふと、頭に浮かびました。
そうだ、みんななら何かを知っているかもしれない。こんな鳥になった理由も、元に戻る方法も。仮に知らなかったとしても、一緒に考えるなり、助けてくれるだろう。
そんな気がしました。
いえ、それ以外手段が思い浮かばなかったのです。
私の家も、所属してる事務所も、何もかもが絶望的に遠すぎて。仮に、線路に沿って翔んで行っても、辿り着く事ができるのか怪しいものでした。
だから、もしクラスの皆が助けてくれなかったら――
胸元が、チクリと痛みました。
……私は考えるのを止めて、皆がいるクラスへと向かいました。
――――
――
- 28: ◆MDcgDmVUsE:2013/11/13(水) 20:14:56.43 ID:bZnv3b4DO
――――校舎。
無い。
無い。
無い。
どこにも、無い。
窓越しにのぞき込んだ教室の中には、昨日と同じように騒ぐ皆の姿がありました。朝日奈さん、霧切さん、大神さん。桑田君、葉隠君――苗木君。
近くの木に留(と)まって中を必死に探しても、そこに舞園さやかの姿は存在しません。
しかし、それよりも。
席が、ありません。
そして、クラスの皆がそのことについて、何でもないように過ごしていることが、私には信じられませんでした。
まるで『舞園さやか』という存在など、なくて当然であるかのように。
- 29:1 ◆MDcgDmVUsE:2013/11/13(水) 20:17:22.90 ID:bZnv3b4DO
教室のドアが開いて、十神君と腐川さん、他にも大和田君達3人が入って来ます。遅れて、山田君とセレスさん。戦場さんと、江ノ島さん。
――時折その窓ガラスがチラチラ反射して、鏡のようになるのに気付かないフリをしました。
教室を眺めていると、ふと、絶望してしまいます。
葉隠君と桑田君。
不二咲君と石丸君、大和田君。
山田君とセレスさん。
十神君と腐川さん
大神さん、朝日奈さん。
江ノ島さん、戦場さん。
霧切さんと、苗木君。
私の席が無くなっても、誰1人として困らない。
アイドルとして皆の笑顔を作るのに一役買っている、と思っていたのは私の傲慢だったのでしょうか。私がいなくなっても、心配どころか気付かれもしません。
私の存在意義と、ちっぽけなプライドとが、粉々に砕け散る音が聞こえました。
- 30:1 ◆MDcgDmVUsE:2013/11/13(水) 20:18:37.90 ID:bZnv3b4DO
なんで。
なんで、私が。
どうして?
……わからない。
胸がズキズキします。私がいない。ただそれだけです。何も変わりはしません。
薄い窓ガラス一枚隔てた向こうの教室が、酷く遠いもののように感じてしまいます。
一度頭(こうべ)を垂れ、そして気を保つように再び顔をあげました。
――窓ガラスに映った鳥と、目が合いました。
- 31:1 ◆MDcgDmVUsE:2013/11/13(水) 20:25:45.32 ID:bZnv3b4DO
醜い鳥でした。
お腹の底がヒヤリとしましコメント一覧
-
- 2014年01月26日 13:17
- 良くわからなかった。誰か解説を・・・。
-
- 2014年01月26日 13:34
- いい感じ
-
- 2014年01月26日 13:42
- オ何ー過ぎてワケわからん。こんなキモいのが管理人は好きなのか?
-
- 2014年01月26日 14:07
- ※1
>>72はおそらく冷暗所(生物室だっけ)での舞園さん魂の独白
>>80は本編終了後、苗木クンが生物室から舞園さんを出して語りかけている
そしてさよならを繰り返している辺り、最後の「光の差す方へ。」舞園さんの火葬
……は流石に考えすぎか
何にしても実際に鳥にされたと言うよりは
舞園さんが死んでから見ている夢の話、だと思う
-
- 2014年01月26日 14:44
- 嫌がる枕園さんに無理やり虫を喰わせるというマジキチプレイを実行した苗木は変態の鑑
-
- 2014年01月26日 14:47
- よくわからなかったけど>>80でなんとなくわかった気がするな
※4の解釈が大体合ってるんじゃない?
-
- 2014年01月26日 15:22
-
雰囲気は嫌いじゃあないんだが少々分かり辛い…
-
- 2014年01月26日 15:25
- タイトルから、MGSネタかと思ったぜ
-
- 2014年01月26日 15:38
- ※4 の解釈でなんとなく理解した。ありがとう。
-
- 2014年01月26日 16:16
- わかりづらいのは確かだけど、米欄の
解説が無いと自分で解釈できないってのはよっぽどだと思うぞ……
-
- 2014年01月26日 16:36
- 死んでますと明言されても情緒がないからこれでいい気がするな
-
- 2014年01月26日 17:56
- 分からないんじゃなくて分かろうとしていないだけなのでは…
-
- 2014年01月26日 18:22
- 今だ!俺は鳥になる!
-
- 2014年01月26日 18:37
- 鳥になりてえ…(エ)
-
- 2014年01月26日 19:12
- ※4 多分このssの舞園さんが毒虫じゃなくて鳥なのは、中学時代に苗木が鶴を助けた(そしてそれを舞園が見てた)ことが元になってるんじゃないかな?
-
- 2014年01月26日 19:33
- おもないのまとめんなや
-
- 2014年01月26日 21:54
- 灰羽連盟の台詞が入ってたね、なんとなく世界観も似てるし。
-
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