日本は韓国と戦争をしたことがない
　韓国人が日本に対する恨みとしてよく言うのが「日本の植民地支配で近代化が遅れた」という話だ。朝鮮半島が日本の領土だったのは1910年8月の日韓併合から1945年8月の敗戦までの35年間だが、なぜか彼らは「日帝36年」と呼んでいる。
　籾井氏はこの時期に朝鮮が「戦争地域」だったと思っているようだが、朝鮮は日本の領土だったのだから、自国と戦争することはありえない。
　北朝鮮は「金日成が独立戦争で朝鮮を植民地支配から解放した」と言うが、抗日パルチザンがいたのは満州で、朝鮮半島では戦いは起こっていない。唯一の民族独立運動は1919年の「三・一事件」だが、これは数カ月で終わった大衆デモで、内戦とは言えない。
　そこで韓国では、日韓併合の前の大衆運動を「独立戦争」としているようだが、この時期にはすでに日本の支配権は確立し、大韓帝国は日本の保護国だった。韓国併合条約は両国の合意の下に平和的に調印された正式の外交文書で、各国にも承認された。
　さらにさかのぼると、朝鮮半島が日本の支配下に入ったのは日清戦争だが、このときは李朝が崩壊に瀕しており、今の北朝鮮のように数百万人の餓死者が出て、軍事力も数千人しかなく、とても自力で国を守れる状態ではなかった。
　そこで李朝が清に派兵を要請したのに対して日本も派兵し、朝鮮を舞台に両国が戦ったのが日清戦争である。この結果、1895年の下関条約で日本の朝鮮についての支配権が確立した。これは朝鮮の内乱を鎮圧するために日本が派兵したので、侵略とは言えない。
　要するに、日本は李氏朝鮮とも大韓帝国とも戦争したことがないのだから、侵略をしたこともない。日本の支配は武力を背景にしたものだったが、それは戦争で侵略することとは違う。そもそも侵略という概念は1928年の不戦条約で初めてできたもので、それ以前の戦争はすべて国際法上も合法だった。

「日帝36年」は暗い時代だったのか
　ちょっと前までソウルでタクシーに乗ると、運転手が日本語で話しかけて「日帝」時代の話をすることがあった。これは当時の日本語教育を受けたということだが、悪口はほとんど聞いたことがない。
　日韓併合された1910年に1300万人だった朝鮮半島の人口は、占領末期の1942年には2550万人に倍増し、工業生産は6倍以上になった。
　ハーバード大学コリア研究所長のエッカートは、「植民地時代の朝鮮の資本蓄積の90％は内地の資本によるもので、戦後の韓国の驚異的な経済成長にも日帝時代の資本蓄積が大きな役割を果たした」と結論している。
　日本が朝鮮や満州で行なった植民地支配は、1次産品を搾取した英仏などと異なり、インフラ投資を行って産業を育成するものだった。そのリターンを得る前に戦争に負けてしまったため、むしろ日本の植民地経営は赤字だったのだ。
　もちろん韓国人にとっては、他国に支配されるのは屈辱だっただろう。それは逆の立場で、韓国人が日本を支配し、韓国名やハングルを使わせた場合を想像してみれば分かる。創氏改名は強制ではなかったが、日本名にしないと不利な扱いを受け、戸籍上も「朝鮮籍」のついてまわる二級市民だった。
　しかし国家とは、多かれ少なかれそういうものだ。言語や民族の境界と国境が一致することはまれであり、今でもアイルランドやバスクなどで独立運動があるように、少数民族にとっては「国民国家」というのは虚構である。
　第1次大戦まで、正義の戦争とか侵略戦争という区別はなかった。日本は植民地分割がほぼ終わった20世紀になってからそれに割り込もうとしたが、この時期には植民地経営はイギリスでさえ赤字だった。そこに後から貧弱な軍事力で競争に加わって大失敗し、戦後70年近く経っても「歴史問題」で恨みごとを言われるのはいかにも間抜けな戦争だった。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39820