科学研究に特化したクラウドファンディングサイト「Experiment」
科学研究に特化したクラウドファンディングサイト「Experiment」が、海外で注目を集め始めています。
クラウドファンディングと言えば、利用者が自分の興味のあるプロジェクトにお金を投資し、その代わりに開発中のアイテムをいち早く、かつ安価に入手することが可能になるといった形態が大半です。しかしこのExperimentではちょっと事情が異なり、利用者が投資するのは「科学研究の可能性」となっています。
科学研究、あるいはサイエンスという言葉に高尚な響きを感じる人も少なくないかもしれませんが、現実的には、いかにより多くの資金を獲得するかの勝負といった一面もあります。例えば設備投資一つをとっても、最新のデジタル顕微鏡を買おうものなら百万円くらいはあっという間に飛んでいきますし、専用の分析装置となると数千万円は当たり前。時には、一台で数億円というものも珍しくありません。
もちろん、装置があれば研究ができるというわけではありません。テーマによっては実験スタッフを雇う必要もありますし、消耗品は買い足す必要があります。参考書籍の購入や学会などへの出張費用もバカにはなりません。Experimentによると、米国では2010年以降、実に80%もの研究者が予算獲得のための申請書作成に忙殺されており、67%が資金不足に悩まされているとのこと。
こうした予算の工面に苦労する研究者を、クラウドファンディングによって支援しようというのがExperimentの使命である、というわけです。
仕組み
利用に際しての手順は至ってシンプルで、ログインして、金額を決めてクレジットカードで支払うだけ。1ドルからの投資が可能となっており、決済が完了すると、研究者自身にメッセージを送ったり、研究背景を記した以下のようなLab Notesを閲覧することが可能になります。
投資金の使用用途も、プロジェクトごとに公開されています。
どんなプロジェクトがある?
Experimentでは、バイオや物理学、心理学など計11カテゴリに区分されたプロジェクトを公開しています。
例えば以下の研究は、心臓病および腎臓病の発病原因を探るプロジェクト。リーダーであるCorey Goldman氏らは、骨を形成する「BMP-4」というタンパク質が重要な役割を担っていると考えており、その機能を明らかにするために研究を進めているとのことです。
こちらは、食事によって脳が満足する仕組みを、ウシガエルをモデルとして解き明かそうという研究。カエルくんのドアップが印象的です。
人文科学系の研究では、脳にダメージを負った患者の治療に音楽が有効であるかを探るといったテーマがあります。
ビル・ゲイツも応援
マイクロソフトの創業者として知られるビル・ゲイツ氏は、自身のブログ「the gates note(ゲイツ・ノート)」の中で、Experiment(正確には、前身である “Microryza”)は「有望にも関わらず予算が得られていないプロジェクトを救うものだ」と語っており、その将来性を有望視しています。
前述したように、投資したプロジェクトが成立したからといって、おしゃれなアイテムが貰えるわけでも最新のガジェットが送られてくるわけでもありません。しかし、既にExperimentではいくつものプロジェクトが成立しており、市民がネットを通じて研究者を援助する流れが出来上がりつつあります。
筆者自身の知り合いにも、有望なプロジェクトを進めていながら予算不足でカツカツになっている研究者はたくさんいますが、そうした人たちを社会が支援する仕組みが日本でもできてくるといいですね。
[Experiment.com via io9]
素晴らしい取り組みですね。
これは出資者側には全くリターンはないということなんでしょうか?
お世話になっております。
実際にページトップにある極地微生物のプロジェクトに(少額ながら)投資してみましたが、リワードの選択などは特に表示されていませんでした。全プロジェクトに目を通せているわけではありませんが、コンセプト的にはあまり期待しないほうが良さそうですね…(^_^;)
リターンなしかぁ…。うむぅ…。
それなら株とかを買った方が良いかなぁ。
たぶん正確には投資ではないんだろうな、と
記事の印象としては慈善事業に対する募金と言ったほうが近そう
そういった面で見ればユニセフとか赤十字の仲間ではないかと
ただ「科学の進歩は最終的な人類の幸福につながる」
という非常にマクロな見方が必要になるけれども