戻る

このページは以下URLのキャッシュです
http://elephant.2chblog.jp/archives/52072514.html


男「魔王猫と僕」|エレファント速報:SSまとめブログ

TOP

男「魔王猫と僕」

1 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:38:07 ID:hYCl1Qtc

▼放課後/学校/グラウンド

―― カキーン。

「センター!レフトー!行ったぞー!」
「ショートは中継に入れ!」
「オーライ!オーライ!」
「ランナーがセカンド回るぞ!急げ!」

ワー!ワー!



▼同時刻/校舎裏

―― バキッ!

男「ぐあっ!」ドサッ

DQNのD太
「おい。顔は痕が目立つからやめろって何度も言ってるだろ」

DQNのQ也
「悪い悪い。つい手ぇ出ちまった」ケラケラ

DQNのN雄
「気持ちはわかる、って。コイツの顔見てると殴りたくなってくるんだ、って」ケラケラ



2 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:40:24 ID:hYCl1Qtc


D太「ちっとも言う事聞かねえよな、お前らは」

Q也「そんな怒んなよ。もうやらねえからさ」

N雄「まぁまぁ。そんなに気にしないで大丈夫だ、って。どうせ先公だって見て見ぬ振りしてるじゃん、って」

D太「全く……。大丈夫か男、ほら顔見せてみろよ」グイッ

男「うぅ……」

――ガスッ!

男「うぐっ!」ドサッ

D太「あっ、ホントだ。なんか殴りたくなっちまうわ」

Q也「ぶはははっ!結局自分だって殴ってんじゃんか!」ケラケラ

男「うぅ……」




3 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:42:37 ID:hYCl1Qtc

D太「あぁーなんか、つまんねぇな。弱い者イジメってホントつまんねぇ」

Q也「ぶははっ!お前が言うなっての!」

N雄「なら駅前のゲーセンにでも遊びに行こ、って!」

D太「そっちでもいいけど最近金欠だしな~」

Q也「あっ。そういや俺の彼女がいい金ヅル拾ったって言ってた」

D太「お前の彼女ってたしか6組にいるあのアホ女だよな?」

Q也「あぁ!?」

D太「冗談だよ冗談。……で金ヅルってどんなのよ?」



4 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:44:30 ID:hYCl1Qtc

Q也「彼女と同じクラスにいる奴で、ボッチのすっげえ暗ぇ女らしい」

D太「何でまたそんな女を金ヅルにしてんだよ。金持ちなのか?」

Q也「金持ちかは知らねぇけど、この前彼女がトイレでタバコ吸ってたらボッチ女が注意してきやがってウザいからストレス発散に虐めたり、金持ってきてもらってるんだって」

D太「なるほどね」

男「…………」

D太「あーこいつもそういう面で役立ってくれりゃいいんだけどなー」

N雄「コイツは無理だ、って。コイツんち超貧乏って話だ、って」ケラケラ

D太「そうなんだよなー。あー、ホント使えねぇ奴だよお前は!」ガスッ

男「うっ!」

Q也「ぶはははっ!お前マジ鬼畜だな!」



5 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:45:29 ID:hYCl1Qtc


D太「じゃあ俺らもQ也の彼女のおこぼれを頂戴しに行くか」

N雄「それがいい、って!」

Q也「とりあえずメールしとくわ。俺らの分の金も取っとけって」

D太「頼んだ。じゃ、また明日もよろしくなー、男ー」

D太・Q也・N雄 ケラケラケラケラ




男「…………ゲホッ」
 
 



6 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:47:46 ID:hYCl1Qtc


▼夕方/廃ビル/1階

男 スタスタ

男「……マオウ!マオウ!」

―― シーン。

男「…………」

―― タッタッタ。

黒猫「……」スタッ

男「よかった。いないのかと思ったよ」ホッ


少し小柄だが艶やかな黒い肢体に満月のような輝かしい金色の瞳を持つ黒猫が男の足元まで寄ってくると、不敵な笑みを浮かべてその口を開いた。


黒猫「やぁ、男。遅かったではないか」





7 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:49:26 ID:hYCl1Qtc

威風堂々としたその黒猫とはある日の偶然に出会った。

その当時から不思議な魅力を持つ猫だった。

彼はここではない全く別の世界で、人間軍と対立していた魔族軍の長――つまり魔王として君臨していたのだと言う。

その決戦の果てに討ち破れて死したものの、気が付けばこの世界に猫として転生していたらしい。

傍から聞けば眉唾ものの与太話に聞こえるだろう。

でも僕はそれを疑うことは無かった。

何故なら彼は、僕の唯一の友達だから。



8 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:50:14 ID:hYCl1Qtc

黒猫「昨日よりケガが増えてるようだが」

男「……まぁね」

黒猫「しかしまた今回はずいぶんと手酷くやられたものだ」

男「授業中に漫画読んでたら教師に没収されて、その憂さ晴らしだってさ」

黒猫「ずいぶんとくだらない理由だな。自業自得ではないか」

男「だよね。マオウの言う通りだよ」



9 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:51:29 ID:hYCl1Qtc

黒猫「しかし毎度毎度、良い様にされてキミは嫌にならないのか?」

男「そりゃ嫌だけど……」

黒猫「毎日のように的にされて悔しくないのか?」

男「悔しいけど……」

黒猫「ならばキミもやり返せばいい」

男「簡単に言わないでよ……。それが出来れば苦労しないよ」

黒猫「なぜ出来ないのだ?」



10 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:52:26 ID:hYCl1Qtc

男「…………」

黒猫「どうした?」

男「……僕だって本当はやり返したいよ。でも相手は何人もいるし、僕じゃどうせ敵わないから」

黒猫「…………」

男「変に反抗してその分さらに酷くされるなら、最初から受け入れてた方がまだ軽く済むからさ」

黒猫「……いや、違うな。それだけじゃないだろう?」

男「え?」

黒猫「キミの目には敵意はあっても殺意は感じない、相手を傷つけようとする意思が見受けられない」

黒猫「つまり、キミはそんな奴らが相手であっても傷つけてしまうことを恐れているんだろう?」

男「…………」



11 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:53:44 ID:hYCl1Qtc

黒猫「男よ、キミはとても穏やかで優しい人間だ。しかし、その悪童どもはキミの身なぞこれっぽっちも案じてはいないぞ」

黒猫「怪我をしようが死のうが構わない未必の殺意が込められている。キミは今にも殺害されそうになっているのだ」

黒猫「なのに大した抵抗もせず縮こまっているのは愚の骨頂だぞ?」

男「うん。そうだよね……わかってるけど……」



12 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:54:40 ID:hYCl1Qtc

黒猫「男には気骨が足りないな」

男「キコツ?」

黒猫「そう。何事にも挫けず、我が信念を貫き通す心得、そして反骨の精神だ」

黒猫「このままではキミは一生やられてばかりになってしまうぞ」

男「…………」

黒猫「……っと、ずいぶん説教地味てしまったな。すまない」

男「ううん、いいよ。マオウの言うことはもっともだから」



13 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:56:44 ID:hYCl1Qtc

黒猫「しかし私にかつての魔力があるならば……あぁ口惜しい……」

男「魔力?マオウは魔法とかも使えたの?」

黒猫「もちろんだ」

男「本当?」

黒猫「魔力は我が強さの源だ。肉体はより強靭になり、空中より炎や雷を起こし、また様々な魔物を召喚することができたものだ」

黒猫「キミに私の魔力を分け与えることができたなら、きっとこの世のどの人間よりも強くなれただろうぞ」

男「胡散臭いなぁ」

黒猫「なっ、なんだと!?」

男「えっ!?」ビクッ



14 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:57:34 ID:hYCl1Qtc

黒猫「私の魔力が……胡散臭いだと……!」ワナワナ

男(やばい!何かすっごい怒ってる!)アセアセ

黒猫「魔界を総べ、世を震撼させたこの私の魔力が……胡散臭いだと……!?」ワナワナ

男「ご、ごめん!冗談だよ!そんな怒らないでよ!」アセアセ

黒猫「何百年を生き、何千もの軍勢を従え、何万もの人間を蹴散らした魔王の、この私の魔力が……胡散臭いだと……!?」ワナワナ

男(やばいやばい!すっごい毛が逆立ってる!)アセアセ



15 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:58:33 ID:hYCl1Qtc

男「えーっと、あの……あー、いやぁ悔しいな!確かにマオウの魔力を分けてもらえたら、きっと僕もすごい強くなってただろうなぁ!」アセアセ

黒猫「…………」ワナワナ

男「そうすれば僕もマオウみたいに強くなれたんだろうし、すっごい悔しいよ!」アセアセ

黒猫「…………」

男「やっぱりそれだけ強大な魔力持ってただけあって、マオウって今でも気品と威厳があるよね!うん!」アセアセ

黒猫「……そうか?」

男「そうだよ!最高にカッコいいよ!僕もそういう風になりたいなー!」アセアセ

黒猫「そうか、最高か……」



16 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 00:59:31 ID:hYCl1Qtc

黒猫「…………」

男「…………」ドキドキ

黒猫「……フフン。キミもようやく私の凄さが理解できたようだな。先程の無礼は不問にしてあげよう」ニヤリ

男「あ、ありがとう……」ホッ



17 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 01:00:17 ID:hYCl1Qtc

男「……でも、本当になれるかな」

黒猫「何がだ?」

男「僕でも本当に強くなれるかな」

黒猫「まだ疑ってるのか?」ギロッ

男「そっ、そうじゃなくてさ!」アセアセ

黒猫「ならば何だというのだ」

男「僕、運動苦手だし、体力も無くて、ケンカだって出来ないし」

男「こんな僕がマオウみたいに強くなれるってありえないんじゃないかと……、あはは」ポリポリ

黒猫「そんなことない。キミの体には、本当は強き魂が込められている」

男「そうかな……」

黒猫「そうだとも。鍛えれば魔王にだってなれる素質を持っている。私にはわかるぞ」

男「本当に?」

黒猫「あぁ。だからキミはもっと自分に自信と誇りを持て」

男「……うん、わかった!」



18 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 01:01:13 ID:hYCl1Qtc

黒猫「ただ、男のその貧弱で軟弱で虚弱な身体が我が強大な魔力を受け耐えられたかはわからんがな」ニヤリ

男「あっ、言ったな!?」

黒猫「事実だろう?」ニヤニヤ

男「あーあ、せっかく今日は猫缶持ってきてあげたのに。そんなこと言うならあげるのやめよっかなー」

黒猫「むむっ!?」



19 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 01:02:22 ID:hYCl1Qtc

男「勿体ないけどこれは捨てるしかないなー」

黒猫「たっ……確かに私も少々言い過ぎだったかもしれんな!うん!」アセアセ

男「……」ジーッ

黒猫「でもそれは冗談の範疇と言うか、キッ、キミだって体を鍛えぬのが悪いのだぞ!」アセアセ

男「……」ジトーッ

黒猫「……言い過ぎてすまなんだ。許してほしい。猫缶ください」ペコリ

男「ふふっ。わかった、無礼は不問にしてあげるよ」

黒猫「まったく。意地悪な所は既に魔王クラスだな……」

男「にひひ」ニコッ



20 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 01:03:26 ID:hYCl1Qtc

男「意地悪してゴメンね。ほら、どうぞ」カパッ

黒猫「あっ、ありがたい!」ガツガツ

男「これ新発売のやつなんだけど……どう、おいしい?」

黒猫「※▼○+#;、*◇"#&+!!」モグモグ

男「……ごめん。何言ってるのか全然わかんない。食べ終わってから聞くよ」

黒猫 ガツガツ



21 :1 ◆SjqShkaeNQ 2014/02/19(水) 01:06:01 ID:hYCl1Qtc

男「……ねぇ魔王」

黒猫 ピタッ

男「