ニコンが、35mmフルサイズに対応したデジタル一眼レフカメラの新最上位モデル「ニコン D4S」を正式発表しました。
2014年1月7日の開発発表と、2月13日から開催されたCP+2014での参考展示を経て、ついに発売日と正式仕様が決定した格好です。発売日は3月6日。価格はオープンですが、ニコンダイレクトでの直販価格は64万8000円(税込)です。
モデル名からもわかるように、D4のマイナーチェンジモデル的な位置づけと思いきや、内部部品レベルの変更はCMOSイメージセンサーの新開発(ただし画素数はほぼ変わらず)に画像処理エンジンの世代交代など、大がかりなレベルとなっています。
イメージセンサーの画素数は、従来機であるD4が16.2MPなのに対し、16.3MPと微増ですが、マイクロレンズや反射防止コートなどの改良により、ダイナミックレンジの拡大やノイズの減少を狙ったもの。こうした仕様変更により、ISO感度は常用設定でISO 100~25600。拡張設定ではISO 50~409600(相当)と広がりました。D4ではISO204800だったので、高感度特性では定評のあったD4に比べてさらに"1段高い"設定が可能になったわけです。
改良点の一つには、オートフォーカス(AF)の速度を増した点も挙げられます。これは主にD4ユーザーからのフィードバックによるアルゴリズム改良によるもので、スペックには出ないタイプのものです。
加えてAFモードには「グループエリアAF」が追加。D4のシングルポイントAF、ダイナミックAF、3D-トラッキング、オートエリアAFの4つと合わせて、計5種類のAFモードになりました。
これは選択したフォーカスポイント+上下左右4点の5点で形成した領域を基準にAF動作させることで、狙った被写体が小さく、高速で動くような場合でも、ピントが背景に合ってしまうのを防ぐモードです。
さらにミラーを使った一眼レフでは半ば宿命的になっているミラーショック(シャッターを切った際にミラーを移動させることによる衝撃)を軽減させるため、ミラーバランサーをメインミラーの左右両側に設け、連続撮影時のAFに悪影響を与える振動を軽減させるなど、物理的な構造も改良しています。
合わせて、画像処理エンジンはD4のEXPEED 3から4へと世代交代。処理能力が公称で約30%向上したことで、ノイズ低減処理や自動ホワイトバランスの柔軟性を強化。「ニコンの常用感度に対する厳格な基準に基づき、ISO 100~25600の全域で、ワンランクレベルの高いシャープなラインとザラつきのない美しい色を実現しました」としています。
また画像記録モードにも、新しく「RAWサイズS」が追加。これはRGB各12ビットカラー・非圧縮でありながら記録画素数を減らすことで、標準となるLサイズに比べてファイルサイズを約半分に減少。「RAWが使いたいのだが現像時間を取れない」状況を前提としたモードです。
動画撮影もD4のフルHD(1920×1080)/30pから60pを追加。フレームレートが優先される状況にも対応できます。動画撮影時にありがちな極端な輝度変化でも自然な露出変化ができる、動画専用露出制御プログラムの搭載やノイズ低減処理の改良なども施されました。
動画撮影時の音声関連機能でも強化されています。動画撮影中に液晶ディスプレイが音声レベルメーターになるモードを搭載したことに加え、マイクの周波数特性の選択機能も搭載。楽器演奏や街のざわめきの録音など幅広いシーンに適した広帯域モードと、主に人の声を録音したいときに適した音声帯域モードが選べます。
このほか有線LANの1000BASE-Tへの高速化や、液晶モニターの色調整機能など、かゆいところに手が届く機能を数多く搭載。グリップの細かな形状変更での安定感向上や、一部ボタンの細かな位置変更など、操作感を高めるための物理的な設計にまで手を入れてます。
ただし、D4ユーザーを中心に趨勢が話題となっていた対応メモリーカードは、D4と同じくXQDメモリーカード+コンパクトフラッシュカードという構成。一部ユーザーから希望のあった、UHS-II規格SDカードへの対応は見送られた格好です。
本体サイズは幅約160 x奥行156.5 x 高さ90.5mmで、重量は約1.35kg(バッテリーおよびXQDメモリーカードを含む)。D4に比べるとサイズは変わらず、重量のみ10gほど増した格好です。
D4Sは大きな新機能や画素数向上こそありませんが、心臓部となる部品などは世代交代しており、また実用面に影響する改良点も多い変更となっています。D4が対象としているプロユーザーやヘビーユーザーの間では歓迎されそうなモデル変更といえそうです。