NatureやScienceなどの科学誌による論文の”取り下げ”とは?
論文には正しい実験に基づいた科学的事実が掲載されるべきですが、誤った内容が掲載されてしまうこともあります。発表された論文に誤りが見受けられた場合は、論文の修正などの措置が取られますが、誤りが大きい場合には、科学の正確性を保つためにも、論文の「取り下げ(withdraw, retractionとも)」という措置が取られることもあります。
論文の取り下げはそれほど頻繁に起きているものではありませんが、ひとたび起こると関連した研究にも大きなダメージを与えることになりえます。そのため、そうした論文撤回や科学の正確性の現状に関する調査は広く行われています。
今回は、こうした論文の取り下げのシステムに関して簡単にまとめてみました。
取り下げの原因
論文取り下げの主な原因は “Misconduct” によるものと “Honest Error” によるもの2つに大別されます。Misconductは、Fabrication(捏造)、Falsification(改ざん)、Plagiarism(盗用)の3つからなり、意図的なデータの捏造、改変、解釈の歪曲、またはスタンダードな方法を意図的に無視してデータを得ることなどを含みます。
一方、Honest Errorは「研究者の意図しない失敗」によるもので、データの入力ミスや計算間違いなどを指します。論文を発表する際には内容について細心の注意が要求されますが、それでもそういった間違いを100%無くすことはできず、間違った論文が発表されてしまうこともあるようです。
これら2つとは別の原因として、発表した研究結果の再現性が取れなかったためや、すでに発表されている結果を重複して発表してしまったため、といったケースも挙げられます。
2011年に科学誌Natureに発表された報告によると、取り下げられた論文の約40%はMisconductに起因するもので、約30%はHonest Errorによるもの、残りの約30%は再現性が取れなかったことや曖昧な理由によるものです。
また、取り下げは著者によるものが63%、編集者によるものが21%、雑誌によるものが6%、発行元によるものが2%、研究機関によるものが1%となっております。著者による取り下げでは、すべての著者の同意によるものが77%と大多数で、1人の著者によるものが13%、数人の著者によるものが10%となっています。
論文取り下げの傾向
R. G. Steen, J Med Ethics, 2010
2010年に “Journal of Medical Ethics” に発表された研究によると、2000年から2009年の10年間に論文の取り下げ数は劇的に増加しており、2000年には20報未満だったものが2009年には200報もの論文が取り下げられています。この間に発表された論文数の増加率は62%ほどなので、投稿論文数に対して取り下げ数が顕著に増加していることが分かります。
とはいえ、2009年時点での取り下げ率は0.02%となっており、数値自体をみるとかなり低いように見えます。また、論文の発表から取り下げまでにかかる時間も増加している傾向が伺え、2009年時点では発表から2年以上たってから取り下げられることも多いようです。
この取り下げ数の増加の原因が、科学界で実際に捏造やエラーが増加しているためなのか、科学誌や多くの科学者の尽力により、誤った論文がより高い確率で見つかるようになったためなのかは、はっきりとは分かっていません。ポジションや資金を得るために結果が強く要求されることや、論文の審査制度の改善を鑑みれば、どちらの要因も寄与しているように思われます。
問題点と今後
1つ目の問題点は、取り下げられた論文の通知方法です。
多くの場合、「At the request of the authors, the following manuscript has been retracted(作者らの要望により、以下の論文は取り下げられました)」のようにのみ通知され、具体的になぜ取り下げられたのか、どこが誤っていたのかなどが詳細に示されてはいないようです。また、取り下げられた論文をはっきりと明示しない科学誌もあり、すでに取り下げられた論文が引用として使われてしまうなどの混乱を招いています。
2つ目は、「正確な」取り下げ率です。科学誌PLOS ONEに掲載された調査によると、1~2%ほどの科学者が過去にデータの捏造や改変を行ったことがあると認めており、先ほど紹介した0.02%という取り下げ率は氷山の一角であることが伺えます。
3つ目は取り下げの原因の扱いです。Misconductによる取り下げが悪質であることは間違いないのですが、現状ではHonest Errorによる取り下げもそれらと同等に扱われています。
これは、科学者たちがHonest Errorによる誤りであっても論文を取り下げたがらない風潮を作っていると指摘されており、MisconductによるものとHonest Errorによるものは明確に区別するべきだという向きもあります。一方で、取り下げの原因にかかわらず、再現性の取れない論文はすべて取り下げられるべきとする強い意見もあり、取り下げの扱いが定まっていないのが現状です。
科学の正確性を保つためにも誤った論文を取り下げることは必要なことですが、現状ではまだ取り下げに関連する問題も散見さているようです。
科学界では、論文の取り下げに関するこうした調査やRetraction Watch等の取り下げ論文を追うサイト、大学での教育の徹底などにより現状のさらなる改善を目指しており、今後も科学の正確性が向上することが期待されます。
[Nature, Jornal of Medical Ethics 1 & 2, PLOS ONE, Retraction Watch]
今回の騒動でインパクトファクターが下がるのかな。どうなんだろ。
過去の論文すべてデータ化すればいいのに
少なくともコピペチェックの強化はできるし
エラーの訂正もデータでなら改正、補足もしやすいだろうに
学部1年目から剽窃はアカン、て耳にタコが出来るくらい言われてきたんだが
言わんとすることは分かるけど、例えば小学生の頃から悪いことをしてはいけませんって言われると思うんだが、そうして実際に犯罪行為に手を染める人が居なくなるかって話
なるほど、ごもっともです。
前提知識として知りたかった論文の取り下げに関する研究者たちの考えや背景がわかりやすかった。
こういう記事いいよね
見出しで惹かれる
一言もSTAP細胞騒動について書かないのはガジェ速の良心なんすかね?
とはいえ、元々取り下げって結構あったのね
それにしても明らかに改ざんしてるし同情の余地はないけどね
そしてレベルの低い大学生はあの手この手で楽しようとコピペするのであった…
論文だろうがニュースだろうが記事だろうがコピペはいかんよな、コピペは
他人の苦労して書いたものを盗用して利益を得るのは卑怯だよな
素朴な疑問なんだが、コピペしてバレんと思ってたのかな?あんなインチキ研究を大々的に発表してボロが出んとでも思ってたのかね?あの姉ちゃんはゆとり世代なの??
turnitinのようなコピペをチェックするツールあるのに何で今まで気づかなかったんだろう
チェックする対象(データベース)が少ないから?
TVニュース等で、本人は寝る間も惜しんで研究に没頭してるようだと大々的に放送されたとき、どうも腑に落ちなかっただよね、いったいいつ論文を執筆したのかと。現代はPC等で執筆速度も短縮できるけど、それゆえにコピペや写真加工もあっとういまにできる。でも研究は真摯におこうなうべきもの。世間に発表するとなればなおさら真実でなければならないとのは当然のこと。たとえ成果や論文のミスが一部分だけだったとしても、それだけで信用まるつぶれなるリスクがある。
取り下げが増えているのはアジア系の科学者が増えたからだろうな
中韓だけでなく、今回の件で日本人も捏造の気質がある事が明らかになったし
結局アジア人は皆同じなのよ。
西洋人は取り下げられてないのか?
DNAの二重らせん発見に関する逸話なんか見る限り、「アジア人だから」「欧米人だから」なんて不毛な議論だと思うけどね