咲「駅まで送ってくれないかな?」京太郎「朝の五時なんだけど」
- 1 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:46:18.63 ID:3l/f7apX0
- 本編から数年後の京咲スレです。
プロ入りのため東京に向かう咲を京太郎が駅まで送っていくだけという話。
他のキャラクターは出ません。 - 2 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:48:05.06 ID:3l/f7apX0
- ギーコ ギーコ ギーコ
錆びついた車輪が耳障りな悲鳴を上げる中、俺はあくびまじりに自転車を漕いでいた。
京太郎「……ふわぁーあ、ったく、何で俺が朝っぱらからこんなことしなくちゃいけないんだよ?」コギコギ
咲「えへへ、えっと、ごめんね」
京太郎「そう思うんなら、自転車の荷台から降りてくれよな。お前が重いせいで、車輪が悲鳴あげてるんだけど」コギコギ
咲「お、重くないよ! 大体、京ちゃんがこんなボロボロの自転車を出すから悪いんじゃん」
京太郎「仕方ねえだろ。お前、何の連絡もなしにいきなり訪ねてくるし。大体、こっちはプロ入りが決まってるお前と違って、受験勉強が忙しかったんだぞ」
咲「あ……ごめん」
俺の八つ当たりじみた言葉に、咲は申し訳なさそうに謝る。 - 3 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:49:03.12 ID:3l/f7apX0
- 京太郎(はぁ、こんなこと言うつもりなかったのに、何やってんだよ、俺のばか)
京太郎「あ、いや、俺の方こそ僻みみたいなこと言って悪かったよ」
咲「ううん、私の方こそ無神経なこと言って、ごめんね。京ちゃんも忙しかったのに…………って、思わず謝っちゃってたけど、よくよく考えたら受験勉強と自転車が錆びついてるのって全然関係ないよね!?」
京太郎「ん……そういえばそうだな」
咲「もうっ、罰として駅までちゃんと私を運んでもらうからねっ」ギュッ
そう言うなり、幼なじみは俺に抱き付いてくる。
京太郎「おっ、おいっ、咲っ、ばかっ、離れろって」
咲「へっへーん、離れませんよーだ」ギュゥッ
京太郎(ったく、こいつ、どういうつもりだ? こんな無防備に抱き付いてきやがって)
- 4 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:50:01.33 ID:3l/f7apX0
- 咲「ほらほら、京ちゃん、上り坂だからってペース落ちてきてるよー」
京太郎「あのなー、お前が抱き付いてくるから――」
咲「んー? 私が抱き付いてくるから、何なのかなー?」ギュゥゥ
京太郎「な、何でもねえよっ」
咲「ふふっ、京ちゃんってば、もしかして照れてるのかなー?」
京太郎「んなわけねーだろ。大体、お前のぺったんこな胸なんて押し付けられても嬉しくねえっての」
咲「むぅっ、何さっ、私だってちょっとは膨らんできてるんだからねっ」
京太郎「へぇ、膨らんでるってどこが? 俺には全然わからねえなぁ」
咲「ほんのちょっとだけなんだから仕方ないじゃんっ、京ちゃんのばかっ」ギュゥゥ
拗ねたように口を尖らせながら、ますます抱き付く力を強くする咲。
- 5 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:51:05.63 ID:3l/f7apX0
- 京太郎「だから、抱き付いてくんなって! わかったよ、ぺったんこなんて言って悪かった。咲の胸は優希よりあるから!」
咲「どうして、そこで優希ちゃんの名前が出るのかなー?」ジロッ
京太郎「いや、それは――」
咲「京ちゃん、もしかして優希ちゃんと……」
京太郎「ばかっ、そんなわけねーだろ!」
咲「……ふふっ、そうだよね。京ちゃんが優希ちゃんとなんて……そんなの、ありえないよね……」ギュゥゥ
京太郎「ははっ、当たり前だろ――って、あの、咲さん、さっきより抱き付く力が強くなってる気がするんですけど?」
というか、角が背中に刺さってるんだが。
咲「えっ!? あっ、うっ、うぅっ、ち、違うのっ、これはっ、そのっ、ほ、ほらっ、もうちょっとで坂道が終わるから、ラストスパートだよっ」アセアセ
京太郎(何がラストスパートなんだか。ったく、こんな朝っぱらから一人で怒ったり焦ったり忙しい奴だなー)
そんなことを思いながら、それに付き合ってる自分も大概だなーなんて自転車を漕ぎつつ思う。
静かな街中、俺の自転車の耳障りな車輪の悲鳴だけが響いていた。
- 6 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:51:51.85 ID:3l/f7apX0
- 京太郎「…………」
咲「どうしたの、京ちゃん?」
京太郎「いや、まだ日も出てない朝っぱらだから仕方ないけど、町が静かすぎてさ」
京太郎(……なんか、こうしてると世界中に二人だけみたいだなって)
咲「ん? 何か言った? 聞こえなかったんだけど」
京太郎「な、何でもねえよ!」
咲「えー、意地悪しないで教えてよ~」
京太郎「絶対教えないっ」
こんなこと教えるくらいなら、死んだ方がマシだっての。
咲「いいじゃん、教えてよ――あっ……」
京太郎「ん、どうしたんだよ? 何かあったの――うわ……すげえな」
それ以外の言葉がなかった。
坂道を上った俺たちを迎えてくれたのは――
咲「うん、朝焼けってこんなに綺麗なものだったんだね……」
京太郎「ああ、そうだな……」
今まで見たこともないくらい大きくて綺麗な朝焼けだった。
- 7 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:52:27.97 ID:3l/f7apX0
- 咲「ふふっ、ありがとね、京ちゃん」
京太郎「何でありがとうなんだよ?」
咲「ん、何でだろ? 何となくかな、ふふっ」
京太郎「そっか……変な奴」
咲「私、変かな?」
京太郎「いや、そうでもないかも……」
咲「もうっ、どっちなのさ?」
京太郎「ははっ、どっちなんだろうなー」
咲「さっきから適当なことばっかり言って~私のことからかってるでしょ? 人と話すときはちゃんと顔を見て話すって習わなかったの?」
京太郎「ばかっ、自転車乗ってるのに後ろ向いて運転する奴がどこにいるんだよ?」
咲「むぅ、確かにそうかもしれないけど、少しくらいは私のこと見てくれてもいいじゃん」ムスッ
京太郎「無茶言うなっての……」
京太郎(……ったく、振り向けるわけねーだろ)
こっちは今にも泣きそうで、それどころじゃねえんだから。
- 8 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:53:11.69 ID:3l/f7apX0
- 京太郎「ちゃんと切符買えたかー?」
咲「もうっ、子供扱いしないでってば。いくら私が方向音痴でも切符くらい買えるよっ」
京太郎「ははっ、そりゃそうだよな。これから東京に行くのに、長野で迷ってたら洒落になんねえもんな。今度、俺が東京に行くことがあったら、咲に案内頼むからよろしく頼むぜー」
咲「そんなっ、案内なんて無理だよ~」
京太郎「冗談だって」
咲「もうっ、京ちゃんのいじわるっ」
京太郎「ごめんごめん、悪かったよ。でも、マジで気を付けろよ。お前、ただでさえ危なっかしいんだから」
咲「ふふっ、心配してくれるんだ?」
京太郎「ばっ、そんなんじゃねえよっ。ポンコツな幼なじみが迷子で警察に保護されたりしたら、こっちが恥ずかしいだろ」
咲「わ、私だって少しは成長してるんだよっ」
京太郎「へぇ~、この三年間のインターハイで、お前の迷子で何回、俺が駆り出されたか知っててそれを言えるのか?」
咲「あっ、うぅ、ごめんなさい」
- 9 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:53:53.97 ID:3l/f7apX0
- 京太郎「……とにかく、お前はすぐに迷子になるくせに、うろちょろするからな。俺がいたときはまだ良かったけど、もう俺はいないんだから、うろちょろすんなよ」
咲「うん、わかってる。向こうには京ちゃん、いないもんね……」シュン
京太郎「あ……い、いや、そういう意味じゃなくて」
だったら、どういう意味かって聞かれたら、俺も困るけど。
京太郎「ほ、ほら、和も東京の大学に合格したし、照さんだって東京でプロやってるんだから、咲の迷子なんて、そこまでたいした問題じゃないかも」
咲「ふふっ、どっちなのさ?」ニヤニヤ
京太郎「えっと、だから、それは……」
俺が答えに困って、しどろもどろになっていると咲がニヤニヤしながら、こちらを見ていた。
京太郎「おい、お前、もしかして俺のことからかってないか?」
咲「えっ、な、何の事かな~」
目を逸らしながら、吹けもしないくせに口笛を吹こうとする咲。
- 10 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:54:33.01 ID:3l/f7apX0
- 京太郎「ったく、心配して損したぜ。そんだけ図太けりゃ、問題なさそうだな。っと、俺も入場券買うから、そこどいてくれよ」
咲「えっ、ホームまで見送りしてくれるんだ?」
京太郎「まあ、いくらポンコツでも幼なじみだし、それくらいはな」
咲「もうっ、ポンコツじゃないもんっ」
京太郎「どの口が言ってんだよ」
軽口を叩き合いながら、券売機の前に立つ。
入場券のボタンを押しながら、咲に気付かれないように小さくため息を吐いた。
京太郎(咲はこれから東京なのに……俺はただの入場券か)
京太郎(ほんの少し前まで、隣りにいる幼なじみと思ってたのに、なんかもう遠い世界の人間みたいだ)
- 11 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:55:14.58 ID:3l/f7apX0
- 咲「京ちゃん、どうしたの?」
京太郎「いや、何でもねえよ」
咲「でも――あっ、鞄の紐が……」グィッ
改札口に鞄の紐を引っ掛けた咲が俺を見ていた。
京太郎(おいおい、これからってときに何してんだよ……)
咲「きょ、京ちゃ~ん」グィグィ
今の情けない咲の姿を見て、絶対無敵のインターハイチャンピオン『清澄の嶺上使い』として君臨していた姿を想像できる人間が、果たしてどれだけいるだろうか?
そんなことを思いながら、目を合わせないように頷いて、鞄の紐に手を掛ける。
京太郎(こんな紐なんてすぐ外せるだろうに、咲も何やってんだか……)
- 12 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:55:41.67 ID:3l/f7apX0
- 咲「……京ちゃん、取れそう?」
京太郎「…………」
京太郎(ほんと、何やってんだろうな……俺)
どうしてだろう?
こんな紐なんて簡単に外せるはずなのに、なかなか外れてくれない。
京太郎(ああ、そうか。このまま紐が外れずに咲が電車に乗り遅れたら――なんて、そんな……)
咲「……あっ、外れた。ありがとね、京ちゃん」
京太郎「……ほら、そろそろ電車の時間だろ。行こうぜ」
そんなことあるわけないのに、そんな都合のいいことを考えてしまう俺がいた。
- 13 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:56:12.36 ID:3l/f7apX0
- ジリリリリリリリリリリ
京太郎「電車、来たみたいだな」
咲「うん、そうだね」
京太郎「…………」
咲「…………」
京太郎「…………」
咲「…………」
京太郎「……見送り、俺だけで良かったのか?」
無言の中、絞り出すように俺はどうでもいい疑問を口にする。
咲「うん、大勢に見送られるのって苦手だし、それにみんながいたら、私、電車に乗る勇気が消えちゃうかもしれなかったから」
京太郎「そっか……」
- 14 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 20:56:39.81 ID:3l/f7apX0
- 咲「それじゃ、京ちゃん」
京太郎「……ああ」
咲「行ってきます」グッ
京太郎(行ってきます、か……もしも、もしも、俺がここで引き留めたりしたら、咲はこの一歩を踏み出さずにいてくれるんだろうか? だとしたら俺は、俺は――)
京太郎「咲っ……」
何万歩よりも距離のある一歩を踏み出そコメント一覧
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- 2014年03月19日 20:50
- バンプかよ
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- 2014年03月19日 21:08
- ー。ー
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- 2014年03月19日 21:09
- くさそう
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- 2014年03月19日 21:19
- ※1が全てを語っている
バンプだな
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- 2014年03月19日 21:29
- 開始1行で自転車パロ認定余裕でした
二次創作で展開も他所からの借りものとか終わってんだろ
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- 2014年03月19日 21:33
- 咲のSS久しぶりに読んだわ
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- 2014年03月19日 21:35
- おや、耳をすませばのSSだったかな?
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- 2014年03月19日 21:55
- バンプだね。
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- 2014年03月19日 22:03
- 車輪の唄ですな
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- 2014年03月19日 23:30
- くっさ
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- 2014年03月19日 23:37
- 歌詞をそのまま読み物に使うと何かこう……アレだな
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- 2014年03月19日 23:38
- 荒れてるなぁ……画面越しからでもくさいのが伝わって来そうなぐらいだわ
臭いって言ってる奴は確実に自分の体臭だろ。
いちいち自分の臭いを※に残すなよ。
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