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毛利蘭「マッハ突き……!?」

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内田「ねー、夏奈ちゃん」夏奈「んー?」
まゆり「ダル君の恵方巻きおいしいね~」
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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:11:55.37 ID:qyHpfbev0




米花町 ───



克巳「ったくゥ~……」



克巳「母さんへの誕生日プレゼントくらい、自分で選べばいいだろ?」



克巳「二十過ぎた男と五十過ぎた男が並んでても絵にならないぜ……親父」



独歩「つべこべ言うねェ。たまには親孝行したってバチは当たらねェって」



克巳「しかも……なんでわざわざ米花町まで来たんだい?」



克巳「プレゼント買うだけなら、近くにもデパートがあるだろうに」



独歩「どこで買おうが俺の自由だろうが」



克巳「とかなんとかいって……」



克巳「万が一にも、プレゼント買ってるところを弟子に見られたくないからだろ?」



独歩「口の減らねェ息子だ……」フンッ…



独歩「──お?」








8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:16:11.07 ID:qyHpfbev0




蘭「もう……放して下さい!」



チンピラ「いいじゃねェかよ、なァ」ガシッ



チンピラ「茶の一杯や二杯、付き合ってくれたっていいだろォ?」



蘭「…………」







独歩「だれも助けようとしねェ……。世知辛い世の中になったもんだぜ」



克巳「手助けするかい?」



独歩「イヤ……必要ねェだろ。あの姉ちゃん、かなりヤルぜ」








10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:19:39.86 ID:qyHpfbev0




蘭「アアアアア……!」コォォ…



チンピラ「?」



ビュアッ!



次の瞬間、蘭の足刀がチンピラの顔面に寸止めされていた。



チンピラ「ヒ……ッ!」



蘭「まだ絡んでくるっていうなら……今度は容赦しないわよ!」



チンピラ「ひっ、ひえぇ~っ!」タタタッ…







独歩「ヒュウ~、ほらな」



克巳「みごとな上段足刀だ。親父よりキレがいいんじゃない?」



独歩「ま、俺なら当ててたけどな」



克巳「そしたら、また警察のお世話になっちまうよ……」








12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:22:31.06 ID:qyHpfbev0




独歩「なァ、克巳よ」



克巳「なんだい?」



独歩「ちィと予定変更して、ちょいとナンパといかねェか」ズイッ



克巳「オイオイ、まさか……」



克巳が静止する間もなく、蘭に話しかける独歩。



独歩「よう、姉ちゃん」



蘭「はい?」クルッ



蘭「!」ハッ



蘭(え……ウソ……。この人ってもしかして、神心会の愚地先生じゃない!?)








16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:25:38.31 ID:qyHpfbev0




克巳「親父、なにやってんだよ……」



蘭(あっ、この人は愚地克巳館長!? ウッソ~、どうして私なんかに!?)



蘭も空手道に生きる人間として、愚地独歩と愚地克巳の名は耳にしている。



独歩「なぁ、姉ちゃん」



独歩「さっきの蹴り……みごとだったぜェ。手本にしたいくれェだ」



蘭(さっきの……見られてたんだ)ポッ…



独歩「どうだい、ちょいと話をしたいんだが……時間、もらえるかい?」



蘭(今日はもう帰るだけだったし……まだ夕ご飯までには時間があるし……)



蘭「かまいませんけど……」



独歩「よっしゃ、じゃああっちの喫茶店でお茶でもしようや」



克巳(やれやれ……惚れちまったな、親父)








17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:28:21.43 ID:qyHpfbev0




喫茶店 ───



独歩「ほぉう、関東大会で優勝とは……大したもんだ」



克巳「どうりで、あんな蹴りを放てるワケだ」



蘭「いえ……お二人に比べたら、全然ですよ」



蘭「ところで、お話しというのは……?」



独歩「オウ、単刀直入にいわせてもらうぜ」



独歩「どうだい、神心会(ウチ)でチョット空手をやってみる気はねェか?」



蘭「!」








19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:31:33.10 ID:qyHpfbev0




蘭「神心会に……入門しろってことですか?」



蘭「でも私……部活もあるし、家のこともあるし……これ以上は──」



独歩「なに、今の部活を辞めろとか、毎週道場に通えとかいってるんじゃねェ」



独歩「極端なハナシ、お前さんが来たい時にだけ来てくれりゃいいんだ」



蘭「えぇっ!?」



独歩「俺にこれぐらいのこといわせる価値を、お前さんは持ってる」



蘭(神の拳っていわれる愚地先生が、ここまでいって下さるなんて……)



蘭(でも……)








20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:34:27.64 ID:qyHpfbev0




蘭「申し訳ないんですけど、お金が……」



独歩「こっちからムリいってんだ。銭なんて取らねェよ」



蘭「えっ……!」



独歩「どうだい……?」



克巳「その辺にしとけよ、親父」



克巳「なにも今、この場で決めなきゃならないってこともないだろ?」



独歩「ン……わりィな。年甲斐もなく、ついはしゃいじまった」








23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:37:32.74 ID:qyHpfbev0




克巳「毛利君」



蘭「はい」



克巳「俺もこの人も、空手界じゃ多少は名が知れてる方だと自負してる」



克巳「こと空手に関する眼は、たしかなつもりだ」



蘭(名が知れてるどころか……知らない人なんていないわよ……)



克巳「そして俺も親父も──君の持つ才能に惚れちまった」



克巳「実は今度の日曜日、ウチの本部道場で黒帯研究会があるんだ」



克巳「よかったら、ぜひ来てくれ。これ、名刺」スッ…



蘭「……は、はいっ!」








25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:42:15.59 ID:qyHpfbev0




克巳「それじゃあ、代金は払っておくから」



克巳「足止めしてワルかったね」



独歩「すまなかったな」



蘭「こちらこそ、私なんかのために……ありがとうございます!」







喫茶店を出た二人──



克巳「強引なんだから、親父は……」



独歩「どうだい、あの毛利って姉ちゃん、来ると思うかい?」



克巳「どうだろ……」



克巳「あの年頃の女の子は、俺らとちがって空手以外に沢山やることあるからなァ」








28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:44:14.80 ID:qyHpfbev0




喫茶店に一人残った蘭──



蘭「…………」



蘭(たしかに最近、スランプってわけじゃないけど……)



蘭(なんというか、伸び悩んでたのよね……空手)



蘭(しかも、あの二人が直接私を誘ってくれるなんて……)



蘭(せっかくのチャンスだし……一度おジャマしてみようかな、神心会……)








32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:48:32.42 ID:qyHpfbev0




次の日曜日──



毛利探偵事務所 ───



蘭「コナン君、ちょっと出かけてくるね」



コナン「どこ行くの、蘭姉ちゃん? 今日は部活はないっていってなかった?」



蘭「神心会の本部道場……っていってもコナン君は分からないよね」



蘭「とにかく、今日は空手の稽古だから!」



コナン「行ってらっしゃ~い!」



コナン(神心会っていや……たしか、日本で一番規模の大きい空手団体だよな)



コナン(オイオイ、蘭のヤツ、これ以上強くなる気かよ……)








33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:52:19.61 ID:qyHpfbev0




神心会本部 ───



蘭「こんにちは、克巳先生!」



克巳「!」



克巳「オォ~、毛利君じゃないか!」



克巳(まさか、来てくれるとは……話をしてみるもんだな)



蘭「今日はよろしくお願いします!」



克巳「こちらこそ」



克巳「今日は男ばっかでムサいと思うけど、気楽にやってくれ」



克巳「少なくとも、稽古で女の子に下心を持つようなヤツはいないから」



蘭「はいっ!」








34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:55:31.01 ID:qyHpfbev0




克巳「本日の黒帯研究会は、この毛利君が特別に参加する」



克巳「まだ高校生だが、空手の腕は俺と父のお墨付きだ」



克巳「みんな、よろしく頼む」







「 オ オ オ オ オ オ ス ッ ッ ッ ! ! ! 」







蘭(うわ、すっごい気迫……)ビリビリ…



蘭(それに、末堂選手に寺田選手に、崎村選手……有名な人ばかりじゃない!)



蘭(サインください……なんていったらマズイよね)



蘭(今日は勉強させてもらおうっと)








39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 01:59:43.92 ID:qyHpfbev0




神心会『黒帯研究会』は、実戦的に空手の研究を行う会である。



克巳「今日は対凶器の研究を行う」



克巳「拳と凶器──もちろん、普通に考えたら凶器の方が強い」



克巳「しかし、凶器を普段から扱いなれている人間など、ほとんどいない」



克巳「いうなれば“日本刀を持った素人”……」



克巳「一方の我々は、拳足を日常のように振るっている」



克巳「いうなれば“斧を持った職人”……」



克巳「日本刀と斧、武器としての性能に特化しているのはもちろん日本刀だが──」



克巳「日本刀を持った素人と、斧を持った職人がもし立ち合ったなら」



克巳「斧を持った職人にも、十分勝ち目がある」



蘭(そうよね……私だって武器を持った相手を倒したことあるもの)








42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:02:42.40 ID:qyHpfbev0




研究会は続き──



克巳「毛利君、せっかく来たんだ。対刃物──挑戦してみるかい?」



蘭「えっ、私がですか!?」



克巳「俺が持っている匕首を蹴り飛ばして、こないだのように俺に足刀を放ってくれ」



蘭「オス……やってみます!」



ザッ……!



蘭(相手は私よりずっと格上……手加減はむしろ失礼に当たっちゃうわ)



蘭(なら……本気で!)



蘭「セイヤァ!」



パキンッ!



鮮やかな足さばきで、克巳の匕首を蹴り飛ばす蘭。








43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:05:28.86 ID:qyHpfbev0




さらに──



ガッ!



足刀を放つが、さすがにこれは克巳の左腕にガードされた。



オォ~……!



克巳(やはりこの娘……ホンモノだ)



克巳(空手がウマイってだけじゃない……実戦を体験してる動きだ……!)



克巳「よかったよ、毛利君」



蘭「オス……こちらこそ、ありがとうございました!」








46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:08:54.63 ID:qyHpfbev0




研究会が終わり──



蘭「今日はありがとうございました、克巳先生」



克巳「我々こそ、勉強させてもらったよ」



克巳「今日は男ばかりだったけど、ウチには女子部もあるし、また気軽に寄ってくれよ」



克巳「君が受付で名前をいえば、稽古に参加できるようにしとくから」



蘭「はい!」



克巳「ところで……君はむやみにケンカをするタイプには見えないが──」



克巳「ずいぶん“実戦慣れ”しているように見受けられる」



克巳「どうしてだ?」








47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:13:16.03 ID:qyHpfbev0




蘭「実は……父が探偵をやってまして……」



克巳(父親が、探偵……? 毛利……)ハッ



克巳「そうか、君のお父さんはあの有名な“眠りの小五郎”かッ!」



蘭「はい」



克巳「ナルホド……」



克巳「お父さんの仕事を手伝う時に、犯人と格闘することもあるってことか」



蘭「ええ、そうなんです」



克巳(どうりでウチの門下生と比べても、凶器や実戦に慣れているワケだ)



克巳(それに、毛利小五郎も柔道の達人と聞いたことがある……)



克巳(この娘もまた、俺や範馬刃牙と同じく“強き父を持つ子”だってことか)



こうして、蘭の神心会空手体験は終わった。








48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:18:31.32 ID:qyHpfbev0




それからというもの──



井上「強いわね~、毛利さん。とてもかなわないわ」



蘭「いえ、井上先輩こそ……すごい回し蹴りでした!」







蘭「あの、サイン……いただけないでしょうか?」



末堂「え、かまわねェけど……」



加藤「へっ、有名人は辛いなァ、末堂?」







独歩「どれ……ちょいと稽古をつけてやろうか」



蘭「いいんですか!?」



蘭は時間の許す限り、神心会の門をくぐった。








49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:21:26.49 ID:qyHpfbev0




そして、稽古の成果はというと──



犯人「くそっ、こうなったらボウガンで……!」サッ



コナン「(やべえ!)蘭姉ちゃん、避けてっ!」



ビュッ!



蘭「かわすまでもないわ!」ブオンッ



パシィッ!



コナン(ボウガンの矢を、弾き飛ばしただと!?)



犯人「バ、バカな!?」



蘭「愚地先生直伝……廻し受け、よ」スゥッ…



蘭「デヤァッ!」ビュオッ



バキィッ!



犯人「ぐええっ……!」ドサッ



コナン(蘭のヤツ、この数週間でとてつもなく強くなってやがる……!)








50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:24:29.46 ID:qyHpfbev0




そんなある日の夜──



神心会本部 ───



蘭(忘れ物しちゃった……)



蘭「えぇ~と、女子部の道場はどこだったっけ……」キョロキョロ…



パンッ……  パンッ……  パンッ……



蘭「なにかしら、この音?」



パンッ! パンッ! パンッ!



蘭(この部屋から聞こえてくる……)



ガチャッ……








53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:28:30.75 ID:qyHpfbev0




ドアを開けると、一人で黙々と左拳を振るう克巳の姿があった。



蘭「克巳先生!」



克巳「お、毛利君か」



蘭「すみません、稽古のおジャマをしてしまって……」



克巳「ハハ、かまわないよ。おおかた、この“パンッ”て音が気になったんだろう?」



克巳「名探偵の娘さんとしては、気になるのは当然だよな」



蘭「名探偵だなんて……。でも、いったいなんの音だったんですか?」



克巳「ン~……ま、探偵に犯行を突き止められた犯人は、白状する義務がある、か」



克巳「あれは、俺の拳のスピードが音の壁を超えたことによって生じた破裂音だ」



蘭「拳が……音の壁を……!?」



克巳「俺の必殺技“マッハ突き”だ」



蘭「マッハ突き……!?」








55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:32:54.75 ID:qyHpfbev0




克巳「正拳突きの際に使用する関節を、同時加速させることで」



克巳「拳は音速を生み出すことができる」



克巳「さらに、想像(イメージ)で関節の数を増やすことで、速度はさらにハネ上がる」



蘭(そんなことができるなんて……)



蘭「でも、音速を超えた正拳なんて、拳もただじゃ済まないんじゃ──」



克巳「おっしゃるとおり。さすがの名推理だ」



蘭「!」ハッ



蘭「克巳先生のなくなった右腕って、もしかして……」



克巳「そう……。“俺だけのマッハ突き”を完成させた代償に肉が弾け飛び──」



克巳「ダチにプレゼントしちまった」



蘭「…………」ゴクッ…








58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:36:44.87 ID:qyHpfbev0




克巳「おっと……しゃべりすぎた」



克巳「武道家ってのは結局自分が一番大事だからな……これ以上はナイショにしとこう」



克巳「あとついでに、これは師匠としていっておくが」



克巳「マッハ突きは、自分にも危険な技だ」



克巳「もし、到達できたとしても……使用(つか)うのはやめておきなさい」



克巳「君のような、未来ある女学生ならなおさらだ」



蘭「は……はいっ!」



蘭「どうもありがとうございましたっ!」



バタンッ……



克巳(あの娘なら……もしかすると、もしかするかもな)








59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:39:36.09 ID:qyHpfbev0




帰り道──



蘭「セイッ!」



ブンッ!



蘭(この拳が音より速く……? とても信じられない……)



蘭(仮に打てたとしても、私の手が使いものにならなくなる……)



蘭(私には克巳先生のように、体のどこかを失うなんて覚悟、とてもない……)



蘭(でも……なんだろ)



蘭(私……マッハ突きを……目指してみたくなってる……)



蘭(どうしちゃったんだろ、私……)








61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:43:01.35 ID:qyHpfbev0




毛利探偵事務所 ───



蘭「ねえ、コナン君」



コナン「なぁに、蘭姉ちゃん?」



蘭「空手の正拳突きが、音より速くなるなんて可能だと思う?」



コナン「できるわけないじゃない、そんなの」



コナン「だって、格闘技で一番速いとされるボクサーのパンチだって」



コナン「せいぜい時速30km程度なんだよ?」



コナン「一方、音は時速1225km。40倍もちがうんだから」



蘭「そうよねえ……」








63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:45:56.51 ID:qyHpfbev0




蘭「じゃあ……コナン君」



コナン「なに?」



蘭「関節をイメージで増やすなんてこと、できると思う?」



コナン「できるわけないよ」



コナン「さっきからなにいってるんだよ、蘭姉ちゃん」



蘭「ご、ごめん……きっと私、疲れてるのね」



コナン(オイオイ、音より速い拳とか、関節を増やすとか、いきなりどうしたんだ?)



コナン(大丈夫か、蘭のヤツ……。空手のやりすぎなんじゃねえか?)








64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:48:37.84 ID:qyHpfbev0




蘭(コナン君のいうとおりだわ……できるわけないよね)



蘭(新一に聞いてもきっと──)







新一『拳が音速を? 無理に決まってんだろ! 漫画の読みすぎだっての!』



新一『バーロ……イメージで関節を増やすなんて、できるわけねーだろ?』







蘭(──って、アイツのことだからバカにするに決まってるわ)



蘭(なんか……想像しただけで腹立ってきたわ)ムカッ…








65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:51:32.27 ID:qyHpfbev0




蘭(自分だって、推理小説の読みすぎじゃないのよ!)



蘭(あの推理オタク、どこをほっつき歩いてるんだか……)



蘭「!」ハッ



蘭(今、私……想像で勝手に新一に話をさせて、想像に勝手に怒って……)



蘭(もしかして想像って、ものすごい力を秘めてるんじゃ……)



蘭(もし……この想像力を高めることができたら──)



蘭(私にもマッハ突き、できるかもしれない!)








67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:55:41.51 ID:qyHpfbev0




この日から、蘭はイメージで自分の関節を増やす稽古に没頭した。



蘭(関節、関節、関節……)



小五郎「蘭、ビール買ってきてくれよぉ~……なくなっちまったよぉ~……」ウイ~…



蘭「ジャマしないでよ、お父さん! 今いいところだったのに!」



小五郎「な、なんだぁ!?」ビクッ







蘭(関節、関節、関節……)



園子「ちょっと蘭、どうしたのよ。さっきからボケッとして」



蘭「あ、ゴメン、園子……。ちょっと関節をね……」



園子「へ?」







そして──








68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 02:59:53.99 ID:qyHpfbev0




パンッ!



蘭「う、打てた……」シュウウ…



蘭(今の音──あの夜に聞いた音と同じ!)



蘭(私の正拳が、ついに音の壁を超えたんだわ!)



蘭(そして同時に、“さらに威力を上げる方法”も分かっちゃった……)



蘭(でも、もしそれをやったら──)



蘭(きっと私の腕は……克巳先生のように……)



蘭(もう、マッハ突きのことは忘れた方がいいのかも……)








70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 03:02:39.65 ID:qyHpfbev0




しかし、武の神様は、飛躍を遂げる彼女に更なるプレゼントを与えた。



蘭(今日はもう寝なくちゃ……疲れが明日に残っちゃう!)



蘭(それじゃ歯を磨いて……)



歯を磨くために、洗面台の前に立つ蘭。



蘭「!」ハッ



蘭(見つけた……)



蘭(私の……私だけのマッハ!!!)





──────



────



──








74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 03:07:22.60 ID:qyHpfbev0




数日後、神心会での稽古を終えた蘭は、克巳に駅まで送ってもらっていた。



蘭「すみません……。私、オバケとかが苦手で……」



蘭「夜道を一人で歩くのが怖いんです……」



克巳「ハハハ、かまわないよ。いくら空手でも幽霊は倒せないもんな」



克巳「じゃあ、俺はこれで」



蘭「ありがとうございました」ペコッ…



ワァァ……! キャァァ……!



蘭「悲鳴……?」



克巳「この駅で、なにかあったようだな」








76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 03:10:28.58 ID:qyHpfbev0




人々の悲鳴の原因は、駅内で暴れる凶悪犯であった。



凶悪犯「どりゃあっ!」ブオンッ



バキィッ!



高木「うぐっ……!」ドサッ



小五郎「ぐおっ!」ドザァッ



コナン「高木刑事! おっちゃん!」



コナン(ちくしょう、なんてヤツだ!)



コナン(高木刑事とおっちゃんを倒して)



コナン(俺の麻酔針やサッカーボールまでかわしちまうなんて!)



コナン(もし蘭がいたとしても……この犯人は止められねえかもしれねえ!)








79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 03:14:18.11 ID:qyHpfbev0




克巳(なんだアイツは……)



克巳(かつての五人の死刑囚にこそ及ばないが──かなりの戦力だ)



克巳(今この場でヤツを制圧できるのは、俺しかいないだろう……)



克巳「毛利君、君は下がって──」



蘭「あの……私にやらせて下さい!」



克巳「しかし……」



蘭「お願いしますっ!」



克巳「……ワカった。毛利君、君に任せる!」







凶悪犯「次はあの小娘だァ!」ドドドッ



蘭「アアアアア……」コォォ…



コナン(蘭!? ──そうか、この駅の近くには神心会本部がある!)



コナン「蘭、逃げろッ! そいつはお前でも敵わねえ!」








80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 03:17:43.84 ID:qyHpfbev0




凶悪犯「シイッッッ!」ブオッ



蘭「くっ!」サッ



凶悪犯の鋭いパンチを、間一髪でかわす蘭。







克巳(どうする気だ……ッッ)



克巳(拳か!? 足か!? いや、どちらでもない!?)



克巳(毛利君が髪を振りかざした!?)



克巳(ま……まさか……ッッ)








83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 03:21:46.66 ID:qyHpfbev0




蘭(突きは当てるのではなく、引き戻す瞬間がもっとも速い……)



蘭(その時に生じる衝撃波を使った一撃こそが──)



蘭(私が到達した極意……“当てない打撃”)



蘭(でも、もし私がこの技を放ったら、きっと私の腕は骨ごと砕け散ってしまう……)



蘭(なら──腕や体で打たなければいいの!)



蘭(私のヘアスタイル……まるでツノのような形になっている部分……)



蘭(“ここ”を使う!)



蘭(この部分に骨があると、関節があると、ツノがあるとイメージして……)



蘭(“当てない打撃”を放つ!)



蘭(これが私だけが掴んだ──私だけのマッハ!!!)ブンッ







パァァァンッ!!!








87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 03:25:33.48 ID:qyHpfbev0




凶悪犯「ぐはァ……ッッ」



ドザァッ……!



コナン「す、すげぇ……あの凶悪犯を一撃で……!」



克巳「おみごと……ッッ!」



しかし、蘭の髪型のツノ状になっている部分は、今の一撃で吹き飛んでしまっていた。







蘭(そうだよね……。頭にツノが生えてるわけないよね……)



蘭(魔法が……解けたんだわ)











                                   < 完 >








89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 03:26:31.60 ID:IFrgtlsL0






面白かった









92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/20(金) 03:27:02.65 ID:35QfiHbTO











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