塗料もインキも不要。褪せない色、実現の鍵は鳥の羽
近ごろは人も植物も「永久」がキーワードですが、ハーバード大学では永久に色褪せない塗料、永久に暗くならない画面を叶える色の生成法を現在開発中です。
ヒントにしたのは、鳥の羽。
鳥の羽は何百年も鮮やかな色を失いませんけど、これは色の成り立ちが違うからです。
普通、染め物や絵の具なんかの色は、特定波長を吸収し、残りの波長を跳ね返して知覚されますよね。
「つまり素材がエネルギーを吸収している、だから時間の経過とともに素材が色褪せてしまうのだ」と語るのは、研究を率いるハーバード大工学・応用科学学部ヴィノサン・N・マノハラン(Vinothan N. Manoharan)教授。
その点、鳥の羽は光の特定波長を増幅させるナノ構造を備えている、つまりエネルギーの吸収はない、だから鮮度を失わない、色褪せないというわけです。
これは俗に「構造色(structural color)」と呼ばれるもの。羽の細胞には小さな穴が並んで開いており、その間隔に応じて、例えば赤なら赤の柄だけを弾くようにできているんですね。これと同じ構造さえ再現できれば全く別々のマテリアルでも同じ色を与えることができます。毒性の高い塗料を使う必要もなし。
ただし構造色の再現は容易ではありません。なぜなら普通は特殊な結晶構造になってるからです。でもカザリドリの羽は規則的に並んでいないので真似るのにはもってこい! というわけで早速、教授のチームではラボで溶液にけん濁した微小粒子を使ってこれと同じ効果を再現してみました。
溶液は乾くと、微小粒子は縮まって、粒子同士の距離がギュッと詰まります。で、どの程度乾くかに応じて、粒子間の距離が変わり、弾かれる色の波長も違ってくることがわかったんです。決め手は粒子間の平均距離です。同じ効果は、電子画面でもLEDとかLCDとか白黒のeインクとかの代わりにカラーの粒子でピクセルをつくれば得られるようですよ?
......ちょいと頭がついてけないけど、下の図で見るとわかり易いかもしれません。左は起点の赤のマイクロカプセルです。サイズは大きめ。それがだんだん乾くにつれ縮んでいって......色もオレンジ、黄、緑に変わっていくのがわかります。
「われわれ研究チームでは、時間が経っても色褪せないフルカラーのディスプレイの実現も可能だと考えています」、「曲がるプラスティックの板が1枚あって、それにフルカラーでグラフィックスを描いて、明るい日差しの下で見れるようにするのが夢」(マノハラン教授)
この研究はJin-Gyu Park氏がハーバードにくる前にイエール大のポスドクで2009年に行った研究を発展させたもので、Park氏が主筆を務めた新論文では全スペクトルの色の生成法と新しいカプセル化システムを披露しています。米韓共同出資研究で、教授は特許出願中です。一生色褪せない塗料・インキなんてものが実現したら業界涙目ですね。
まだまだ画面・塗料は初期の実験段階ですけど、眩しい太陽の光の下でラップトップ開くと、雑誌を広げるのと全く変わらない鮮やかな色が目に飛び込んでくる未来って、どんな感じなんでしょうね?
[Harvard]
Adam Clark Estes(原文/satomi)
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