阿良々木暦「あずさジェリー」
- 1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 16:50:22.34 ID:pG5fqgIz0
- ・化物語×アイドルマスターのクロスです
・化物語の設定は終物語(下)まで
・そこそこのネタバレ含まれます。気になる方はご注意を
・終物語(下)より約五年後、という設定です
・アイドルマスターは2基準。平常運転です
関連作品
阿良々木暦「ちはやチック」
阿良々木暦「まことネレイス」 - 3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 16:52:42.78 ID:pG5fqgIz0
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001
私、三浦あずさという人間を、一言で固有名詞ではない呼称で表現するとすれば、「アイドル」の一言で片付いてしまうのでしょう。
アイドルなんて言うと大抵の人は凄いと褒めてくれて、次はサインや握手を求めてきます。
その場は笑顔でお礼を言って――ありがとう、応援してくださいね、なんて対応するのだけれども、その度に思うことがあります。
『私はそんなにすごくない』と。
私はアイドルという生き方を選んだだけであって、普通の人とほとんど変わりません。
空を飛べる、とか魔法が使える、なんて事なら特別扱いも分かりますが、私には歌って踊るくらいしか出来ません。そしてそれは、誰だって練習すれば出来ることです。
結局何が言いたいのかと問われると、私はごく普通の女子大生に過ぎません。
同じ事務所の仲間たちも、口にこそ出さないけれどそう思っているはずです。
伊織ちゃんや響ちゃんだって、あの自信は自らを研磨してきたからこその矜持なのですから。
そして私がアイドルなった理由は、やっぱり普通なんです。
- 4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 16:54:08.89 ID:pG5fqgIz0
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『運命の人と出会うため』。
この事を話すと、友達なんかは大抵、乙女だね、等と冷やかして笑います。
春香ちゃんややよいちゃんは素敵です、と言ってくれて、それはとても嬉しかったけれど、私も夢見がちだと思います。
だって私はもう二十歳です。
一般的には確実に大人のカテゴリに分類されるでしょう。
小学生が言うならばまだしも、さすがにちょっと夢を見すぎかなあ、と。
でも、ありふれたテンプレートのような女の子の夢です。
運命の男性と出会って、ドラマチックな恋をして、ウェディングドレスを着て結婚する。それはとても素敵なことだと思うのです。
最近、私には気になる人が出来ました。
それは奇行が目立つとか嫌な性格だとか否定的な意味ではなく、異性として気になる人、です。
いきなり結論から言ってしまえば、この想いは始まることさえ許されなかったのですが。
なぜなら彼には数年来の彼女がいて、私も略奪愛なんて望んでいなかったからです。
それはひょっとしたら、好きと呼ばれる感情にまで辿り着いていなかったのかも知れません。
ただ、近しいだけの男性。
それだけだったのかも知れません。
それでも――私にもそれらしきものはあった、というお話です。
私が普通の女子大生と何ら変わることのない、そんな証を示すかのような、そんな話を。
私、三浦あずさの、最初で最後の、恋らしき何かのお話を。
- 6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 18:17:55.41 ID:pG5fqgIz0
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002
「はい……はい、すいません。お願いしますね?」
携帯電話の通話ボタンを押し、鞄に仕舞い誰にともなく独りごちます。
「いい天気ねぇ」
海猫が鳴いています。
海猫ってはじめて見るけれど、本当にネコみたいに鳴くんだなあ。
帰ったら響ちゃんに話そう。
海沿いの堤防のテトラに腰を掛けながら空を仰いでみると、雲ひとつない青空が広がっています。
今日はいいことがありそうです。
いえ、既にもういいことはありました。
今からプロデューサーさんが迎えに来てくれるのです。
今年の春から新しいプロデューサーとして入社した、歳がふたつ上の男性。
いつもやる気のなさそうな態度と、人を食ったような口調と、そこはかとなくセクシーなアホ毛でみんなの人気者。
本人曰く、僕は男に嫌われる代わりに女の子の友達が多いんだ、とのこと。
何だか誤解されそうな台詞だけど……。
私もその例外には含まれなかったらしいです。
- 7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 18:19:37.27 ID:pG5fqgIz0
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実は私、彼にちょっとだけ気があるのでした。
最近なんて、今日みたいに半ばわざと迷って迎えに来てもらっています。
いや、迷うのはわざとではなく、私の悪癖なのですけれど。
初めて行く場所は必ず辿り着けた試しがないし、いつも通っている道も時々わからなくなってしまうのです。
どうして? と周囲の人には時折問われますが、それがわかるのならこんなに迷ったりしていません。
あえて言うのなら、面白そうなものを見つけるとふらりと行ってみたくなるのが原因かも知れません。
今日もロケ先で仕事を終えたあと、潮の匂いにつられて歩いていたら本当に海に着いてしまったのです。
その困った特技も今ではちょっと感謝してもいいかも。
迷ったらプロデューサーさんが迎えに来てくれるから。
「ばかみたい――だけど」
いいですよね、これくらい。
彼にはもう彼女がいる。
だからこれは元々叶うはずのない願いなんです。
でも、ちょっとくらいならいいですよね?
ちょっとの間だけ、恋人気分くらいなら――。
- 8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 18:22:23.70 ID:pG5fqgIz0
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「……あら?」
その時、ふと視界の端に妙なものが映ったのです。
「何かしら、これ……」
半透明で、球状の何か。
そして中心には 向こうの景色が鮮明に見通せることから、ドーナツのように穴が開いているのがわかります。
一見水風船のように見えますが、水風船に穴を開けて球状を保てるわけないですし……。
海沿いだしクラゲかしら、と思いましたけれど、穴の開いたクラゲなんて寡聞にして聞いたことがありません。
「それに触ったらダメですよ、美人なお姉さん」
手を伸ばして確認しようとした瞬間、背後から声を掛けられました。
振り返ると、大きなリュックサックを背負ったツインテールの小学生くらいの女の子がいました。
亜美ちゃん真美ちゃんより少し年下、くらいでしょうか。
「それは毒クラゲです。触るとおっぱいが小さくなりますよ」
「あらぁ……」
それはちょっと困ります。
たまに重くて邪魔だと思うことはあるけれど、だからと言ってなくなったら寂しい気もしますし。
- 9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 18:24:58.59 ID:pG5fqgIz0
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「実は私もお姉さんくらいの巨乳だったのですが、そのにっくきクラゲに刺されて小さくなってしまったのです」
さすがに嘘だろうが、見ず知らずの私に忠告した以上、危険なのは本当なのでしょう。
「忠告してくれてありがとう、えっと――」
「私は八九寺真宵と申します」
「真宵ちゃん、ね。私は三浦あずさって言うの」
「三浦、あずささん」
ふむ、と噛み締めるように私の名前を呟いています。
どうしたのでしょう。
そんなに珍しい名字でも名前でもないと思いますが。
「ああ――アイドルの方ですね?」
「あら、知ってるの? 嬉しいな」
女子小学生に知られているということは、実は結構嬉しいのです。
「いえ、私の知り合いが事ある度に三浦さんのことを女神だアテナだアフロディーテだガブリエルだと申しておりまして」
「あらあら女神だなんてそんな、大袈裟ね」
「いえいえ、私も実際に出会って思いましたよ!
三浦さんのおっぱいはまさに女神です!」
「私自身じゃなくておっぱいなのね……」
「失礼、間違えました。しかしご立派なおっぱいですね……羨ましい限りです」
「真宵ちゃんも大きくなったらこれくらいになるわよ」
「いえ、私は世の業深き性癖を持つ殿方の為に永遠の女子小学生、という大役を背負った身なので」
これ以上は身も心も成長しません、と言い切りました。
なんだか別次元のお話をしている気がするなあ……。
- 10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 18:26:50.58 ID:pG5fqgIz0
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「見れば見るほど神々しいおっぱい……ちょっと触ってみてもよろしいですか?」
「……えっ」
「お願いします! 後学のためにも!」
おっぱいを触ることが真宵ちゃんの為になるのでしょうか……。
まあ、女の子だし助けてくれたし、そんなに抵抗はないのですけれど。
「べ、別にいいけど……」
「では、失礼します」
「おーい、三浦さーん」
真宵ちゃんが両手を中国拳法のように構えていざタッチ、としようとした瞬間、離れた場所から聞き覚えのある声が聞こえました。
プロデューサーさんです。
愛車のニュービートルを背に、アホ毛を左右に揺らしながらこちらに小走りで近付いてきます。
「はぁ……お待たせしました」
「ありがとうございます~、プロデューサーさん」
「いえいえ、この程度なら――あれ?」
「あ」
- 11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 18:28:21.41 ID:pG5fqgIz0
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「――八九寺? なんでこんなところに」
「これはこれは、阿良木々さんではないですか」
「僕を某三倍速で動く仮面の男が搭乗する赤いMSみたいな名前で呼ぶな。僕の名前は阿良々木だ」
「失礼、噛みました」
「違う、わざとだ……」
「噛みまみた」
「わざとじゃないっ!?」
「亜美は見た」
「亜美ちゃんが殺人事件の目撃者に!?」
「でもアララギ、って片仮名で書くとMSっぽいですよね」
「確かにそうだが、あまり強そうではないな」
「更にアラ=ラギと書くと人物名っぽく!」
「壺が好きそうな響きだ」
なんという呼吸の一致でしょうか。
二人の漫才(?)はある意味神がかっているようにも見えます。
- 12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 18:30:52.74 ID:pG5fqgIz0
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「と言うか阿良々木さん、私が三浦さんのおっぱいを触るのを邪魔するとはどういう了見ですか」
「そんな状況だったの!? 僕も混ぜてくれよ!」
プロデューサーさんは本音を隠す、という理性を持ち合わせていないようです。
まあ、陰でいやらしい想像をされたりするよりはマシ……な気はしますが、考えたらダメですよね。
「阿良々木さんが私のおっぱいをいくらでも触っていい代わりに私が他人のおっぱいを触るのを邪魔しない、とこの間、阿良八おっぱい条約を締結したじゃないですか」
「なにその僕が超得する条約!」
「あれだけ私のおっぱいをもみくちゃに触って揉みしだいてこね回しておきながら邪魔するとは、男の風上にも置けませんね」
「あらぁ…………」
「おい! 三浦さんに誤解されるだろうが!
僕はそんなことは一切していません!」
「そ、そんなっ、『僕は十二歳以下の女の子にしかときめかないんだ、だから結婚しよう』なんて言われたから触らせたのに!
もうお嫁に行けません!」
「そんなに僕の評判を貶めたいのか!?
よーし、何が目的だ八九寺!」
「今ふと気付いたのですが、『揉みしだく』って動詞、おっぱい以外に使うことってほぼないですよね」
「確かに……肩や漬物を揉みしだくとは言わないな」
- 13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 18:36:38.19 ID:pG5fq
コメント一覧
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- 2014年04月10日 22:01
- 一日一作。本家に迫る速筆ですね。
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- 2014年04月10日 22:11
- 書き溜めてたにしても内容が濃ゆいぜ…まだ読みたいな
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- 2014年04月10日 22:11
- クロスで主人公に他作品キャラが惚れる系は苦手だが、これはよかった。
このまま貴音とか亜美真美とか見たいなぁ
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- 2014年04月10日 22:21
- 次作は数日後かな?楽しみだ
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- 2014年04月10日 22:26
- 某有名な蛇「(タイトルのネーミングが)良いセンスだ。」
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- 2014年04月10日 22:29
- 最初に書きためが消えたって言ってたのはもしかして最初のキャラだけじゃなくて全員分だったのか…
わりかし短めなのにそれっぽくていい感じ
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- 2014年04月10日 23:00
- 明日にはどのキャラで話を始めるんですかね!
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- 2014年04月10日 23:10
- 長さがベスト。はよ雪歩。
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- 2014年04月10日 23:33
- やぱっりひたぎさんにいじめられるのか。
面白い。次回作にも期待
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- 2014年04月10日 23:48
- 怪異の名前がことごとくそれっぽくて良い。
貴音はなんか逆に阿良々木さんの事助けそうだな。
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- 2014年04月10日 23:53
- 765プロ怪異多過ぎだろ
暦が引き寄せてるんじゃないか?
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