魔法使い「僕を仲間にしてくれないかい?」
- 1 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/21(金) 14:14:31 ID:3lgc1nKI
- 関連SS
奴隷少女「……ちょうきょう、し?」 - 2 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/21(金) 14:27:07 ID:3lgc1nKI
- ……
勇者「……魔族、ですか?」
町長「はい。この町のはずれにある廃屋に住み着いたようでして」
町長「奴が来てから、町に悪いことがよく起こるようになってしまったのです」
僧侶「……具体的に、どのような被害がありましたか?」
町長「……いつも物資を売りに来てくださる商人の馬車が襲われることもありましたが」
町長「そのほかにも、病が流行ったり、暴力沙汰が増えたり、とにかく悪いことが起こりすぎているのです」
町長「奴の仕業に違いありません。どうか勇者様、我々をお助けください……」
勇者「分かりました。任せてください」
勇者「必ず、俺がその魔族を倒します!」
町長「おお、なんと頼もしい! それでは地図を……」ごそごそ
僧侶「……」 - 3 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/21(金) 14:38:02 ID:3lgc1nKI
- ……
勇者「……とは言ったけど、勝てるかな」
僧侶「心配要りませんよ。勇者は女神様に選ばれた英雄なのですから」
僧侶「悪しき力に負けるはずはありません」にっこり
勇者「そう、なのかな」
僧侶「ええ。そして私も、微力ながらサポートさせていただきますし」
勇者「そうだよな。僧侶が居てくれれば、俺も安心して戦えるよ」
僧侶「あ、でも、無理はなさらないで下さい。……私はまだ半人前ですから」
勇者「そんなことないよ。僧侶が居てくれたおかげで何度も助かってるし」
勇者「半人前は俺のほうさ」ははっ
僧侶「い、いえ、そんな」
勇者「……あれかな。魔族が住んでるのって」 - 4 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/21(金) 14:47:49 ID:3lgc1nKI
僧侶「……町長さんから頂いた地図によれば、あの廃屋のようですが」
勇者「……廃屋っていうより、ええと」
ボロッ
勇者「ボロ屋?」
僧侶「……いえ、しかし油断なさらないで下さい」
僧侶「我々を欺くために、わざとあのような環境に住んでいるのかもしれません」
僧侶「あるいは、ただそういったことに無頓着なだけなのかもしれませんよ」
勇者「……分かってる。気を引き締めなきゃな」ぐっ
勇者「行こう。近づかないことには始まらないし」
僧侶「……はい」- 5 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/21(金) 15:14:51 ID:3lgc1nKI
- ……
ギィッ……
勇者「中、暗いな……」
僧侶「お待ちください、今松明を……」
勇者「いや、なんか燃え移りそうで怖いから止めておこう」
勇者「真っ暗って訳でも無いし、気をつけて進めば大丈夫だよ」
勇者「……離れず、しっかりついてきてくれ」きゅっ
僧侶「っ! ゆ、勇者さま、その、手まで繋いでいただかなくても」
勇者「はぐれたら困るからさ」
僧侶「……はい」かぁっ - 6 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/23(日) 16:50:44 ID:tF0IaCto
勇者「目が慣れてきたな。これなら明かりもいらなそうだ」
僧侶「……ええと、見えないんですが」
僧侶「きっと、女神様のご加護があってこそでしょうね」
勇者「そうかもな。神託の後から身体の調子がかなりいいし」
勇者「……、あれ、何だろう」
僧侶「勇者、何か見えたのですか?」
勇者「うん。真っ黒な鎧、なんだけど」
勇者「階段の真正面に立ってるし、飾ってあるだけにしては不自然かなって」
僧侶「……例の魔族、の使い魔でしょうか」
僧侶「恐らく、その先に居る主を守っているのでしょう」
僧侶「接触を避けるのは難しそうですか?」
勇者「だろうね。仮に気づかれずに先に進めても、後ろから襲ってきそうだし」
勇者「なら先に倒してしまったほうが――」
鎧「……」ガシャン
勇者「!」- 7 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/24(月) 00:48:37 ID:KEK1m/Yc
鎧「……」ジャキン
勇者「気づかれた!」ばっ
勇者「仕方ない、ならこっちから先に――」だだっ
僧侶「お待ちください! まだ相手の戦力が――」
?「そうそう、戦力がはっきりしないうちに突っ込むのは愚作だよね」
僧侶「!?」
勇者(……! 僧侶の後ろ、誰か居る!)ピタッ
?「黒騎士、ちょっと待って」
?「来客は久しぶりだから、お話したいんだ」
黒騎士「……」ガシャン
勇者(……使い魔が、構えを解いた)
?「ええと、明かりも必要か。『光源』『追尾』」パッ
勇者(光が一つずつ、俺と、僧侶と、こいつの傍に)
勇者「……何者なんだ、お前」
魔法使い「僕は魔法使い。こんなところに住んでいるけど、怪しい者じゃない」- 8 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/24(月) 01:24:39 ID:KEK1m/Yc
魔法使い「それで、君達はどうしてこんなところに」
勇者「あ、ええと、俺は勇者」
僧侶「……ここに住む魔族を討伐せよ、という町長さんからの依頼で来ました」
勇者「……こっちは、僧侶」
魔法使い「――へぇ、勇者様ご一行か」
魔法使い「噂は聞いていたよ。……でも魔族って、酷いな」
僧侶「先程魔法を行使したこと、さらに使い魔の存在を晒しておいて、人間のふりをしようというのですか」
魔法使い「人間にだって魔法は使えるし、使い魔の使役もできる」
魔法使い「教義にもあるんだろう? 『魔の力を使ってはならない』って」
魔法使い「それ、要するに『人間にも魔法は使えるけど使わないでね』ってことだ」
僧侶「……っ!」- 9 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/24(月) 01:34:27 ID:KEK1m/Yc
勇者「……そう言えば、そうなのか」
僧侶「この者の言葉に耳を貸さないで下さい、勇者」
僧侶「狡猾な魔族のことです、我々を混乱させるために出鱈目をいっているのです」
魔法使い「そう判断する基準は? 僕が魔族だって町長から聞いたからってだけだろう」
僧侶「それは……っ」
魔法使い「逆に、町長が嘘をついている可能性は?」
魔法使い「魔族でもなんでもない、人間を殺した罪を勇者一行に負わせるための嘘だとしたら?」
勇者「……どういうことだ」
魔法使い「そりゃあ、人類の救世主っていっても」
魔法使い「魔物による被害が少ない地域なら、あまり実感がわかないものだし」
魔法使い「そんなわけの分からない二人組みに無償で支援をしなきゃならないのが面白くない、とかあるかもしれないからね」- 10 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/24(月) 01:41:23 ID:KEK1m/Yc
僧侶「――、そうですよ」
僧侶「貴方が来てから、あの町に悪いことが多く起きるようになったそうです」
僧侶「貴方という魔族による被害が出ている」
僧侶「ですから、貴方の理屈は通らない」
魔法使い「……それは初耳」
魔法使い「事実かどうか、自分達で確認した?」
魔法使い「悪いことが良く起こるようになったことと、僕の存在の因果関係は?」
僧侶「……」ぎりっ
魔法使い「そもそも、僕がいつから居たかなんて、町長は知っているのかな」
魔法使い「こんな外れに、皆が忘れ去ってしまうような廃屋に」
魔法使い「人が一人住み着いたことなんて、そう直ぐに気づくものじゃないと思うけど」- 11 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/24(月) 01:50:54 ID:KEK1m/Yc
勇者「……でも、町長さんが嘘をついているっていうのも、証拠は無いじゃないか」
魔法使い「そうだね。実際、嘘じゃなくて勘違いかもしれない」
魔法使い「僕のことを魔族だと勘違いして」
魔法使い「それからたまに起こる悪いことを、僕の仕業だと勘違いした」
魔法使い「っていうのがオチだろうね」
魔法使い「ただ一つ確実にいえるのは、僕は魔族じゃない」
魔法使い「君達と何も変わらない、ただ魔法が使えるだけの人間だ」
僧侶「――魔法を使った時点で、人は穢れます」
魔法使い「それは君の宗教の考えだ」
魔法使い「使ったことも無いのに、使える人を見るのも初めてなのに、何を言っているんだ」- 13 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/25(火) 00:38:36 ID:zYC.sisY
勇者「……じゃあ、魔法使い」
勇者「君はここで、何をしていたんだ」
魔法使い「何って、普通に暮らしてたけど」
勇者「こんなところで?」
魔法使い「街中で暮らせるような立場じゃない、ってことは、さっきそこの僧侶が言ってたけど」
僧侶「……」ふいっ
勇者「……じゃあ、本当に何もしていなくて」
勇者「町で起こっている悪いこととも、関係ないんだな」
魔法使い「もちろん。町に嫌がらせする理由も無いし」
魔法使い「案外不自由してないからね。迫害されたことに対する恨みもない」
僧侶「……」むすっ- 14 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/25(火) 00:50:39 ID:zYC.sisY
魔法使い「……いや、不自由しないってのは嘘かな」
魔法使い「ここに篭ってるだけじゃ、得られる知識にも限度がある」
魔法使い「という訳で、僕を仲間にしてくれないかい?」
僧侶「何を、ふざけたことを!」
魔法使い「割と真面目なんだけどな。ほら、結構魔法には自信があるし」
魔法使い「複数の敵を相手にするときのためにも、ある程度人数は必要だと思うよ」
勇者「……それは、あるな」
僧侶「勇者まで……!」
勇者「ほら、森の中を超えるときにさ」
勇者「魔物がどこから来るかわからなくて、僧侶に怪我をさせちゃったときがあっただろ?」
勇者「もう一人居れば、もっと安心して戦えるって思ったんだ」- 15 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/25(火) 09:44:41 ID:zYC.sisY
魔法使い「僕は旅の中でいろんなものを見ることができるし」
魔法使い「勇者達の手伝いもできる」
魔法使い「持ちつ持たれつ、お互いに得すると思うんだけど」
僧侶「……勇者様は、女神様の使いでもあります」
僧侶「貴方のような人と一緒に行動するわけにはいきません」
魔法使い「そうかな。むしろ、女神様の懐の深さを体現できると思うよ」
魔法使い「シナリオが必要なら、……ふむ」
魔法使い「『悪しき邪教徒が勇者一行のおかげで改心し、共に悪を滅ぼすため勇者と共に戦う』ってのはどうかな」
僧侶「……女神様の使いに、嘘をつけと?」
魔法使い「騙すわけじゃないからね。確かに僕は邪教徒でも悪人でもないけど」- 16 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/25(火) 10:10:22 ID:zYC.sisY
勇者「……分かった、僧侶」
勇者「じゃあ次の町までだ。とりあえず様子を見よう」
勇者「ほら、魔法使いがどれくらい強いかとか見なきゃいけないし」
魔法使い「ん、それもそうだね」
魔法使い「その後も一緒に旅を続けられるように頑張るよ」
僧侶「……」
魔法使い「……君とも仲良くしたいものだけど」
僧侶「結構です」- 18 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/25(火) 21:53:07 ID:zYC.sisY
- ……
勇者「……で、結局魔族を退治したことにして、町長さんに報告したわけだけど」
僧侶「……お礼、断りきれませんでしたね」
勇者「俺たち、何も出来てなかったのにな」
魔法使い「そんなことはないさ、勇者」
魔法使い「退治の目的というのは、有害な他からの被害を受けないようにすることにある」
魔法使い「君が町長にそう報告することで、あの町のひとびとはもう架空の魔族におびえることはなくなるだろう」
魔法使い「――ほら! 君は魔族を退治しているじゃないか」
勇者「そう考えられれば気が楽なんだけど」
勇者「……でもなんか、騙してしまった気がして」
魔法使い「んー、それなら」
魔法使い「お礼でもらった物資を有効活用して、世界を救おう」
魔法使い「そうすれば、あの町は永遠に魔族を恐れずに済むようになる」
勇者「……今更返すわけにもいかないし、な」
僧侶「……」 - 19 : ◆wKJ4P6pC3k 2014/03/26(水) 23:30:25 ID:GwkElIis
- ……
勇者「にしても、本当に凄かったな、魔法」もぐもぐ
勇者「早いし、弱い魔物なら一撃で倒せてた」
僧侶「……確かに、戦力としては有能ですが、別に私達二人だけコメント一覧
-
- 2014年04月11日 17:44
- 魔王戦から一気に手抜きになったなwww
-
- 2014年04月11日 17:48
- このシリーズ好きだわ
かつての魔王もこの魔法使いみたいな感じだったんだろうな
-
- 2014年04月11日 18:24
- 続編希望
-
- 2014年04月11日 18:29
- 死者の王は前作の奴隷少女みたいな感じだったのかね。
だから魔王にあそこまでの忠誠心があったとか。
-
- 2014年04月11日 18:39
- これ前提にして調教師スレもう一度読んだら魔法使いの腹黒さが更に際立った
-
- 2014年04月11日 19:01
- 通しで見るとやっぱりクズだなあこいつ
-
- 2014年04月11日 19:15
- ※6
しかし一番人間臭いキャラでもあるんだぜ?
-
- 2014年04月11日 19:30
- どちらかというと僧侶落とす所読みたかったな
-
- 2014年04月11日 19:39
- いい感じに人間の屑だな、とても好感が持てる
-
- 2014年04月11日 20:17
- 変態とは対極にいるけどレザード・ヴァレスを彷彿とさせるな
-
- 2014年04月11日 21:58
- 前作から魔法使いのゲス感がたまんないね
-
- 2014年04月11日 22:38
- 勇者殺られそうだなーって思ったらやっぱりかい!
-
- 2014年04月11日 23:50
- 非難も出来ないけど応援も出来ないゲスさ
汚い、さすが魔法使い汚い
-
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