男「自殺するっていうならその前に僕に抱かれませんか?」
- 1 :名無しさん 2014/04/11(金)22:09:12 ID:Nl9A5Yopp
- 男「靴脱いでるし、これから飛び降りるんですよね?」
女「おっしゃるとおり、飛び降りようとしてましたけど。
なんですかあなた?」
男「よかったあ!」
女「はい?」
男「だって自殺するんですよね、ここから飛び降りるってことは」
女「そうですが」
男「自殺するっていうなら、その前に僕に抱かれませんか?」
女「はい?」 - 5 :名無しさん 2014/04/11(金)22:13:25 ID:Nl9A5Yopp
- 男「なかなか出会えないんですよね、これから死ぬって人に」
女「……」
男「しかも僕は運がいい。こんな美人とめぐり会えるなんて」
女「あの、飛び降りていいですか?」
男「僕の話、聞いてたでしょう?」
女「ええ。エッチがどうとか言ってましたね」
男「フッ、そうです。僕の目的はただその一点のみです」
男「安心してください」
男「あなたの自殺を止める気なんて、僕にはこれっぽっちもありませんよ」
女「帰ってもらっていいですか?」 - 9 :名無しさん 2014/04/11(金)22:17:09 ID:Nl9A5Yopp
- 男「僕に帰る場所はありません。あるとしたら、あなたの胸の中だけだ」
女「もう飛び降りていいですか?」
男「どうして!?」
女「ご自分の胸に聞いてください」
男「いいでしょう。あなたを止める資格は、僕にはない」
男「ただ、ひとつだけ聞かせてもらってもいいですか?」
女「ひとつだけですよ」
男「三日前って白のパンティー履いてました?」
女「……はい?」 - 11 :名無しさん 2014/04/11(金)22:20:58 ID:Nl9A5Yopp
- 男「『なぜ見ず知らずの男が、わたしの履いているパンティーの色を知っている?』」
男「そんな顔をしてますね」
女「あなた、なんなんですか」
男「フッ、どこにでもいる素人童貞ですよ」
女「それは聞いてません」
男「なぜ僕があなたのパンティーについて知っているのか」
男「簡単ですよ。あなたはここ一週間、このマンションの屋上から飛び降りようとしていた」
男「そうですね?」
女「一週間も前から、わたしのことを見ていたんですか」
男「正確にはあなたではなく、あなたのスカートの中を、ですがね」 - 12 :名無しさん 2014/04/11(金)22:23:27 ID:Nl9A5Yopp
- 男「あなたは飛び降り自殺を実行しようとしていた」
男「しかし、いつもギリギリでやめてしまいますね」
女「……」
男「いやあ、一週間前にこのマンションを見上げたときは驚きましたよ」
男「『あっ、パンツだ!』って」
女「パンツだったんですか、真っ先にあなたの目に飛びこんできたのは」
男「そりゃそうでしょう」 - 14 :名無しさん 2014/04/11(金)22:26:57 ID:Nl9A5Yopp
- 男「なかなかないんですからね。パンチラに出会う機会って」
女「あなた、これから死ぬ人間によくそんなことを言えますね」
男「逆ですよ。口なしになる人にだからこそ、思ったことをぶっちゃけてるんですよ」
女「で、抱かせてくれ、ですか?」
男「フッ、なんなら僕が抱かれてもいいですよ」
女「けっこうです」
男「うーむ。どうも、あなたは難しい人間のようですね」
女「わたしはいたって普通です。おかしいのはあなたでしょう。
死後の世界にだって、初対面で抱かせてくれる人なんていませんよ」 - 16 :名無しさん 2014/04/11(金)22:31:54 ID:Nl9A5Yopp
- 男「たしかに。いきなりすぎましたね」
女「わかってもらえたならいいです。それじゃあさよなら」
男「なんでまた飛び降りようとしてるんですか」
女「死ぬからです」
男「待ってくださいよ。まだ抱いてないんですから」
女「あなたに抱かれるつもりはありません」
男「今は、でしょう?」
女「一生です」
男「だから一生を終わらせようとしないで。僕の話、まだ終わってません」 - 18 :名無しさん 2014/04/11(金)22:34:26 ID:Nl9A5Yopp
- 男「実はどうしても聞きたいことがあったんですよ」
女「なんですか?」
男「なぜ今日はスカートじゃないんですか?」
女「なにが言いたいんですか?」
男「フッ、この建物の下から空を見あげるとね、見えるんですよ」
男「太陽よりもまぶしいもの。あなたのパンツがね」
女「あなた、どんだけパンツ好きなんですか」
男「最近の僕にとっての一番の楽しみだったんですよ。それなのに、どうして……!?」
女「べつに。今日はスカートの気分じゃなかっただけです」
- 22 :名無しさん 2014/04/11(金)22:40:34 ID:Nl9A5Yopp
- 男「たまたまスカートじゃなかった、そういうことですか?」
女「そう言ってるでしょう」
男「じゃあ今からスカートに着替えてきてもらっていいですか?」
女「そんな暇があるなら、さっさと死にます」
男「なぜそんなに死に急ぐんですか?」
女「死にたいからです」
男「べつによくないですか? どうせもうあなたは死ぬんだから」
女「どういうことですか?」 - 24 :名無しさん 2014/04/11(金)22:45:29 ID:Nl9A5Yopp
- 男「死ぬって決めたら、こころにゆとりができません?」
女「ゆとり、ですか」
男「だってこれからなにが起きても、あなたはここから飛ぶんですよ」
男「いつでも人生をクリアできるんだから、なにが起きても安心でしょう?」
女「ゼロになるというか、終わらせられるというか……結果は決まってます」
男「つまり、たいていのことは許せますよね?」
女「たしかに。たどる結末は見えてますからね」
男「じゃあ僕に抱かれましょう」
女「結局それですか」 - 26 :名無しさん 2014/04/11(金)22:51:58 ID:Nl9A5Yopp
- 男「僕に抱かれるのが、イヤなんですか?」
女「イイと思うんですか、わたしが?」
男「質問に質問は感心しませんね」
女「あなたの言動よりはマシでしょう。でも、そうですね……」
男「おやおや。ようやく僕を受け入れてくれますか」
女「ええ。最期ぐらいは、役に立つことをしてもいいかもしれません」
男「話の理解が早い人で助かります」
女「ええ。警察に通報します」
男「フッ……」 - 28 :名無しさん 2014/04/11(金)22:55:45 ID:Nl9A5Yopp
- 女「言っておきますけど、おどしとかじゃないですから」
男「ほほう」
女「こんな世の中です。
女であるわたしがあなたを通報すれば、どうなるかはわかりますよね?」
男「フッ、あまいですねえ」
女「あまい?」
男「あなたは自殺を図っていた。身元整理はしてるんじゃないですか?」
女「それは……」
男「ケータイを解約したりとか、遺言書を残してたりすれば」
男「自殺の証拠としては十分ですよね」 - 31 :名無しさん 2014/04/11(金)23:00:52 ID:Nl9A5Yopp
- 男「ていうか、ケータイ解約してたら警察に通報すらできませんけどね」
女「うっ……」
男「つまりあなたは、僕に抱かれて死ぬか」
男「僕を通報して、ダラダラとこの世界で生きていくって選択肢しかないんですよ」
女「どっちも地獄ですね」
男「さあどうしますか?」
女「……」
男「おとなしくしていれば、優しくしますよ」
女「きゃあああああっ! 誰か助けてえええ!!」
男「ええっ!?」 - 33 :名無しさん 2014/04/11(金)23:06:27 ID:Nl9A5Yopp
- 男「これから死ぬくせに、なに助けを呼んでるんですか!?」
女「あなたを出すとこに出して、それから死ぬことにしました」
管理人「なにかあったんですか!?」
男「!!」
女「実はここに極めて特殊な変態が……」
管理人「なぜ裸足なんですか?」
女「え? あ、いやその……ちょっと開放的な気分になりたくて……」
管理人「開放的な気分ねえ」
女「ほ、本当です。あの、coccoとかそういう歌手の人のマネです」
管理人「悪いけど、屋上から出てもらってもいい?」
女「……」 - 36 :名無しさん 2014/04/11(金)23:09:17 ID:Nl9A5Yopp
- 管理人「こんな世の中だと、ついつい暗い考えが浮かんでしまうんですよ」
女「……わかりました」
管理人「おねがいしますね」
女「はい」
男「いやあ、ビックリしたあ」
女「ひゃっ!? きゅ、急に声出さないでくださいよ」
男「おっ。はじめて驚いた顔をしてくれましたね」
女「……悪いですか?」
男「いえ、ぜんぜん」 - 37 :名無しさん 2014/04/11(金)23:14:49 ID:Nl9A5Yopp
- 男「それにしても。あなたが叫んだ瞬間に、おばさんが来たんで焦りましたよ」
女「管理人さんです」
男「思わず隠れてしまいましたよ」
女「隠れたんですか?」
男「おや? 気づきませんでした?」
女「管理人さんのほうに気をとられてましたからね」
男「靴のことを指摘されて焦ってましたね」
女「……うるさいです。それより、どうやって隠れたんですか?」
男「ん?」
女「ここ、とっさに身を隠せる場所なんてありませんよ」
- 42 :名無しさん 2014/04/11(金)23:19:51 ID:Nl9A5Yopp
- 男「あなたなら、塀の上から見慣れてると思うんですけど」
女「わたしなら……あっ、そっか」
男「気づきましたか?」
女「屋上の塀のでっぱりに、とっさに隠れたんですね」
男「正解です。小さな塀とは言え、よくとっさに隠れられたと思います」
女「……」
男「って、どこへ行くんですか?」
女「屋上から出ます」 - 43 :名無しさん 2014/04/11(金)23:24:23 ID:Nl9A5Yopp
- 男「あれれ? なんで?」
女「管理人さんに言われたからです」
男「屋上から出て、どうするんですか?」
女「いったん部屋に戻ります」
男「え? 死なないんですか?」
女「…………」
男「なるほど。そういうことですか」
女「なんでそんなにニヤニヤしてるんですか?」
男「これからあなたの部屋に行って、僕とあなたで……」
女「ちがいますっ!」 - 44 :名無しさん 2014/04/11(金)23:28:28 ID:Nl9A5Yopp
- 男「ちがうんですか?」
女「そもそもどうしてあなたを部屋にあげるんですか」
男「……野外プレイがお好みということですね」
女「自殺する前に、あなたを殺したほうがいいかもしれませんね」
男「犯罪者になると?」
女「どうせ結末は同じですから」
男「だったら僕に抱かれてしまえばいいじゃないですか」
女「もうその話は飽きました」 - 49 :名無しさん 2014/04/11(金)23:35:23 ID:Nl9A5Yopp
- 男「エレベーターに乗りましたけど、あなたの部屋ってなん階なんですか?」
女「教えません」
男「どうせこれから知りますよ」
女「今ここはなん階でしょうか?」
男「一階ですね。一階なんですか、あなたの部屋は」
女「いいえ。これから外に出ます」
管理人「おや。どこかへおでかけですか?」
女「ええ、ちょっと早めの夜ご飯を食べに」
管理人「そうですか。物騒な世の中ですから、夜道には気をつけてください」
女「ええ。実感しているまっただ中なんで、気をつけます」 - 50 :名無しさん 2014/04/11(金)23:39:19 ID:Nl9A5Yopp
- 男「ちょっとちょっと、マンションの外に出てるじゃないで
コメント一覧
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- 2014年04月13日 21:52
- これは良作
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- 2014年04月13日 21:53
- 屋上出る時には話が見えました。
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- 2014年04月13日 21:57
- 幽霊だったら幽霊が見えるって勝手に信じてたけど…そーだよなあ
考えさせられた
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- 2014年04月13日 22:04
- 面白かった
ま、俺は死んだら終わりだと思ってるけどね
死んだら終わりそっから先は何もない
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- 2014年04月13日 22:29
- 展開は割と予想通りだけど面白い
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- 2014年04月13日 22:30
- 面白い
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- 2014年04月13日 22:47
- 管理人が出てきた辺りで幽霊だと思った
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- 2014年04月13日 22:50
- 面白かったよ
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- 2014年04月13日 22:51
- このギンギンに怒張しているムスコを使うまでは絶対に死なん
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- 2014年04月13日 23:03
- まあこの話の場合、途中の展開は察してもそれがオチではないからなー
ちょっとした読み物って感じですっきりしてる印象
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- 2014年04月13日 23:09
- 面白かったです。
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- 2014年04月13日 23:32
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魅せて貰ったわ
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- 2014年04月13日 23:43
- 透明人間だけじゃなくて The Spiralとか、ちょこちょこ稲葉さんの歌詞を引用してるかな?
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- 2014年04月13日 23:52
- 面白かった
死んだらどうなるのか、無意識の内に楽になれて変わるって考えてたわ。
大して変わらず辛い目に合う可能性もありか
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