ユーリ「俺、アスピオに引っ越すことにするわ」 リタ「へ?」
- 2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/12(土) 12:29:48.34 ID:ydvSh/Ss0
- 世界が星食みの危機から救われた後、半年程の時間が過ぎた。
ラピードは下町の番犬として
エステルは絵本作家として
カロルは凛々の明星の首領として
レイヴンは騎士団とギルドの橋渡し役として
パティには海精の牙の首領として
ジュディスはバウルと共に世界中を駆け巡る旅人として
フレンは騎士団長として
皆がそれぞれの道を自分で選び、自分の意思で歩いていた。
これは、そんな世界で共に同じ未来を歩んでいこうと決めた二人のお話
- 3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/12(土) 12:30:33.51 ID:ydvSh/Ss0
- ――――――帝都ザーフィアスの下町
ユーリ「大丈夫かよ、じいさん」
下町で暮らす長髪の青年、ユーリ・ローウェルは怪我をした老人を背負い歩いていた。
ハンクス「あいたたた・・・」
ユーリ「ほら、もうすぐじいさんの家だぞ」
ワピード「ワン!」
ハンクス「・・・すまないの」
- 5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/12(土) 12:31:55.79 ID:ydvSh/Ss0
- ――――――ハンクスの家
ユーリはハンクスをベッドに降ろす。
ハンクス「ったく、わしもついておらん。
突然誰かの家の屋根が崩れてわしの方へ落っこちてくるとはの」
ユーリ「崩れた屋根が当たったのが、頭じゃなくて足だったのが不幸中の幸いだな」
ハンクス「どうだかの。
もし歩けなくなったら幸いなんて言えんわ」
そこまで大した怪我じゃないだろとユーリは言いかけたが、
相手が老人であったためユーリはその言葉を引っ込めた。
ユーリ「とにかく医者を呼んでくる。
ラピード、じいさんを見といてくれ」
ラピード「ワウ」
- 6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/12(土) 12:32:40.04 ID:ydvSh/Ss0
- ――――
ユーリがつれてきた医者がハンクスの診療を開始して、十分ほどの時間が経過した。
医者「安心してください。
歩けなくなる程の怪我じゃないですよ」
ユーリ「だとさ。
よかったな、じいさん」
ラピード「ワン!」
医者「ただ、少しですが骨にヒビが入ってますね。
なので2、3週間は安静にしてください。」
ハンクス「そうか。
ありがとな、お医者さん」
医者「では私はこれで
お大事に」
そう言って医者はハンクスの家を後にした。
ユーリ「・・・なんか浮かない顔してんな、じいさん」
ハンクス「・・・ちょっとな」
ハンクスはベッドに座りながら、うつむいている。
ユーリ「俺が手伝えることがあるかもしれねえから話してみな」
ハンクス「・・・実はの、わしの友人が今アスピオに訪れていると手紙で知らせてきたんじゃよ」
ユーリ「アスピオ? 帝都には来ないのか?」
ハンクス「いそがしい奴でのう。
やつは数日後にはダングレストに戻らねばならんから、ザーフィアスには来られないんじゃよ」
ユーリ「・・・アスピオか。
そういえば今は人が住めるくらいまで復興が進んでたんだっけ?」
かつてアスピオは世界が星食みの危機にさらされた際に崩壊した。
しかし、多くの魔導師と騎士たちが全力で復興に励み、今では人が住めるようになっている。
アスピオには貴重な資料や資源、研究設備があったため、復興は精力的に行われた。
ユーリ「それで、その友人がどうかしたのか?」
ハンクス「わしはそやつから金を借りておっての。
未だに返しておらんのじゃ」
ユーリ「金? いったいいくら借りたんだ?」
ハンクス「5万ガルドじゃ」
ユーリ「・・・結構な額だな」
- 7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/12(土) 12:33:28.47 ID:ydvSh/Ss0
- ハンクス「・・・昔困っておったときに助けてもらったんじゃ。
やつは滅多に帝都の近くに来ないからの。
なかなか会う機会が無くてな。
ようやく返せると思ったらこのありさまじゃ」
ユーリ「つまり、そいつに金を返せないから浮かない顔をしてたと」
ハンクス「そういうわけじゃ。
ものがものだけに、他人に頼むわけにもいかんから自分でも届けるしかないんじゃよ」
ユーリ「・・・その他人っていうのに俺も入ってるか?」
ハンクス「・・・まさかお前さん、わしの代わりに金を届けるつもりか?」
ユーリ「そういうわけだ。
で、俺に頼む気はあるか?」
ハンクス「・・・お前さんのことは信頼しとるよ。
だからといってあまり迷惑をかけるわけにもいかん」
ユーリ「気にすんなじいさん。
ちょうどハルルとアスピオに住んでる仲間に会いにいこうかと思ってたしな」
ハンクス「そうか・・・
本当はあまり甘えたくないが、今を逃すと次はいつになるかわからんからの。
頼んでもいいか、ユーリ」
ユーリ「任せときな。
ラピード、俺が帰ってくるまでじいさんの世話を頼んでもいいか?」
ラピード「ワン!」
ハンクス「ありがとうな、2人とも」
ユーリ「俺が帰るまでくたばるんじゃねぇぞ、じいさん」
ハンクス「いいから黙って行ってこい」
- 8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/12(土) 12:34:00.29 ID:ydvSh/Ss0
- ――――
しばらくして、ユーリは出発の準備を整え帝都の門をくぐった。
町の外に出ると、まるで旅立ちを祝福するかのように暖かい風がユーリを迎える。
ユーリ「(さてと、それじゃ行きますか。
確かじいさんの友人は数日経ったら出発しちまうんだったな。
ならハルルは帰りに寄るとして、先にアスピオに向かうか)」
こうして物語は始まった。
- 9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/12(土) 12:34:55.83 ID:ydvSh/Ss0
- ―――――学術閉鎖都市 アスピオ
ユーリはアスピオに到着し、宿屋にいるハンクスの友人を訪ねていた。
ハンクスの友人「そうか、ハンクスがか」
ハンクスの友人は、ハンクスと同様の年老いた男性だった。
ユーリ「ああ。確かに届けたぜ」
ハンクスの友人「あぁ、ありがとうな。
あいつにもよろしく言っといてくれ」
ユーリは無事ハンクスの友人にお金を届け終わり、これからどうするか考えていた。
ユーリ「(さて、どうするか・・・
とりあえず、まずはリタの家に寄ってくか)」
リタとはアスピオに住む魔導師の少女、リタ・モルディオのことである。
かつてユーリは彼女を含む8名と1匹の仲間たちと共に旅をしていた。
ユーリ「確かこの家だったな
おいリタ、いるかー?
俺だ、ユーリだ」
ユーリはかつて訪れたリタの家の前に立ち、ドアをノックする。
ユーリ「(・・・返事がねぇな。
どっかに出かけてるのか?
あの引きこもりが珍しいこった)」
ユーリがそう思い、ドアから目を離した直後、一人の少女が勢いよく出てきた。
それと同時にドアは大きく開く。
ユーリ「うおっ!?」
ユーリはとっさに後ろへ飛び退いた。
ユーリ「危ねぇなぁ・・・」
リタ「あーごめんごめん。
ってあんたユーリじゃない」
勢いよく出てきた少女はリタであった。
- 10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/12(土) 12:35:53.94 ID:ydvSh/Ss0
- ユーリ「押し扉なんだから気をつけろよな...」
リタ「だからごめんって。
で、何の用?
私急いでるから手短にお願いね」
ユーリ「急いでるって・・・
ん? 何だその大きい荷物は?
遠出でもすんのか?」
リタは、大きく膨れたリュックを背負っている。
リタ「ちょっとコゴール砂漠にね」
ユーリ「コゴール砂漠って・・・
まさか1人で行く気じゃないだろうな?」
リタ「あー・・・うん」
コゴール砂漠は気温が異常なほど高く、迷いやすい地形をしている。
その上魔物も存在しているため、非常に危険な場所である。
ユーリ「誰かに一緒に行ってもらおうとは思わなかったのか?」
ユーリは問い詰めるようにリタに言う。
リタ「・・・やることはただの植物の採取だから1人で大丈夫よ。
それに同行者を探してる時間も惜しいし」
ユーリ「エステルには頼まなかったのか?
すぐ近くに住んでるから、誘うのに大した時間もかからないだろ?」
リタ「今エステルはヨーデル殿下の補佐をやってるから、ハルルにいないの」
ユーリ「じゃあエステルは帝都にいるのか?」
リタ「いいえ、殿下と一緒にダングレストまで出張中だとか」
ユーリ「・・・ならエステルには頼めないか。
とはいえ一人じゃ助けてくれるやつがいないだろ。
もしものことがあったらどうするつもりだ」
リタ「大げさだっての。
この私にもしものことがあるとでも思ってんの?」
リタはユーリたちと共に旅をし、様々な場所を巡った。
その経験は、幸か不幸かリタに1人でも危険な場所に行くことができるという自信をつけさせた。
ユーリ「自然をなめんなって言ったのはお前だろ」
リタ「・・・よくそんな昔の言葉覚えてるわね」
ユーリは無言でリタを睨みつける。
リタにはそれが話をそらすなというメッセージに感じられた。
リタ「・・・仕方がないじゃない。
薬品の調合に必要な植物はあそこにしか生えてないんだから」
ユーリ「そんなもんより命のほうが大切だろうが・・・」
リタ「だから大げさだってば」
ユーリは呆れた顔をする。
- 11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/12(土) 12:36:29.88 ID:ydvSh/Ss0
- ユーリ「・・・・・・はぁー
仕方ねえ、ついていくか」
リタ「へ?」
ユーリ「だから、俺がコゴール砂漠までついていくって言ってるんだよ」
リタ「あ、あんた私に構ってる暇なんてあんの?」
ユーリ「ある」
リタ「・・・本当に?」
ユーリ「本当だ。
丁度さっきやらなきゃいけないことをやり終えたとこだからな」
リタ「・・・まぁ、ついてきたいって言うなら別にいいけど」
ユーリの顔を見るのが恥ずかしいのか、リタは顔を横に向けながらそう言った。
ユーリ「決まりだな」
会話の後、2人はすぐにアスピオの出口へ向かった。
- 12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/12(土) 12:36:59.81 ID:ydvSh/Ss0
- ――――
リタ「外も久しぶりね」
アスピオから出た直後、リタはそう呟きながら両手を頭上に伸ばし、深呼吸をする。
ユーリ「2人だけっていうのも少し心許ないな。
他にも同行してくれそうなやつを探すか」
リタ「他って?
がきんちょとおっさんは多忙なのか音信不通よ。
ジュディスとパティは世界中巡っててどこにいるのかもわかんないし。
フレンについてははあんたのほうが詳しいんじゃない?」
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よく練っとるな