阿良々木暦「あみスパイダー」
- 1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 18:02:32.81 ID:Bhoq2vln0
- ・化物語×アイドルマスターのクロスです
・化物語の設定は終物語(下)まで
・そこそこネタバレ含まれます。気になる方はご注意を
・終物語(下)より約五年後、という設定です
・アイドルマスターは2基準。平常運転です
関連作品
阿良々木暦「ちはやチック」
阿良々木暦「まことネレイス」
阿良々木暦「あずさジェリー」
阿良々木暦「まみコーム」
- 7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 18:29:36.26 ID:5l7hRJ1U0
-
001
人はなぜ、争うのだろうか。
場所は765プロ事務所、研究用という名義において経費で落とされた44インチ液晶テレビに映るのは、醜い争いを続ける者達の姿だった。
彼等はその強い意志で、鍛えられた四肢で、洗練された技で、相手を容赦無く殴り、蹴り、締め、自分の強さを誇示する。
しかし、それはあまりにも滑稽で愚かな光景だった。
個人の強さなど、役立つことはあっても決して絶対的なものではない筈なのに。
影縫さんのように人間とは思えない度外の強さを持つ人だって、自分の力を自慢したり他人の弱さを蔑視するなんてことはしなかった。
彼女の力ははあくまで仕事、ひいては自分のためのそれであり、人を傷付けるためのものではない。
だと言うのに、画面の中の彼等は明確な 理由もなく争いと諍いを繰り返している。
僕は彼等に問いたい。
それは名誉のためか?
単なる自己満足か?
他の誰かの為か?
僕には到底理解出来ないステージで戦っているのか?
それとも人間は、争いを通してでしか進化出来ない悲しい生物だとでも言うのか?
- 8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 18:30:59.20 ID:5l7hRJ1U0
- 戦争はこの世で最も技術を進歩させる行為だと聞く。
戦うことにより相手に負けない為の科学技術は勿論、効率と実を最大限まで追求した流通、医学、格闘術、その他諸々のあらゆるものが驚異的なスピードで進歩していく、という理論だ。
現代においても経営やマーケティングも戦争と喩えられることはしばしばある。
が、やはり直接命や家族、最終的には自分の住む国まで掛かった原始的な闘争である戦争には及ぶべくもないのだろう。
戦争は、言うまでもなく人が死ぬ。
寿命でも自然死でもない、人間の手によって人間が死ぬ。
生物として人間の全うすべき使命が生きることだとしたら、それはあまりにも残酷で救いのない事実じゃあないか。
人という生物の根本は闘争でしかないのか!?
だったらなんで僕たちは産まれて来たんだ!?
僕は闘って死ぬために産まれて来たんじゃない!
- 9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 18:32:26.32 ID:5l7hRJ1U0
- 「なにさっきからブツブツ言ってんだ兄ちゃん?」
「…………」
火憐ちゃんの言葉で現実に引き戻される。
テレビの画面では、身長三メートルはありそうな筋肉ダルマがちょうど地面に伏すところだった。
『PERFECT!!』のテロップと共に僕の負けが確定する。
「いぇ→い、これで41勝2敗、っと。いや→、兄(C)は担当アイ ドル想いでプロデューサーの鑑ですなぁ」
「ほんとほんと、このままだと兄(C)を双海家専属の奴隷に出来ますなぁ」
「兄ちゃんは弱いなー」
「格ゲー苦手なのに意地張るからだよ」
僕は妹達の言葉も聞き流し無言でスタンプカードに判を押す。
この百円均一で買ったちゃちな手帳を改造して作ったスタンプカードの名称は阿良々木カード。
僕がアイドルのために作ったもので、阿良々木ポイント、すなわち判子一個につき僕にひとつ命令できる、という肩叩き券のようなものである。
アイドルの勤労意欲、及びコミュニケーションの一環として僕が個人的に作成したものだ。
仕事をがんばった時や、落ち込んでいる時に僕が押す。使用期限はなし。
何でも言うことを、とは言ってもそこはい い子ばかりの765プロ、ジュース買ってこい(水瀬)、ラーメン食べについてこい(四条)、肩を揉んでくれ(あずささん)、など非常に可愛いものばかりだ。
- 10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 18:34:52.60 ID:5l7hRJ1U0
- で、その阿良々木ポイントが今まさに双海姉妹に対してデフレを起こしかけている。
事の起こりは、少し前に休憩時間に双海姉妹に誘われて行ったテレビゲームだった。
ゲーム機を持ち込んでの格闘ゲーム。
まあ息抜きにもちょうどいいし、子供の遊びに付き合ってあげるのも大人の役目だよな、と軽い気持ちで始めたのだが、
『せっかくだから何か賭けようYO!』
『兄(C)が亜美たちに勝ち越した分だけ亜美たちに命令していいZE!』
『ほう、いい度胸だ。この阿良々木暦の担当アイドルとなったことを後悔させてやる!』
『さっすが兄(C)、プ ロデューサーとは思えないセリフをいとも簡単に言ってのける!』
『そこにシビれねェあこがれねェ!』
というやりとりの結果、昼休憩の30分の間だけ死闘が行われることになったのだ。
僕に命令権利を渡すとは未だに僕の恐ろしさがわかっていないようだな。
さて、勝利の果てにはどんな鬼畜な命令をしてやろうか!
と意気込んだのはよかったが、結果は先述した通り。
僕が基本的にテレビゲームなんてやらないから、というのもあるけれど、それにしたって二人とも強すぎじゃないか?
大抵が反撃も出来ずに負ける。
今なんて空中に浮かされたまま即死コンボを決められた。
- 12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 18:37:48.24 ID:5l7hRJ1U0
- ちなみになんで火憐ちゃんと月火ちゃんがいるかという点についてだが、三日で都内観光は飽きたらしく、こうして昼間は事務所に遊びに来ている。
それを快く許可する社長も社長だが、本当に遠慮なく遊びに来る妹達も大概である。
一応 、音無さんや秋月を手伝ったりお茶を淹れたりと最低限の心遣いはしているようだが、二人の本性をよく知る兄の身としては心が休まらないことこの上ない。
とっとと帰らないかなこいつら。
「も、もう一回だ……」
「え→、もうやめようよ」
「うん、飽きた」
「勝ち逃げとは卑怯だぞ!」
子供相手に本気になっている大人ほどみっともないものはないよな、と日頃常々思っていたのだが、まさか僕がその大人になるとは……人生は迷走の繰り返しだな。
「だって兄(C)、ゲーム差38だよ?
プロ野球球団なら監督がハラキリだよ?」
「はっきり言って逆転するの絶対ムリだよ?」
「く……っ」
確かにその通りだ。
僕の前世が格ゲーの神で、突如雄叫びと共に前世の力に目覚めるでもしないと無理だろう。
- 13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 18:40:04.44 ID:5l7hRJ1U0
- だが男には負けるとわかっていても向かわなければならない戦いがある。
今がまさにそうなのだ。
「わかったよ、じゃあ一回だけね」
真美ちゃんがやれやれ仕方ない兄(C)だぜ、とコントローラを取る。
「よ→し、兄(C)にチャンスをやろう。もしこの勝負で真美に勝ったら今までのゲーム差は全部チャラにしたげてもいいよ?」
「本当ですか!?」
あまりの好条件に敬語になってしまったじゃないか。
その代わり→、と小悪魔フェイスを浮かべる二人。
「兄(C)が負けたら負け数は倍々チャンス。どう?」
なるほど、一挙にけりを着けるつもりか。
チャラになったらなったで元手はないようなものだし、勝ったら更に僕を服従させることが出来る。
「ふ……僕がそんな面白い勝負を断るわけないだろう!」
「よ→し、やったろうじゃん!」
「だが忘れたのか?
この阿良々木暦は追い詰められれば追い詰められる程に力を発揮する!」
「今までのは追い詰められてなかったんだ……」
「そして相手が年下であればあるほど戦闘力が増す人間だと言う事実を!」
「ダメ人間だ!」
だが事実だから仕方が無い。
実際に背を向けて歩く八九寺を発見したときの僕と言ったら、吸血鬼だった頃の全盛期、高校三年生の春休みの時と比肩しうる。
- 14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 18:41:48.44 ID:5l7hRJ1U0
- 「やめた方がいいと思うぞ兄ちゃん……」
あの無鉄砲の代名詞のような火憐ちゃんからの貴重な進言も押し退け、キャラクターを選択しさぁ一世一代の勝負だ、と気合を入れた瞬間、来客を告げるインターホンが鳴った。
「月火ちゃん、悪いけど頼む」
「はいはい」
昼休憩のこの時間、音無さんはコンビニや食事で外に出ていることがあるので月火ちゃんが出て行った。
本当は僕が出るべきなんだけど。
だが優先すべき事項は他にある!
「おらおらおらぁ!
そんな腕じゃ真美の足の指先にしか届かないZE!」
「真美ちゃんの足の指なら喜んで舐めてやる!
いや舐めさせてください!」
「真美の足を舐めるなら一回いちまんえんだ!」
「高すぎるぞ! 五千円にまけろ!」
「五千円出す兄(C)もどうかと思うYO!」
そんな不毛な会話を交わしている内に劣勢に追い込まれる僕。
何してるんだ! がんばれよ僕の分身!
「ほあっちょわ→!」
「うわあああああぁぁぁぁぁ!」
勝率5%の僕がここぞと言う時だけ勝てる訳もなく撃沈する。
おかしい……!
成功率一桁とかって主人公補正で百パーセント勝つフラグじゃなかったっけ!?
- 15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 18:43:59.75 ID:5l7hRJ1U0
- 「勝っち→!」
「そんな馬鹿な……」
「やっぱり格ゲーみたいな技もやりてーなあ。二段ジャンプってどうすりゃ出来るのかな兄ちゃん?」
「生憎だが僕の知る限り人間は空中を足場には出来ないぞ」
「あ、お兄ちゃんやっぱり負けたんだ。だっさ」
月火ちゃんが兄を罵りながら何やら包装された小綺麗な箱を持って戻ってくる。
「ありがとな月火ちゃん。そしてたまには兄を気遣え。宅急便か?」
「うん」
これ置いてったよ、と差し出す月火ちゃんの持ってきた箱には、大きく『SAMPLE』と書かれていた。
「試供品?」
株式会社シェル、と箱の端に小さく銘が打たれていた。
聞いたことのない会社だが、宛先も個人ではなく事務所であることから、恐らく化粧品かファッション系の小売会社なのだろう。
包装を解くとマフラー……じゃないな、ストールと小さな手紙が入っていた。
赤と緑のチェック模様で編まれている、良く言えばスタンダードで悪く言えば取り立て特徴のない柄だ。
手紙を見てみると、『弊社で生産しております商品です、よろしければ御使用下さい』とだけ簡潔に書かれていた 。
売れっ子アイドルが使っているストール、ともなれば売上が上昇するのは目に見えている。
それを踏まえて送り付けたのならばかなりのいい度胸をした業者だ。
大抵は先に電話なりで約束を取り付けた上でコラボレーション等の商談をするものなのだが、ただ送りつけるだけでは何の意味もないに等しい。
この不況下で低迷気味の中小企業ともなれば必死になるのは分かるが、これでは普通にアイドルの誰かがもらうか、音無さんの膝掛けにクラスチェンジして終わりだ。
- 16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 18:49:15.53 ID:5l7hRJ1U0
- 「ねえ兄(C)、これ亜美がもらっていい?」
と、亜美ちゃん。
「この間ストールにジュースこぼしちゃって新しいの買おうと思ってたんだ→」
「いいと思うよ、ちゃんとしたオファーが来ている訳でもないし」
一応、後で音無さんと秋月に一言聞いコメント一覧
-
- 2014年04月15日 21:28
- 貝木は真とかやよいが好きそう
-
- 2014年04月15日 21:38
- 手元に置いてるのか貝木さん・・・
-
- 2014年04月15日 21:45
- 当然ピヨちゃんも書いてるんだよな?
-
- 2014年04月15日 21:48
- 貝木さんはやよいのファンやろなぁ
-
- 2014年04月15日 22:13
- いつものぶれない貝木さんと阿良々木くんでしたね。
-
- 2014年04月15日 22:30
- なんか貝木ってやよいが好きそうなイメージがある。なんでやろ
-
- 2014年04月15日 22:55
- 相変わらずいい作者だ
だから貴音はよ
-
- 2014年04月15日 23:05
- まさかの律っちゃん推しかもしれん
-
- 2014年04月15日 23:30
- 人は自分と真逆な人を好きになるもんだからやよいだな
-
- 2014年04月15日 23:44
- 毎回面白いな
-
スポンサードリンク
ウイークリーランキング
最新記事
アンテナサイト
新着コメント
QRコード
スポンサードリンク