OPALSで宇宙データ通信が格段にスピードアップするかも?
広大な宇宙のなかでデータを共有する方法に革命が起きるかもしれません。というのも、ISS(国際宇宙ステーション)に搭載される予定の通信機器、OPALSが宇宙空間にギガビット単位のスピードをもたらすことになりそうです。
NASAの惑星間探測機に搭載されているセンサーが改良され、さらに軌道望遠鏡が増えたことで、採集できるデータの量は格段に増えました。でも、宇宙での通信環境ではその膨大な量に対応するのに限界があります。例えば、ゴルフボールをガーデン用ホースで吸い取ってみようだなんて無謀なこと試そうとも思わないですよね。でも現在のNASAの伝送規格は大雑把に言うとそんなものです。プレスリリースで「今は、宇宙空間で行われているミッションの多くが200から400キロビット/秒で通信しています」と語ったのは、ミッションマネージャーのMatt Abrahamson氏。「光通信はゲームチェンジャーとなる可能性を秘めています。」とも発言しています。
ISSへ搭載される光通信システム(lasercomm)の実験機器は、OPALS(Optical Payload for Lasercomm Science)と呼ばれるもの。今のところ、ISS内での伝送レートは50メガビット/秒に制限されますが、将来的にはlasercommで火星やより遠方から1 ギガビット/秒の伝送を実現出来るような設備も搭載しているそうです。
本プロジェクトのシステムエンジニアのBogdan Oaida氏の言葉いわく、この通信システムは「ダイヤルアップ接続からxDSL通信に変えるようなもの」なんだとか。「採集するデータ量が、そのデータをダウンリンクできる容量を上回ってしまったのです。家でダイヤルアップ接続を介して映画をダウンロードするのを想像してください。宇宙で起きている問題は、本質的にはそれと同じで、違うのは起きている場所が低地球軌道か、それとも宇宙空間かということです。」
OPALSシステムを設計、製造したのはJPL(ジェット推進研究所)で、その大部分には既製品が使用されました。Abrahamson氏は説明によると、「このミッションで私たちは、質量や容量、物理的な力に苦しめられるというよりも予算に苦しめられたのです」とのこと。そして、このシステムは高周波スペクトル外の周波数帯を使うため、FCC(連邦通信委員会)による統制はない、つまり既存の通信技術と干渉しないんだとか。
OPALSは当初、補給物資を届けるミッション(SpX-3)に積載され、今週月曜に飛び立つはずでした。しかしその打ち上げロケット、ファルコン9の第1段でヘリウムが漏れたため、打ち上げが中止になったのです。次回の発射予定日は現地時間金曜(日本時間4月19日)ですが、卓越風を伴う天候のため打ち上げられる確率は4割程度なんだとか。いずれにせよ、OPALSはISSへの設置後、90日間の試用期間に入りますが、実験がうまく行けば試用期間は伸びるかもしれません。
今回の実験が成功すれば、宇宙データ通信の速度は飛躍的にアップします。そしたら、宇宙をとりまく謎も今までの何倍ものスピードで解き明かされることになるかもしれません。そのためにも、まずはファルコン9の打ち上げが成功しますように。
source: NASA via JPL、Slashgear]
Andrew Tarantola - Gizmodo US[原文]
(たもり)
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