なぜ無傷。飛行機の車輪格納部に隠れて飛行した少年、生存の秘訣は「極寒」?
超人なの?
カリフォルニアの空港で飛行機の車輪格納部に隠れた16歳の少年がそのままハワイへ飛行。でも無事着陸できたことが報じられました。彼はどうやって、上空の極寒と低酸素状態を切り抜けたんでしょうか? 専門家は、彼が「仮死状態」になっていたものと見ています。
米国航空局のCivil Aerospace Medical Instituteによると、実は飛行機の車輪格納部に入って飛んだ人は彼が初めてではありません。同じような人は1947年以降今までに105人いて、うち25人が生き延びています。
ただ、このうちのほとんどは飛行時間がもっと短く高度も低かったので、今回のカリフォルニアの少年のケースはかなり異例です。カリフォルニア~ハワイ間のフライトは、高度3万8,000フィート(約11.6km)にも達します。これは、エベレストの頂上よりはるかに高くのぼり、2、3時間でまた地上に降りてきたのと同じ意味合い。専門家からは信じがたいという声もありますが、セキュリティカメラは少年の話が事実であることを裏付けています。
飛行機の車輪格納部に入って空を飛ぶには、3つの危険があります。(1)酸素不足、(2)車輪格納部からの転落、(3)凍えるような気温、です。まず、(1)の酸素不足によって意識を失ってしまうので、(2)の転落が起こりやすくなります。でも(3)が逆に功を奏し、低温によって少年は仮死状態となり、酸欠状態でも生き延びられたんです。
高度3万8,000フィートでは、外気は華氏マイナス80度(摂氏マイナス62度)ほどになります。この気温のせいで少年の体温は10~15度程度低下し、仮死状態になったものと考えられます。この状態になると心拍や呼吸が劇的に遅くなり、細胞活動はほとんど停止します。身体の活動がほとんどなければ、酸素もさほど必要なくなります。少年の脳が損傷を受けずに済んだのは、この仮死状態のためだったと考えられます。
また、車輪を動かすための油圧ラインや車輪自体の熱があって、冷たい外気を多少中和したとも見られています。彼が深刻な凍傷にかからなかったのは、そのおかげかもしれません。
奇しくも最近、瀕死の人を人工的な仮死状態にして命を救う方法についてお伝えしました。大きな外傷などで急速に死に向かっている人の身体活動をあえて一時停止することで、組織の損傷を抑えるという手法です。こちらは今から人体実験を行おうとしています。
少年の恐怖のフライトは、そんな人体実験に近いものになりました。でも実験であれば、コントロールされた環境であり、リスクは全て計算されています。しかし、飛行機の車輪格納部に乗るのは105人中25人しか生き延びることができていないし、長時間フライトならもっとリスクは高まります。今回の少年の場合は、やはり相当運も良かったんでしょうね。
image by Cheryl Casey/Shutterstock
source: TIME, LiveScience, CNN
Sarah Zhang - Gizmodo US[原文]
(miho)
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